上 下
187 / 781
第四章 魔動乱編

183話 恋するお年頃……ってこと!?

しおりを挟む


 キリアちゃんからの相談……本人は否定していたけど、それは恋愛相談ってものだった。
 まあ否定してたって言っても、多分あの分じゃキリアちゃんは恋愛相談をしたことがないか、そもそも身分が違うからそんな感情持っちゃいけない、と思っていそうだ。

 恋愛ってのも、大変だなぁ……ま、私はしたことないけど。
 そういえばノマちゃんは、コーロランに一目ぼれしてたって言ってたっけ。こちらも、ノマちゃんは貴族でコーロランは王子という、またも身分違いの恋ってやつだ。

 ノマちゃんは、コーロランを見た瞬間にビビッと来たらしく、キリアちゃんはダルマスに優しくされたのが理由みたいだ。恋にも、いろいろあるんだなぁ。
 私は、これまで一緒に接してきた異性……というか人が師匠しかいなかった。師匠に対して、感謝はしているけどこれが恋愛って言われると……よくわかんない。
 学園に来てからも、ビビッ、なんて思ったことはないし。

「みんな、お年頃だなぁ」

 私たちの年齢なら、色恋沙汰っていうのは普通なんだろうか。これまで、魔導について学んだり、お友達が増えていく嬉しさとかで忙しかったから、他のことを考える余裕はなかったけど。
 ……恋愛、かぁ。

「ねえ、ダルマスは誰かに、恋したことある?」

「っ、げほっ、げほ……な、なんだいきなり!」

 壁にもたれるように座っていた私は、少し離れていたところに座っていたダルマスに、問いかける。
 どうやらダルマスは、水分補給をしていたようで、水を少し吹き出してしまっていた。
 変なこと聞いて、動揺させちゃったか。ごめんね。

 キリアちゃんの相談を終えた私は、その後教室に戻って普通に授業を受けた。まあ、相談を受けてちゃんと返事できたかっていうのは、自信ないけど。
 とりあえず、ダルマスにはさりげなく探りを入れてみる、とは話した。キリアちゃんにも、いきなり二人で話すのはハードル高いだろうから、私を間に挟んで話す機会を設ける、とは言っておいたけど。

 ただ、今日いきなりは心の準備ができていないらしく、キリアちゃんは遠慮した。放課後なら、今ダルマスと訓練をしている時間だし、他に誰も居ないし時間は取れたんだけど。
 ……ていうか、今私は、友達が好きな子と一緒にいるんだよね。二人きりで。それっていいのだろうか?

「……ふぅ。なにを、いきなり変なことを聞いてきたんだ」

 何度か咳き込んだ後、ダルマスはなんとか落ち着いたみたいだ。
 まあ、いきなり好きな人は、なんて話をされても、困っちゃうよな。

「ごめんごめん、まあなんとなくだよ。恋バナ、ってやつ私興味あったしさ」

「……まあいいが」

「で、好きな人は? いるの? あ、もちろん恋愛的な意味でね」

「……いない」

 さっき動揺させてしまったことを根に持っているのか、ダルマスは私と目をあわせてくれない。ちょっと悲しい。
 それはそれとして、好きな人はいない……か。これは朗報なのかな。

 好きな人がいる、と言われても、その相手がキリアちゃんだったらなんの問題もないけど……まあその確率は少ないよね。
 なので、今はまだ脈がなくても、とりあえず他に好きな人がいないなら、こっから関係を深めていけばいい。

「……お前は、どうなんだ」

「へ?」

「いや……人に聞いておいて、自分は答えないのは……そう、フェアじゃないだろ」

 私に、好きな人はいないのかと聞かれた。なんでそんなことを聞くのかと思ったけど、理由を聞いたら納得だ。
 確かに、一方的に聞いておいて、こっちだけなにも答えないなんて、ちょっと卑怯だもんね。

 とはいっても、ついさっき考えていたことだ。悩む必要もない。

「私も、いないかなー。というか、好きっていうのがどういう気持ちか、よくわからないし」

 自分で体験したことはない。でも、ノマちゃんやキリアちゃんを見ていると、悩み考えることはあっても。それ以上に幸せそうだなと感じる。
 人を好きになるって、素敵なことなんだな、と思えてくる。

「……そうか」

 私の答えを聞いて、ダルマスはどう思っただろう。もしや、恋が分からないなんてこの田舎者め、みたいに思っていないだろうな。
 ふんだ、いいもん。今は恋とか、そういうのいいもん。魔導を極めるのにいっぱいいっぱいなんだから、いいもん。

 そんなことを考えていた最中、ダルマスは立ち上がる。

「さ、休憩も終わりだ。続きを」

「あ、うん」

 休憩したおかげだろうか、その表情は、さっきよりもすっきりしているように見えた。
 その後、魔力強化を主に訓練して……時間は、あっという間に経っていった。

 やっぱり、ダルマスは筋がいい。このまま、私が教えることだけに集中していたら、すぐに追い抜かれてしまうかもしれない。
 ま、そんなことはされないけどね!

「……なぁ、フィールド」

「なぁに?」

 今日の訓練も終わり、帰りの準備をしていたところで、ダルマスに声をかけられた。どうしたんだろう。
 なんか訓練中も、なにか考え事をしているようだったし。それで支障がでなかったのは、さすがだけど。

「なんか、わからないこととかあった?」

「いや、そうではなく……
 その……今度の休日……空いてるか?」

「休日?」

 相変わらず私と目をあわせようとしないダルマスが聞いてきたのは、休日の予定だ。どうして?
 別に、今のところは予定はない……もしかして、休日にも訓練がしたいとか?

 いやぁ、その考え方は立派だけど。休日、休みにはちゃんと休まないと。むしろ休むのも訓練だから。

「空いてるけど……」

「そうか……ならその日、俺と、出かけないか。学園の、外に」

「その日も訓練って言うなら…………
 あぇ?」

 予想もしていなかった、申し出……それは、休日に、出かけないかというものだった。
 えーーーっと……なんで、そうなった?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

愛人がいらっしゃるようですし、私は故郷へ帰ります。

hana
恋愛
結婚三年目。 庭の木の下では、旦那と愛人が逢瀬を繰り広げていた。 私は二階の窓からそれを眺め、愛が冷めていくのを感じていた……

処理中です...