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第八章 王国帰還編

539話 あんまり考えないようにしよう

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 常にノマちゃんに付き従っているというカゲ・シノビノくん。
 あまり深く考えないようにした。

「そういえば、カゲくんってノマちゃんと同じ組なんだよね?」

「はい、光栄の極みです」

 当たり前のようにノマちゃんの隣を歩くカゲくん。
 彼が隣にいることに、ノマちゃんは驚きの欠片も見せない。

 もしかして、クラス内でも常に一緒なのだろうか。
 ……コーロランラブのノマちゃんにとって、他の男が近くにいることはいいのだろうか?

「おや、その視線はいったい?」

「もしやフィールドさん、カゲのことを……!?」

「いや、そういうんじゃないけど」

「ふふ、いけませんわよフィールドさん。カゲの恋愛対象は男性なのですから」

「そういうんじゃないって言ってんでしょ!」

 私がカゲくんに気を持っていると思われているのだろうか。
 美形だとは思うけど……アタシのタイプでは、ないんだよなぁ。

 それからノマちゃんは、なぜか私にウインクをした。

「大丈夫ですわ、恋とは壁が厚ければ厚いほど、高ければ高いほど燃え上がるものですから!」

「話を聞いて!」

 違うって言ってんだろ金髪ドリル!
 だいたい、仮にそうだとしても本人の居る前でする話じゃないよ!

「もー。
 ……ところで、カゲくんは今の国王についてどう思ってるの?」

 私は声を抑えて、ノマちゃんの耳元に話しかける。

「実は、カゲも今の王体制に対して、疑問を持っていないようですの」

「ほほぅ」

「わたくしがコーロラン様の話をしても、おかしいんですのよ。以前でしたら、彼は王族なのだから困難ですがわたくしなら問題ない、と励ましてくれていましたのに。彼はわたくしにはふさわしくない、なんて言うんですの」

 ノマちゃん、想い人の話をカゲくんにしていたのか……
 ま、同性のアドバイスもあったほうがいいし、自分の従者ならそういう話もするのかな。

 それにしても、以前とは反応が違うのか。ノマちゃんがふさわしくないんじゃなく、コーロランがふさわしくないってのが、引っかかる。
 それはつまり、コーロランたちは今や王族でもなんでもない……みたいな認識になっているってことか?

「あんなすました顔してる人でも、洗脳されちゃってるのか」

「カゲは完全無欠のイメージがありましたが、思わぬ弱点発見ですわ」

 まあ、私が無事なのはその間国から出でいたからだし、ノマちゃんは"魔人"だからだろう。
 それに私は、知らずのうちに洗脳されかかっていたみたいだし。リーメイのおかげで無事だったけど。

 ……って、それもノマちゃんに伝えておかないとな。

「ノマちゃん、あの国王か、レーレちゃんには気を付けてね」

「……どちらかが、主犯のようなものだと?」

 さすがノマちゃん。今のやり取りだけで、国王かレーレちゃんが国民を洗脳しているのだと察したようだ。
 私は小さくうなずく。ノマちゃんは、眉を寄せていた。

「わたくしは、どちらもそのようなことをするとは思えませんが……」

「それはまあ、私もそうなんだけど。ただ、リーメイが……」

「お二人とも、王城へ着きましたよ」

 ぼそぼそと話す私たちに、カゲくんの声が割り込む。
 どうやら、もうお城に着いてしまったようだ。大きくそびえたつ、白い建物。

 ただ、ノマちゃんはこのお城で暮らしているし、私はノマちゃんから魔導具を返してもらわないといけない。
 このまま敷地内へと入れるけど……そうはいかないカゲくんは、持っていた荷物を私たちに差し出した。

「それでは、私はここで。敷地内に足を入れるわけには、いきませんので」

「わたくしのお客だと言えば入れると、いつも言っていますのに」

「いえ、恐れ多いことです」

 きっちりしているというか……カゲくんは、お城には敷地内にも入らないと決めているようだ。
 まあ、お城なんて本来、貴族でもおいそれと足を踏み入れていい場所ではない。そのへんわきまえているのか。

 ……今のやり取りを聞くに、カゲくんはちょいちょいノマちゃんと行動を共にしているみたいだ。
 あんないきなり、隣に現れるのかな……ま、ノマちゃんが気にしてないならいいんだけどさ。
 私は荷物を、受け取る。

「それでは、失礼します」

「ご苦労様でしたわ」

「エラン様も、また」

「あ、うん、はい」

 ぺこりとお辞儀をして、カゲくんは背を見せて去っていく。
 ははぁ、すらっとした白髪美形……お辞儀の一つでも様になるなぁ。

 カゲくんを見送り、私たちは城へと歩き出す。さすがに、お城のノマちゃんにはくっ付いて行かないようだ。
 途中、門番や見張りの兵士さんが挨拶をしてくる。
 私に、というよりはノマちゃんに、だけど。

「お勤めご苦労様ですわ」

 そんなノマちゃんの笑顔は、兵士さんたちの心のオアシスであるに違いない。
 ほら、あそこの兵士さんなんて顔を赤くしちゃってかわいいな。

 ……あ、違う。あいつノマちゃんのおっぱい見てる!

「ここが、わたくしの部屋ですわ」

 買ってきた食材を料理人たちのところに持っていき、私たちはノマちゃんの部屋へと向かった。
 当然と言えば当然だけど、料理を作る専門の人たちがいるみたいだ。

 案内された部屋は、今ノマちゃんが言ったように、ノマちゃんに割り当てられた部屋だ。
 正直、ノマちゃんには魔導具持ってきてもらえばよかったんだからお城の中に入る必要まではなかったんだけど……

 ま、今更だよね。

「えっと、入っていいの?」

「もちろんですわ!」

 その上、部屋の中にまで招かれてしまった。
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