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王国潜入
518:魔王
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「チッ! やっぱり強くなってるよなあ!」
海斗くんと数合打ちあったけど、やっぱりと言うべきか、その性能は以前よりも上がっているし俺なんかよりも数段上だ。
今だって海斗くんからの攻撃に耐えることができず、ガードしたにも関わらずみっともなく後ろへと弾かれてしまった。
追撃のために空から無数の剣が降り注ぐが、それはすべて俺に触れた瞬間に収納されるので、無効化できる。
なのでスキル的には相性はいいのだが、いかんせん素の性能に差がありすぎる。
だがそれでも……。
「あっちは終わったのか?」
ふと海斗くんと距離が離れたことで周りに意識が向くようになり、イリンたちの方からさっきまで聞こえていたはずの戦闘の音が聞こえなくなっていることに気がついた。
桜ちゃんが残ってるみたいだけど、動きはないみたいだしもう終わったのか?
まだヒースは倒していないみたいだけど、壁に寄りかかっている状態を見るに、もうすぐ終わると思っていいだろう。
俺は二人に、こっちは任せろって格好つけたんだ。だから……
「さっさと終わらせないとな!」
叫ぶと同時に走り出して海斗くんへと近づいていく。
それは俺にとっての全力の走りだったけど、彼にとっては十分に対応できる程度の速さでしかなく、当然ながら俺の動きに対処するべく剣を構えた。
このままいけば俺は切られるだろう。もし防げたとしても、さっきみたいに吹き飛ばされてしまって終わりだ。
だが、それがわかっているのにただ突っ込むだけなんてことをするはずがない。
海斗くんの振るう剣の範囲に入る直前。収納から先ほどしまったばかりの光の剣を取り出して、本来の使用者である海斗くん本人へと射出する。
俺に向けて剣を振ろうとしていた海斗くんは一瞬動きを止めると同じようにスキルで光の剣を出し、俺の取り出したものへとぶつけて打ち落としたが、俺の攻撃はまだ終わらない。
撃ち落とされたところでまだ剣のストックは十分に残っている。
俺の射出した剣を打ち落としたことで再び俺を攻撃しようとした海斗くんだが、俺はまたも収納から剣を取り出して射出した。
律儀にもそれに対処するべく先ほどと同じようにスキルを使って迎撃したが、もう十分だ。
すでにお互いの剣が届く距離。だが俺は剣を振りおろしていて、海斗くんはまだ対処のために動くことができていない。
──勝った。
そう思って振り下ろした剣だが、その件は途中で硬質な何かに阻まれ、止められた。
環と戦った時もそうだったし一応予想はしていたが……結界か。
海斗くんは結界の魔術具を持っている。もしくはこの場にいる桜ちゃんから直接支援を受けている。
どっちにしても、弾かれたと言う事実は変わらないが、厄介だということも変わらない。
「それでも!」
剣が弾かれたことで隙だらけになった俺の体に、海斗くんが切り込んでくる。
ギリギリで体制を立て直すことはできたが、それでもそれは死なないと言うだけであって、そのまま受ければバッサリと斬られて重傷を負うだろう。
本当なら剣を収納できればいいんだけど、光り輝く海斗くんの剣は以前戦ったことのある獣人国の王女様みたいに特殊な付与でもされているのか、収納することができなかった。
だがそんな攻撃も、死ななければ安いとばかりに俺は不格好な体勢で海斗くんへと突っ込んで行った。
「ぎいいっ……ああああ!」
振り下ろされた剣で腹を切り裂かれるが、それでも止まることなく前に進んでいく。
そして結界に触れると即座に収納し、明らかに弱点であろう首筋の裏にある肉塊のすぐそばに収納魔術の渦を展開させる。
あと少し……。
突然自身の背後に発生した魔術に対応するためか、海斗くんは即座に背後にあった渦へと振り向いたが……それを待ってた!
どうやら海斗くんは渦が発生するとわかるようで、隙をつこうとしてもすぐに対応されていた。
けど、今回はそれがあだとなった。
背後にある渦へと振り向いたってことは、当然ながら正面にいたはずの俺に背中を見せると言うことだ。
腹を斬られた痛みが体を襲う中、それでも俺は俺にできる最速の動きで体を動かし、海斗くんの首の裏にあった肉塊を斬り裂く。
「あ──」
確証があったわけではないが、どうやら俺の行動は正解だったようで肉塊を斬られた海斗くんは声を漏らすと動きを止め、そのまま床へと倒れ込んで行った。
「ぐぎっ!」
その肉塊を切ることだけを目的として動いていた俺は、切った後のことなど考えておらず、俺もまた倒れ込んでしまった。
その衝撃で腹の傷に痛みが走るが、大丈夫だった。そんなに深くないし、薬も使った。この程度では死なない。
倒れたまま海斗くんの様子を見ると、首の裏にあった肉塊は蠢き、斬られた状態から再生しようとしていたので、痛む体に鞭を打って起き上がると少々不安はあったもののそれを掴んで強引に根元から切り取った。
そこまですると流石に治せないのか、肉塊はそれ以上動くことはなかった。
イリン達の方はどうなったんだと視線を向けると、そこにはちょうどあちらも結着がついたのかヒースの胸に剣を突き立てているイリンの姿があった。
「彰人様!」
「彰人!」
「あー、お疲れ様二人とも。こんなんだけど、勝ったよ」
「それよりも怪我は……」
「大丈夫だ。処置はしたし、そんなに深くはない」
床に倒れながら腹部を真っ赤に染めていると言う俺の状態を見て駆け寄ってきた二人に声をかけると、俺は薬の効果で治り始めたがまだまだ痛む傷を無視して立ち上がると、玉座に座ったまま目を閉じている王女へと声をかけた。
「どうした王女様。これで終わりか」
俺の声を聞いて閉じていた目を開いた王女は、だが視線を俺に向けることなく虚空を見つめている。
「ええ。そうですね。これで終わりです」
「随分と簡単に言うもんだな」
「どうせこれ以上は何にもできませんから」
そう言いながら俺たちへと視線を向けてきた王女はどこかくたびれたような虚な表情をしていた。
……本当にこれ以上何かをするつもりはないのか?
こいつは魔族をどうにかして手に入れたはずだ。だったら、ここでその力を使うべきなんじゃないだろうか?
それとも誰かに使わせるのはいいけど、自分たちが使うのは嫌だとかそんな理由か?
「最後に聞きたい。お前は、魔族たちをどこから手に入れた?」
使う使わないは別にしても、どうやって手に入れたのかは知っておきたい。
素直に答えるか? と疑問ではあったが、そんな俺の問いかけにも王女は特に抵抗することなく答え始めた。
「……ああ、あれですか。あれは──」
「それ以上先は僕が話すとしようか」
が、その言葉はどこからともなく聞こえた声によって途中で遮られてしまった。
「……魔王。あなたもきたのですね」
「そうだけどぉ……ちょっと~、ネタバラシしないでよ。もっと引っ張ってから驚かせたかったのにぃ」
そんな場の雰囲気にあっていない気楽な声が聞こえてきた方向──頭上へと視線を向けると、そこには魔王というにはあまりにも平凡な姿をした黒髪黒目の人物がいた。
髪と目の色を除けばその辺にいそうなほどに平凡な顔つきをしているが、あの見た目は……あれが魔王?
「なんのようでしょう? まさか助けにきたとでもいうつもりですか?」
「いや? そんなことを言ったところで、君は頷かないでしょ?」
頭上から王女のそばに降り立った魔王は、王女の言葉に答えながら王女へと笑いかけている。
「まあね、あれだよ。せっかくだし、最後に色々と教えてあげようかなって思ってさ」
「教える? ……ふっ、まさか今のこの国の状況でも教えにきたのですか? それともこの国を取り巻く周辺の国の状況ですか?」
「いやいや、そんなどうでもいいことじゃないよ。もっと重要で、もっと面白いことさ。……聞きたい?」
勿体ぶった様子で話す魔王だが、その笑みにはどこか不気味なものが混ざっているように思えた。
自分が向けられているわけでもないのに、その言葉に、その笑みに込められた不気味さは、まるで無数の虫が体を這い上がるような気持ち悪さすら感じられる。
「話す気があるのなら、さっさと話しなさい。今更何を言われたところで、私にはどうでもいいことですが」
「そうでもないと思うよ? だって、君のお姉さんのことについてなんだから」
「っ! ……お姉さまについて? 今更何を話すことがあると……」
魔王が話した瞬間、王女の体が大きく跳ね、一瞬の後にはそれまでのくたびれ、諦め切った様子ではなくしっかりと感情のこもった表情でそばにいた魔王を睨みつけた。
「そうだなぁ。──実はあれは僕が仕組んだことだったんだ……って言ったらどう?」
あれ? あれとはいったい……。話の流れからしてこの王女の姉が死んだことに関わりがあるようだが……そういえば、戦いが始まる前に姉がどうしたとか言ってたか?
なんて言ってたんだったか……確か……。
「っ! ……そうですか。やはりお前が」
「あんまり驚かないね。予想してた?」
「ええ。魔王が裏で手を引き亜人を唆していたという考えはありました」
「唆されて、ねぇ……洗脳されてた可能性は? 僕に操られて仕方なく襲った可能性だってあったんじゃないの?」
「あの場には魔力の反応はありませんでした。襲った者たちを探し出して調べましたが、洗脳の痕跡は残っていな──」
「僕は魔王だぜ? その程度できないと思ってるの?」
「……」
「ま、やってないけどね。僕は君のお姉さんを襲わせる時に、洗脳なんて使ってないよ。彼らが進んで君のお姉さんを犯しただけだ」
不気味にイヤらしく笑う魔王のその言葉で、王女がなんと言っていたのか思い出した。
そうだ。確か辱められたと、そう言っていた。
なら、この魔王の言葉は真実なのか?
「でもさ、唆されたって言っても、だからって種族ごと消してしまえー、だなんて考える普通。あくまでも唆された個人の問題じゃないかな?」
「唆されるほど愚かな種族など、存在する価値はないでしょう?」
「ふ~ん、そっかそっか。まあその考えに意見するつもりはないよ。考え方なんて個人御自由だしね?」
そう言いながら相変わらず笑みを崩さない魔王は楽しげに勿体つけたように話している。
その様子に苛立ったのか、王女は顔をしかめて問いかける。
「何が言いたい──」
「でもさ、実はあの場にいたのは亜人だけじゃないって言ったらどう?」
だが、それは魔王の言葉によって遮られてしまった。
「……亜人だけじゃない? ……。…………う、嘘です! そんなはずはありません! 私は何度も調べました! 何度も何度も!」
「みたいだね。でもさ、もう一度言うけど、僕、これでも魔王だぜ?」
そしてそんな魔王の言葉を聞いた途端に王女は目に見えて狼狽え始めた。
なんだ? そんなに亜人だけじゃないってことが重要なのか?
……いや、そうか。姉が乱暴されたことで亜人という種族の排除なんて過激な意見を持つようになったとして、もしそれが亜人だけの犯行ではなく、人間も混じっていたのだとしたら? 守るべき存在だと思ってきた相手が本当は敵なのだとしたら?
「断言するよ。あの場には亜人だけじゃなくて人間もいた」
「う、そ……」
「じゃ、ないんだな~これが。ついでに言うなら、あの場には君のお姉さんを守るはずだった、そしてその後はこの城を守るための警備についていた騎士も何人かいたよ。ついでに言うなら、彼らは今も生きてこの城にいる」
その言葉でついに反論の声がでなくなった王女は弱々しく首を振るだけとなった。
だがそれでも魔王は言葉を止めない。
「驚いた? まあそうだよね。お姉さんが亜人に犯されて嬲られてボロ布みたいに捨てられたと思ってたのに、実際には亜人は一部しか関わってなくて、むしろ実行犯の半分以上は君が必死になって守ろうとしていた人間の方だったんだから。大変だったよね? 苦しかったよね? 辛かったよね? でもそれでもお姉さんの復讐のために人間以外の全てを殺して人間を守ろうとした君は立派だったよ」
王女へと優しげに微笑みかける魔王。それはまるで親が子を慰めるような柔らかなもの。
「──ま、そのすべては無駄だったわけだけど」
だが、次の瞬間にはその笑みは口元が裂けんばかりに弧を描き、邪悪に歪められた。
「そもそもさ、最初っから間違えてたとは言え、不思議に思わなかった? どうして君はお姉さんにひどいことした相手やその関係者じゃなくて、相手の種族そのものに復讐しようとしたのかって。君だってお姉さんが死ぬまでは亜人に悪感情なんて持っていなかったじゃないか。それなのに亜人を殺すと言う理由だけで守ろうとした自国民全てを洗脳して平和を作りましょう、なんてそこまで大それたことをするかい? しないよ普通は。他にも色々とおかしなことはあるでしょ? よく考えてみなよ」
止まることなく続けられる魔王の話を聞いていた王女は子供が泣く一歩手前のような表情をしている。
「あっと、これ以上は話が長くなりすぎるね。つまり何が言いたいかって言うと……」
魔王はそこで一旦言葉を止めると、コホンと咳払いをしてから口を開いた。
「楽しい玩具になってくれてありがとう。君は……君たち姉妹は、とっても都合がよかったです、っと」
それは心の底から楽しげに、混じり気なしの笑みを浮かべた。
それだけ見ればいい笑顔だなと言うこともできただろう。
だがその理由があまりにもふざけている。
「そ、れ……は……」
「うん? ああ、認めたくないのかな。自分が洗脳されてた、なんてさ」
「洗脳は……していないと……」
「ああ、言ったね。お姉さんを犯した亜人に対しては洗脳なんてしてないよ。無駄な努力、お疲れちゃん」
つまりはそれ以外には洗脳をしていたということ。
姉を襲った者の種族を恨むのも、恨んだ後の行動も、今に至るまでの考えも、王女がやってきたすべてはこの魔王が洗脳した結果で、そもそも姉が襲われたことさえもが魔王の遊びでしかなかった
つまりは最初から遊ばれていたと言うことで、遊びでいろいろな人の人生が壊されていたと言うことでもある。
「これでも何千年も生きてるんだ。不老不死。言葉にすれば簡単で、誰も彼もが飲むようなものかもしれないけど、実際に生きてみるとまあ退屈でね。時々こうして動いてちょこちょこ遊んでたんだよ。……ああそうだ。ちなみに、君たち勇者もその一環だよ。魔族の領地で偶然異世界から召喚するのに応用出来そうな都合の良い方法を見つけたなんて、あるわけないじゃん」
「……つまり、諸悪の根源ってことでいいのか?」
まだ腹は痛むが、それでも戦うことができる程度には治っている。
それを確認した俺は、いつ戦いになってもいいように警戒をしながら楽しげに話している魔王へと問いかけた。
「いいよ。まさしくその通りだ。悪をなす魔王を、勇者が倒しにくる。いいエンターテイメントだろ? やられるつもりはないけど」
魔王はそれまで王女へと向けていた顔をぐりんと動かして俺のことを見ると、やはり楽しげに頷いてそう言ってのける。
やられるつもりはない、か。
確かに今までの全てはこいつの掌の上で、過去の勇者たちも封印しかできなかったみたいだが……この様子じゃあ封印なんてのも嘘……というか騙されてたんだろうな。
そして封印されたフリをして裏で人で遊んでいたと。そういう訳か。
「……だが、俺たちがいかなかったらどうする。実際、俺たちは魔王に挑むことはなかったし、この王女だって挑んでなかった」
「それね。その場合は適当に理由を作ってあげたよ。その二人のどっちかを拐うとか、来るまで世界中を攻撃し続けるとか。……とは言え、ここまでぐっちゃぐちゃになったんだから、今更城まで来いなんて言わないよ。それよりももっと面白い状況を作った方がいいかもね。せっかくだし、まっさらな状態に変えよっか」
「まっさらな状態?」
「そうそう。具体的には、この国を魔族の群れに襲わせる。その後は適当に大陸中の国へとばら撒いておしまいかな。何割かは生き残れると思うけど、多分ほとんどが死ぬと思うよ」
魔族の群れだと? 魔族なんてのは上位の冒険者であってもまともに戦えば危険なやつだ。そんなものが群れで襲いかかって来たら……それは、本当に大陸が滅びかねないぞ。
「さあどうする勇者。魔族の侵攻を止めないと、君の友人も知人も大切な人も幸せな未来も、全部全部消えてなくなるよ」
魔王は玉座の周りを適当に歩き回りながらそう言うと、最後に俺に向かって笑いかけて来た。
「答えはいらない。今日からちょうど一ヶ月後に魔族はこの国の北、魔物の領域とされている場所から攻め込む。それを止めてみなよ。そしてその奥にいる僕を殺してみな。そうすれば、この国も世界も、全部守れるよ」
まずい。魔族の群れなんて、一ヶ月でどうにかなるわけがない。
どうする? こいつを今ここで倒すか? そうすれば少なくとも魔族の群れなんてものは出てこなくなる。
……だが、倒せるか?
今の俺は手負い。見たところイリンと環はそれほど問題があるわけではなさそうだけど、それでも過去の勇者が毎回失敗しているほどのやつだ。実質二人では倒し切れないんじゃないだろうか?
「じゃあ最後に王女様……って、おーい」
そんなことを考えていると魔王は王女へと声をかけるが……。
「あ、うそ……うそよ……」
「あー、壊れちゃってるか。最後に贈り物をあげようと思ったんだけど……まあいっか、壊れてても。どうせ僕が持ってても意味のないものだし」
自分の全てが操られていたものだと理解した王女は、ただ虚空を見つめて声を漏らしているだけになっていた。
だがそれでも魔王はそんな王女に向けて話しかけると、どこからともなく何か大きなものを取り出した。
取り出されたそれは薄汚れているが全体的に肌色をしており、一部がまるで王女の髪の色と同じである金茶色をした糸を束ねたような……いや、はっきり言おう。あれは人だ。
その大半が肌色なのは服を纏っていないからで、その髪の色が王女によく似ているのはその血縁者だから。
そして状況から察するに、あれは王女の姉だ。
「じゃあ、はいこれ──お姉さんの本物の体。あの時のまま変わることなく保存しておいてあげたよ」
そんな俺の考えを認めるかのように魔王はそう言ったが……
「あ、ああ……ぃあ……いや…………ああああああ! ああああぁぁぁああ!?」
自分の体の上に覆いかぶさるような形で取り出された姉の体。それも、あの状態と魔王の言葉からして嬲られた直後のままの状態のそれを見て、それが姉なのだと理解した王女は自分の上に乗っていた姉の体を突き飛ばして頭を抱えって叫んだ。
「うんうん。いい反応ありがとう。それじゃあ本当にやることは終わったし、僕は帰るとするよ」
それを見て満足げに頷いた魔王は俺たちを見て魔術を発動させた。
「倒せるものなら、倒してみなよ。勇者」
魔王は最後にそう言い残すと、痕跡を残すこともなくその場から消え去った。
そしてその場には、俺たち三人と、倒れている海斗くんと未だ人形のように立ち尽くしている桜ちゃん。それから、蹲り叫び続けている王女だけが残った。
海斗くんと数合打ちあったけど、やっぱりと言うべきか、その性能は以前よりも上がっているし俺なんかよりも数段上だ。
今だって海斗くんからの攻撃に耐えることができず、ガードしたにも関わらずみっともなく後ろへと弾かれてしまった。
追撃のために空から無数の剣が降り注ぐが、それはすべて俺に触れた瞬間に収納されるので、無効化できる。
なのでスキル的には相性はいいのだが、いかんせん素の性能に差がありすぎる。
だがそれでも……。
「あっちは終わったのか?」
ふと海斗くんと距離が離れたことで周りに意識が向くようになり、イリンたちの方からさっきまで聞こえていたはずの戦闘の音が聞こえなくなっていることに気がついた。
桜ちゃんが残ってるみたいだけど、動きはないみたいだしもう終わったのか?
まだヒースは倒していないみたいだけど、壁に寄りかかっている状態を見るに、もうすぐ終わると思っていいだろう。
俺は二人に、こっちは任せろって格好つけたんだ。だから……
「さっさと終わらせないとな!」
叫ぶと同時に走り出して海斗くんへと近づいていく。
それは俺にとっての全力の走りだったけど、彼にとっては十分に対応できる程度の速さでしかなく、当然ながら俺の動きに対処するべく剣を構えた。
このままいけば俺は切られるだろう。もし防げたとしても、さっきみたいに吹き飛ばされてしまって終わりだ。
だが、それがわかっているのにただ突っ込むだけなんてことをするはずがない。
海斗くんの振るう剣の範囲に入る直前。収納から先ほどしまったばかりの光の剣を取り出して、本来の使用者である海斗くん本人へと射出する。
俺に向けて剣を振ろうとしていた海斗くんは一瞬動きを止めると同じようにスキルで光の剣を出し、俺の取り出したものへとぶつけて打ち落としたが、俺の攻撃はまだ終わらない。
撃ち落とされたところでまだ剣のストックは十分に残っている。
俺の射出した剣を打ち落としたことで再び俺を攻撃しようとした海斗くんだが、俺はまたも収納から剣を取り出して射出した。
律儀にもそれに対処するべく先ほどと同じようにスキルを使って迎撃したが、もう十分だ。
すでにお互いの剣が届く距離。だが俺は剣を振りおろしていて、海斗くんはまだ対処のために動くことができていない。
──勝った。
そう思って振り下ろした剣だが、その件は途中で硬質な何かに阻まれ、止められた。
環と戦った時もそうだったし一応予想はしていたが……結界か。
海斗くんは結界の魔術具を持っている。もしくはこの場にいる桜ちゃんから直接支援を受けている。
どっちにしても、弾かれたと言う事実は変わらないが、厄介だということも変わらない。
「それでも!」
剣が弾かれたことで隙だらけになった俺の体に、海斗くんが切り込んでくる。
ギリギリで体制を立て直すことはできたが、それでもそれは死なないと言うだけであって、そのまま受ければバッサリと斬られて重傷を負うだろう。
本当なら剣を収納できればいいんだけど、光り輝く海斗くんの剣は以前戦ったことのある獣人国の王女様みたいに特殊な付与でもされているのか、収納することができなかった。
だがそんな攻撃も、死ななければ安いとばかりに俺は不格好な体勢で海斗くんへと突っ込んで行った。
「ぎいいっ……ああああ!」
振り下ろされた剣で腹を切り裂かれるが、それでも止まることなく前に進んでいく。
そして結界に触れると即座に収納し、明らかに弱点であろう首筋の裏にある肉塊のすぐそばに収納魔術の渦を展開させる。
あと少し……。
突然自身の背後に発生した魔術に対応するためか、海斗くんは即座に背後にあった渦へと振り向いたが……それを待ってた!
どうやら海斗くんは渦が発生するとわかるようで、隙をつこうとしてもすぐに対応されていた。
けど、今回はそれがあだとなった。
背後にある渦へと振り向いたってことは、当然ながら正面にいたはずの俺に背中を見せると言うことだ。
腹を斬られた痛みが体を襲う中、それでも俺は俺にできる最速の動きで体を動かし、海斗くんの首の裏にあった肉塊を斬り裂く。
「あ──」
確証があったわけではないが、どうやら俺の行動は正解だったようで肉塊を斬られた海斗くんは声を漏らすと動きを止め、そのまま床へと倒れ込んで行った。
「ぐぎっ!」
その肉塊を切ることだけを目的として動いていた俺は、切った後のことなど考えておらず、俺もまた倒れ込んでしまった。
その衝撃で腹の傷に痛みが走るが、大丈夫だった。そんなに深くないし、薬も使った。この程度では死なない。
倒れたまま海斗くんの様子を見ると、首の裏にあった肉塊は蠢き、斬られた状態から再生しようとしていたので、痛む体に鞭を打って起き上がると少々不安はあったもののそれを掴んで強引に根元から切り取った。
そこまですると流石に治せないのか、肉塊はそれ以上動くことはなかった。
イリン達の方はどうなったんだと視線を向けると、そこにはちょうどあちらも結着がついたのかヒースの胸に剣を突き立てているイリンの姿があった。
「彰人様!」
「彰人!」
「あー、お疲れ様二人とも。こんなんだけど、勝ったよ」
「それよりも怪我は……」
「大丈夫だ。処置はしたし、そんなに深くはない」
床に倒れながら腹部を真っ赤に染めていると言う俺の状態を見て駆け寄ってきた二人に声をかけると、俺は薬の効果で治り始めたがまだまだ痛む傷を無視して立ち上がると、玉座に座ったまま目を閉じている王女へと声をかけた。
「どうした王女様。これで終わりか」
俺の声を聞いて閉じていた目を開いた王女は、だが視線を俺に向けることなく虚空を見つめている。
「ええ。そうですね。これで終わりです」
「随分と簡単に言うもんだな」
「どうせこれ以上は何にもできませんから」
そう言いながら俺たちへと視線を向けてきた王女はどこかくたびれたような虚な表情をしていた。
……本当にこれ以上何かをするつもりはないのか?
こいつは魔族をどうにかして手に入れたはずだ。だったら、ここでその力を使うべきなんじゃないだろうか?
それとも誰かに使わせるのはいいけど、自分たちが使うのは嫌だとかそんな理由か?
「最後に聞きたい。お前は、魔族たちをどこから手に入れた?」
使う使わないは別にしても、どうやって手に入れたのかは知っておきたい。
素直に答えるか? と疑問ではあったが、そんな俺の問いかけにも王女は特に抵抗することなく答え始めた。
「……ああ、あれですか。あれは──」
「それ以上先は僕が話すとしようか」
が、その言葉はどこからともなく聞こえた声によって途中で遮られてしまった。
「……魔王。あなたもきたのですね」
「そうだけどぉ……ちょっと~、ネタバラシしないでよ。もっと引っ張ってから驚かせたかったのにぃ」
そんな場の雰囲気にあっていない気楽な声が聞こえてきた方向──頭上へと視線を向けると、そこには魔王というにはあまりにも平凡な姿をした黒髪黒目の人物がいた。
髪と目の色を除けばその辺にいそうなほどに平凡な顔つきをしているが、あの見た目は……あれが魔王?
「なんのようでしょう? まさか助けにきたとでもいうつもりですか?」
「いや? そんなことを言ったところで、君は頷かないでしょ?」
頭上から王女のそばに降り立った魔王は、王女の言葉に答えながら王女へと笑いかけている。
「まあね、あれだよ。せっかくだし、最後に色々と教えてあげようかなって思ってさ」
「教える? ……ふっ、まさか今のこの国の状況でも教えにきたのですか? それともこの国を取り巻く周辺の国の状況ですか?」
「いやいや、そんなどうでもいいことじゃないよ。もっと重要で、もっと面白いことさ。……聞きたい?」
勿体ぶった様子で話す魔王だが、その笑みにはどこか不気味なものが混ざっているように思えた。
自分が向けられているわけでもないのに、その言葉に、その笑みに込められた不気味さは、まるで無数の虫が体を這い上がるような気持ち悪さすら感じられる。
「話す気があるのなら、さっさと話しなさい。今更何を言われたところで、私にはどうでもいいことですが」
「そうでもないと思うよ? だって、君のお姉さんのことについてなんだから」
「っ! ……お姉さまについて? 今更何を話すことがあると……」
魔王が話した瞬間、王女の体が大きく跳ね、一瞬の後にはそれまでのくたびれ、諦め切った様子ではなくしっかりと感情のこもった表情でそばにいた魔王を睨みつけた。
「そうだなぁ。──実はあれは僕が仕組んだことだったんだ……って言ったらどう?」
あれ? あれとはいったい……。話の流れからしてこの王女の姉が死んだことに関わりがあるようだが……そういえば、戦いが始まる前に姉がどうしたとか言ってたか?
なんて言ってたんだったか……確か……。
「っ! ……そうですか。やはりお前が」
「あんまり驚かないね。予想してた?」
「ええ。魔王が裏で手を引き亜人を唆していたという考えはありました」
「唆されて、ねぇ……洗脳されてた可能性は? 僕に操られて仕方なく襲った可能性だってあったんじゃないの?」
「あの場には魔力の反応はありませんでした。襲った者たちを探し出して調べましたが、洗脳の痕跡は残っていな──」
「僕は魔王だぜ? その程度できないと思ってるの?」
「……」
「ま、やってないけどね。僕は君のお姉さんを襲わせる時に、洗脳なんて使ってないよ。彼らが進んで君のお姉さんを犯しただけだ」
不気味にイヤらしく笑う魔王のその言葉で、王女がなんと言っていたのか思い出した。
そうだ。確か辱められたと、そう言っていた。
なら、この魔王の言葉は真実なのか?
「でもさ、唆されたって言っても、だからって種族ごと消してしまえー、だなんて考える普通。あくまでも唆された個人の問題じゃないかな?」
「唆されるほど愚かな種族など、存在する価値はないでしょう?」
「ふ~ん、そっかそっか。まあその考えに意見するつもりはないよ。考え方なんて個人御自由だしね?」
そう言いながら相変わらず笑みを崩さない魔王は楽しげに勿体つけたように話している。
その様子に苛立ったのか、王女は顔をしかめて問いかける。
「何が言いたい──」
「でもさ、実はあの場にいたのは亜人だけじゃないって言ったらどう?」
だが、それは魔王の言葉によって遮られてしまった。
「……亜人だけじゃない? ……。…………う、嘘です! そんなはずはありません! 私は何度も調べました! 何度も何度も!」
「みたいだね。でもさ、もう一度言うけど、僕、これでも魔王だぜ?」
そしてそんな魔王の言葉を聞いた途端に王女は目に見えて狼狽え始めた。
なんだ? そんなに亜人だけじゃないってことが重要なのか?
……いや、そうか。姉が乱暴されたことで亜人という種族の排除なんて過激な意見を持つようになったとして、もしそれが亜人だけの犯行ではなく、人間も混じっていたのだとしたら? 守るべき存在だと思ってきた相手が本当は敵なのだとしたら?
「断言するよ。あの場には亜人だけじゃなくて人間もいた」
「う、そ……」
「じゃ、ないんだな~これが。ついでに言うなら、あの場には君のお姉さんを守るはずだった、そしてその後はこの城を守るための警備についていた騎士も何人かいたよ。ついでに言うなら、彼らは今も生きてこの城にいる」
その言葉でついに反論の声がでなくなった王女は弱々しく首を振るだけとなった。
だがそれでも魔王は言葉を止めない。
「驚いた? まあそうだよね。お姉さんが亜人に犯されて嬲られてボロ布みたいに捨てられたと思ってたのに、実際には亜人は一部しか関わってなくて、むしろ実行犯の半分以上は君が必死になって守ろうとしていた人間の方だったんだから。大変だったよね? 苦しかったよね? 辛かったよね? でもそれでもお姉さんの復讐のために人間以外の全てを殺して人間を守ろうとした君は立派だったよ」
王女へと優しげに微笑みかける魔王。それはまるで親が子を慰めるような柔らかなもの。
「──ま、そのすべては無駄だったわけだけど」
だが、次の瞬間にはその笑みは口元が裂けんばかりに弧を描き、邪悪に歪められた。
「そもそもさ、最初っから間違えてたとは言え、不思議に思わなかった? どうして君はお姉さんにひどいことした相手やその関係者じゃなくて、相手の種族そのものに復讐しようとしたのかって。君だってお姉さんが死ぬまでは亜人に悪感情なんて持っていなかったじゃないか。それなのに亜人を殺すと言う理由だけで守ろうとした自国民全てを洗脳して平和を作りましょう、なんてそこまで大それたことをするかい? しないよ普通は。他にも色々とおかしなことはあるでしょ? よく考えてみなよ」
止まることなく続けられる魔王の話を聞いていた王女は子供が泣く一歩手前のような表情をしている。
「あっと、これ以上は話が長くなりすぎるね。つまり何が言いたいかって言うと……」
魔王はそこで一旦言葉を止めると、コホンと咳払いをしてから口を開いた。
「楽しい玩具になってくれてありがとう。君は……君たち姉妹は、とっても都合がよかったです、っと」
それは心の底から楽しげに、混じり気なしの笑みを浮かべた。
それだけ見ればいい笑顔だなと言うこともできただろう。
だがその理由があまりにもふざけている。
「そ、れ……は……」
「うん? ああ、認めたくないのかな。自分が洗脳されてた、なんてさ」
「洗脳は……していないと……」
「ああ、言ったね。お姉さんを犯した亜人に対しては洗脳なんてしてないよ。無駄な努力、お疲れちゃん」
つまりはそれ以外には洗脳をしていたということ。
姉を襲った者の種族を恨むのも、恨んだ後の行動も、今に至るまでの考えも、王女がやってきたすべてはこの魔王が洗脳した結果で、そもそも姉が襲われたことさえもが魔王の遊びでしかなかった
つまりは最初から遊ばれていたと言うことで、遊びでいろいろな人の人生が壊されていたと言うことでもある。
「これでも何千年も生きてるんだ。不老不死。言葉にすれば簡単で、誰も彼もが飲むようなものかもしれないけど、実際に生きてみるとまあ退屈でね。時々こうして動いてちょこちょこ遊んでたんだよ。……ああそうだ。ちなみに、君たち勇者もその一環だよ。魔族の領地で偶然異世界から召喚するのに応用出来そうな都合の良い方法を見つけたなんて、あるわけないじゃん」
「……つまり、諸悪の根源ってことでいいのか?」
まだ腹は痛むが、それでも戦うことができる程度には治っている。
それを確認した俺は、いつ戦いになってもいいように警戒をしながら楽しげに話している魔王へと問いかけた。
「いいよ。まさしくその通りだ。悪をなす魔王を、勇者が倒しにくる。いいエンターテイメントだろ? やられるつもりはないけど」
魔王はそれまで王女へと向けていた顔をぐりんと動かして俺のことを見ると、やはり楽しげに頷いてそう言ってのける。
やられるつもりはない、か。
確かに今までの全てはこいつの掌の上で、過去の勇者たちも封印しかできなかったみたいだが……この様子じゃあ封印なんてのも嘘……というか騙されてたんだろうな。
そして封印されたフリをして裏で人で遊んでいたと。そういう訳か。
「……だが、俺たちがいかなかったらどうする。実際、俺たちは魔王に挑むことはなかったし、この王女だって挑んでなかった」
「それね。その場合は適当に理由を作ってあげたよ。その二人のどっちかを拐うとか、来るまで世界中を攻撃し続けるとか。……とは言え、ここまでぐっちゃぐちゃになったんだから、今更城まで来いなんて言わないよ。それよりももっと面白い状況を作った方がいいかもね。せっかくだし、まっさらな状態に変えよっか」
「まっさらな状態?」
「そうそう。具体的には、この国を魔族の群れに襲わせる。その後は適当に大陸中の国へとばら撒いておしまいかな。何割かは生き残れると思うけど、多分ほとんどが死ぬと思うよ」
魔族の群れだと? 魔族なんてのは上位の冒険者であってもまともに戦えば危険なやつだ。そんなものが群れで襲いかかって来たら……それは、本当に大陸が滅びかねないぞ。
「さあどうする勇者。魔族の侵攻を止めないと、君の友人も知人も大切な人も幸せな未来も、全部全部消えてなくなるよ」
魔王は玉座の周りを適当に歩き回りながらそう言うと、最後に俺に向かって笑いかけて来た。
「答えはいらない。今日からちょうど一ヶ月後に魔族はこの国の北、魔物の領域とされている場所から攻め込む。それを止めてみなよ。そしてその奥にいる僕を殺してみな。そうすれば、この国も世界も、全部守れるよ」
まずい。魔族の群れなんて、一ヶ月でどうにかなるわけがない。
どうする? こいつを今ここで倒すか? そうすれば少なくとも魔族の群れなんてものは出てこなくなる。
……だが、倒せるか?
今の俺は手負い。見たところイリンと環はそれほど問題があるわけではなさそうだけど、それでも過去の勇者が毎回失敗しているほどのやつだ。実質二人では倒し切れないんじゃないだろうか?
「じゃあ最後に王女様……って、おーい」
そんなことを考えていると魔王は王女へと声をかけるが……。
「あ、うそ……うそよ……」
「あー、壊れちゃってるか。最後に贈り物をあげようと思ったんだけど……まあいっか、壊れてても。どうせ僕が持ってても意味のないものだし」
自分の全てが操られていたものだと理解した王女は、ただ虚空を見つめて声を漏らしているだけになっていた。
だがそれでも魔王はそんな王女に向けて話しかけると、どこからともなく何か大きなものを取り出した。
取り出されたそれは薄汚れているが全体的に肌色をしており、一部がまるで王女の髪の色と同じである金茶色をした糸を束ねたような……いや、はっきり言おう。あれは人だ。
その大半が肌色なのは服を纏っていないからで、その髪の色が王女によく似ているのはその血縁者だから。
そして状況から察するに、あれは王女の姉だ。
「じゃあ、はいこれ──お姉さんの本物の体。あの時のまま変わることなく保存しておいてあげたよ」
そんな俺の考えを認めるかのように魔王はそう言ったが……
「あ、ああ……ぃあ……いや…………ああああああ! ああああぁぁぁああ!?」
自分の体の上に覆いかぶさるような形で取り出された姉の体。それも、あの状態と魔王の言葉からして嬲られた直後のままの状態のそれを見て、それが姉なのだと理解した王女は自分の上に乗っていた姉の体を突き飛ばして頭を抱えって叫んだ。
「うんうん。いい反応ありがとう。それじゃあ本当にやることは終わったし、僕は帰るとするよ」
それを見て満足げに頷いた魔王は俺たちを見て魔術を発動させた。
「倒せるものなら、倒してみなよ。勇者」
魔王は最後にそう言い残すと、痕跡を残すこともなくその場から消え去った。
そしてその場には、俺たち三人と、倒れている海斗くんと未だ人形のように立ち尽くしている桜ちゃん。それから、蹲り叫び続けている王女だけが残った。
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