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もう一つの異世界召喚

数々の出会い

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 探していた禁術への手がかり。そして探していた『ノット』という人物……それと知り合いであるという人間との出会い。求めていたものが、一気に舞い込んできた。

 もっともノットを探していたのは、禁術について詳しく知っている可能性があるからで、ここで禁術について知っている人間バーチと出会ったのだから、ノットを探す必要がなくなったといえばなくなったのだが……

 禁術を使うにはどうやら、呪術という力が必要なようだ。ケンヤもガニムも、バーチもその力を使えない……

 ……実はガニムには魔力とは違う、異なる力を使えるらしい。対象の視界を一方的に視ることができるという、力。魔力とは異なるそれは、もしかしたら呪術という力の可能性がある。が、本人が意識していない以上、それを呪術と断ずるのは早い。

 それに、その力が呪術だとして、その力をどう使えば禁術を使えるのかはわからないままだ。だからここは呪術の力を使えるというノットと会うのが、やはり必要になってくる。


「なら、案内してくれ……その、ノットという者のところへ」


 ノットは、暗殺者……"疾風"と異名を取るほどに、裏の世界では有名らしい。もっとも、ノット="疾風"だと知っている者は、バーチを含めても数えるほどしかいない。

 バーチにはノットとの連絡手段があり、会わせたい人物がいるということで、会う約束を取り付けてくれた。

 そんなにすんなりいくとは思っていなかったが……暗殺者であることから、殺しの『依頼』があると思ったのだろうか。暗殺者というものがどういうものかは知らないが、ケンヤの知識ではこんなところだ。

 誰かから依頼を受け、標的を殺す……だから、自分たちも依頼をしに来た人物、と思われたのかもしれない。それならそれで、会いやすいというだけだ。


「で、どこか待ち合わせ場所を決めたのか? いったいどこへ……」

「いや、もう来るさ」


 待ち合わせのための、場所を決めたのか……その問いに返ってくるのは、もう来るというもの。その直後、ケンヤの背後に何者かが現れた気配を感じる。

 振り向くと、そこには……フードで顔を隠した、一人の人物がいた。


「! 何者……」

「待った待った、彼女がノットさ」


 急に現れた謎の人物。敵意を剥き出しにするガニムであるが、それを止めるのはバーチだ。彼の言葉、それは彼女こそがノットという暗殺者であるということだった。

 それを聞き、ガニムは敵意を引っ込める。このフードの人物こそが、ノット……気配も感じさせず、どこから現れたのだろうか。


「……バーチ、なんだいそいつら」


 と、フードの人物……ノットが、口を開く。声はこもっているために、男女どちらかなのかは、判断がつかない。


「言ったろ、会わせたい人物がいると」

「それがこの、魔族と……人間? って、わけか」


 ノットは、ガニム、そしてケンヤへと視線を移す。ケンヤを見た際に首をかしげたのは、人間にはないはずの魔力を纏っていたため、本当に人間かと疑ったというところだろう。

 とにかく、こうして探していたノットに、会うことができた。


「まあいいや。……で、誰を殺してほしいんだ?」

「あ、いやぁ、それなんだが……」


 ノットを呼んでもらったのは、誰かを殺してもらうためではない。そりゃあ、この世界に憎むべき存在がいないわけではない。

 ガルヴェーブをあんな目にあわせた連中がいる。おそらく他にも。そいつらを殺してやりたいが、魔族はほとんど滅んでいる。それに、やるなら自分の手でやりたい。

 だからケンヤは、ノットに……禁術について呪術の力、つまりノットの力が必要で、他にも必要なものがあれば教えてくれと、詳細を話す……つもりだった


「なんか神妙な顔だな。よほどの事情があるのか」

「それは……」

「いや、いいや。私は、金さえ貰えりゃいい。あんたらがなにをしようとか、なにを考えてるとか、そんなのは興味ないし」


 詳細を聞くことはなく、金さえ貰えば仕事はこなすとノットは話す。それは、話を聞いてやっぱりやめる……と言われる可能性を消すものだ。なんであろうと、しっかりとやりきる。

 それはノットの、暗殺者としてのプライドというやつかもしれない。


「ところで……なんだよ、この人間の兵士たちは」


 周囲に倒れている兵士たちを見て、ノットが顔をしかめた……ような気がした。フードで顔は見えないが。


「あぁ、邪魔だったんでね。せっかく魔族を見つけたのに、危害をくわえられたらたまったもんじゃない。あぁ、国にはちゃんと、野良魔物に襲われて殺された、とかうまい具合に報告しておくさ」

「そこまで聞いてねぇし、相変わらず狂ってんな」

「暗殺者に言われたくないな」


 二人のやり取りは、やはり気の知れた間柄ということだろうか。その中身が親しみのあるものかは置いておいて。

 とにかくこれで、禁術を行うために必要なピースは整いつつある。もしも禁術を行うために、数多くの血が必要だというのなら……ケンヤは躊躇はしない。世界中の血をかき集めてでも。

 ガルヴェーブを殺した連中、認めない世界……ガルヴェーブを生き返らせるためなら、こんな世界、壊れてしまっても構わないと、そうまで思うほどに。
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