旅する二人の小説家

夜船 銀

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ブロードウェイ

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「ブロードウェイに行くぞ!」
担当編集との通話を終えた燕先生がそう叫んだ。日本語は一緒に過ごすうちに自然と覚えた。
「え、作品は?」
「せっかくニューヨークに来たのに一日中ホテルの部屋の中なんてつまんないだろ。一日中小説のアイデア考えてたんだからこのくらいいいでしょ」
「何時に起きたんだか知らないけど、多分、燕先生が起きてからまだ3、4時間ぐらいしかたってないと思うけど」
「まぁまぁ夕食もまだなんだし、ね?」
まったく…。どうして担当に釘を刺された直後にこうも楽しいことだけを考えられるのだろうか。でも、ブロードウェイか…。
「何の…」
「え?」
「何の劇見る?」
「そうこなくっちゃ」
彼はまるでいたずらがうまくいった子供のように二カッと笑った。

ブロードウェイとはタイムズスクエア周辺にある世界最大級の劇場ストリートだ。
多くの舞台やミュージカルが毎晩50作品は上映されている。まさに劇場の聖地。
ちょうど有名な「アラジン」が上映されていたのでそれを見ることにした。まぁまぁ値段ははるのだが燕先生曰く、
「俺の小説のネタ収集でもあるから気にするな」
だそうだ。ありがたく奢られることにしよう。

劇場の中は1990年代の映画の中でしか見ないような内装でそれだけで物語の一部になっているようだった。ステージに向かって正面にある一階席と二階席だけでなく、左右の壁面にも小さな個室のような席がいくつもあった。貴族が双眼鏡を使って舞台を眺めるような席、と言えばイメージしやすいだろうか。この内装だけですでに物語の一部のような雰囲気を醸し出している。
「燕先生は願いが3つ叶うとしたら何を願うの?」
「んー?望みが多すぎて絞りきれないわ」
もうすぐ幕が上がる。
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