82 / 164
女神探しの旅
これからもよろしく
しおりを挟む
「それにしても……これ、どうしましょうか?」
今アキラとアズリアの二人の目の前には、勇者一行のメンバー達が倒れていた。それもアキラと生まれかわった女神。それとたった今事情を知ったばかりのアズリア以外には誰も知らない世界の真実を知ってしまった状態で。
「ああ、それなら適当に夢でも見せておこうか。強力な魔物に襲われて命からがら倒して、被害があったから戻ってきたって事にしておけば、ここにいる理由としてはおかしくないだろ?」
「そうね……まぁ、大丈夫、かな?」
アキラの言葉について考え始めたアズリアは、少しの間口元に手を当てて考えたあと若干迷いながらもアキラの言葉を肯定して頷いた。
「大丈夫だ。多少の違和感は消しておくから」
「なんでもありね。最初から私たちに魔法をかけて洗脳しておけば、自分の事を話したり戦ったりだなんて面倒なことにならなくて済んだんじゃないの?」
確かに、アズリアの言うとおりアキラが最初から自身に対して違和感をもたない様に洗脳をしておけば、今回の様に面倒ごとが起こることはなかった。
だがアキラはそんなアズリアの言葉に苦笑いをしつつ答える。
「まあそうなんだけどな。必要があれば使うけど、普段はできる限り使わないようにしてるんだよ。そういう誰かの心を読んだり操ったりってのは。人の心なんて、見ててもいいもんじゃないしな」
「そうね……。人は、身勝手だもの」
実感のこもったアキラの言葉に、同じ様に実感のこもった言葉で返すアズリア。
アキラは生まれ変わる前と生まれ変わってからの両方で、人間の心の暗い部分を見てきた。そしてアズリアはたった今アキラによって仲間だと思ってきていた人たちの真実を見せつけられた。
それ故に、両者ともに人の身勝手さを嫌と言うほど理解していた。
「……それが分かってるのに、勇者を続けるのか? 今ならまだ帰ることができるぞ?」
「ありがとう。でも、私はそんな『人』が好きなのよ。悪いところは嫌いだけど、それ以上にいいところもあるって知ってるから」
確かに『人』には悪と呼べる部分がある。だが同時に善と呼ぶことのできる場所もあるのだと言い、人を助けたいと願うその姿は、まさに『勇者』にふさわしいものだった。
「……そんないいもんじゃないと思うけどね、俺は。まあその辺の考え方は個人次第だから、とやかく言ったところで意味なんてないだろうけど」
いまだに人を信じ、助けたいとは思えないアキラとしては、自身の弱さを見せつけられている様で歯噛みする。
だがそんな姿をアズリアに見せまいと、心を隠して普段通りの振る舞いを続ける。それはアキラからアズリアに対する気遣いというよりも、ただ単にアキラの意地だった。
「……ねえ。あなたはこれからどうするの? よかったら私と一緒に来てくれない?」
「さっきまでとは逆だな」
「ふふっ。そうね。……で、どうかしら?」
先程はアズリアに対して勇者をやめて一緒に来ないかと誘ったアキラだが、今回はアズリアがアキラに誘いをかけている。
その立場の逆転がおかしくて、アズリアは笑いをこぼしながらもう一度尋ねた。
「悪いけど、俺はやることがあるんでね」
だが、アキラは首を振りながらアズリアの誘いを断った。
本来勇者に誘われて勇者パーティとして行動をするのは誰にとっても栄誉なことであり、アキラとしてもなんの目的もなければそれもまた面白いかもしれないと思うほどにアズリアのことを気に入っていたが、いかんせんアキラには女神の生まれ変わりを探すと言う目的があった。
「そう。……あーあ、ふられちゃった。一応人生で初めての告白だったんだけどなぁ~」
「待った。今のをカウントするのか?」
アズリアが冗談めかして言ったその言葉に対して、アキラは嫌そうに顔をしかめながら口を出す。
「するわよ? するに決まってるじゃない。一緒にいてほしいだなんて、告白以外のなにになるの?」
「いや、今のはちょっと違うだろ」
「えー? そうかなぁ~?」
「そうだよ。全然違う。それに俺は好きな人がいるんだ」
「そうなの? あっ、それがもしかして探してる人? ねえねえ、どんな人なの?」
さっきまでのアズリアとは……もっと言うのならアキラが出会ってから今に至るまでの彼女とは全くと言っていいほどに違う様子を見せるアズリア。
そんな彼女の様子にアキラは戸惑いを隠せないでいる。
「お前、さっきまでとは全然違うな」
「だって私も年頃の女の子よ? こういう話に興味があってもおかしくないでしょ? で、どんな人なの?」
今まで本音を言えず、心を押し殺していた反動だろうか。アズリアは心の底から信じ、心を許すことのできるものに出会い、心の動きを抑えることができきずにいた。それでも強引に迫ったりしないのはギリギリのところで最後の押さえが効いているからだろう。
「あー、そうだなぁ……女神の様な人だよ」
「そう。ごちそうさま」
女神の様な、というか実際に女神なのだが、アズリアはそれを惚気だと思った様で手をひらひらとさせながらアキラに背中を向けた。
そして二人の間には沈黙が訪れしばらくはそのままでいた二人だったが、アキラがため息を吐いて行動し始めた瞬間、アズリアが口を開いた。
「…… 会いに行っても、いいのよね?」
「……まあ、予定が合えばだが、その時は話し相手くらいにはなってやるよ」
「そう。なら、その時はよろしくね」
そうしてアキラは自身に背を向けるアズリアに対して自身も背を向け、そして歩き出した。
これが根性の別れというわけではない。このままで行けばアズリアたち勇者一行は今日もこの村に泊まることになるだろう。だがそれでも別れは別れだ。次にアキラとアズリアが出会ったとしても、今の様に気安く話すことはないだろう。
だがそれでも、離れていく二人の口元には笑みが浮かんでいた。
「面倒をかけたな、アズリア」
「うあぁぁ~。まだ少しだるい気がするぅ」
アキラがさって行った後、アズリアは寝ていた勇者一行の仲間たちの様子を見ていたのだが、アキラによって手配された宿の者が寝ている一行たちを宿へと運んだ。
そうして半日ほど経た後全員が一斉に目を覚まし始め、アズリアはアキラと話した偽の話を説明し、ちょうど今、その説明を終えたところだった。
「……私もだ。痛みはないが、全身の疲労が残っているな」
「すみません。できる限り治したのですけれど……」
「いやいや、あれを倒して生き残れたのだ。怪我もソフィアの治癒術で治っておるし、疲労程度で済んでいるのであれば幸いであろうよ」
疲労感を感じていると言ったが、それはアキラとの戦闘によって感じたものである。そしてそれに加えて、戦闘があって命からがら逃げ出したのに疲労感がないんじゃおかしいだろ、とアキラが疲労を感じる様に魔法をかけたのだった。なんとも芸の細かい男である。
「ま、そうだね。……それにしても、この調子じゃすぐに出るのは無理かなぁ」
「もう一日この村に泊まるべきであろうな」
「……それが妥当なことろか」
「それにしても、よくドラゴンなんて倒せましたね。それも魔境という場所で強化された特殊個体を」
「だね。いやー、さすがに死ぬかと思ったよ」
ドラゴンは年齢にもよるが単体でも国を滅ぼすことのできる存在であり、いわば意思を持つ災害であった。
その強さは、国を落とすことができるほど強いだけあって、半端な者では障害にすらならない。それほどの存在である故に、いかに勇者であったとしても絶対に倒せるというわけでもないのだ。
それほどの存在を、未だ魔王への道半ばである自分たちが倒せたことで、疲れてはいるものの全員が喜びを感じていた。……まあ、それもアキラが植え付けた偽の記憶なのだが。
アキラのかけた暗示に見事かかっているのを確認して、アズリアは上手くいっている様だとほっとすると同時に、すごいなと感心していた。
だがこうして事情を知り、魔法にかかったものをそばで見ていると、アキラがどうして魔法を使わなかったのか、その理由を理解できた。
確かにアズリアはアキラから魔法を使わないことの理由を聞いていたが、それは言葉の上での理解でしかなかった。こうしてはっきりと自身の目で見ることで、ようやく本当の意味で理解できたのだ。
(世界中の誰もが自分の思い通りに動く世界。そんなのは……)
断られてしまったのだからもうあまりアキラのことは考えまいとしていたアズリアだが、ついそんなことを考えてしまう。
「一応確認ですが、みなさん怪我はありませんか?」
「今のところおかしな感じはしない、かな」
「私もだ」
「ワシは元々後衛だったのでな。それほど怪我もなかったから問題はない」
だがそうして思い出してしまえば、一度は区切りをつけたと思っていたはずなのに、アキラへの思いがどんどん溢れ出す。アズリアの頭の中は年頃の少女の様にまさにピンク一色、お花畑、恋する乙女状態だった。
勇者一行の仲間たちはお互いの様子を確認しあっているが、アズリアはそんなことは聞いていなかった。
「アズリアさん?」
「……」
ソフィアの呼びかけに答えないアズリアの様子に勇者一行たちは顔を見合わせて眉を寄せている。
「アズリア?」
「どうしたアズリア。何か問題でもあったか?」
「っ! え、えっと、ごめんなさい。なにかしら?」
仲間たちに声をかけられてようやく意識を目の前へと戻したアズリアは、いったん頭を振ってアキラのことを頭の隅に追いやると、話し合いへと参加した。
「どこか怪我があったりしませんか?」
「大丈夫よ。ただ、やっぱりすごく疲れてるわね」
「そうですか。……いえ、そうですよね」
「皆疲れているようであるし、やはり今日は休養に当てるしかないだろうな」
「そうだね。……じゃ、これで話は終わりよね? あー、ベッドベッド。頭の中をかき回したみたいに気持ち悪いし、さっさと寝よーっと」
頭の中をかき回したという言葉で、アキラがかけた魔法に気がついたのかとど切りとしたアズリアだが、そうでもなかった様でふうと息を吐いた。
そして、アズリアはベッドに倒れ込んだセリスや他の仲間を見回してから目を瞑り、深呼吸をしたのちに目を開いて仲間たちに向けて口を開いた。
「ねえみんな。──これからもよろしく」
今アキラとアズリアの二人の目の前には、勇者一行のメンバー達が倒れていた。それもアキラと生まれかわった女神。それとたった今事情を知ったばかりのアズリア以外には誰も知らない世界の真実を知ってしまった状態で。
「ああ、それなら適当に夢でも見せておこうか。強力な魔物に襲われて命からがら倒して、被害があったから戻ってきたって事にしておけば、ここにいる理由としてはおかしくないだろ?」
「そうね……まぁ、大丈夫、かな?」
アキラの言葉について考え始めたアズリアは、少しの間口元に手を当てて考えたあと若干迷いながらもアキラの言葉を肯定して頷いた。
「大丈夫だ。多少の違和感は消しておくから」
「なんでもありね。最初から私たちに魔法をかけて洗脳しておけば、自分の事を話したり戦ったりだなんて面倒なことにならなくて済んだんじゃないの?」
確かに、アズリアの言うとおりアキラが最初から自身に対して違和感をもたない様に洗脳をしておけば、今回の様に面倒ごとが起こることはなかった。
だがアキラはそんなアズリアの言葉に苦笑いをしつつ答える。
「まあそうなんだけどな。必要があれば使うけど、普段はできる限り使わないようにしてるんだよ。そういう誰かの心を読んだり操ったりってのは。人の心なんて、見ててもいいもんじゃないしな」
「そうね……。人は、身勝手だもの」
実感のこもったアキラの言葉に、同じ様に実感のこもった言葉で返すアズリア。
アキラは生まれ変わる前と生まれ変わってからの両方で、人間の心の暗い部分を見てきた。そしてアズリアはたった今アキラによって仲間だと思ってきていた人たちの真実を見せつけられた。
それ故に、両者ともに人の身勝手さを嫌と言うほど理解していた。
「……それが分かってるのに、勇者を続けるのか? 今ならまだ帰ることができるぞ?」
「ありがとう。でも、私はそんな『人』が好きなのよ。悪いところは嫌いだけど、それ以上にいいところもあるって知ってるから」
確かに『人』には悪と呼べる部分がある。だが同時に善と呼ぶことのできる場所もあるのだと言い、人を助けたいと願うその姿は、まさに『勇者』にふさわしいものだった。
「……そんないいもんじゃないと思うけどね、俺は。まあその辺の考え方は個人次第だから、とやかく言ったところで意味なんてないだろうけど」
いまだに人を信じ、助けたいとは思えないアキラとしては、自身の弱さを見せつけられている様で歯噛みする。
だがそんな姿をアズリアに見せまいと、心を隠して普段通りの振る舞いを続ける。それはアキラからアズリアに対する気遣いというよりも、ただ単にアキラの意地だった。
「……ねえ。あなたはこれからどうするの? よかったら私と一緒に来てくれない?」
「さっきまでとは逆だな」
「ふふっ。そうね。……で、どうかしら?」
先程はアズリアに対して勇者をやめて一緒に来ないかと誘ったアキラだが、今回はアズリアがアキラに誘いをかけている。
その立場の逆転がおかしくて、アズリアは笑いをこぼしながらもう一度尋ねた。
「悪いけど、俺はやることがあるんでね」
だが、アキラは首を振りながらアズリアの誘いを断った。
本来勇者に誘われて勇者パーティとして行動をするのは誰にとっても栄誉なことであり、アキラとしてもなんの目的もなければそれもまた面白いかもしれないと思うほどにアズリアのことを気に入っていたが、いかんせんアキラには女神の生まれ変わりを探すと言う目的があった。
「そう。……あーあ、ふられちゃった。一応人生で初めての告白だったんだけどなぁ~」
「待った。今のをカウントするのか?」
アズリアが冗談めかして言ったその言葉に対して、アキラは嫌そうに顔をしかめながら口を出す。
「するわよ? するに決まってるじゃない。一緒にいてほしいだなんて、告白以外のなにになるの?」
「いや、今のはちょっと違うだろ」
「えー? そうかなぁ~?」
「そうだよ。全然違う。それに俺は好きな人がいるんだ」
「そうなの? あっ、それがもしかして探してる人? ねえねえ、どんな人なの?」
さっきまでのアズリアとは……もっと言うのならアキラが出会ってから今に至るまでの彼女とは全くと言っていいほどに違う様子を見せるアズリア。
そんな彼女の様子にアキラは戸惑いを隠せないでいる。
「お前、さっきまでとは全然違うな」
「だって私も年頃の女の子よ? こういう話に興味があってもおかしくないでしょ? で、どんな人なの?」
今まで本音を言えず、心を押し殺していた反動だろうか。アズリアは心の底から信じ、心を許すことのできるものに出会い、心の動きを抑えることができきずにいた。それでも強引に迫ったりしないのはギリギリのところで最後の押さえが効いているからだろう。
「あー、そうだなぁ……女神の様な人だよ」
「そう。ごちそうさま」
女神の様な、というか実際に女神なのだが、アズリアはそれを惚気だと思った様で手をひらひらとさせながらアキラに背中を向けた。
そして二人の間には沈黙が訪れしばらくはそのままでいた二人だったが、アキラがため息を吐いて行動し始めた瞬間、アズリアが口を開いた。
「…… 会いに行っても、いいのよね?」
「……まあ、予定が合えばだが、その時は話し相手くらいにはなってやるよ」
「そう。なら、その時はよろしくね」
そうしてアキラは自身に背を向けるアズリアに対して自身も背を向け、そして歩き出した。
これが根性の別れというわけではない。このままで行けばアズリアたち勇者一行は今日もこの村に泊まることになるだろう。だがそれでも別れは別れだ。次にアキラとアズリアが出会ったとしても、今の様に気安く話すことはないだろう。
だがそれでも、離れていく二人の口元には笑みが浮かんでいた。
「面倒をかけたな、アズリア」
「うあぁぁ~。まだ少しだるい気がするぅ」
アキラがさって行った後、アズリアは寝ていた勇者一行の仲間たちの様子を見ていたのだが、アキラによって手配された宿の者が寝ている一行たちを宿へと運んだ。
そうして半日ほど経た後全員が一斉に目を覚まし始め、アズリアはアキラと話した偽の話を説明し、ちょうど今、その説明を終えたところだった。
「……私もだ。痛みはないが、全身の疲労が残っているな」
「すみません。できる限り治したのですけれど……」
「いやいや、あれを倒して生き残れたのだ。怪我もソフィアの治癒術で治っておるし、疲労程度で済んでいるのであれば幸いであろうよ」
疲労感を感じていると言ったが、それはアキラとの戦闘によって感じたものである。そしてそれに加えて、戦闘があって命からがら逃げ出したのに疲労感がないんじゃおかしいだろ、とアキラが疲労を感じる様に魔法をかけたのだった。なんとも芸の細かい男である。
「ま、そうだね。……それにしても、この調子じゃすぐに出るのは無理かなぁ」
「もう一日この村に泊まるべきであろうな」
「……それが妥当なことろか」
「それにしても、よくドラゴンなんて倒せましたね。それも魔境という場所で強化された特殊個体を」
「だね。いやー、さすがに死ぬかと思ったよ」
ドラゴンは年齢にもよるが単体でも国を滅ぼすことのできる存在であり、いわば意思を持つ災害であった。
その強さは、国を落とすことができるほど強いだけあって、半端な者では障害にすらならない。それほどの存在である故に、いかに勇者であったとしても絶対に倒せるというわけでもないのだ。
それほどの存在を、未だ魔王への道半ばである自分たちが倒せたことで、疲れてはいるものの全員が喜びを感じていた。……まあ、それもアキラが植え付けた偽の記憶なのだが。
アキラのかけた暗示に見事かかっているのを確認して、アズリアは上手くいっている様だとほっとすると同時に、すごいなと感心していた。
だがこうして事情を知り、魔法にかかったものをそばで見ていると、アキラがどうして魔法を使わなかったのか、その理由を理解できた。
確かにアズリアはアキラから魔法を使わないことの理由を聞いていたが、それは言葉の上での理解でしかなかった。こうしてはっきりと自身の目で見ることで、ようやく本当の意味で理解できたのだ。
(世界中の誰もが自分の思い通りに動く世界。そんなのは……)
断られてしまったのだからもうあまりアキラのことは考えまいとしていたアズリアだが、ついそんなことを考えてしまう。
「一応確認ですが、みなさん怪我はありませんか?」
「今のところおかしな感じはしない、かな」
「私もだ」
「ワシは元々後衛だったのでな。それほど怪我もなかったから問題はない」
だがそうして思い出してしまえば、一度は区切りをつけたと思っていたはずなのに、アキラへの思いがどんどん溢れ出す。アズリアの頭の中は年頃の少女の様にまさにピンク一色、お花畑、恋する乙女状態だった。
勇者一行の仲間たちはお互いの様子を確認しあっているが、アズリアはそんなことは聞いていなかった。
「アズリアさん?」
「……」
ソフィアの呼びかけに答えないアズリアの様子に勇者一行たちは顔を見合わせて眉を寄せている。
「アズリア?」
「どうしたアズリア。何か問題でもあったか?」
「っ! え、えっと、ごめんなさい。なにかしら?」
仲間たちに声をかけられてようやく意識を目の前へと戻したアズリアは、いったん頭を振ってアキラのことを頭の隅に追いやると、話し合いへと参加した。
「どこか怪我があったりしませんか?」
「大丈夫よ。ただ、やっぱりすごく疲れてるわね」
「そうですか。……いえ、そうですよね」
「皆疲れているようであるし、やはり今日は休養に当てるしかないだろうな」
「そうだね。……じゃ、これで話は終わりよね? あー、ベッドベッド。頭の中をかき回したみたいに気持ち悪いし、さっさと寝よーっと」
頭の中をかき回したという言葉で、アキラがかけた魔法に気がついたのかとど切りとしたアズリアだが、そうでもなかった様でふうと息を吐いた。
そして、アズリアはベッドに倒れ込んだセリスや他の仲間を見回してから目を瞑り、深呼吸をしたのちに目を開いて仲間たちに向けて口を開いた。
「ねえみんな。──これからもよろしく」
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる