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幼少期編
あ、はい。そうですか。
しおりを挟む話を聞き終わったアルカティーナは、あることを考えていた。
つまるところ、月の聖霊は彼女だけなのだ。
ならば、『月の聖霊』なんていう形式じみた呼び名はやめて彼女だけの『名前』を作ったらどうだろうか、ということである。
しかし、いくらアルカティーナがそれを考えていようと、彼女自身がそんなものはいらないと言うのなら意味のない話だ。
…よし、聞いてみましょう!
「えーっと…月の聖霊さんは、新しい名前とか欲しくないですか?」
「なまえ?新しい名前??ほしい!」
ですよね!やっぱり形式じみたものより新しい名前に憧れますよね!
「そうですよね!なんて言う名前がいいですか?」
折角だから自分で名前を決めてはどうかというこの配慮はこのわずか1秒後に無駄になった。
ほかの聖霊たちがあちこちで意見を言い始めたのだ。
「ですふぇにっくすあんどえんじぇる!」
「とりゅふ!」
「もけもん」
「しっこくのだてんしー」
「……………。あ、はい。そうですか。月の聖霊さん自身は何がいいですか?」
「永遠なる七色の月がいいなー!!」
……………とりあえず、彼女らにネーミングセンスが無いことだけはわかりました。はい。
「あの、それはちょっと……長すぎるかなぁと思うのですよ。」
あとやばすぎるなぁと思うのですよ。
まあ言えませんけどね。
「うー、そっかぁ。だよね!じゃーあー、ティーナが、決めてよ!いい名前にしてね!」
「え?わたくしが?」
全く自慢にはなりませんが、わたくし前世ではよく「あいつの趣味とかセンスは時々意味がわからない。理解できない。」と言われていましたよ?
本当に自慢にもなりませんがね!
いや、でも聖霊さんがそう言うなら取って置きの名前を考えないと!!
「わかりました!いい名前考えますよ!えっとえっと、月だから~ムーンライト…いや、名前にはきついですね。宇宙…?そら、宇宙……あ。」
思いつきましたよ。
「宙」
宇宙は、広い広い未知の空間。空。
それで、宙と書いて「そら」。
うん、我ながら…
「いい名前!ありがとティーナ!」
「わー!」
「いいな!」
「すごーい!」
「いいおなまえー。」
「でしょ?いい名前です!」
アルカティーナと月の聖霊さん改め、宙は顔を見合わせて笑いあった。
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