上 下
375 / 499
友人達の村で

416:賊のアジト・ガムラと安堂

しおりを挟む
「収穫は特になかったな」
「大半は狂ってまともに話せてなかったからな」

 俺の言葉にガムラはそう言って同意したが、それも仕方がないと思う。
 何せ賊達は、手足を高温で焼かれて失った挙句、わずかな灯りすらないような暗闇の中で放置されたのだ。もう少し時間をおいていれば全員狂っていてもおかしくはなかっただろう。話せるやつが残っていただけましだ。

「無事に残ってた奴らもまともな情報は持ってなかったみたいだしね」
「幹部っぽいやつだけでも無事ならよかったんだが……」

 一人だけ、『砂礫』と名乗った賊がいたらしい。それはこの場所のリーダーで、しかも二つな持ちなので賊の中でも相応立場についていたんだと思うが……まあものの見事に狂っていた。
 話を聞こうとしても涙を流しながら笑っているだけで、話にならなかった。

 ちなみに、ニナに聞いたところ『砂礫』と呼ばれる冒険者は本当にいるらしく、実際にそいつの冒険者証を確認したら本人だった。

 なぜ二つ名を与えられる程の冒険者が こんなところで賊をやっているのかって疑問はあるが、それだけこの件の裏にいる存在が大きいって事なんだろう。
 それを知ることができただけでもある意味収穫ではある。

「ごめんなさい……」

 だが環は自分がやり過ぎたせいで大した情報を集められなかったと落ち込んでいる。
 そんな環を慰めつつも次のところへといくことにした。そしてその際、賊は生きているのも死んでいるのも一緒に殺した。そうした方がこいつらのためだというのもあるが、生かしておいて万が一俺たちのことを他の仲間知られたりすると厄介だからだ。もちろん賊の死体は回収した。放置した結果、後で疫病とか出ても困るし。

 ガムラの担当したところは生き残りがいなかったので洞窟の中を探索しておしまいだ。
 だが、賊から情報を集めることはできなかったが、全くの成果がなかったわけでもない。

 三つの洞窟のうち真ん中だからなのか、ここは他のそれよりも大きな作りになっていた。
 ここが奴らのメインとして使っていた場所なんだろう。

 色々漁ってみると、ある部屋の壁に細工が施されており、隠し扉的な感じで小さな隠し窓(?)がついていた。
 これは俺が探知によって見つけたのだが、その開け方がわからなかった。結局、細工のしてあった壁を収納して無理やり開けた。

 隠し窓の中には地図と文字の書かれた紙が入っており、その地図にはこの辺りを囲うように線が引かれていた。おそらくこれは襲撃の範囲を示すものだろう。ニナに見せてもらった実際に襲撃された場所の範囲とも一致するし。

 加えて、地図と一緒に見つかった紙にはここにいた奴らへの命令が書かれていた。

 内容は依頼人からせっつかれているからさっさと範囲内の村を全部を占拠しろってのと、増援を送るというものだった。
 この増援ってのは、例の村を襲った別働隊の奴らだろうな。

 それ以上の収穫はなく、次に俺の担当した場所に行ったのだが、そこで俺が担当した賊達について思い出した。

 ……そういえば、あいつらまともに拘束とかしてなかったな。

 一応魔剣で動きを止めた上で部屋の入り口の前に障害物を置くことで、あいつらが部屋から出られないようにした。だがそれだけだ。手足を縛ったりはしていない。

「全員ちょっとここで待っててくれ」
「どうかしたのですか?」
「あー、ちょっと賊退治に?」

 その言葉にみんな訳がわからなそうな表情をしている。まあそうだろうな。賊退治はもう終わっているはずなのだから。

「実は、賊達を一応動けなくして一つの部屋の中に閉じ込めておいたんだけど、もうその拘束も解けてるだろうからな。その部屋を開ければまた襲ってくるだろうし、それの退治をな」
「でしたらわたしが……」
「いや、ここは俺が担当したところなんだし、俺がやるよ。危険でもないし、すぐ終わる」

 割と急いでたから装備とか奪ってないし、多分俺が部屋の中に入った瞬間に切りかかってくるだろう。
 だが、それなら俺はその武器を収納してしまえばそれで攻撃の無効化ができる。
 あとは足でも折っておけば大丈夫だろう。環のように手足を切り飛ばしてしまうこともできるが、それだと壊れるものもいるだろうし、出血で死ぬ。できることなら生かしたまま質問したい。

「まあそういうわけだからちょっと行ってくる」

俺はそう告げてから一人で賊のアジトの中へと入っていった。

「さて、賊達は生きてるかなぁ、っと」

 俺は部屋の前にたどり着くと、部屋の中にいる賊達にも聞こえるであろう大きさでそう呟いた。
 これは賊が俺のことをタイミングを合わせて襲うようにするためである。

 入り口の前においた障害物の隙間から部屋のドアが壊されているのが見える。多分脱出しようとして扉を壊したが、障害物のせいで出られなかったんだろうな。

 探知で部屋の中を調べると、案の定中では俺の声に反応した賊達がそれぞれ武器を構えて部屋で待ち構えている。
 奴らの作戦としては、何人かは倒れたフリをして異常がないよう見せかけ、俺が中にはいったところで、入り口の左右に潜んでいる奴らが俺を攻撃。すかさず倒れたふりをしている奴らも攻撃。みたいな感じだと思う。

 まあその辺はどうでもいい。武器でかかってくるんだったら無効化できるし、生身で襲ってくるのだとしても予め身体強化をしておけば賊程度なら問題ないだろうから。

 というわけでいくとしよう。

「ウラアアアアア!」
「死ねええええ!」

 足音を立てながら部屋の中に入っていくと、思った通り入り口の横に潜んでいた賊が切りかかってきた。

「あ? ──がっ!」
「なん、ぐあ!」

 なので予定通り賊の武器を収納して攻撃を無効化し、思い切り腹を殴ることで行動不能にする。

「てめえ!」
「おらあああ!」

 その後もやっぱり予想通りに倒れたふりをしていた奴らも動き出したが、まあそれも同じように終わらせた。

「よし。イリン達を呼ぶか」

 もう一度全員を無効化したのを確認すると、今度は武器を取り上げて俺は一旦洞窟の外へと出ていき、外で待っていたイリン達を呼ぶことにした。

「おい。お前らは誰に雇われてこんなとこに来たんだ?」

 到着早々ガムラは部屋の中で倒れていた一人を乱暴に起こして問い詰める。

 乱暴に起こされたせいで少し混乱していた賊の男だが、状況がわかったようで俺たちを睨んでいる。

「……てめえ、なんでこんなとこにいやがる。『雷光』たちの別働隊が村を襲ったはずだろ?」
「雷光?」

 賊の男はそう言ったが、『雷光』というのはなんのことだ? 別働隊のチーム名? でもそれにしてはニュアンスがおかしかったように思えるな。

 そう思っていると、ニナが俺の背後から賊へと声をかけた。

「あんた、その『雷光』ってのは、オリハルコン級の冒険者の雷光? そんな奴があんたらの仲間だっていうのか?」
「そうだ。そいつだ。あいつはどうしたんだよ?」

 どうやらそのオリハルコン級の冒険者が賊の仲間にいるらしく、別働隊の方にも参加していたようだ。
 まあもっとも、参加してだが。
 別働隊の奴らはナナによって文字通り全滅させたれている。その雷光さんとやらも、もう死んでいる。
 だがそうだな……死体は収納してあるはずだし、後で確認しておくか。

「俺がこんな余裕でここにきてんだ。気づいてんだろ?」
「まさか……嘘だろ?」

 俺がそう言うと賊は驚いた様子を見せるが、それは俺の言葉を信じていないのではなく、信じたくないから自分に言い聞かせているかのようだ。

「嘘だと思うならそれで構わない。助けに来てくれると思って黙っていればいい。お勧めはしないがな」

 俺はそう言ってこいつらに一度使った痛みと麻痺と魔剣を取り出す。

「ひっ! ま、待って。待ってくれ! 話す! 知ってることは全部話すから!」

 俺の取り出した剣を見て前回の事を思い出したのか、賊は怯えたように話し出す。
 ……これ、そんなにキツイのか。

 そうして俺は賊達から話を聞いていく。
しおりを挟む
感想 314

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

【創造魔法】を覚えて、万能で最強になりました。 クラスから追放した奴らは、そこらへんの草でも食ってろ!

久乃川あずき(桑野和明)
ファンタジー
次世代ファンタジーカップ『面白スキル賞』受賞しました。 2022年9月20日より、コミカライズ連載開始です(アルファポリスのサイトで読めます) 単行本は現在2巻まで出ています。 高校二年の水沢優樹は、不思議な地震に巻き込まれ、クラスメイト三十五人といっしょに異世界に転移してしまう。 三ヶ月後、ケガをした優樹は、クラスメイトから役立たずと言われて追放される。 絶望的な状況だったが、ふとしたきっかけで、【創造魔法】が使えるようになる。 【創造魔法】は素材さえあれば、どんなものでも作ることができる究極の魔法で、優樹は幼馴染みの由那と快適な暮らしを始める。 一方、優樹を追放したクラスメイトたちは、木の実や野草を食べて、ぎりぎりの生活をしていた。優樹が元の世界の食べ物を魔法で作れることを知り、追放を撤回しようとするが、その判断は遅かった。 優樹は自分を追放したクラスメイトたちを助ける気などなくなっていた。 あいつらは、そこらへんの草でも食ってればいいんだ。 異世界で活躍する優樹と悲惨な展開になるクラスメイトたちの物語です。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。