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第六章 魔大陸編

396話 その時はきたる

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「てか、あの人間たちが現れるのはいいとして、弱点とかわからねえのかよ」

 現れるエレガたち、その弱点……未来を知るガローシャなら、それを知っているんじゃないかと、ラッへが聞く。
 だけど、ガローシャは首を横に振った。

「残念ながら。彼らは白き魔獣を引き連れ、魔族を蹂躙する……としか」

「……」

 白い魔獣……エレガたちが操っている、魔獣。
 魔獣を操れるなんて信じられないことだけど、実際に操っているんだ。理由なんて考えても、仕方ない。

 他の魔獣よりも強い白い魔獣を、引き連れていたのなら……それは、かなり手強いってことだ。

「それでも、クロガネなら問題ないはずっ」

『無論だ』

「クロガネ……あの黒いドラゴンですね。まさかドラゴンと契約できる人間がいるとは」

 クロガネと魔力を共有すれば、私だって魔大陸でも戦える。
 クロガネ単体でももちろん強いけど……ゴルさんとの決闘のとき、ゴルさんがやっていた使い魔とのコンビネーション。あれをぜひやってみたいものだ。

「んじゃま、魔獣はクロガネに任せるってことでいいんじゃねえか。
 私らは人間を叩く」

「それはいいけど……ラッへは、戦えるの?」

「言ってくれるじゃねぇか……一晩休んで魔力は回復したし、条件は向こうだって同じだろ」

 魔大陸での魔法、魔術は威力の問題とかがある。存分には使えない。
 それでも、ラッへは弱きは見せない。実際、クロガネと戦ったときの気迫もすごかったもんな。

 相手が魔族やダークエルフならともかく、人間なら。魔法も魔術も使いにくい条件は、同じだ。
 ただ、それはあいつらも百も承知のはず。その上で、魔獣を率いて、ここへやってくる。

 その目的は、わからない。

「彼らに、私たちは蹂躙され……殺されます。死んだあとのことは、未来は見えませんので」

 ガローシャの見た未来は、自分たちがエレガたちに殺されるというもの。ただ、それは私たちが協力しない場合のはずだ。
 協力する未来では、どうなるのか。

「私らがあの人間たちを相手取ると、その後の未来はどうなんだ?」

「わかりません。ただ、あなたたちが人間たちを抑えてくれている間に、我らが他国との戦争に勝利した、としか」

「……そうかよ」

 その後も、今後のことについて話があるというが……とにかく私たちがやるべきことは、エレガたちを倒すことだ。
 それだけに集中してくれと、ガローシャは言った。

 話し合いは一旦終わり、部屋を出る。また数時間後……指定の時刻の少し前に、集まる予定だ。

「皆様、こちらへ」

 部屋を出て、私たちを案内してくれた魔族、名前をロゥアリーと言う。
 彼女に従って歩いていくと、広い部屋に通される。

 ここは……食堂、だろうか。


 くぅ……


「そういえば、お腹減ったね……」

 食堂に入った瞬間、腹の虫が騒ぎ出す。
 考えてみれば、昨日木の実を三人で分け合って以降、なにも口にしていない。

 思いの外おいしかったのと、お腹が膨れたのと……なにより疲れていたから昨夜は、なにも食べずに寝ちゃったんだよね。

「確かに、腹になんか入れなきゃいざってときに動けねえが……魔族が食うものが、私らの口に合うのか?」

 腹が減ってはなんとやら、だ。それに食欲は、抑えられない。
 なのでなにかお腹に入れたいが、まずラッへが疑問を口にする。

 昨日の木の実は、私たちも食べられたけど……魔族の食べるものが、私たちの口に合うのか。
 ラッへは単純な疑問から、聞いている。

「我々と、あなたがたとの味覚はどうやら、正反対のようなのです」

「正反対?」

「我々がおいしいと感じるものはあなたがたとにはまずく、あなたがたがまずいと感じるものは我々においしく感じる。そういうことです」

 ……じゃああの木の実、魔族にとってまずいものだったんだ。

「なので、食事に関しては問題ありません」

「お前らにとってまずいもん作れ、ってことなのに問題ないでいいのかそれは」

 ともあれ、私たちは食事をすることに。
 魔族のシェフが作ったものを、口にする。正直見た目は食欲をそそらないものだったけど、食べてみたら意外といけるんだこれが。

 ルリーちゃんもラッへも、おいしそうに食べていた。
 これを魔族はまずいと感じるんだから、生物の不思議だよなぁ。

 食事を終えた私たちは、軽く散歩がてら塔の外へ。私たちだけで移動するのは危ないけど、ロゥアリーと一緒なら問題はない。

「みんな殺気立ってるねぇ」

「戦争だって言われたら、仕方ないですよ」

 魔族は誰も彼もが、気迫に満ち溢れている。
 武器を持っている魔族、そうでない魔族……様々だ。

 ちなみに、昨日魔族が捕らえようとしていた魔物たち……魔物の暴走スタンピードは、クロガネのおかげで収まった。
 魔物だって、生き物だ。生物上、自分より上位の存在には逆らえないわけで。

 魔物は正気に戻って、あちこちへと帰っていった。魔物がどうして、人のいる大陸を目指していたのかは、わからない。
 けれど、まるでなにかに突き動かされているかのようだった。

「魔物を従えなくても、ここにいるみんななら勝てる……ガローシャは、そう言ってたよね」

「未来でそうだってな。魔物を操らなくても、勝てるだけの力は持ってるわけだ」

 ここにいるみんな、気が立っている。まだ時間はあるというのに、果たして緊張感を持ったままで大丈夫なんだろうか。
 そう、ちょっと心配になってきたとき……

「! て、敵襲! 北側から、大勢の魔族が攻め込んできます!」

「!」

 予想もしていなかった声が、上空から届いた。
 それは、高い見張り台に登っていた、見張りの魔族の声によるものだ。

 魔族が攻めてきた、だって……そんな、バカな。
 だって、ガローシャが言っていた時間まで、まだかなりあるぞ!?
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