上 下
711 / 781
第十章 魔導学園学園祭編

699話 デートのお邪魔はしませんとも

しおりを挟む


 ベンチで休んでいると、ガルデさんとフェルニンさんと出会った。
 学外からも人は多く来るから、二人も来るかなぁとは思っていたけど……まさか、初日に会えるとは。

 それにしても、二人で学園祭に来るなんて。

「大丈夫だよフェルニンさん、わかってる。わかってるから」

「なにもわかってなさそうなんだが」

 さっきの反応を見るに、デートであることにフェルニンさんはまんざらでもなさそうだ。
 一方のガルデさんは……

「仕方ないとはいえ、ケルとヒーダも来れりゃよかったのになぁ」

「……」

 まったく気にしていなさそうだ。

「なら、別に今日学園祭に来る必要はなかったんじゃない?」

 学園祭は五日もあるんだ。なら、予定が合わない仲間がいるなら日程をずらせばいい。
 でも、そうはできない理由があるから、今日来たんだろう。

「いや、それもそうなんだがな。フェルニンが、丸々予定が空いているのが今日だけだったんだ」

「ほほぉ」

「ったく、Aランク冒険者様はあちこち引っ張りだこってな」

 なるほど……みんなで予定を合わせられなかったのは、それが原因か。

 ガルデさんたちは、他にも三人で予定を合わせることはできるという。でも、フェルニンさんは鏡視下予定が空いていない。
 だから、来るなら今日しかないわけだ。そこでたまたま、ガルデさんも予定が空いていたと。

 フェルニンさん、今日しか空いてないのか……そういえば。
 魔導士の冒険者は貴重だから、あちこちのパーティーに助っ人を頼まれるのだと、言ってたっけ。

「なるほどね。だからガルデさんをデートに誘ったわけか」

「だ、だからデートじゃない!」

「ケルさんとヒーダさんもいないし、二人には悪いけどおあつらえ向きだったってわけだねぇ」

「話を聞いて!」

「二人とも、こそこそとなんの話をしているんだ?」

 フェルニンさんったら、ごまかさなくてもいいのに。私はわかってるから。
 けど、肝心のガルデさんにそんな気が見られないのがなぁ。フェルニンさんみたいな美人と一緒なら、男なら舞い上がって喜びそうなものだけど。
 なんなら私だって舞い上がる。

 それとも……フェルニンさんが美人すぎて、逆に冷静になっちゃってるとか?
 相手がまさか、自分とデートしているなんて思わないわけか……美人過ぎるってのも、困ったもんだ。

「大丈夫。私はフェルニンさんを応援してるよ」

「エランちゃんの中ですさまじい勢いで話が進んでいるように思うんだけど」

「私は恋する女の子の味方だからね!」

 ていうか恋バナ大好き。もっとちょうだい。

 ……あー……でも、ノマちゃんがコーロランのことを語るようなアレは、勘弁してほしいかなぁ。
 寝不足になるくらい語られるのはさすがにね。

「ところでエランちゃん、その恰好は?」

 と、話に入ってこれないガルデさんが私を……私の服を、指さした。
 やっぱり、触れちゃうよなぁ。

「これは、私のクラスの出し物、めいど喫茶の制服だよ」

「めいど喫茶」

「そ。めいど服。かわいいでしょ」

 私はスカートの端をつまみ、その場で一回転。
 ふふん、と決め顔をして、二人を見つめた。

「うむ、確かに似合っているな。ということは、エランちゃんは今その服を着て宣伝して回っているわけだ」

「うん、宣伝はしてるよ。休憩中だけどね」

「? ……休憩時間に、その服を着ているのか?」

「そだよ」

 周りを見ても、自分のクラスの制服だろう服を着ている人はいるけど、さすがにめいど服ほど特徴的なものを着ている人はいない。
 だからだろう。さっきから私に視線が注目しているのは。

 ……もういっそ、この格好で走り回って師匠を大声で呼んでしまおうか。いるならさすがに気付くだろ、多分。

「相変わらずだなー、エランちゃんは」

「その相変わらずってのがどういう意味なのかわかんないけど」

 ケラケラと笑うガルデさん。その顔を、フェルニンさんはじっと見つめていた。
 ああもう、これ絶対そういうことじゃん。

 二人に会えたのは嬉しいけど、二人のデートを邪魔するのは忍びない。

「じゃ、私はそろそろ戻ろうかな。二人とも、私のクラスにも行ってみてよ」

 私は立ち上がり、お尻をパンパンと払う。
 正直道がわかんないけど、二人にいらない心配をさせないように強がってみせよう。

 ついでに、宣伝も忘れない。

「もちろんそのつもりだよ。けど、エランちゃんに接客はしてもらえないのか」

「どっちみち私は料理担当だから、表には出ないよ。
 でも、この時間ならキリアちゃんが接客やってるんじゃないかな」

「へぇ、キリアちゃんか。あの子とはあれ以来会ってないなぁ……久しぶりに行ってみようか」

 以前、授業の一環でガルデさんたちとダンジョンに行った時、キリアちゃんとルリーちゃんも同行した。
 その時に仲良くなったけど、あれ以来会う機会はなかったみたいだ。

 キリアちゃんは接客担当だし、今行けば彼女の接客時間だから、会えるだろう。
 あはははと、私とガルデさんは笑う。

「……え、料理担当で誰に見せるわけでもないのに、その服を着ているの?」

 ……そこへ、そんなフェルニンさんの言葉が聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

愛人がいらっしゃるようですし、私は故郷へ帰ります。

hana
恋愛
結婚三年目。 庭の木の下では、旦那と愛人が逢瀬を繰り広げていた。 私は二階の窓からそれを眺め、愛が冷めていくのを感じていた……

処理中です...