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第六章 魔大陸編
398話 脅威との対決
しおりを挟むドォオオオオオ……!
上空に放たれたのは、クロガネの竜魔息だ。高密度の魔力の塊を、一気に放出する。
正確には、クロガネが狙ったのは空ではない……空に現れた、"あいつら"だ。
クロガネの攻撃が直撃すれば、ただでは済まないだろう。そして、竜魔息はちゃんと命中した。
なのに、なんでだろう……全然、安心できないのは。
「おい、今の……」
「あぁ……クロガネが、不穏な空気を感じたからね。とりあえず一発かましといた」
「思い切りよすぎるだろ!」
そうか、ルリーちゃんとラッへからすれば、いきなりクロガネが上空に攻撃したように見えるのか……
私だって、クロガネに言われなきゃ、上空の邪悪な気配には気づかなかったわけだし。
私たちに気付けないような気配に気づくなんて……やっぱり、クロガネはすごいや。
「な、なんだ今の……」
「構うな! 行け!」
上空の爆発に、魔族たちは一瞬あっけにとられるけど……すぐに、戦いを再開する。
あっという間に激化していく戦いは、ほんの少しのことじゃ止まりすらしない……ってことか。
「あっ、煙が晴れます!」
ルリーちゃんが指差す先では、クロガネの攻撃により上がっていた爆煙が、晴れつつあるところだった。
だんだん、シルエットもはっきりしてきた。
そこにいたのは、やっぱり……
「あーっ、びっくりした。なんだってんだ急に」
「……エレガ!」
パンパン、と服の汚れを払いつつ首を振るのは……予想していたとおり、エレガだ。
白い、飛行型の魔獣の上に乗っている。クロガネの攻撃を受けて、まだ飛んでいられるなんて……頑丈な魔獣だ。
それでも、かなりのダメージは通っているはずだ。
「なんだってだ、いきなり……」
「魔族の流れ弾にでも触れたか……?」
「おーおー、すげー暴れ回ってやがるな」
エレガ以外にも、ジェラとレジーの姿も見える。
ガローシャの、言ったとおりだ。時間こそ違ったけど、彼女の言った人物がそこにいる。
……って、ことはだ……
「わー、あれが魔族か! あはは、面白い姿してる!」
エレガたちに隠れていた影から、ひょっこりと顔を出す女の子がいた。
その子は、まるで子供のようにはしゃいで、下を見回していた。その姿を見て、私はガローシャの言葉が嘘じゃなかったことを思い知った。
なにかの間違いだと、思っててほしかった……
「……ビジーちゃん……!」
前に、王都内であった黒髪黒目の小さな女の子……私をお姉ちゃんと言ってくれたりして、過ごした時間こそ少ないけど仲良くなったと、そう感じていた。
なのに……なんでキミが、そんな奴らといるんだ……?
あいつらは、まだ私たちに気づいていない……このまま、隙をついて倒すか。それとも……
「今の……あのドラゴンの仕業か。どっちかの魔族の……ん、ドラゴン?」
「うっは、すげー初めて見た! 魔物や魔獣とも違って……たん?」
だけど、そりゃそうか……自分たちを撃ってきたのがなんなのか、誰なのか。理解するために探すよな。
そしたら、そこにいるクロガネを見つける……そして……
「……なんで、お前らがここにいる?」
私たちのことも、見つかっちゃう、か。
「それはこっちの台詞なんだけどな」
「……あのときのエルフ。それに、人間の……やっぱり、ダークエルフと一緒に、魔大陸まで飛ばされていたのか」
ラッへもエレガたちを認識し、ジェラが私たちを見て冷たく言い放つ。
私たちがここにいることに、疑問を持っている。魔大陸のどこかで野垂れ死んでた、とでも思われていたのか。
まあそれは、この際どうでもいい。私が一番聞きたいのは……
「ビジーちゃん! なんでそんな奴らと一緒に……!」
あの三人と一緒にいる、ビジーちゃんのことが気になって仕方がない。
私が声をかけたことが伝わったのか……ビジーちゃんの視線が、私を捉えた。
「あれ、お姉ちゃんじゃん。
……なんだ、これもうバレちゃったじゃん」
だけど、ビジーちゃんは……私を見て、不穏な笑みを浮かべていた。しかも、バレちゃった……なんて言葉を話して。
その言葉がなにを意味しているのか……ビジーちゃんがあいつらと一緒にいることで、ある程度の予感はあった。
でも……それが、確証に変わったかのようで。
「……そいつらの、仲間だったの?」
「んー……まあ、バレちゃったね?」
先ほどと同じ言葉を……決定的な言葉を、口にした。
ビジーちゃんも、エレガたちと同じ黒髪黒目だ。だけど、それであいつらの仲間だってのは考えたことがない……だって、私も黒髪黒目だから。
私は、エレガたちの仲間なんかじゃない。だから、珍しい髪色なだけで、ビジーちゃんは普通の女の子だと、思っていたのに……
「おい、ボサッとしてんな! くるぞ!」
「!」
切羽詰まったラッへの声に、弾かれたように反応する。
上空では、飛行型の白い魔獣が"二つの顔から"同時に魔力の塊を放つ。
それに対抗するように、クロガネもまた竜魔息を放つ。
ぶつかり合った魔力の塊は、多少の拮抗を見せ……相殺し、爆発した。
あの白い魔獣……やっぱり、只者じゃない。
それに……
「くく、こいつぁ思わぬ展開だ……おもしれぇ。
ゼータ、イータ、シータ……! 全力であのドラゴンを殺せ!」
続くように、新しく二体の白い魔獣が……現れた。
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