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第八章 王国帰還編

514話 ババーンと登場ですわ!

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「ババーン、ですわ!」

 どこか懐かしい、そして賑やかな声。
 バンッ、ととbらが大きな音を立てて開き、条件反射で私たちは振り向く。

 部屋に入ってきた、人物。それは……

「の、ノマちゃん!?」

 金色の髪を、ドリルみたいにして両側から垂らしている女の子。
 魔導学園の寮では私と同室でもあった、ノマ・エーテンちゃんがそこにいた。

 まさかの人物の登場に、私は開いた口が塞がらない。
 なんで、ノマちゃんがここに……? それに、なんだあの服装。

 一言で言えば……メイド服ってやつだ。この部屋にいる、メイドさんたちが着ているものと同じ。
 ただ、なぜかノマちゃんのものはスカートの丈が短い。
 それに、なんか胸のあたりがけしからんことになっている。

「へ、変態……」

「む、なにか?」

 私はつい、国王に視線を向けていた。声が聞こえていないのはよかったんだか。

 いやだって……ノマちゃんだけあんな、きわどい恰好しちゃって。
 これ、どう見ても国王の趣味でしょ。

「あの、これは……」

「フィールドさーん!」

「ごぶふぁ!?」

 なぜここにノマちゃんがいるのか、なぜノマちゃんがこんな格好をしているのか……それを国王に聞こうとしたところ、背後から衝撃が伝わる。
 ノマちゃんが、思い切り体当たりしてきたからだ。

 本人には、体当たりなんて認識はなくても……頭から突っ込んでこられては、これは再会の抱擁ではなく攻撃だ。
 しかも今のノマちゃんは、普通の人間とは構造が変わっちゃってるんだし……

「ぅ、おぉおお……の、ノマちゃ……」

「ぶぇええええっ、じ、じんばいじまぢだのよぉ!」

 これにはさすがに一言申したい……と、私の腰に抱き着いているノマちゃんに振り向くと……震えた声が、返ってきた。
 私の腰に顔を押し付けて、ぐすぐすと鼻をすすっている。

 これは……泣いて、いるのか。なんて言ってるかは正直、聞き取れないけど。
 ワンワンと声を上げて泣いているノマちゃんの姿に、私もすっかり怒る気力が失せてしまった。

「……ん? の、ノマちゃん! は、鼻水が!」

「ぶぇ……!」

「わー!」

 泣くのはいいんだけど、私の服にめちゃくちゃ擦りつけられてる!
 私の言葉に顔を上げたノマちゃんは、そのきれいな顔を鼻水と涙と涎とでぐちゃぐちゃにしていた。

 いや、再会を喜んでくれるのはいいんだけどさ! ……喜んでるのかこれ?
 とにかく、これちょっといろいろヤバいって!

「うぅ……ぼ、ぼうしわけ、あびばべんば……ぐすっ、ちーん!」

「謝ってるのはわかるけどその直後になにしてんのさ!?」

 ノマちゃんは豪快に、私の服で鼻をかんだ。もうぐちゃぐちゃだよ!
 隣ではヨルが笑いをこらえているし。なに見てんだこの野郎!

「ノマちゃん、とりあえず落ち着こう。いろいろ聞きたいこともあ……うわきったな!」

「びぇえええええ!」

「あー、泣ーかした」

「これ私のせい!? また感極まったわけじゃなくて!?」

 泣いてしまったノマちゃんは、そう簡単には落ち着きそうになかった。
 心配し過ぎだ……とは思ったけど、すぐにそんな考えはなくなった。

 私だって……もし逆の立場だったら、それこそ泣き喚くくらいに心配するだろう。
 以前ノマちゃんが"魔死事件"に巻き込まれた時……ノマちゃんが死んだと思って、私は気を失うくらいにショックを受けた。

 あれと同じような気持ちだったとしたら……ノマちゃんを無理やり引きはがすことは、できなかった。

「よーしよし、大丈夫だよノマちゃん。私はここにいるからね」

「そうだよノマおねえちゃん。知らないおねえちゃんがここにいるからね」

「そうそう……
 ……!?」

 しがみついて離れないノマちゃんの頭を撫でる私と、もう一つの手。
 いつの間にかそこにいた人物に、私はぎょっとした。見れば、私とは別にもう一人ノマちゃんの頭を撫でているではないか。

 ヨルでも、リーメイでもない。というか、二人に比べて手が小さい……

「えっと……どなた?」

「?」

 そして、体も小さかった。幼女……とまではいかないけど、小柄な私よりも全然小さい。
 こんな子供が、どうしてこんな……王城の、王の間にいるのか。

 そんな疑問は、目の前で腰に手を当て小さな胸を張る彼女自身が、解決してくれた。

「わたしは、レーレ・ドラヴァ・ヲ―ム! レイド・ドラヴァ・ヲ―ムの娘よ!」

「おぉー。レーレちゃーん!」

 どやぁ、と擬音が付きそうなくらいに堂々とした姿。彼女が着ている水色のドレスは、なんともきれいだ。
 そして、その名乗りにデレデレの国王……

 えっと……レイド・ドラヴァ・ヲ―ムが新しい国王の名前で……その娘ってことは……
 この金髪少女が、国王の娘……つまり王女様ってこと!?

 王女がこの部屋にいると兵士が言っていたのに、それらしき人がいなかったのが気になっていたけど……それは、ノマちゃんと一緒にいたからか。

「いやいや、なんでノマちゃんがここにいて、しかも王女と一緒にいて、それどころかノマお姉ちゃんなんて呼ばれてるの……?」

 なんだろう、この状況……再会したノマちゃんは号泣し、それを慰めている私と王女。
 ノマちゃんがここにいる理由も、王女と仲良さげな理由も、気になることがありすぎて……頭がおかしくなりそうだ。
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