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目覚め

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高校時代の友人がよく言っていた。

「生まれ変わったら、お金持ちの家の猫になりたい」と。

それを聞いた私は、「はいはい」と聞き流していたが、
今なら彼女の気持ちがわかる。



権力者のペット、最高。



すっかり前世の記憶を取り戻した私は、
テーブルの上に並べられた朝食を見て、その幸せを噛みしめる。


焼きたてのパンに、色とりどりのコンフィチュール。

今朝の卵料理はオムレツ。ハム数種類。

そして、華やかな香りの紅茶。



こんなもの、前世では食べたことない。



うまっ!
なにこのクロワッサン。バターどんだけ使ってんのよ!
デパ地下で買ったら、500円くらいするやつ!
つまり、買えないやつ!!!


思わずがっつくと、給仕をしていたルカがにっこりとほほ笑む。


「まぁ、今日はたくさん召し上がられて。ルカはうれしゅうございます」


うっ。


喉につまりそうになったクロワッサンの欠片を、なんとか飲み込む。


私としたことが。

何やってんだ、自分。



いつも通り、これまで通り。
それを心掛けなくては。



私が前世の記憶を取り戻したことも、

昨日の夜の出来事も、

何も悟られてはいけない。



だって。


誰が敵で誰が味方なのか、わかったものではない。



「紅茶のおかわり、召し上がられますか?」


「……うん」



小さな声で答えると、
ルカは新しいカップに甲斐甲斐しく紅茶の用意を始める。



ルカは、
身長が高いことを除けば、服装といい容姿といい、
中世ヨーロッパの貴族の家のメイドそのもの、といった感じだ。


私の世話係で、
ニンゲンの言葉を話し、理解することができる。


仕事熱心で、優しい。


ルカが完全に信頼できる相手だと分かれば、
何もかもかなりスムーズに進みそうなんだけど。


そういえば、
髪の色と目の色は、茶色。
魔王様とは違う。

これは、種族の違いなのか、なんなのか。


分からない。


私は、この世界について、何も知らない。


知らなければ。


今、この状況で
世界を知るにはどうすればいいか___



私には、1つしか思い浮かばなかった。
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