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獣人達の国
132:獣人の国の事情
しおりを挟む「あー、それはやめておけ」
俺があの場所に攻め入ろうと言うと、ガムラが止めた。こいつの性格からすると真っ先に突っ込んで行きそうな感じがするんだけどな…。
「なんでだ?このまま放置しておいたらお前らにも迷惑がかかるぞ?」
「まあそうなんだがな…。今は時期が悪ぃ」
「時期?」
ガムラは「時期が~」だなんて言ってるが何かあっただろうか?俺がここにきてから日が浅いからかもしれないけど何も思いつかない。
「大会ですか?」
悩んでいる俺の代わりにイリンがそう答えた。
…そういえば大会があったか。でもそれがどう関係してくるんだ?
「そうだ。正確には大会ってよりも祭りそのものだな。祭り目当てで今の時期は色んな場所から人が来る。そんな中で問題が起きて邪魔されたとなったら…」
「最悪国家転覆を狙うものとして対処されるよ」
「は?いや、え?マジ……?」
俺の驚きに頷く二人。ガムラだけではなくキリーもそう思ってるってことは本当にやばいんだろう。
「この国は亜人狩りをする王国に対処するために国って言ってるけど、実際は各種族、各部族の集まりでしか無い」
「で、祭りはその種族、部族の長達が集まるんだよ。中には来ないとこもあるけど、この国の七割~八割程度の長達は参加する筈だよ」
「…それって結構危険な状態だったりするか?」
この国が、国として纏まっていないというのなら、|何か(・・)があったら国が崩壊する可能性があるんじゃ無いだろうか?
「危険ってほどでも無いけど安定してるってほどでも無いね」
「だから俺は村を強化してるんだ」
…この国の実情は知らなかったけど、結構ヤバめだった。
今までガムラがなんでそんなに村にいろんな設備を用意するのか不思議ではあった。ガムラがやってきた事は単なる村にしては過剰すぎるから。
でもこの世界の村は魔物や賊の脅威がある割に守りも薄いし、仕方のない事なのかと思っていたが違った。ガムラはいつ今の政権が崩壊してもいいように準備を整えているに過ぎないんだ。
そんな状況で問題を起こして王の名に傷をつける事になったら、そりゃあ二人が言うように国家転覆罪に問われる事になるだろう。実際それが原因で転覆する可能性はあるわけだし。
「…二人はこのまま国が壊れずに存続していけると思うか?」
「知らねえ。俺にそんなのわかるわけないだろ」
…うん。そうだな。聞く相手を間違えた気がする。というか完全に間違えたよ。
次いでキリーに視線を向けたが、キリーは肩をすくめている。
「そればっかりはわからないね。なにせ私はしがない料理屋の店主だよ?国営に関わってきたことも、これから関わることも無いからね。まあ運任せ。なるようになれって感じだね」
そうは言っていても余裕が見えるその様子から、キリーもなにがしかの対策はしているのだろう。
ウォルフ達はそう言った対策をしているのだろうかと気になって、チラリとイリンのことを見る。が以前とは背が違うのでだいぶ違和感があるが、慣れるしか無いだろう。
……多分して無いな。あの里にいた時も特に大会とか祭りの話は聞かなかったから、あいつは参加しない残りの二~三割の方に入っているんだろう。
「絶対にバレない自信があるんならありかもしれないけど、まあ大人しくしておいたほうが利口だね」
「だな。ああいうところは裏でいろんなとこと繋がりがあるからな。しばらくは静観しておくしかないだろ」
…まあ確かにな。裏で繋がりのないのにあんな店をやってられるわけがないだろう。
「だけど向こうは仕掛けてきても何もないのか?そこにいる奴らを警備に突き出せばそこから捕まえることができるんじゃないか?そこまで行かなくても牽制にはなるだろ?」
「…可能性はないことも無いけど、無理だと思うね」
「なんでだ?」
「さっきガムラが裏の繋がりがあるって言ったろ?そいつらを突き出したとしても、金さえあればなんとかなる範囲だね」
…獣人は人間とは違って悪性が薄いって話だったけど、薄いだけで全く無いわけでは無いのか…。そりゃそうか。まあ当然のことだったな。
結局は獣人も人間も根本は変わらないって事だな。
「ん~。一番簡単な解決方法はあんたが大会で優勝することだろうね」
「優勝?…賞品か」
「そっ。まあ力を見せつけることで手を出せないようにするって意味もあるけど、そっちはこれ以上の面倒が増えないようにって意味合いが強いね」
なるほど。以前聞いた話では、大会で優勝すればこの国の王に何かお願い事をできるんだったな。それは王の力が及ぶ範囲でありある程度の制限がありはするものの、あの店を潰すまでは行かなくとも俺に関わらないようにするくらいなら出来るか…。
「でも向こうは大会中大人しくしてるか?」
「多分してると思うけどね」
多分って言ってるけど、キリーは確信がある感じだ。どうしてそう言い切れるんだ?
「流石に繋がりがあるって言っても、それは絶対にきれない繋がりってわけじゃ無い。寧ろいつ切られてもおかしくないようなものだと思う。その程度の繋がりのやつが祭りの準備で忙しい今、面倒を起こしたんだ。祭りの間に何かあったらその時こそ縁を切られるだろうね」
…キリーの考えは憶測でしかないが、その考えには納得できるものがある。であるならば…
「少なくとも、祭りが終わるまでは何もない、ってことか」
「気をつけるに越した事はないけどね」
キリーはそう言って肩をすくめた。
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