目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

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第五章 海に行こう

第160話 ここから水着を選ぼう

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 水着売り場に足を踏み入れ、広がる世界に由香は困惑していた。
 その隣では、さよなが目を輝かせている。様々なデザインの水着に興味津々なのか、それともどの水着が由香に似合うのか吟味しているのか。

「ならこうしよう。私と由香ちゃん、二人で由香ちゃんに似合う水着を探す! 由香ちゃん自身のセンスも見てみたいからね」

「ふ、二人で……はぁ、わかったよ」

 もうなにを言っても無駄だと悟ったのだろう、由香は諦める。
 さよなは楽しんでいる節はあるが、ちゃんと由香自身に合った水着を選んでくれることだろう。きっと。

 もちろん由香も、元々は自分に合った水着を選ぶためにここに来たのだから……もう割りきって、似合っているかを採点してもらおう。

「じゃ、今から三十分後にまたここに集合ね!」

「え、さ、三十分も……?」

「当たり前だよ! むしろ少ないくらい。本当なら、ここにある一着一着を試着させて決めたいくらいだよ!」

「えぇ……」

 水着選びに三十分……そんなに時間いるものだろうかと聞く由香だが、さよなはそれをばっさり否定。
 由香自身、あまりおしゃれとかに気を使わないため、服を選ぶときなんかもさっさと選んでしまう。むしろそこら辺の男よりも選ぶ時間は早い。

 だから今回も、一通り店内を回ってから目についたのを決めようと思っていたのだ。広い店内とはいえ、立ち止まらずに歩けば五分とかからない。

 わざわざ試着なんかしなくても、鏡越しに確認すればいい……そう思っていたくらいだ。

「あはは冗談だよ。ホントに全部試着なんかしなくても……私の見立てで、由香ちゃんを完璧に仕立ててあげる」

「……お、お願いします」

 ヤル気満々のさよなに押され、水着選びがスタートする。
 自分のことながらいまいちさよなほど乗り気になれない由香は、すでに目の前から消えたさよなとは裏腹に、ゆっくりと水着を見て回る。

 先ほど手に取った紐水着は過激すぎるし論外だが、一般的にはビキニやワンピースタイプが主流なのだろう。
 由香としては、肌を見せるのは恥ずかしいので布面積が多いものが望ましい。

「ま、それはさよなちゃんに却下されるんだろうけど……」

 さよなのことだ、先ほど「スタイルいいから肌出さないと」と言っていたように、肌を見せるタイプの水着を選んでくるに違いない。
 それでも、もしそれで達志の気を引けるなら……と考える自分もいる。

「……そうだ、私がそれより、かわいいの選んじゃえばいいんだよ」

 このまま手をこまねいていては、さよなが選んできた肌出し水着を選ばされるに違いない。いくらさよなでも、あまりに過激なのを選ばないとは思うが……
 それを回避する方法は一つ……『肌を出さなくてもかわいい水着』を選べばいいのだ。

  正直、言葉だけなら簡単だ。こんなに広い店だし、ぶっちゃけその条件に見合った水着などいくらでもあるだろう。
 肌を見せずとも、かわいく見せる水着。水着業界とて、それはわかっているはず。

 そう、問題があるとすれば……『さよなのお眼鏡に叶った水着』であることが前提条件であること。加えて、由香に似合った水着であること。
 それをクリアせねば、肌の露出した……この紐水着までとはいかなくても……過激なものを着せられてしまう可能性はある。

 無論、肌が出れば出るほどかわいい、なんてさよなが考えているとも思えないが、だからといって選ばれない可能性はない。要するに賭けだ。

「……とは言ったものの、なぁ」

 自分でかわいいのを選ぶ……そこにさよなの採点がプラスされるとなると、かなり難易度は上がる。
 なにせさよなは、本業のデザイナーなのだ。人よりも人を見る目は鍛えられているだろうし、ぶっちゃけ由香自身より由香に似合うものがわかっているだろう。

 そんな相手に太刀打ちできるものを、果たして自分に選ぶことができるのか……無理じゃね?と思う。

 由香に対し、スタイルいいんだし……とさよなは言ったが、由香は自身のスタイルに自信を持っていない。
 そりゃあ学生時代に比べたら成長しただろうが、最近お腹につき始めたお肉とか気になるし。胸だって大きくても、異性からいやらしい目で見られるだけだ。

 顔にしたって、この年にしては幼い……いわゆる童顔である。こんな自分に合った水着勝負で、自分がさよなに勝てるビジョンが見えない。
 ……とても情けない話だ。

「けど、やるしかないよなぁ」

 なんにせよ、だ。それはそれとしてやるだけやってみようではないか。
 というかやってみるっしかない。

 そう、やる前から負ける勝負などないのだ。もしかしたら由香にだって、隠されたデザインセンスがあって今、目覚めるかもしれない。
 そうだ、何事もやる前から諦めてはならない。それはこの十年間、嫌というほど学んだはずではないか。

 よし、やってやるぞと意気込み……

「おや、ユカ先生じゃないですか」

「ガウ!」

「…………」

 そこに現れた黒髪眼帯のロリっ子少女……つまりルーアと。
 彼女の隣に立つ謎のクマの出現に、意気込んだ思考が一気に停止した。
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