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獣人達の国
121:豆は万能
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「よっしゃ!これでいつでも戦えんな!」
……そうか、こいつもここに住んでんのか……。
俺たちの話がついた途端ガムラが元気になって叫んだが、俺はこいつと戦うためにここに泊まるわけじゃない。
「……早まったか?」
「まあ仕方がないね。宿代だと思って対処しな」
キリーはそう言うが、こいつの相手を毎日するぐらいだったら素直に金を払っていた方が良かった気がする。
「なあ、宿が決まったんなら時間が空いただろ?ギルドの訓練場にでも行こうぜ!」
「やだよ。まだ昨日この街についたばかりでまだ何があるかすらわかってないんだ。色々買い足したいものとかもあるし適当にまちをぶらつくつもりなんだ。というか、お前さっき眠いとか言ってただろ。そんな状態で戦ったら怪我するからやめておけよ」
「んなもん戦えば吹き飛ぶさ!つーかもう吹き飛んだ!だからな?ヤろうぜ?」
その言い方はやめてほしい。もし日本の腐女子がいたら腐った話が広がってしまう。俺にその気はない。俺はノーマルだ。…最近はイリンの件でロリコン寄りになってちょっとノーマルとも言い切れなくなってきたけど、少なくとも女の子の方が好きなのでノーマルで問題ないはずだ。…多分。
「……ああ、わかったわかった。戦ってやってもいいぞ」
「本当か!?」
「ああ。…でもお前は本当にそれでいいのか?」
「? どういうことだ?」
「もう直ぐ大会があるんだろ?そこで戦った方が面白くないか?観客が見守る中で、かつてのリベンジをかけての一騎打ち。…そっちの方が燃えないか?」
目をを丸くして動きを止めた後、
「うおおおおお!なんだよそれ!ぜってえそっちの方が面白えじゃねえか!」
「だろ?だから今戦うのは諦めろ」
「おう!……でもよ、この昂りを沈めるにはどうすりゃいい?戦えば収まると思うんだが……」
「んなもんギルドの訓練場にでも行っておけよ。誰かしら相手してくれるんじゃないか?」
「そうだな!じゃあちょっと行ってくらあ!」
雄叫びをあげながら走り去っていくガムラを俺たちは見送った。
「……良かったのかい?」
「良いも何も、ああ言わなかったらいつまでもうるさいまんまだったろ?」
それはとても…、とっても迷惑だ。
「でも大会には出ないんじゃなかったのかい?」
「そのつもりだ。大会には出ないってのは変わらない。嘘をついた事であいつは怒るかもしれないけど、どうせ今戦ったところで、また戦おうとか言ってくるに決まってる。だったら戦うんだとしても、あいつが村に帰る直前に一度だけ戦うことになった方がマシだろ」
「くくっ。違いないね」
長い付き合いであるキリーにはガムラなら実際にそうするとわかっているのだろう。キリーは笑いながら同意した。
「でも、そうかい。なら私があんたと戦うことはなさそうだね」
「? でもも何も、戦う理由んてないだろ?」
「そりゃぁ私も大会に出るからね」
「そうなのか?」
「まあね、店の名前を売ろうと思えばそう悪い手段じゃないんだよ。実際、私が大会に出てからは店の客が増えたしね」
なるほど。賞金や戦いが目当てじゃなくてもそういう目的で出る奴もいるのか。
…でも、言っちゃ悪いけどそれほど儲かっているようには見えない。客も全然入ってないし。本当に宣伝の効果はあるんだろうか?
「どうかしたかい?」
俺が店の中を見回している事に気付いたキリーから声がかかるが、思ったことを口にしていいものなのか…。
「もしかして他に客がいないとか思ってないかい?」
まさか思っていることが当てられるとは思わず、俺はピクリと反応してしまった。それを見てキリーはクスリと笑うが、俺はなんだかバツが悪くなったが正直に頷いた。
「…まぁな」
「そりゃあんた達のせいだよ。あんた達のせいって言ってもあんた達が何かしたってわけじゃないけどね」
キリーは肩をすくめるが、俺たちのせいとは一体なんだろうか?何かしたわけじゃないって言ってるけど…。
「本当は今日はこの店休みなんだよ。ガムラのバカはそれを知ってて連れてきたのか、それとも忘れてたのか…。まあまず間違いなく忘れてたんだろうね」
そう言って肩をすくめるキリーだが、正直かなり悪いことをしたと思ってる。社会人にとって休日とはかなり重要だ。その価値は学生なんかとは比較にならない程に。そんな貴重な休みに仕事をさせてしまうとは…。まるで休みの朝に鬼電してくる上司みたいじゃないか。俺がやられた時は平和な日本のはずなのに、殺してやろうかと素で思ったぐらいだ。
「あー。それは悪いことをした。すまない」
「いいって。悪いとしたらあのバカだし、あんたみたいな面白いのにも出会えたからね」
どうせ休みって言ってもやることなかったしね。と言っているが、俺の中の罪悪感は消えない。
「…あー、悪いと思うんなら何かアイデアをくれないか?」
「俺で役に立つかわからないけど、…アイデア?」
「そっ、なんか新しい料理のアイデア。あんた人間の国から来たんだろ?何か面白いものはなかったかい?」
面白いものと言われても特になかった。いや、実際にはあったのかもしれないけど、そんなものを楽しんでいる余裕なんて俺にはなかった。
俺が食べたものといえば王城で出された豪華なものと屋台と宿で食べたものしかない。宿と屋台はこっちでも同じようなものを見たし、王城のはこの店の雰囲気に合わないだろう。
だが、そこで終わっては休日を潰したという大罪を償うことができなくなってしまう。何か……。
結局、こっちの料理は思いつかなかったので日本の料理を教えることにした。日本の料理というか、日本人の魔改造した料理?
「──豆?豆からそんなにできるのかい?」
色々教えたが、キリーの琴線に触れたのは大豆だった。味噌、醤油、豆腐、枝豆、油揚げに後納豆も。
こっちでは何かに混ぜたり付け合わせにしたりはするが、豆単体でどうにかしようとは思わなかったらしい。肉を好む種族が多いのも理由ではあると思うが。
俺も詳しく知っているわけじゃないけど、知っている限りのことを教えた。
「助かったよ。色々試してみるとしようかね」
「でもこんなものでいいのか?かなりうろ覚えだったぞ?」
「ああいいんだよ。言ったろ?『アイデア』だって。こっちでは豆って言ったら殺してから回収するから肉って感覚だったんだよ。それも味が薄いボソボソの肉ってね。だからそんなに色々使えるとは思ってなかったのさ」
「役に立ったんならいいんだが…。……え?殺す?何を?豆をか?」
思わず聞き流しそうになったが豆を殺すとはなんだろうか?たしかに植物も生きているのだから殺すという表現も間違ってはいないのだろうけど、なんか違う気がする。
「ああ。人間の方では違うんだろうけど、この辺りで取れる豆は動き回るんだ。だから扱いとしては獣と同じなのさ。まあ植物っていうよりは『植物の魔物』だね」
王国にも植物系の魔物はいたけど、豆はいなかったな。というかこっちはなんか魔物が多いような気がする。方針の違いか?王国は、国が積極的に騎士を派遣して魔物を潰し回ってたみたいだし。俺たちもその活動を手伝わされたことあったしな。それとも他に何か理由があるんだろうか?
……わからないな。なんの情報もないし。まあ今の所は放置でいいだろう。
……そうか、こいつもここに住んでんのか……。
俺たちの話がついた途端ガムラが元気になって叫んだが、俺はこいつと戦うためにここに泊まるわけじゃない。
「……早まったか?」
「まあ仕方がないね。宿代だと思って対処しな」
キリーはそう言うが、こいつの相手を毎日するぐらいだったら素直に金を払っていた方が良かった気がする。
「なあ、宿が決まったんなら時間が空いただろ?ギルドの訓練場にでも行こうぜ!」
「やだよ。まだ昨日この街についたばかりでまだ何があるかすらわかってないんだ。色々買い足したいものとかもあるし適当にまちをぶらつくつもりなんだ。というか、お前さっき眠いとか言ってただろ。そんな状態で戦ったら怪我するからやめておけよ」
「んなもん戦えば吹き飛ぶさ!つーかもう吹き飛んだ!だからな?ヤろうぜ?」
その言い方はやめてほしい。もし日本の腐女子がいたら腐った話が広がってしまう。俺にその気はない。俺はノーマルだ。…最近はイリンの件でロリコン寄りになってちょっとノーマルとも言い切れなくなってきたけど、少なくとも女の子の方が好きなのでノーマルで問題ないはずだ。…多分。
「……ああ、わかったわかった。戦ってやってもいいぞ」
「本当か!?」
「ああ。…でもお前は本当にそれでいいのか?」
「? どういうことだ?」
「もう直ぐ大会があるんだろ?そこで戦った方が面白くないか?観客が見守る中で、かつてのリベンジをかけての一騎打ち。…そっちの方が燃えないか?」
目をを丸くして動きを止めた後、
「うおおおおお!なんだよそれ!ぜってえそっちの方が面白えじゃねえか!」
「だろ?だから今戦うのは諦めろ」
「おう!……でもよ、この昂りを沈めるにはどうすりゃいい?戦えば収まると思うんだが……」
「んなもんギルドの訓練場にでも行っておけよ。誰かしら相手してくれるんじゃないか?」
「そうだな!じゃあちょっと行ってくらあ!」
雄叫びをあげながら走り去っていくガムラを俺たちは見送った。
「……良かったのかい?」
「良いも何も、ああ言わなかったらいつまでもうるさいまんまだったろ?」
それはとても…、とっても迷惑だ。
「でも大会には出ないんじゃなかったのかい?」
「そのつもりだ。大会には出ないってのは変わらない。嘘をついた事であいつは怒るかもしれないけど、どうせ今戦ったところで、また戦おうとか言ってくるに決まってる。だったら戦うんだとしても、あいつが村に帰る直前に一度だけ戦うことになった方がマシだろ」
「くくっ。違いないね」
長い付き合いであるキリーにはガムラなら実際にそうするとわかっているのだろう。キリーは笑いながら同意した。
「でも、そうかい。なら私があんたと戦うことはなさそうだね」
「? でもも何も、戦う理由んてないだろ?」
「そりゃぁ私も大会に出るからね」
「そうなのか?」
「まあね、店の名前を売ろうと思えばそう悪い手段じゃないんだよ。実際、私が大会に出てからは店の客が増えたしね」
なるほど。賞金や戦いが目当てじゃなくてもそういう目的で出る奴もいるのか。
…でも、言っちゃ悪いけどそれほど儲かっているようには見えない。客も全然入ってないし。本当に宣伝の効果はあるんだろうか?
「どうかしたかい?」
俺が店の中を見回している事に気付いたキリーから声がかかるが、思ったことを口にしていいものなのか…。
「もしかして他に客がいないとか思ってないかい?」
まさか思っていることが当てられるとは思わず、俺はピクリと反応してしまった。それを見てキリーはクスリと笑うが、俺はなんだかバツが悪くなったが正直に頷いた。
「…まぁな」
「そりゃあんた達のせいだよ。あんた達のせいって言ってもあんた達が何かしたってわけじゃないけどね」
キリーは肩をすくめるが、俺たちのせいとは一体なんだろうか?何かしたわけじゃないって言ってるけど…。
「本当は今日はこの店休みなんだよ。ガムラのバカはそれを知ってて連れてきたのか、それとも忘れてたのか…。まあまず間違いなく忘れてたんだろうね」
そう言って肩をすくめるキリーだが、正直かなり悪いことをしたと思ってる。社会人にとって休日とはかなり重要だ。その価値は学生なんかとは比較にならない程に。そんな貴重な休みに仕事をさせてしまうとは…。まるで休みの朝に鬼電してくる上司みたいじゃないか。俺がやられた時は平和な日本のはずなのに、殺してやろうかと素で思ったぐらいだ。
「あー。それは悪いことをした。すまない」
「いいって。悪いとしたらあのバカだし、あんたみたいな面白いのにも出会えたからね」
どうせ休みって言ってもやることなかったしね。と言っているが、俺の中の罪悪感は消えない。
「…あー、悪いと思うんなら何かアイデアをくれないか?」
「俺で役に立つかわからないけど、…アイデア?」
「そっ、なんか新しい料理のアイデア。あんた人間の国から来たんだろ?何か面白いものはなかったかい?」
面白いものと言われても特になかった。いや、実際にはあったのかもしれないけど、そんなものを楽しんでいる余裕なんて俺にはなかった。
俺が食べたものといえば王城で出された豪華なものと屋台と宿で食べたものしかない。宿と屋台はこっちでも同じようなものを見たし、王城のはこの店の雰囲気に合わないだろう。
だが、そこで終わっては休日を潰したという大罪を償うことができなくなってしまう。何か……。
結局、こっちの料理は思いつかなかったので日本の料理を教えることにした。日本の料理というか、日本人の魔改造した料理?
「──豆?豆からそんなにできるのかい?」
色々教えたが、キリーの琴線に触れたのは大豆だった。味噌、醤油、豆腐、枝豆、油揚げに後納豆も。
こっちでは何かに混ぜたり付け合わせにしたりはするが、豆単体でどうにかしようとは思わなかったらしい。肉を好む種族が多いのも理由ではあると思うが。
俺も詳しく知っているわけじゃないけど、知っている限りのことを教えた。
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「でもこんなものでいいのか?かなりうろ覚えだったぞ?」
「ああいいんだよ。言ったろ?『アイデア』だって。こっちでは豆って言ったら殺してから回収するから肉って感覚だったんだよ。それも味が薄いボソボソの肉ってね。だからそんなに色々使えるとは思ってなかったのさ」
「役に立ったんならいいんだが…。……え?殺す?何を?豆をか?」
思わず聞き流しそうになったが豆を殺すとはなんだろうか?たしかに植物も生きているのだから殺すという表現も間違ってはいないのだろうけど、なんか違う気がする。
「ああ。人間の方では違うんだろうけど、この辺りで取れる豆は動き回るんだ。だから扱いとしては獣と同じなのさ。まあ植物っていうよりは『植物の魔物』だね」
王国にも植物系の魔物はいたけど、豆はいなかったな。というかこっちはなんか魔物が多いような気がする。方針の違いか?王国は、国が積極的に騎士を派遣して魔物を潰し回ってたみたいだし。俺たちもその活動を手伝わされたことあったしな。それとも他に何か理由があるんだろうか?
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※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
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