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第九章 対立編

652話 やりたいったらやりたい

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 他学年試合、学園祭……楽しそうな行事が目白押しだ。
 でも、他学年試合はできるだろうけど学園祭は開催が難しいかもしれないという。

 それはいったいどういうこと!?

「さっきも言った話だ。今学園は休校している……他学年試合は年末にあるから問題ないだろう。だが、学園祭は本来は今くらいから準備を始める時期なんだ」

「つ、つまり……準備をする期間がないから、学園祭ができない……!?」

「そういうことだ。というか、確か本来なら来月開催だったか」

 そ、そんな……学園が休校してて、そのせいで準備期間がなくなる……そのせいで、学園祭ができないなんて……

 体から力が抜けていくのがわかる。
 こんな楽しそうなお祭りができないなんて、ヌカ喜びもいいところだよぉ。

 今からでもなんとかならないかなぁ。

「私も、何度か訪れたことはあるし、去年は自分が開催する側に回った。いやあ、あれはいいものだ。それぞれのクラスで出し物を出すんだ。魔導を主にしたもの、逆に魔導とは関係ないもの……まあ、魔導学園だしほとんどが魔導に関係あるものだったが。魔導大国の魔導学園が開催する学園祭とあって、来賓の数も凄まじい。もちろん、貴族も平民も関係ないぞ。魔導大会が武なら、学園祭は単純に楽……それぞれ趣向が違うから、訪れる人の傾向もまた違ってくる。どちらが多いとは言えない、どちらにもいいところがあるということだな。それに、魔導を使用した体験イベントなんかもあって、一般人も参加できるものなんかもあったな……子供や、魔導を扱うことのできない者には魔導具を貸し出し、実際に魔導を体験してもらう。日常では扱うことのない魔導を好きに使ってもらうことで、魔導の幅を広げたりその人のイメージ力を育んだり、そういった効果も期待できるし、学園の生徒主体となって盛り上げる生徒たち以外にも訪れる人たちも楽しめるというのが魅力的な行事で……」

「めちゃくちゃしゃべるじゃん!」

 学園祭とはなんなのか、知らない私へ説明するために教えてくれているんだろうけど……すんごいしゃべる!
 開催できないかもって言ってたじゃん! なのになんでそんな楽しそうな話するの!

 学園の人以外とも交流できる場所……となれば、肝っ玉母さんタリアさんや冒険者のガルデさんたちも、来れるってことだよね。
 貴族だろうとそうじゃなかろうと、出入りは自由のはずだ。

 そんな人たちと、仲良く魔導の出し物をするだって!?
 そんなん、楽しくないわけないじゃん!

「えーっ、やりたいー! 学園祭やーりーたーいー!」

「わ、私に言われても……あとそんな駄々をこねるように暴れられても」

「レーレさんがすんごい楽しそうに話すからじゃーん!」

「それは、すまん」

 でも実際に楽しかったんだ……と、私に聞こえないよう言ったつもりだろうけど、ちゃんと聞こえてるからな!

「ていうかー、魔導大会やっばかりなのにー、もう来月に学園祭とかー、早すぎませんかー」

「魔導大会は国を挙げての行事だからな、それはどうにも。
 というか、キミは生徒会なら、魔導大会の後に学園祭があることは聞いているだろう?」

「……」

 レーレさんの指摘に、動きが止まる。
 学園祭……うーん、そんなこと言ってたような、言ってなかったような……どうだったかなぁ。

「もしかして、魔導大会が楽しみすぎて他の話題が頭に残ってない?」

「……かもしれないです」

 音もなく、レーレさんが呆れた様子が見えた。
 なんだよう、しょ、しょうがないじゃないか! 国内外から集まる魔導士の存在に、ワクワクしてたんだよ!

 しっかし、もし学園祭があると聞いていても、私は魔導大会に出ていただろうけど。

「というか、言われなくても生徒会なら学園の行事がいつあるかくらい把握しておいたほうがいいぞ」

「ごもっともです」

 レーレさんの正論に、ぐうの音も出ない。参ったねこりゃ。
 とりあえず、暴れるのをやめて座り直す。バタバタしたから服が汚れちゃった。魔法できれいにしとこ。

「魔導大会に学園の生徒があまり出ない理由の一つは、学園祭の準備に意識を向けているからだ。
 ま、今年はいつもよりも出場者が多かったが」

 説明を続けてくれるレーレさん、ありがたい。
 なるほど、大会に出ないのは、他は凄腕の魔導士ばかりだから萎縮して……という理由以外にもあったのか。

 確かに、学園祭の準備と並行してってのは難しそうだ。レーレさんの言うようにわりと出場してたけど。

「だからみんな、嘆いているさ。魔導大会の前後で、準備を進めるはずだった計画が、すべてご破綻になったんだ」

 休校になった以上、学園で準備することはできない。
 寮の部屋でなら、それはできるかもしれないけど……実際に開催するかもわからない学園祭のために、準備を進める人は少ない、か。

 おまけに、生徒会長であるゴルさんは入院、生徒会面々はそのお見舞い、ザラハドーラ国王が亡くなり新王を名乗る男が国中の人を洗脳して……と、いろいろありすぎた。
 これじゃ、学園祭どころではないのは仕方ない。

 でも……

「でも……でもやりたいんだよう!」

「だから私に言うな」

 どうにかなりませんか! 初めての大きなお祭り、やりたいんですよ! 学園祭がしたいです!
 なんとか、いい方法がないか考える。考える、考える!

 国の復旧に追われて休校が終わらないというのなら……そうだ、簡単なことだ!
 私が復旧作業を手伝えばいいんじゃないか!
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