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第四章 激動の体育祭!

第143話 お昼ご飯の時間!

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 さて、午前中の種目がすべて終わり……時間は、お昼ご飯の時を迎えていた。
 家族や友達と、弁当を持ち寄って和気あいあいとした空間を過ごす。
 ある意味、体育祭のメインとも呼べるイベントだ。

 もちろん、用事で来れなかったりする場合もあるから、みんながみんなというわけではないが……
 その点で言えば、達志は恵まれていた。

「いやぁ、母さんとセニリアさんの弁当楽しみだな」

「私も作りたかったのに……」

 見学に来ているみんなの所へ向かいつつ、早くも腹の虫が暴れだす。
 先ほどのビーチフラッグスで体力を使ったため、余計にお腹ペコペコだ。

 ちなみにビーチフラッグスは、ラストランナーであるヤー・カルテアが怒濤のトップで旗を勝ち取り、チーム戦としては彼女所属の黄チームが、一番点数を稼ぎ幕を閉じた。

 情けない話、まったく活躍できなかったが……そこは、午後の部で活躍することで、挽回できると思いたい。
 きっと最後には派手な活躍を飾ってみせるから、その時に備えて今は、腹を満たすのだ。

「お、いたいた」

 この辺りにいる、と連絡を受け、探していると……視線の先に、母みなえの姿を発見。
 ちょうどいい木の下、ブルーシートを敷き、座る母の隣にセニリアがいる。

 さらに……

「お、猛。それにさよなも。そこにいたんか」

「おう、お疲れさん」

「達志くん、リミちゃん、お疲れ様」

 幼なじみである茅魅 猛かやみ たける五十嵐いがらし さよなの二人も座っていた。
 幼なじみといっても、見た目では親戚のお兄さんとお姉さん程度に見える。
 誰も、この三人が幼なじみだとは誰も思うまい。事情を知る人でなければ。

 さよなはともかく、猛はわざわざ休みを取って来たらしい。以前、行くとは言ってくれたが。
 嬉しい気持ちと、そこまでしなくても、という気持ちで押し潰されそうだ。

 そして……恥ずかしさでも、押し潰されそうだ。

「猛、その服……」

「あぁ……例の応援衣装だよ」

 座る四人を見て……まず注目するのは、猛だ。正確には、猛が着ているものだ。
 それはいわゆる、ハッピだ。私服の上に羽織っている。まさに今、猛が言った『応援』にぴったりの衣装だ。

 これは以前、達志と猛がさよなの家に呼び出され、半ば強制的にデッサンされたときの……その、完成した衣装だ。
 ちなみに達志は、作ってもらっていたリストバンドを、ちゃんと手首に付けている。赤色の、かっこいいやつだ。

 デザインとして、赤を基調とし、所々に黒い斑点がついているもの。
 身に付けたことのないものを付けているというのに、やけにしっくりくる。さすがはさよなだ。

「なんだ、ジロジロ見て」

「いや……」

 応援衣装を着ている猛……その姿は、なんというか、目立つ。
 季節は夏であるというのに、暑苦しそうな黒い色を基調としており、背中に赤い文字ででっかく『志』と描かれている。

 なんとも気合の入った衣装……というか、それを着ている猛が、めちゃくちゃ張り切っているみたいだ。

「猛……」

「言うな達志。俺もさすがにこれはと思ったが……あの威圧感には勝てなかった」

「そうか……」

 せっかくさよなが、張り切ってデザインしたものを……
 ……というより、「私がデザインしたものが着れないのかオオン?」といった気迫の前に、だんまりを決め込むしかなかったらしい猛。
 なんだか想像しやすい。

 色や文字以外にも所々、凝ったデザインをしてあるな、という箇所があるのだが……
 達志としては、これを着ている猛と、これを作らされたであろうさよなの知り合いが気の毒である。
 気持ちは嬉しいが。

「なあ、もしかしてその『志』って文字……」

「もちろん、達志くんの名前から取ったんだよ!」

 えっへん、と、ない胸を張るさよなに対し、達志はなにも言うことができない。
 だって『達志』から『志』を取って、それがハッピの背中に描かれているなんて、どう反応すればいいのか。
 これなら普通に、志って意味だけの方が良かった。

 不幸中の幸いなのは、『志』が達志を指している、とパッと見わからないところだろう。
 なんか張り切ってる人がいるな、程度で。

「けど驚いたよ。猛くん、それ着たまま達志くんの応援始めようとするんだもん。恥ずかしいから止めたけど」

「そのための応援衣装じゃないのかよ。着たまま黙って座ってたら気まずいわ。もう着たんだし、どうせならめちゃくちゃやってやろうかなって思ったが」

「やめてくれ! 主に俺が恥ずかしさで倒れるわ!」

 背中に『志』を載せた、黒ハッピの男。
 そんな男にそんな格好されて、名前を呼ばれて応援された日には、羞恥やらなんやらでどうなってしまうかわからない。

 一方、人に派手な衣装着せといて、いざ応援するとなったら恥ずかしがる気持ちがよくわからないが……
 投げやりになった猛を止めてくれて、さよなに感謝である。

「まあまあみなさん。話は食べながらでもできますし……まずは、腹ごしらえといきませんか?」

 話に夢中になっていたところへ、せっせと弁当箱を並べるセニリアの声が届く。
 それは一般的な弁当箱ではなく、重箱だ。しかも何段にも重なったものがいくつも。

「えへ、張り切っちゃった」

 母親の「えへ」など聞きたくもないが、そんなこと気にならないくらいに、達志は目の前の光景に釘付けになっていた。
 弁当箱の蓋が開くと、そこにはなんとも豪華な品々。

 一段にはまるごとご飯、一段にはまるごとおにぎり、そしてその他おかず尽くし……
 肉から魚から野菜、それはもう色鮮やか且つ栄養を考えられた、メニューだ。

 これを、みなえとセニリアの二人で作ったというのか。
 見ると、みなえは自慢気にVサインを、セニリアは軽く会釈をしている。
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