482 / 522
英雄vs氷狼vs……
ケンヤの目的
しおりを挟む精霊を殺せば、世界にとってとんでもないなにかが起こるらしい。水を司(つかさど)る精霊だ……私の予想では、世界中から水というものがなくなる。
精霊なんて存在、私はこの世界に戻ってきてから知った。けれど、精霊なんて神秘的な呼ばれ方をされているからには、よほどごたいそうな存在であることは確かだ。
それに、あの慌てよう……思わず、興味心をくすぐられる。精霊が死ぬ、死んだことがある、かはわからないが、人間や魔族を超越した存在に死という概念があるのかどうか。もしないのだとしたら……これが、少なくとも水の精霊にとって初めての、死だ。
「ほらほら、抵抗してみなよ」
「ぐっ……」
この呪術の力で触ると、水の精霊はなんの抵抗もできないみたいだ。ただ脱出しようともがくのみ……それも、たいした抵抗にはならない。
水の精霊はもう脅威ではない、ユーデリアも動けない。残るは……
「さっきからずーっとじっとしてるけど、いいの?」
「……」
参戦も乱入もしてこない、ケンヤ。先ほどからただ、黙って見ているだけだ。
水の精霊を殺せば、この世界が終わってしまうかもしれないというのに。
「そうだな……俺も、この世界は嫌いなんだ。だから、この世界がどうなろうと知ったこっちゃない」
「……」
「ただ……まだ目的も果たしていないし、今終わらされるのはごめんだ」
ケンヤの目的……それがなにかはわからないが、おそらく禁術に関係のあることじゃないか。直感から、私はそう思っていた。
師匠を生き返らせたのは、私を殺すため……だけど、それだけの理由で禁術を犯すだろうか。もしかしたら、他に生き返らせたい誰かがいて、師匠を生き返らせたのはその前座というか、お試しというか……とにかくそういうことだったんじゃないだろうか。
つまり、ケンヤは他に本当に生き返らせたい人がいる。けれど、それを果たしていない……その前に、世界を終わらせられるのは困るってことか。
もしかして私を殺そうとしていたのも、同じ理由からかもしれないな。
「けど、だったら……」
魔力を高めていくケンヤは、今の今まで傍観していた。水の精霊が死に瀕している、今までだ。もっと早くに戦いに割り込んできてもよかっただろうに。
「その精霊は俺のことも殺そうとしてたからな……あんたと相討ちか、せめて動けないまでになってくれたらなって思ってただけさ」
私の疑問を察したかのように、告げる。魔力は、だんだん大きくなっていくのがわかる。
……黒く染まり、もう魔力も使えなくなった左目。だけど、長い間魔力の備わった目を装備していたおかげか、魔力を感じる力は健在ってわけか。
「もう水の精霊は動けない。あとは……!」
私を始末するだけ、ってわけだ。魔力をエネルギー波に変換し、それを放ってくる。
しかし、それは私に届く前になにかに弾かれる。まるで、見えない壁でもあるかのように。これも、呪術の力なんだろうか。
「ちっ」
「あんたの目的なんて知ったことじゃないよ。一緒に、終わろうよ」
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
公爵家の半端者~悪役令嬢なんてやるよりも、隣国で冒険する方がいい~
石動なつめ
ファンタジー
半端者の公爵令嬢ベリル・ミスリルハンドは、王立学院の休日を利用して隣国のダンジョンに潜ったりと冒険者生活を満喫していた。
しかしある日、王様から『悪役令嬢役』を押し付けられる。何でも王妃様が最近悪役令嬢を主人公とした小説にはまっているのだとか。
冗談ではないと断りたいが権力には逆らえず、残念な演技力と棒読みで悪役令嬢役をこなしていく。
自分からは率先して何もする気はないベリルだったが、その『役』のせいでだんだんとおかしな状況になっていき……。
※小説家になろうにも掲載しています。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる