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第十章 魔導学園学園祭編
715話 距離は縮んでないな
しおりを挟むコーロランやカゲくんが特に顔がいいけど……このクラス、全体的に顔がいい子が集まっている気がする。
女の子たちにとっては、目の保養ってやつだろう。
注文した料理が届いたので、早速いただくことにする。
これはノマちゃんが作ったんだろうか? うん、おいしい!
「……クレアちゃんも、周りがイケメンばっかりで食事するのってやっぱり嬉しいの?」
「……なによ突然」
お互いに食事を進めながら、雑談をしていく。
「別に……まあ、人並みだと思うわよ」
「ふぅん」
「エランちゃんこそ、どうなのよ」
「私は別に……そういうの考えたことないかなぁ」
「ずるい……」
まあ、めいど喫茶然り執事喫茶然り、需要があるから人も集まるんだろう。
周りの子なんか、黄色い声を上げてばかりだ。
……中には、握手している人もいる。有名人かなにかか?
「有名人といえば、この後にサプライズゲストが来るんだっけ」
「といえば、って言われてもエランちゃんの中でどんな思考が働いてんのよ。
……そうみたいね。午前と午後で二回」
今日来るサプライズゲストは、午前と午後で二回来るのか。一回だけだと、見られない人もいるかもしれないからね。
師匠が来てくれるといいなぁとは思ってるんだけど。
あーん……ん、このイチゴおいしい。
「フィールドさん、アティーアさん。いらっしゃいませですわ」
「あ、ノマちゃん」
「来てくれたんですのね、嬉しいですわ」
聞き慣れた声が耳に届く。少し首を動かすと、そこにはノマちゃんが立っていた。
ノマちゃんはにこにこした笑顔で、私たちを見つめている。言葉通り、嬉しそうだというのがわかる。
そんなノマちゃんが着ているのは、制服。料理係と言っていたから、わざわざ服を用意する必要もないのだろう。
ただし……かわいらしいエプロンを着用している。桃色で、あちこちにハートマークが散りばめられている。
なるほど、制服にエプロンか……シンプルだけど、こういうのもなんかいいね。
「ノマちゃん、接客なの?」
「いいえ、料理係ですわ。ですがお二人が来ていると聞いて、いても立ってもいられなくて」
「そうなの」
クレアちゃんとノマちゃんが話しているのを聞きながら、私はまたもイチゴを口に運んでいく。
このミニパフェは、ノマちゃんが作ったのだろうか。
「それは、わたくしが考案したんですのよ! お味はいかが!」
まるで私の心を読んだかのような、堂々とした言葉を言うノマちゃん。ふふん、と大きな胸を張っている。わぁ、エプロンの上からでもおっきい。
ふむ、これはノマちゃんが考えたのか。生クリームいっぱいで、イチゴもたくさん乗っている。
執事喫茶の客層が女性が多いと考え、こういったメニューがいっぱいあるのだろう。他のお客さんも、同じようなものを食べている。
朝からパフェとは重くないか、とも思ったけど、不思議とすらすら食べられるのだ。全然お腹にたまらない。
「へぇ、ノマちゃんが。おいしいわね」
「そうでしょう! おいしく食べていただくために、食べすぎてもお腹にたまらないよう工夫していますの!」
またも私の考えていることに答えてくれるノマちゃんは、まるで鼻が高くなっているみたいだ。
どうやら、ノマちゃん考案のこのパフェにはいろんな工夫がしてあるみたいだ。
朝からでも食べやすいし、お腹にたまらないなら女性としても嬉しい。
「軽食に持ってこいって感じだね」
「それより……見て下さい、あちらを!」
ノマちゃんは身を寄せ、私たちに耳打ちをする。
見てくれ……と視線が指す先にいるのは、コーロランだ。
「どうですの!?」
どうと言われても……
「かっこいい……んじゃ、ないかな」
「ですわよね、ですわよね! 素敵ですわよね!」
興奮した様子で、ノマちゃんが喜んでいる。コーロランが褒められたことがそんなに嬉しいらしい。
母親かな?
コーロランラブのノマちゃんにとっては、同じ教室で働くイケメンがさらにイケメンになっているのがとんでもなく嬉しいのだろうな。
「でも、あれじゃライバル多いんじゃないの?」
「えぇ、それはそうなんですけどもね」
遠目に見ている分には、面白いけど……ノマちゃん当人にとっては由々しき問題だ。
コーロランには婚約者がいるけど、その婚約者とは仲が良くないらしい。コーロランが婚約者といるところなんて見たことないし。
もちろん、婚約者と仲が良くないから彼を狙っている……というわけではない。彼が王族でも、婚約者がいても、関係ないのだノマちゃんには。
部屋で何度コーロランのどこがいいかを聞かされたことか。
ただ、当然コーロランを狙っている子は他にもいる。そこに王族とか婚約者云々の話があるのかはわからないけど。
「ですが、わたくしめげませんわ!」
この前向きなところが、ノマちゃんのいいところだよね。
この分なら、もしかして二人の距離って縮まっていたりして?
「あ、エーテンさん」
「!」
コーロランの話をしていたからだろうか……ふと、ノマちゃんを呼ぶ声があった。
それは、近くに寄ってきたコーロラン本人によるものだ。
「こっ、こここ、こここっ……」
ノマちゃんがすごい動揺している。にわとりかな?
「あちらのお客様が、聞きたいことがあるそうなんだ。行ってもらっていいかな」
「え、あ、え、えぇ、かし、かしこまりまいりましたわ!」
コーロランの微笑みを受け、ノマちゃんは顔が真っ赤だ。言葉遣いも変になっている。
こくこくとうなずいたノマちゃんは、そそくさとあちらの席に行ってしまった。さっきまでのめげない姿勢はいったいどこに。
この分だと……全然距離縮んでないな。
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