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幼少期編

へ、へんたいだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

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 クレディリア邸の中でも図書館は、アルカティーナ達が暮らしている本邸からは少し離れた別邸にある。
 その別邸まで歩いている間に聞いたのだが、どうやらお母様はここ数年図書館を訪れていないのだそうです。だから、何故お父様があそこまで渋ったのかが理解できない、と。
 それにしてもあの捨て台詞は少々やり過ぎた気がします…。ごめんなさいお父様!大人気なかったですね、三歳ですけど。
 「はい、着いたわよティーナ。図書館へようこそ!」
そう言われて前を見ると重厚そうな木彫の大扉がドンと佇んでいた。それを押すと、そこにはたかが一貴族が有しているのはおかしい程の大量の書物が、本棚という本棚にずらりと並んでいた。しかもまた、その本棚の量も半端ではない。図書館の中央には大きな螺旋階段があり、そこから二階の蔵書ブースにも上がることができるそうだ。
 「それで、ティーナは何のご本が読みたいのかしら?絵本?紙芝居?それとも…」
 「いえ、お母様。そうではないのです。わたくし、聖霊さんについて知りたいなぁって思って、それで…」
 まさか三歳の娘が絵本ではなく大人向けの本を要請してくるとは思ってもいなかったマーガレットは瞠目した。前々からそうかもしれないとは思っていたけれど、アルカティーナこの子は天才なのかもしれない。
今マーガレットがアルカティーナにしているマナーや礼儀作法のレッスンは、到底三歳の子供がこなせるような内容ではないし、勉強を教えるにしても異常に飲み込みが早いのだ。
 そう考えるとアルカティーナはとても異端だ。聖霊に関して知りたい、なんて。そもそもマーガレットは算数や国語といった勉強は教えているが、聖霊に関しては一切アルカティーナに教えたことはない。ひょっとすると聖霊という単語をアルカティーナの前で使ったことがないかもしれない。それなのに何故知っているのか。…不思議な子ね、ティーナは。
 「…そう、聖霊の本ね?わかったわ、着いてらっしゃい?」
 「はい、お母様!」
 お母様は螺旋階段の方へと歩いていった。図書館の中は他に誰もいないからか、やけに静かでカツカツという足音が二人分響いた。
 「…あら?」
 「どうかしたのですかお母様?」
 急に立ち止まったマーガレットに疑問を抱いたアルカティーナはコトリと首を傾げた。
 「いえ…何だか、本の配置が以前と変わっているようなのよ。聖霊の本は二階にあるはずなのだけど…このぶんだと違うところに移っているかもしれないわ。」
 困ったように言いつつ、マーガレットは螺旋階段を上に上がった。それに続き、アルカティーナも階段を上がると階段から一番近い本棚に駆け寄り、どんな本があるのか見た。異世界の書物がどんなものなのか、興味があったから。
 しかし、そこに並んでいた書物の背表紙を見て、アルカティーナは文字通り固まった。

 『妹☆萌え特集!!』『可愛い妹の作り方とは』
 『君の妹はどのタイプ⁉︎妹を手懐ける方法とは』
 『真夏のキケンな恋のアバンチュール  ~お兄ちゃんと一緒♡~ 』
 
 「へ、へんたいだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
アルカティーナは思わず叫びましたとさ。
だれですか!こんな本を取り寄せたのは!!!

 結論から言うと、二階ブースには碌な本がなかった。
あの後お母様と、別の本棚ものぞいて見たが…『ドキドキ☆一つ屋根の下でのアバンチュール』『アバンチュールには妹を添えて…』『妹よ、あぁ妹や、かわうぃいね!』といったアブナイ本が並んでいたり、また別の本棚に行くと……『キノコの美味しい調理法』『キノコってこんなの!!キノコの事なら何でもお任せ!』『毒キノコから作る薬品』『季節のキノコ総まとめ!』『これで君もキノコ博士だ!』『猿でもわかる!キノコの特徴』…と、何の呪いだと思うほどに、やたらキノコの専門書がズラリと並んでいた。
 
 何でしょうか。アバンチュールとキノコが頭の中でグルグル回っているのですが。
あぁ、と言うかお父様、ごめんなさい。お父様の忠告をちゃんと聞いていればよかったです……。
後悔しました!本当に後悔しました!!
知らなくていい闇を見てしまった気がします…。
どうやらこの事はお母様も知らなかったらしく、「この図書館、どうなっているの…⁉︎」と嘆いていらっしゃいます。
 
 結局わたくしは、「これ以上ここにいたら私の可愛いティーナが腐るわ!穢れるわ!」との事でお母様に無理矢理、図書館から帰らされました。

 聖霊さんについて知りたかったのに…。
しょんぼり肩を落としているとお母様に励まされました。明日からお母様が聖霊さんについてのお勉強を教えてくれる事になりました!嬉しいです!

 図書館から出たお母様は、真っ直ぐにお父様の執務室へとUターンしました。知らない内に図書館がヤバイ方向へと発展していた事について問いただすみたいです。

 何となく気になったアルカティーナは、マーガレットの後を追いかけて執務室へと歩いていった。

 
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