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第四章 魔動乱編

243話 国宝の魔導具

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 あらすじ。レジーを捕まえたことでご褒美がもらえることになった。
 私だけご褒美をもらうっていうのもちょっと気が引けるけど、なんかもうそういう……ご褒美もらわなきゃいけない流れになっている。

「それで、ご褒美っていうのは」

 やっぱりお金かなぁ。こういうのって、いっぱいお金もらえるイメージがある。
 そうしたらなに買おっかなぁ。それともおいしいものいっぱい食べちゃおっかなぁ。

「うむ。エラン・フィールド……キミにはこれを授けたい」

 その言葉を受け、王様は側に立っていたジャスミルおじいちゃんに目配せをする。
 それを受けたおじいちゃんが、歩き、私の前まで来て……手のひらを、差し出す。握手? いやそれともまさかお手しろってのか?

 それがどういう意味だろうと考えていると、おじいちゃんの手のひらが白く光る。これは……

「空間転移の魔法……」

「ほほぉ、よくご存じですな」

 白い光、それには見覚えがあった。空間転移の魔法だ。
 それは文字通り、空間を転移する魔法。離れた場所にある物も、この魔法を使えば自分の手元に持ってくることができるのだ。

 昔師匠がよく使ってたっけな。それも、師匠の場合は人くらい大きなものでも移動できるくらい、大きな転移魔法を作れていた。

 さて、光が弱まると、おじいちゃんの手のひらに一つの箱が置かれていた。
 手のひらサイズの、白い箱。これがご褒美?

「エラン殿、あなたへの褒美は、これになります」

 と、言っておじいちゃんが箱を開ける。パカッと。
 その中に入っていたのは……小さな、リングだ。指輪、ってやつだろうか。

 リングの一部分には赤い宝石がついている。小さな宝石だけど、きれいだなぁ。
 ……ん? 褒美、指輪、そして私に指輪をプレゼントするおじいちゃんの図……まさか……!

「え、プレゼントはわ、た、し、ってやつ?
 いやー、ごめん。いくら私が超絶かわいいからって、そういうのはちょっと……」

「話が飛躍しすぎだ! そんなわけあるか!」

 私がドン引いた顔を見せると、おじいちゃんからのツッコミが飛んできた。その直後、こほんと咳払いをして「失礼」と謝罪。
 どうやら、私の発言に我を忘れるくらいの勢いでツッコんでしまったらしい。なんだ、人間味あるとこあるじゃん。

 まあ、私だって本気で、プレゼントはわ、た、し、と思っていたわけではない。
 私はそっと、目の前に差し出された指輪を手に取る。

「……キレイ」

「お前にも、物を美しいと思う心があったんだな」

 指輪を手に取り、天にかざしてその輝きを見つめていると、ゴルさんがちゃちゃをいれてくる。ちょっと、それどういうことよ。
 ……っと、それはそれとして。本当にきれいな指輪だ。

 指輪に付いている宝石も、指輪自身も。手入れが行き届いているのか、すごくきれい。思わずうっとりしちゃうくらい。

「それが、お主への褒美だ」

「……くれるの? こんな高そうなもの」

「たかっ……いいですかエラン殿。それは国宝と呼ばれる魔導具ですぞ」

「へぇ……国宝? 魔導具?」

 どうやらお金ではなかったこれは、魔導具らしい。だけど、国宝ってなんだ?
 なんか聞くからに、すごそうだけど。

 チラッとゴルさんと先生を見ると、目を見開いていた。その視線の先は、もちろんこの指輪。

「そう。魔導具は、お主もよく知っているだろう」

「うん。ピアさんが作ってるやつだよね」

 魔導具。魔力を持たない人でも扱える、魔力の道具。灯りをつけたり、火を出したり、魔力を吸収したり。その用途は様々だ。
 私はゴルさんとの決闘のとき、ピアさんからピアさんの作った魔導具を借りた。というかもらった。壊しちゃったけど。

 この指輪も、それと同じ魔導具……ってことか。

「でも、国宝って?」

「魔導具には時に、凄まじい力を放ち扱いの難しいものがあります。
 それらを国宝と呼び、王城へと集められたものを、保管庫に保管しているのです」

「へぇ……そんな、すごそうなのもらっていいの?」

 要するに、これはすごい魔導具だってことだよね。その、すごい魔導具をもらっちゃっていいんだろうか。
 こんな小さい指輪、無くしたら弁償しろとか言わないよね!

 そんな私の疑問に、王様は……

「構わん。国の危機を救ってくれたのだ、当然のこと。
 それに、二人には褒美を受け取ってもらえなかったからな。せめてキミには良いものを受け取ってほしい」

 と、言ってくれた。それは私を安心させるためだけではなく、本心だっていうのがわかった。
 そういうことなら……ありがたく、もらっちゃおうかな。

 国宝、国宝かぁ……ただきれいだってだけで、国宝とは呼ばれないだろう。
 凄まじい力を持つものが国宝だっておじいちゃんは言ってたし、王様も良いものだと言ってる。

「これは、どんな魔導具なんですか?」

 私は、聞いてみた。魔導具と一言に言っても、それにはいろんな種類がある。さっき想像した種類なんかより、はるかに多くの種類が。
 生活に欠かせないもの、戦闘に役立つもの、ないといけないわけではないけどあったら嬉しいもの……そういった様々な種類。

 国宝って呼ばれるくらいだから、これはさぞすごい魔導具なんだろうと思うけど。

「その指輪……正確には、指輪についている石だな。これが国宝と呼ばれる魔導具だ。名を、"賢者の石"という」

「ほへぇ」

 王様は言う。これは賢者の石……か。なんかどっかで聞いたことがあるなぁ。
 けど、名前は聞いたことがあってもその効果まではわからない。単純に、ケンジャって名前の人が作った石なんだろうか。

 はてこの効果はなんだろう、と石を覗き込んでいたところで、王様は言葉を続ける。

「賢者の石とはな。その石は命の水を生み出し、それを飲んだ者は永遠の命を得ることができる、と言われている」

「へぇ、永遠の……はい?」

 さらっとなんか、今とんでもないこと言わなかった? この王様?
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