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第十章 魔導学園学園祭編
731話 残り十分
しおりを挟む「み、道が……」
「五つに分かれてるわね」
到達した分かれ道……次はどんな問題が出てくるかな、と思っていたら。
問題文を確認するより前に、目の前の光景に唖然としてしまった。
二つの分かれ道……あるいは、三つの分かれ道。これまで遭遇してきたのは、それだ。
でも、目の前にある道は……五つに分かれているのだ。
「これは……なんというか、すごいわね」
クレアちゃんが、なんとも言えない複雑そうな表情を浮かべている。
私だってそうだ。なんと反応していいのかわからない。
だって、五つだよ五つ。間違えたら、最悪五つ全ての道を通らないといけないんだよ。
しかも、間違えた先にまたゴーレムやミミックのような罠があったとしたら……すごく時間を消費する。
「と、とりあえず問題を見てみようよ」
「……そうね」
まあ、なんにせよ問題文を確認してみないと始まらない。
選択肢が多いからといって、もしかしたら問題自体は簡単なものかもしれないし。
さあさあ、どんな問題かな……
『エランくんたち、残り十分だよ』
「!」
問題を確認していたところで、入り口で聞こえたのと同じ声が聞こえた。
それは、ナタリアちゃんのもの……残り時間を知らせてくれるものだ。
制限時間のあるこの巨大迷路、どうやって時間を確認するのだろうと思っていたけど……なるほど、やっぱり向こうから教えてくれるのか。
「あと十分……」
ってことは、おそらくこれが最後の問題。
最後の問題だから、今までの問題よりも選択肢が多くなっているんだろう。
『察していると思うけど、それが最後の問題だよ。よく考えて正解を導き出してもいいし、手当たり次第に行くのもアリっちゃアリだ』
「手当たり次第ね……」
答えなんか関係なく、五分の一に賭ける可能性……か。
確かに、めちゃくちゃ速く走れば間違えた道を選んだとしても、戻ってくるのにもそれほど時間はかからないかもしれない。
けど……
「五つも道があったら、これまでのようにはいかないでしょうね」
クレアちゃんの言う通りだ。これまでの、二つや三つの道ならまだしも。
五つの道を行ったり来たりして、時間が残されるとは思えない。運が良けりゃそりゃ、一発目でゴールに行けるかもしれないけど。
運が悪ければ、五つすべてを通ることになる。
「なるべく、正解をちゃんと導きたい」
『なら、応援してるよ』
ナタリアちゃんからの応援を受け、私は問題文に向き直る。
問題文の内容は、魔導学園の初代理事長の名前は次のうちどれか……というもの。
やっぱり、魔導学園の出し物だ。最後は、魔導学園に関する問題。
その中の一つに、『フラジアント・ロメルローランド』という名前がある。これは、現在の理事長の名前だったはずだ。
私は、多分一年生の中で一番理事長と接している。だから覚えた。
「この人は、今の理事長。間違いないよ。だから……」
「あと四人……」
さて、ここからは……ぶっちゃけた話、私にはさっぱりだ。
だって、魔導に関することならともかく……魔導学園に関することは、あんまり勉強してない。
思えば、入学の筆記試験でも同じようなことがあったような……あれからちゃんと勉強しておけばなぁ。
「初代……って、これもダンジョンと同じで、ちゃんと調べてないとわからない問題ね」
クレアちゃんが思い出すのは、さっきのダンジョンを一番先に発見した人物問題だ。
あれは、ダンジョンが発見された何百年前のことを調べていないとわからない問題。調べていないとって点では、同じだ。
あの問題は三択問題で、手当たり次第に進んで……結局最後に選んだ三つ目が正解だったんだよね。
今回は、五択……いや四択だ。しかも残り時間を考えたら手当たり次第には進めない。
先がどれだけ長い道なのかもわからないし。最後なんだからうんと長いかもしれない。
「うーん……そもそも魔導学園ができたのって、どれくらい前なんだろう」
多分歴史は結構あるはずだよね。師匠が首席で卒業したって学園だもんなぁ。
師匠がいつ魔導学園に在籍していたのかはわからない。聞いたことないし……というか、師匠がこの学園に在籍していたことさえこの学園に入って知ったんだもん。
……師匠はエルフだ。つまり、エルフの長寿さを考えればどれだけ昔でも不思議じゃない。
エルフの師匠が在籍していたのがどれくらい昔かなんて、考えてもわからないのだ。
「クレアちゃんは、ここに書いてある名前の人たちは知ってる?」
「……有名な魔導士、だってことはぼんやりと。でも、誰が初代理事長かまでは」
「うーん……」
やっぱり、手がかりなしか。四択……どれか正解を引き当てることに、賭けるしかないのか?
でも、さっきも考えたように間違った道がどれだけ長いかはわからない。だから……
なんとか、正解がわかれば……
「……あれ?」
なんだ……なにか、引っかかるな。
魔導学園の、理事長……初代の名前……理事長、名前、理事長、部屋……
「ぁ」
そうだ……あった、あったよ。
私、何度か理事長室に入ったことがある。そのとき、何気なしに部屋を見渡して……見つけたのだ。
歴代の理事長の、肖像画。それは今の理事長含め、その前の理事長……その前の理事長……
そして、初代理事長のものも、もちろんあった。
「わかった……クレアちゃん、こっち!」
その顔と名前、思い出した……!
だから私は、クレアちゃんの手を取った。
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