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世界への反逆者 ~精霊との対峙~

水、水、水

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 放たれる水の針……人の腕ほどの太さがあるそれは、数えるのも面倒なほど膨大な数になって迫り来る。

 ユーデリアの冷気で凍らないのは、さっき試したしもう意味がないことがわかった。となると、後は私の魔法で防いで……


「……あれ!?」


 バリア風に、透明な魔法の壁を展開。それを正面に発動し、水の針を防ごうとしたのだが……水の針は、そこになにも障害物がないかのように、壁をすり抜ける。

 濡れてしまった体もすっかり乾いて、確かに魔法は使えているのは間違いない。


「そのような魔法程度が、わらわに通ずるとでも?」


 水の精霊は、どこか得意気だ。これは勝手な想像だけど、精霊っていうのはなんか神秘的な存在な感じがするから……その存在に、一般的な魔法は通用しないのではないか。

 精霊ってのは高次元の存在だから、本気になれば低次元の魔法は効かない……次元が違う……とか言いそうだもんな。

 それは、呪術も同様に通用しないのか……それとも、呪術はまた違う次元の術だから、通用はするのか。それは、わからないけど。

 とにかく、魔法で防げなかった水の針は、狙いを定めて私とユーデリアに降ってくるわけで。


「ちっ!」


 その場から飛び退き、回避するしかない。とはいえ、水の精霊は無数に攻撃を放ってくる。その弾が尽きることは、ないだろう。

 なら、逃げるのに意味はない。というか、もう逃げるのには飽き飽きしてたところだ。


「えい!」


 試しに、魔法で電撃を生み出し、それを水の針にぶつける。しかし、水は電気を弾き、消えるどころか攻撃の勢いが止まる様子すらない。

 魔法が通用しないのは、攻防含めて、か。


「だったら……」


 魔法が通じないなら、この拳で迎え撃つ。迫る水の針に、正面から少し角度を変える形で、拳を打ち込む。

 殴った感触……それは、まんま水だ。見た感じ、水を固めて氷みたいな高度にしているのかと思ったけど、そうではないらしい。硬さは、水と同じ。

 拳を打ち込んだことで、水の針はただの水となってその場で破裂。地面へと落ちていく。この拳なら、通用するようだ。

 迫る水の針を次々と、拳で打ち落としていく。ただ、無数の弾に対してこちらは片手しかない。足技も使えるけど、そうなるとどうしても動作が大きくなり、この無数の手数に対応しきれなくなる。


「なら……!」


 飛び攻撃が掴めるものなら、相手に投げ返すのもありだが、水だからそんなことはできない。なので……

 攻撃を跳ね返せない、飛び攻撃で相手に近づけない、なら残る手段は、こっちから相手に近づくこと。とはいっても相手は宙に浮いているし、こっちも飛ぶでもしないと接近することすらできない。

 だから……飛ぶ!


「よっ、ほっ」


 魔法で、空中に階段のようなものを作る。そこを渡っていけば、まるで空を飛んでいる気分を味わえるってわけだ。

 私自身を、浮遊させるように魔力を使ってもいいんだけど……浮遊魔法ってやつは結構コツがいるようで、以前試しに自分を浮遊させてみたら、自分の意思とは関係なしにあちこちにブンブン飛んでしまった。

 あれは実戦では、使えない。


「わっ、ととっ」


 とはいえこれも、階段を登る形であるため、降り注ぐ水の針を完全に避けられるわけではない。足場を壊されればバランスが崩れるし、

 まあこれなら、確実に宙に浮いている相手に近づきながら、水の針を弾き飛ばすことができる。拳で。

 ……と、私はこれでいいとして、ユーデリアは……


「グルルルァ!」


 額から氷の角を生やし、降り注ぐ水の針を打ち落としている。冷気は通用しないけど、打ち落とす分には普通に効くようだ。

 だけどあの様子じゃ、水の精霊本体まではたどり着けなさそうだ。ここは私が……


「って、でか!」


 少し、ユーデリアの方に目を離し、再度上空を見上げると……そこには、降り注ぐ水の針とは比にならないほど、巨大な水の塊が浮いていた。

 あんなもの、直撃したら痛いじゃ済まない。針のように尖ってはいないとはいえ、水の塊……水におもいっきり体を打ち付けると実はめちゃくちゃ痛いし、あれはそんなもので済まされるものではないだろう。

 それが、まるで隕石のように降ってくる。


「押しつぶれるがいい!」

「ふっ……」


 確かに脅威だ、が……こんなもので私を仕留められると思っているとは、こんなもの、どうしようもないと嘆くレベルではない。

 拳を握りしめ、迫る水の塊との距離が一定のものになったとき……一気に、振り抜く。


 ドッ、パァ……!


 振り抜いた拳は、水の塊に直撃し……激しい音を立てて、その場で水の塊は破裂する。拳を打ち込んだ衝撃波で、内側から破裂した感じだ。

 結局、いくらでかかろうと所詮は水だ。今の感触だって、ただの水とは変わりない……


「……ぶふっ!?」


 直後、顔全体をなにかで包まれる感覚。驚きに声を漏らしてしまうが、それは声とならず、代わりに口から空気でなく泡となって、それが出てくる。

 息を、吐き出せない。それに、吸い込めない? この、感覚は……


「がぼぼっ……」


 水、だ。水が、私の顔を包み込んでいる。さっき破裂した水か、油断した……!

 水塊あれは私を押しつぶすためではなく、私がぶち壊すと踏んで、その水で私の行動を制限するためのものか!

 息ができない。それは、自分では意識しなくても体の自由を制限されてしまう。呼吸ができなければ身体中に酸素が巡らず、手足がうまく動かせない。足を、止めてしまう。

 いや、もっと単純な問題。いくらなんでも、呼吸を封じられてしまっては、どんな人物でも……


「っ……!」


 暴れて体内の空気を吐き出してしまわないために、口を、塞ぐ。くそっ、顔から水を剥がそうと思っても、水だから掴めやしない!

 その間にも、水の精霊は、攻撃の手を止めることはない。水の針が、私を串刺しにするために迫る。
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