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第十章 魔導学園学園祭編

706話 みんな楽しんでいるよね

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 私たちの番が来た。
 運のいいことに、なのかはわからないけど、五人用の席が空いていたので私たちは、五人で教室に入ることに。

「おかえりなさいませ!」

 教室に入ると、かわいい女の子たちの声。
 挨拶が「いらっしゃいませ」じゃなくて「おかえりなさいませ」なのは、私とフィルちゃんの強い要望によるものだ。

 ちなみに、お客さんが帰るときは「いってらっしゃいませ」だ。

「って、エランちゃん?」

「やっほ」

 お迎えしてくれたのは、クレアちゃんだった。
 うんうん、教室を出る前にも見たけど、やっぱり似合っているよね。

 なんていうか、桃色の髪が黒白のめいど服に妙にマッチングしている気がする。とてもいいよ。

「な、なんで……せ、生徒会の先輩まで……」

「まあ、いろいろあってそこで一緒になったんだよ。案内お願い」

「え、あ、うん」

 戸惑いながらも、クレアちゃんは席に案内してくれる。
 五人が座れるテーブルの前に案内され、私たちは座る。その間も、歩き方や席への誘導の仕方に至るまで、その仕草は完ぺきだった。

 さすがは『ペチュニア』の看板娘にして、クラスの接客担当のリーダー。
 私も見てはいたけど、こうして実際に接客を受けると……そのすごさを、実感する。

「では、こちらがメニューになります。お決まりになりましたら、近くの店員をお呼びください」

「はーい」

 去っていくクレアちゃんを見送り、私はメニューを開く。
 さっきまでは、この中で注文されたものを作っていた。でも今は、自分が注文する側に回っている。

 なんとも変な気分だ。

「さあて、どれにしようかなー」

「……見たことない名前ばかりね」

「うわー、絵うまーい」

 同じくメニューを見るペルソナちゃんと弟くんは、それぞれ真逆の反応。なんか新鮮だ。
 メニューに書いてある食べ物の名前は、確かに見ただけじゃどんなものかはわからないだろう。でも、名前の隣に絵が描いてある。

 その絵を見れば、どんな料理かわかるわけだ。
 ちなみに、絵を描いたのは……これが意外にも意外、筋肉男ことブラドワール・アレクシャンだ。
 はじめは、女の子の中で絵を描こうという話になった。その中で、うまい子もいたんだけど……


『んン? やれやレ……そのような絵、子供でも書けル。貸してみたまエ』


 そんなことを言いやがった筋肉男の絵は、うまかった。まるで本物がそこにあるんじゃないかというくらいに。
 悔しいけど、クラスの中で一番絵がうまかった。

 本人曰く「芸術は極めておくものだヨ」とほざいていた。
 なんで、これまで協力的でなかった学園祭準備に手を貸してくれたのかはわからないけど、まあ気まぐれだろう。学園祭に参加しようなんて気はないらしい。

 その証拠に、今日は朝からどっか行ってしまっている。

「それにしても、えらく賑わっているじゃないか」

 教室を見渡して、タメリア先輩が言う。
 確かに、私が出てった時よりもお客さんが多いようだ。

 朝に比べれば、人が多くなる時間帯でもあるからな。みんな大変そうだけど……

「楽しそうだな」

 みんな、嫌そうにやっている子はいない。楽しそうだ。
 みんなでなにか一つのことをやるっていうのは、気持ちがいいものだよね。

 私たちは、それぞれメニューを決めていく。
 弟くんは、どれにしようか悩んでいるようだけど。

「そういえば、生徒会の他のみんなはどんな調子なの?」

 出された水を飲みながら、私はタメリア先輩に聞いた。
 なんとなく、メメメリ先輩やリリアーナ先輩が学園祭を楽しむ姿は想像できるんだけど……ゴルさんとシルフィ先輩は思い浮かばないんだよな。

 みんな、どう過ごしてるんだけど。

「さすがに、俺も逐一みんなの行動を把握してるわけじゃないからなぁ。
 ま、ゴルとリリアーナは一緒にいると思うよ」

「でしょうねー」

 学園が再開してから、ゴルさんはリリアーナ先輩にやけに素直になった。
 今回も、きっとゴルさんのほうから誘って二人で学園祭デートをしていることだろう。ていうかウチに来たし。
 くう、うらやましい。

 まあ、うらやましいっていっても私、別に彼氏がほしいわけじゃないんだけどねー。この年頃なら、そういう話をしている子もいるけど。
 でも私は、女の子同士で話していた方が楽しいし。……いやでも、他の子はどうなんだろう。

 クレアちゃんやナタリアちゃん、ルリーちゃんは、彼氏とかほしいと思ってるんだろうか? ノマちゃんほどおおっぴらじゃないにしても。

「あ、そういえばシルフィがあの人魚の子と一緒に歩いてるの見たぞ」

「! リーメイと?」

 思い出したように、タメリア先輩が言った。人魚の子っていうのは、もしかしなくてもリーメイのことだ。
 リーメイと、シルフィ先輩か……

 元々リーメイには、生徒会の助っ人として私が呼んだ。半分はシルフィ先輩頑張れって意味でも。
 そんな二人が一緒に行動しているのか……これは、むふふ、良い感じなんじゃないですかー?

「決めたー!」

「はいはい、大きな声出さないの」

 そんなこんなで、弟くんは注文するものを決めたようだ。
 ちなみに、さっきからルベルフ先輩はペルソナちゃんに話しかけているけど、ガン無視されている。どんまい。

 みんな注文するものが決まったところで、私は近くのめいどさんを呼んだ。

「すみませーん」
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