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第三章 変わったことと変わらないこと

第120話 自己紹介と行こうぜ!

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 チームわけが発表され、現在は昼休みだ。

 普段は、リミやルーアらいつものメンバーと食べる達志だが、今回は違う。
 誰が言い出したわけでもないが、大抵の人がチームのメンバーと一緒に、食べる構図になっていた。
 それに特に達志は、乗り気だった。

 他の人たちはともかく、達志にとってはクラスメイトは『みんなと比べて一年知らない』相手なのだ。
 リミ、ルーア、ヘラクレス、マルクスに関しては、それなりに交流は深めていた。
 だが、それでもそんな短期間で、この学校で過ごした一年が埋まるはずもない。

 加えて、今回のチームメンバーに彼女らはいないのだ。なので、チームメンバーと交流を深めるといった意味で、昼食を共にするのは必要なことだ。
 ちなみにリミは、「タツシ様と一緒になれなかった!」と騒ぎながら昼食もついて来ようとしていた。ルーアに引きずられていったが。

「…………」

 そんなわけで現在、達志はいつもとは違うメンバーと昼食を共にしている。
 それぞれが思い思いに食事を進める中、ふと一人の女子生徒が話しかけてくる。

「やー、こうしてちゃんと話すのは初めてだねぇ勇界くん!」

「ん、そうだね。えっと……小宮さん」

「おー、覚えててくれたんだ!」

「そりゃあね」

 にこやかに笑いながら話しかけてきたのは、クラスの中でもムードメーカー的な存在である、小宮 蘭花。
 クラス内でも目立っている彼女のことは、普段絡まないメンバーの中で印象的だ。

 茶髪のショートボブと大きな目が特徴的。ただ、彼女のことはなんとかわかるが正直、この中のメンバーの半分くらい名前はわからない。

「まあ、せっかくの機会だし、改めて自己紹介とかどうよ!?」

 思えば、異世界人と絡んでばかりで、純粋にこちら側の人間と絡むことは、あまりなかった。新鮮だ。
 ともあれ、これから協力するクラスメイトの名前がわからないのでは、お話にならない。お互いの自己紹介をしようという流れに、達志は持っていく。

「んー、そだね。勇界くんでなくても、初めて同じクラスになった人もいるだろうし」

 特に突っ込まれることもなく、自己紹介モードに突入することに成功。
 名前を覚えるチャンスだと、心の中でガッツポーズを決める達志だが、それを悟られてはいけない。

「じゃあ、私からいくね! 小宮 蘭花、血液型はA型! 風魔法に関してはちょいと自信あり! 好きなことは友達作り、嫌いなものは勉強!
 好きなものはお母さんの作ってくれた卵焼きに、ハンバーグに、唐揚げ! 嫌いなものは納豆、オクラ、とろろで、まあネバネバしたものが……」

「や、そこまで言わなきゃダメ!?」

 まだまだ続きそうな自己紹介を、途中でストップさせる。
 てっきり名前と、よろしくねーといった一言程度だと思っていたのだが、こうも深く掘り下げられるとは。

「あ、ごめーん。つい熱が入っちゃって。名前だけでよかったよね!」

 手の平を合わせて謝る蘭花だが、困ったように笑い舌を出している。それも愛嬌というのか、これが彼女という人間なのだろう。
 なんていうか、コミュニケーションが服を来て歩いているような人物だ。好きなことが友達作りとは。

「じゃーお次どうぞ!」

「あ、あぁ」

 蘭花から時計回りに進んでいくようになったが、次に話を振られた彼が少々気の毒である。
 あんなバリバリの自己紹介の後とは、ツイてない。

 次の番である男子は、眼鏡をくいっと上げて、咳ばらいを一つ。

「えー……シャオ・リングルだ。その……魔法は使えない。よろしく」

 言葉少なく、名前と魔法についてだけ話す彼だが……逆に、それだけかと突っ込みたくなる。
 それは、自己紹介が短すぎるとかいう意味ではない。どんな時代だって、シャイな人間はいる。そのあたり、達志は理解あるつもりだ。

 そういう意味では、なく……

(もっと他に言うべきとこあるだろ!)

 そう思うのは、彼の容姿のせいだ。というのも、彼は人型ではあっても完全な人ではない。
 二足歩行のトカゲ……いわゆるリザードマンというやつだ。

 藍色の鱗は、日々手入れされているのか艶やかに光っている。
 眼鏡をかけたリザードマンという、奇怪な光景。

 一応、達志が寝覚めるまで面倒を見てくれていたウルカ先生も、ドラゴンの顔をしていたため、ある意味驚きの体制はできていた。

「ごめんねえ、彼引っ込み思案だから」

 その見た目で!?
 ……という突っ込みは、なんとか抑え込んだ。考えたこと全て口に出す癖も、徐々に直していかなければ。

「次、いいかな」

「お、はいはーい。どんどんいってみよう!」

 まだ頭の処理が追い付いていないのだが、それでも各ターンは回っていく。
 手を挙げたのは、次に順番を控える人物だ。

「ネプランテ・ゴンだ。気軽にネプって呼んでくれやあははは!」

「ど、どうも」

 豪快に笑いながら手を伸ばしてくるのは、桃色の皮膚をしたゴブリンだ。
 背が足りないためか、椅子の上に立ち、背筋を伸ばして、ようやく握手を求めてくる。

 応じないわけにもいかないので、握手を交わす。

 ちなみに、ご丁寧に靴を脱いで椅子の上に立っている。
 あと高い声色や、何よりスカートを着用していることから、女の子なのだろう。
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