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デビュー編

いや、まさかな。

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 私はディール・エル・ルーデリア。
ルーデリア王国第一王子だ。
突然だが、私の話を聞いて欲しい。

 私には、というものがある。
頭がおかしいと思うだろうか。
だが、これはれっきとした事実。  
前世の記憶を持ったまま、生まれ変わってしまった。
前世の私は、今とは口調も容貌も全然違った。
だから、前世の私を知っている者が今の私を見たら、きっと爆笑するだろう。
何の真似だ、と。
しかし、まあいないだろうな。
世界は広い。いるわけもない、か。

 さて、今日はデビュタントパーティーの開催日だ。
私は今14歳。
デビュタントは済ませているが、一国の王子として、当然パーティーには出席しなくてはならない。
去年はめんどくさいな、と正直思っていたが、今年は楽しみだ。
 何故なら、今年はあの名高いクレディリア公爵令嬢がデビューすると言うではないか!
一度会ってみたいと思っていたんだ。
わが国の誇る聖女候補。
今では「聖なる歌姫」なんていう異名まである。
 一体、どんな人物なのか。
噂では、天使のようだとも悪魔のようだとも聞く。
さて、もうそろそろ時間だな。
ああ、楽しみだ。

 ◇  ◆  ◇

 デビュタントパーティーではまず最初に、デビューする令息令嬢の名前を一人ずつ読み上げる。
そして、呼ばれた者は一人ずつ国王の元に挨拶に行くという伝統の儀式がある。

その儀式が、始まった。

「アルカティーナ・フォン・クレディリア公爵令嬢!」

 「はい。」

 名を呼ばれ、私たち王族の座っている玉座の間へと歩みを進めるのは、私が会いたいと望んでいた少女。
 凛と真っ直ぐに伸ばされた背中からはどこか、優雅さを感じられる。足の運び方も素晴らしい。
たった一言を紡いだだけの声も、透き通ったうつくしい音色のようだった。
 なるほど、公爵令嬢だから一番に呼ばれるのか。

 「お初にお目にかかります。クレディリア公爵が娘、アルカティーナ・フォン・クレディリアと申します。この度は、この場をもってデビュー出来ましたことを心から嬉しく思っております。」

 お手本のような、完璧なカーテシーを見せつけるように披露した彼女は、やはり凛とした声でそう告げた。

  「うむ。時にアルカティーナ嬢。」
 
 「…?はい。」

 その時、顔を上げた彼女と。
目があった。
動悸がした。
苦しい。
なんだこれ。
私はどうしてしまったんだ。
何故だろう。
彼女を見ていると、何だか泣きたくなる。

 腰の上まである、艶やかな金髪。
薄い桜色の瞳。
長い睫毛は震えている。
美しく弧を描くピンクの唇は、どこか魅惑的にも見えた。
その笑い方が、どこか

 これは、何だろうか。
一目惚れか。
……それともこれは、
いや、彼女はもしかして…………

 「浮島…??」

いや、まさかな。
世界は広い。

呟く声は、少女には届かない。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

いきなり新キャラ目線でごめんなさいです。
でも、新キャラです。
男のキャラです。
やっとです。意味深です。
「王子なんて定番ね。どーせこいつがヒーローで、ゆくゆくはアルカティーナとくっつくんでしょ?」と思ったそこのあなた!
 このキャラがヒーローでない可能性も捨ててはいけませんよ!!
ヒーローかヒーローじゃないかなんて言えませんけど!!
捨ててはいけませんよ!!
だってこれから男性キャラいっぱい出てくるからね!
誰がヒーローかなってやつですよ。
…すぐわかると思いますけどね。

 てな訳でデビュー編開始です。
つぎは、このお話の主人公目線になるかと。
では、ごきげんよう!
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