上 下
738 / 781
第十章 魔導学園学園祭編

726話 クイズの時間

しおりを挟む


 教室の扉を潜ると、そこは異空間でした。

  ナタリアちゃんたちのいる「オウガ」クラス。そこでの出し物は、異空迷路。
 その名の通り、異空間に作られた巨大迷路だ。ここを、制限時間以内にクリアすればゴールとなり、商品をもらうことができる。

「って、制限時間が三十分もあるなら結構余裕かもしれないね」

 まずは進み、道に沿って歩いていく。
 巨大な壁が左右へと伸びていて、確かに巨大迷路の名にふさわしいかもしれない。

 とはいっても、三十分もあるんだ。楽勝楽勝。

「それはどうかしらね」

「ひょ?」

 だけど、クレアちゃんは渋い顔をしてつぶやいた。

「この空間がどれくらい広いのかはわからないけど……これだけ大きな壁が伸びてるってことは、迷路自体本当に巨大ってこと」

 クレアちゃんの言うように、一度迷路の中に入ってしまえば周囲は壁に遮られてなにも見えない。
 見上げれば空はもちろん見える。でも、飛んじゃいけない以上空が自由でも意味はない。

 ……さっそく、分かれ道だ。

「そもそも、単純に考えて……どれだけ巨大かもわからない迷路を歩いてゴールしようってだけでも、結構時間かかると思うわよ。
 その上、罠もあるって言ってた。罠がなんなのかはわからないけど、場合によってはそれでさらに時間を取られる」

「な、なるほど」

 冷静なクレアちゃんの意見。そっかぁ、そっかぁ。
 そう聞くと、のんびり歩いていくわけにもいかないかな。じゃあ走っちゃう?

 でも……

「この分かれ道も、外れだった場合戻る時間も取られるから、よく考えないと」

 右と左と見るけど、どちらも同じような道に見える。「ま、無駄に時間使って考えてるよりも直感で進むのもありだけど」と続けるクレアちゃん。

 ふむ、直感か。
 確かに、どっちが正解か分からない分かれ道で迷っていても仕方ない気はする。どっちが正解かのヒントもないし……

「って、なんか看板が立ってるよ?」

「あらホント」

 分かれ道となっている壁に、なにか看板が立っている。地面に刺さり、なにか書いてあるようだ。
 私は看板に近づき、その文字を読む。

『魔導学園を首席で卒業し、"魔導賢者"と呼ばれている魔導士はグレイシア・フィールドである』

「マルなら右へ、バツなら左へ……だって。
 ふふん、私結構文字読めるようになったんだよ」

「今その自慢いるっ? ていうかそれ自慢っ?」

 看板に書いてあったのは、質問文だ。
 そして、その質問の答えによって曲がる道が決まる……そういうことか。

 なるほど、問題の答えに正解すれば正しい道を進むことが出来る。間違えれば……ってことだね。

「そりゃそっか、迷路って言ったらクイズありきだもんね」

「そういうもの?」

 ともあれ、これでどちらの道に進むことが決められるようになったのは大きい。
 勘で右左を選んでいても、すぐにだめになっちゃうだろう。

 問題があれば、その回答を導き出せばいい。そして、この答えは簡単だ。

「答えはマル! よって右へ!」

 そう、この問題の答えはマルだ。
 師匠がこの魔導学園を首席で卒業したことも、なんかすごい名前で呼ばれていたことも知っている。

 まあ、私も知ったのはこの学園に来てからだけど。

「こんな問題なら誰でもわかるんじゃない? 簡単にクリアできちゃうよこれなら」

「自分を棚に上げてすごいこと言うわね。
 ……でも、確かにこれくらいの問題ならこの国の人間はもちろん、他の国から来た人だって……」

 問題の難易度に思うところありながらも、私たちは先へ進む。
 しばらく進むと、また分かれ道が出ていた。

「さあて、次はなにかな……」

『魔導士の中で、選りすぐりの上級魔導士七名のことをなんと呼ぶか。"七帝しちてい魔導士"なら右へ、"七柱しちちゅう魔導士"なら左へ』

「急に専門用語出てきた!」

 文字を読んでいくと、そこに書かれていたのはさっきとはまるで違うものだった。
 師匠のことといい、魔導学園の出し物だから魔導に関するものだと思っていたけど……やっぱり、そうみたいだ。

 問題は、この話をどこかで聞いたことがあるって言うこと。どこだっけなあ……どこって、学園でだと思うんだけど。
 いつだったかなぁ。ずいぶん昔な気がするし。

「右ね」

「え」

 迷いなく、クレアちゃんは足を進める。

「なによその顔は。魔導士を目指している者からしたら当然の知識でしょ」

「……そ、そうだよね! 当然だよね! あははは!」

 くそう、誰だよこんな問題作ったやつ! ずいぶん前の設定持って来やがって!
 なんかかっこいいかなって思って名前だけ決めたけど、結局出すタイミング失ったから忘れ去られてちょうどいいからここで出しとこうとか思ってるんじゃないだろうな!

「……ちなみに、"七帝魔導士"よりも上の階級が、この世に四名しかいない"四柱しちゅう魔導士"。
 それら全ての魔導士の頂点に立つただ一人の存在が、あんたの師匠"魔導賢者グレイシア・フィールド"よ」

「ししし、知ってるよ! もちろん知ってるよ!?」

 見るな、そんな目で私を見るな!

 ……それにしても、クレアちゃんがいなかったら早々にここで立ち止まることになっていたかもしれない。
 いやあ、二人で来てよかったよ。

「魔導学園にいれば、とりあえず余裕でわかる問題ね」

「ちくちく刺すのやめてもらえませんかね」

 しょ、しょうがないじゃない。いろいろあったんだよ……魔導大会とか、魔大陸行ったりとか。いろいろあって、細かいことは忘れてたんだよ。

 そんなこんなで、またも分かれ道にたどり着く。
 しかも、今回は三本の道……つまり、三択クイズだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

愛人がいらっしゃるようですし、私は故郷へ帰ります。

hana
恋愛
結婚三年目。 庭の木の下では、旦那と愛人が逢瀬を繰り広げていた。 私は二階の窓からそれを眺め、愛が冷めていくのを感じていた……

処理中です...