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第十章 魔導学園学園祭編
705話 イカれた一年生
しおりを挟むペルソナちゃんと弟くんと一緒に自分のクラスの列に並んでいたら、タメリア先輩が前に並んでいた。
「先輩、来てくれたんですね」
「あれだけ派手に来て来てって言われたらね。……それよりも」
私は生徒会室で、メンバーにクラスの出し物に来てくれ来てくれと訴えていた。
そのおかげあってか、タメリア先輩はこうして足を運んでくれたわけだ。ありがたいよね。
そんな先輩は、私の身体をジロジロ見ていた。
「いやん」
「いやんじゃねえよ。
いや、本当にその服のまま出歩いてるんだなと思ってさ。それとも仕事の一環?」
「ううん、休憩中」
私はこの服で学園祭を過ごす、と言っておいたから、生徒会メンバーならばそれを知っている。
でも、本当に着ているとは思っていなかったようだ。驚いている。
そんな先輩の肩に、気安く手を置く人物が一人。
「なになに、知り合いかよこのかわいい子。誰誰?」
と、私を見ながらとても見る目のあることをいう男の人。おそらくは……っていうか確実にタメリア先輩の知り合いだろう。
むしろそうじゃなかったら怖い。
彼は先輩の脇腹をツンツンやっていたが、先輩に手を叩かれた。
「誰、ってお前も見たことあるだろ」
「あん?
…………あぁー、ゴルドーラ生徒会長と決闘やらかしたイカれた一年生じゃん!」
見たことある……そう言われた男の人は、私の顔をじっと見て……思い出したかのように、手を叩いた。
それは、間違ってはいないけどとても不名誉な言葉だった。
ゴルさんと決闘したのは事実だけど、誰がイカれた一年生だって!? 噛むぞ!
「そっかそっか、なんか見たことある黒い髪だと思ったけど、制服じゃないから一瞬わかんなかったぜ。確かエラン・フィールドちゃんだっけ。
俺はアルノン・ルベルフ。タメリアの親友……いや、心友さ!」
「離れろ」
悪びれる様子もなく、男の人は言う。
そして、親しげにタメリア先輩の肩に腕を回した。その様子に、先輩は鬱陶しそうな様子。
なんというか、その態度……タメリア先輩の友達だなって感じがする。でも先輩が嫌そうな態度なのが、なんか新鮮だ。
「いやぁ、タメリアから聞いてるよ。生徒会長と決闘やって生徒会に入った一年生……面白くて見ていて飽きないってさ。いやぁ、一度会ってみたかったんだよね」
「そ、そうなんで……」
「あ、隣の子もかわいいじゃん! ねえねえキミ名前は!?」
イラッ。この人人の話聞かねえな。
タメリア先輩も相当フレンドリーな人だと思っていたけど、この人はなんか……それ以上だな。
「……」
あ、ペルソナちゃんが私の後ろに隠れてる。かわいっ。
「けど、その子も珍しい髪の色してんね。ウチの学園の生徒……いや、この国の住人でもないかな?」
「うん、他の国から来たんだって」
「へぇー、わざわざ学園祭に来てくれたっての」
そういえば、ペルソナちゃんは弟くんと二人……なんだろうか。親とかは見当たらないけど。
たった二人で、国を越えてここにまで来たのか?
すごいな、学園祭効果。
「魔導大国のこの国の、魔導学園……その学園祭となれば、興味のある人は多いですよ」
「なるほどねぇ」
住んでいる身としてはいまいち実感が湧かないけど、魔導大国だもんなあこの国。
それに、魔導を極める一番大きな学園がここ。そのお祭りとなると、そりゃ大盛りあがりだ。
まあみんながみんな魔導の出し物してるわけじゃないけどね。ウチみたいに。
「せっかくならエランちゃんの接客受けてみたかったけど、まあ仕方ないか」
「あら、いつも生徒会でお世話してるじゃないですか」
「……そうだっけか」
タメリア先輩が、考え込むように黙ってしまう。
私だって、いつも生徒会で紅茶淹れたり……してないな。初めの頃はともかく、今じゃリリアーナ先輩担当だし。
他に、それっぽいことは……してないのかもしれない。
「しっかし、生徒会に一年生が入るなんてねぇ。ま、あれだけの成果を出したら当然とも言えるけどさ」
「ゴルのお墨付きでもあるしな」
やっぱり、生徒会に一年生って珍しいんだな。私は私が思ってる以上に有名になってるっぽい。
ま、どんどん私の名前が売れればいいと思うよ!
「あ、そろそろだよ」
結構列が並んでいたと思っていたけど、こうして話しているとあっという間だ。
次の番で先輩たち。その次が私たちだ。
「なあなあ、せっかくだし一緒に入ろうぜ。野郎二人より、女の子も一緒のほうが映えるじゃんよ」
「そもそも二人で来てたじゃんか」
「それはそれ。せっかくなんだからさぁ」
と、ルベルフ先輩はチラチラと私たちを見てくる。タメリア先輩も困った顔だ。
私は別にいいんだけど……
「ペルソナちゃんはどう、怖くない?」
「私は……ど、どちらでも……」
「ボクはいいよー!」
「んじゃ、五人分の席が空いてたらね」
とりあえず、私たち三人とタメリア先輩たち二人……合わせて五人分の席が空いていたなら、一緒でいいだろう。
そんな私たちの会話を聞いて、こちらに視線を向ける子がいた。
「あれ、エランちゃん? 休憩中なんじゃ?」
看板を持っている、クラスメイトのミニン・エルバーくんが話しかけてきた。
多分、クラスの男の子の中で一番背が高い。そのため、目立つからと看板係になったのだ。
なったとは言っても、勝手に決めたわけじゃない。むしろ自分から立候補してくれた。
背中に大きな白い翼が生えている。亜人だけど、有翼人は翼を出したり仕舞ったりできるようで、その点から獣人ではないかと見方もあるけど、長いことその議論は決着がついていない。
「まあ、せっかくだしお客さんの立場になってみようかなって」
「へぇえ」
と、少し会話を交わして……いよいよ、私たちの晩が訪れた。
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