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禁断の箱庭と融合する前の世界(148)

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 マーは胴体に迫りくるレイピアを体をくねらせて回避し飛び退いた。命中率の高い武器でなぜオーガの巨体の中央を狙わなかったのかは判らないが、レイピアは彼女の脇腹を掠めて服を破き、素肌を露わにしている。

「貴様・・・。この服は数時間ほど前にアルケディアで買ったのだぞ!高かったのに!拳を鳴らしただけで攻撃をしてくる馬鹿がいるか!」

 本気の怒りで顔を真っ赤にしたマーだったが、ネコキャットのレイピアの先で蠢く白い芋虫のようなものを見て拳を下ろした。

「繰り虫だと・・・?やだぁ!私怖い!」

 マーは途端に乙女の顔をしてヤイバに飛びつくと、彼の股間に自分の脚を押し付けた。

「アフッ!」

 ヤイバが素っ頓狂な声を上げてマーを引き離そうとしている姿を見て、ヒジリは苦笑いしてからネコキャットに質問する。

「なんだね?クソムシとは」

「ク、クソムシ?舐めてんのか?ライジンはメイジのくせしてそんな事も知らねぇのか・・・・。まぁ実力はあるとはいえ新米のオーガメイジじゃ仕方ないか。操る虫と書いてクリムシな。芋虫みたいに見えるけど、これは繰り虫の乗り物みたいなもんで、芋虫は他の宿主に噛み付いてそっから大量の卵を流し込むんだ。卵は流し込まれて直ぐに孵化し最終宿主は奇行を繰り返して死ぬ。死んだ体を餌にして成虫になると飛び立ち、昆虫などに卵を産み付ける、の繰り返しだ。それにしても人には滅多に寄生しないはずだけどな・・・」

 なんとかマーを引き剥がしたヤイバは舐められた頬をハンカチで顔を念入りに拭きながら言う。

「繰り虫は卵の状態だと周りの思念に影響されやすいと聞いた事があります。普通は親虫が生き抜く術をイメージして子に送るのですが、この時に人が意図的に誰かを殺せという念を送れば子達は孵化して直ぐにイメージの相手を探すべく動き回ります。宿主を変えながら目的の人物まで辿り着こうとするのです」

 顎を擦ってヒジリは息子の説明に感心した。

「ほう。では直接マー殿が狙われたわけではないのだな。マー殿の親しい者を狙ったと・・・つまりヤイバを狙った可能性が高い」

 マーは怒りつつも喜ぶ。

「許せん!暗殺者はヤイバと私が恋人同士だと知っている!恐るべき情報収集力だ!どぅふふ」

「え?お前ら付き合ってんの?」

 ネコキャットが興味深そうにヤイバとマーを見る。

「へぇ~。ヤイバはこういう彫りの深い女子が好みなのか。個性的だが、まぁ美人だな」

「違います。恋人でもありません」

 ヤイバの発言をマーは聞かなかった事にして、いきなり天を仰いでもう一度憤怒する。

「私の大事な・・・愛しいヤイバを狙うとはどこのどいつだ!許さんぞ!」

 そう言ってマーは胸の谷間から小さな投げナイフを出すと、腹立ち紛れにシュッと軒先に向けて投げた。

 するとギュ!と悲鳴を上げて絶命したイービルアイが地面に落ちた。

「え?!隊長はイービルアイに気がついていたんですか?」

「(えっ?なに・・・?ナイフがイービルアイに当たった?何であんな所にいたんだ?)ああ、今さっき気がついた。話の流れを聞く感じでは・・・ヤイバ。君は狙わているのだろう?」

「え?ええ・・・。(さっき父さんがそう言ったじゃないか・・・)」

 マーは堀の深い目を閉じて如何にも推理していますといった顔で顎を摩る。

「暗殺の際は必ず結果をその目で確かめる観察者がどこかにいるものだ。しかし怪しい者の気配はこの路地裏にはない。となると使い魔などの小さな生き物が観察をしているはずだが、その気配も地上にはない。ならば後は上しかないだろう?」

 ヤイバの目が隊長を尊敬して輝く。

「流石は隊長!僕達なら普通にこの現場を立ち去っていましたよ!(強力無比で能力は高いが慢心があり本気を出さない限り隙の多い父親、剣技と同じく一点集中型で広範囲に注意を置く事が苦手なネコキャット、そしてまだまだ経験の浅い自分・・・。このメンバーの中でマーの隊長としての状況判断能力の高さ、洞察力の鋭さはありがたい!)」

 ヤイバは尊敬の眼差しにマー気がついた。

「惚れ直したか?」

「惚れ直してはいませんが、今惚れました」

「え?本気で?」

「勿論。隊長としてですよ」

「くっ!」

 戯れる二人を尻目にネコキャットは路地裏から顔を出すと周囲を警戒した。怪しい人物がいないことを確認すると皆に呼びかける。

「そろそろ、行くか。同じ場所に留まっていたら、更に厄介な暗殺手段を敵が思いつきかねないからな」

 ヤイバは頷いて路地裏から出ようと動き出したが、マーがそれを手で制す。

「おい、証拠が残っているのに調べない手はないだろう?魔法要塞殿?」

「そうでした!【知識の欲】!」

 魔法を唱えるとヤイバはイービルアイに手をかざしたその時。

―――チッチッチッチ・・・・―――

「ヤイバ!」

 ヒジリはイービルアイの死体から出る時限爆弾のような音に反応して猛スピードで動いた。

 パワードスーツが僅かに音を立てて怪力を発揮するとヤイバとマーを片手でそれぞれを掴んで持ち上げ、ネコキャットのいる所まで放り投げた。

 その刹那・・・周囲は無音になる。

―――ドドーン!!!―――

 無音の後に衝撃波と爆風が周囲に広がった。

 大通りまで弾き出された三人を爆風が襲う。路地を挟む建物が半壊してレンガの破片があちこちに飛びちった。

「うわぁ!」

「きゃ!」

「どへぇ!」

 マーやネコキャット、悲鳴をあげる一般人を庇って咄嗟に守りの盾を展開すると、ヤイバは煙の中に父の姿を探した。

「そんな・・・。いない!ライジンがいない!」

 最初に声を上げたのはネコキャットだった。

「ライジンは爆弾で粉々になったのか?くそ!新米オーガメイジ一人も守れないで何が騎士だ!」

 父のために悔やむ猫人にヤイバは触れて言った。

「大丈夫ですよ。とう・・・ライジンはあの程度で死にませんから。地面に肉片も血の跡もないという事は彼は全くの無傷だということです。きっと何かを見つけて追いかけていったのでしょう」

 マーも頷いている。

「団長が彼を起用した時は正直胡散臭いと思っていたが、力試しを挑んだ隊長格を彼は尽く打ち負かしている。何故か団長は暫くして彼を解雇してしまったが、もう少し鉄騎士団にいてくれえば技を盗めたのにと今でも思っているのだ。それぐらい彼は凄い。死んでなどいなだろう」

 ネコキャットは警戒して抜いていたレイピアを鞘に納める。

「なんだって?あの新米メイジ、強いとは聞いていたけどそこまでだったのか。じゃあ問題ねぇな。悔やんで損したわ」

「取り敢えず後始末は裏側と樹族の騎士に負かせて僕たちは一旦宿屋に戻りますか」

「宿屋も危ないんじゃないのか?皆を巻き込む事になるぞ。ここまでの規模で襲ってくるとは流石に俺も思ってなかったな」

「この辺で身を潜められそうな場所と言えば・・・。町外れに小さな洞窟があったはずです。あそこで一晩明かして様子を見ましょう。入り口を見張っていれば暗殺者の侵入も容易に察知出来るでしょうし」

 それを聞いてマーは興奮していた。

 ヤイバと一晩を共にするという事は間違って何かが起こる可能性もあると。命の危機にも関わらず、ここまで余裕があるのは彼の頼もしさのせいか。

「隊長は帝国に帰ったらどうです?一緒にいると危険ですよ?」

 ヤイバは一緒について来ようとするマーに驚く。

「馬鹿者!可愛い部下の身の危機にそ知らぬふりをする上司がどこにいる!」

「それは嬉しいのですが・・・。明日は通常勤務ですよ?隊長。僕は任務でここにいますけど、隊長は帰って隊の訓練とかあるでしょう?」

「ん、問題ないッ!」

「そ、そうですか・・・」

 自信満々にマーがそう言うのはヤイバはそれ以上何も言わなかった。隊長がいれば自分の経験不足を補ってくれるし、心強いのは確かだ。

 時折何かを妄想してググフと笑う隊長をネコキャットとヤイバは訝しみながら郊外の洞窟を目指した。




「魔法院復活の署名をお願いしま~す!」
 
 ルビーは魔法院復活のプラカードを掲げて、署名を募っていた。

 十数年前に院長の謀反により解体された魔法院ではあったが、ここ最近は復活させようという機運が高まってきている。

 一応オーガメイジと思われているヒジリの伝説や、正真正銘のオーガメイジであるヤイバの活躍、イグナをモデルにした闇魔女のドラマのお陰で、今や空前絶後の魔法ブームが起きているのだ。

「僕らの世代はさぁ、『よろしくネコキャット!』って義賊のドラマが流行っていたんだけど時代は変わったもんだね。それに闇魔女様も昔は恐怖の対称だったんだけど。ハハハ・・・」

 とんがり帽に黒いマント、紺色のワンピース姿の闇魔女イグナのコスプレをした樹族達をよく見かけるので、元魔法院のメイジであるウロタンは昔のドラマを懐かしんで笑った。

 ルビーも闇魔女イグナと知り合いというだけで、社交場では男子からチヤホヤされるほどの影響力があった。

「イグナさんが魔法院院長をやってくれれば一発で魔法院復活の話も通りそうだけど・・・」

 ウロタンは頬をポリポリと掻いて自信なさげに言う。

「闇魔女様と魔法院は因縁があるから無理だろうね。それに伝統的に魔法院の指導者は樹族って世間の認識だし・・・」

「あれ?ウロタンさんはもしかして、樹族至上主義者とか?」

「ははは、まさか。幾ら僕がチャビン老師の最後の弟子という悪名があってもそこまで悪にはなれないよ。彼等”永遠の緑葉“は世に憎しみを広げるだけの愚か者だからね」

「ウロタンさんは最後の弟子って二つ名だけど、弟子の末席にいただけで殆ど関わりが無かったんだよね?老師とは」

「そ、少しプライドが傷つくが孫弟子なんて、魔法院の中じゃいないも同然だよ。謀反に参加しなかった他の高名な弟子たちは騎士団の監視下に置くという名目で騎士団に編入され、結局馴染んで同化していった。僕みたいな空気男は騎士団にすら呼ばれず田舎の村で警備の仕事をやってほそぼそと暮らすしかなかった。ハハハ・・・。それにしても最近の魔法ブームのお陰で署名がどんどん集まってきて嬉しいね。これもルビーちゃんが僕を手伝ってくれたからさ」

 ルビーは照れ臭くなり頭をポリポリと掻く。

「ううん、大した事はしてないよ。私の周りってさ、有名人ばかりだからいつも彼らと釣り合おうとしなきゃって気持ちでいっぱいなの。で、何とか頑張ろうとしているんだけど、そうそう手柄なんか立てられるわけないし・・・。だからこうやって地道に人助けをしたり、孤児院のバザーを手伝ったりしてポイント稼いでいるわけ。小狡いでしょ?」

 父と母のざっくばらんな所を受け継いだルビーは自分の内にある淀みも正直に他人に晒してしまう。

「とんでもない!結果的に助かっている人が沢山いるんだ。動機はどうであれ、君は偉いよ」

「そうかな?えへへへ」

 シオに瓜二つの顔が嬉しそうに笑っている。

「今日の署名活動はこれぐらいでいいかな・・・。貴重な休日を僕のために使ってくれてありがとうね。今度デートなんてどうだい?お礼に美味しいご飯を奢るよ?」

 らしくない冗談を言う中年の背中を、ルビーはバシッと叩いて笑った。

「もう!冗談ばっかり!じゃあね!ウロタンさん!」

 そう言うと、ルビーは手を振って立ち去っていった。

「やっぱりおじさんだと駄目かぁ・・・。結構本気だったんだけどなぁ」

 ふぅとため息をついて、家まで近道をしようとウロタン路地裏を通った。

 しかし、彼の勘がいつも通る路地裏に漂う空気に違和感を感じ警笛を鳴らす。

「誰だ!出てこい!頼りなさそうに見えるかもしれないけど、僕はそれなりに力のあるメイジだぞ!」

 取り敢えず言葉で威嚇をして何者かを牽制をする。しかし通じている気配はない。何者かの気配は暫く彼を観察した後、消えてしまった。

「威嚇が効いたのかな?物騒だな・・・。変なことにならないうちに帰ろう・・・」




 
 裏側の長ジュウゾは地面に伏して動かない王族の死体を見て動揺を隠せなかった。

「奴らはついに王族にまで手を出すようになったか・・・。継承権の低い王族とはいえ、これは一大事だぞ・・・。どうだ?何か証拠は?」

 ジュウゾの部下である検視官は【知識の欲】で死体の情報を細かく調べて驚いた。

 彼女は少しローブをたくし上げて立ち上がるとジュウゾを見つめたまま彼に走り寄った。

 他にも騎士や衛兵がいるこの部屋で結果を言うのを躊躇った女性の検視官は、そっとジュウゾに耳打ちをする。

「なん・・・だと?まさか・・・!!何かの間違いではないのか?神の子に罪を擦り付けるパターンなら想像はつくが・・・何故彼女なのだ?」

 バリトンの声が部屋中に響き渡り、検視官が気を使った意味がなくなった。

 ジュウゾは少し気まずい顔をして咳払いをすると検視官にもう一度死体を洗い直せと指示を出し、足早に部屋から出ていく。

(何故彼女なのだ。彼女に罪を擦り付ける意味は?貴族殺しの異名を持つ彼女を失脚させる為か?何故今なのだ?小賢しい上位貴族共め。しかし、本当に彼女が手を下した可能性も考慮して動かねばな・・・。まさか友人の娘を疑って監視する日が来ようとは・・・)

 覆面の下で、よく判らない温度の汗が頬を伝って流れ落ちる。

(どこから辿る?元老院からか?いや、ウォール家に敵対していた貴族からか?それとも・・・やはりウォール家なのか?くそ!駄目だ・・・。この私としたことが動揺して頭が回らん。歳を取ったか?冷静冷血なジュウゾはどこにいった?ええぃ!・・・私は信じているぞ、シルビィ。君の娘は”永遠の緑葉“になど関わってはいないとな・・・)





 王座の間でシュラスは退屈そうに宰相の報告を聞いていた。頭の中では三時のおやつは何にするか、とどうでも良い事を思い浮かべている。

 王座の後ろで裏側の気配がして、シュラスは尖った耳を後方に傾けた。暫く宰相に黙るよう言う。

「ニイク様が何者かに暗殺されました」

 地獄の底から響くかのような裏側の声と報告内容に宰相は驚いて尻餅をつく。

 王位継承権の低い王族とはいえ、王族に歯向かう者がいることにシュラスは内心怒りに震えた。

 しかし王としての冷静さを失うわけにはいかないと自制し、なんとか心を落ち着かせる。

「今現在解っている事はあるか?」

「それが・・・」

「構わん。言え」

「ニイク様の服についたマナの痕跡が・・・シルビィ様の長女ルビー様のものでございます」

「な・・・・!」

 宰相は驚きから我に返り立ち上がると、王の動揺を見て進言する。

「では・・即刻この捜査から裏側を引かせるべきですな、陛下」

「しかし・・・」

「ジュウゾとシルビィ様はあまりに近すぎるのです。お互いが似た性質の隊である以上、協力関係を結び親しくなるのは当然とはいえ、もう十数年もその関係は続いております。ジュウゾが手心を加えた捜査をしないとは限りません。それに彼にとっても親しい間柄の者を捜査するのは辛い事でしょう。どうか裏側を捜査から外してやって下さい」

「うーむ。ではこの捜査、貴様は誰を推薦する?」

「敢えて・・・ここは心を鬼にして敢えてワンドリッター家の者に捜査権を与えるべきかと・・・」

「ワンドリッター家と言えば、元老院側の者ではないか。あの陰気なる犬は有る事無い事でっち上げるぞ」

「しかし、元老院が裏側が捜査する事を良しとするはずがありません。陛下がシルビィ家を贔屓にしていると言いがかりをつけてくるのは目に見えております。公平性を示すためにも敢えて元老院側から選出すべきかと」

「では、我らが側からも誰かを選ぶべきだな。お互い牽制させあって捜査を進めるのじゃ」

「誰をお選びに?」

「う・・・。力馬鹿のムダンはこういうのには向いておらんし、コーワゴールド家は頭が良く優秀だが押しが弱い」

 シュラスの後方で待機していた裏側が珍しく自ら意見を述べた。

「陛下。今アルケディアには神の子ヤイバ様がおいでになられております」

「なに?何故直ぐにワシに知らせなんだ!今からでは茶の時間に間に合わんじゃろ!」

 宰相は、この一大事に何故神の子をお茶会に誘う必要があるのかと突っ込みたくなったが、出しゃばらないはずの裏側が珍しく口を出した意図を敢えて説明する。

「その裏側の隊員はヤイバ様に捜査権を与えてはどうかと言っているのです、陛下。他国から来た自由騎士という肩書上、第三者視点での捜査を期待出来ますし、神の子としての発言力は大きいでしょう」

「しかしのう・・・。ヤイバもウォール家とは親しい・・・」

「それでもヤイバ様は建前上は第三者です。家来でも無ければ、樹族国の者でもないというのは有効な言い訳となりましょう。更にヤイバ様はウォール家や樹族国に貸しはあれど、借りは無いはずです。これも建前上必死になってウォール家を擁護する必要が彼には無いと言えます」

「なるほどな、元老院達の大好きな建前のゴリ押しを我らも真似してみるわけか」

「はい」

「上手いこと考えるのう。伊達に変な三角形の髪型をしてるわけではないな」

 宰相は気に入っていた髪型を王に変と言われて顔を赤くする。

「・・・」

「よし、神の子ヤイバをここに呼べ!直ぐに連れてくるのだ、裏側」

「御意」

 シュッと音がすると裏側の気配は消えた。


 

 ヤイバ達は洞窟に留まり入り口で警戒しながら待ち構えていたが、結局怪しい気配はなく無駄に気疲れしただけであった。時間だけが過ぎて西日が洞窟内に入ってきている。

「ヤイバ、魔法を使う者の反応は?」

「ありません」

「そうか。では、もう寝るとしよう。ネコキャット殿、見張りを頼む」

「さっきからお前一分毎にそれ言ってんじゃねぇか。どんだけ寝たいんだよ。まだ夕方だぞ」

 口を開けば皆に寝ようと誘うマーにネコキャットは怒った。

 勿論マーはそれらしい事を言って説得する。

「(いいから見張りしなさいよ!馬鹿猫め!)いや、早目に寝て交代した方が体への負担が少なくていいだろう?」

「う~ん、確かに・・・。仕方ねぇ。俺が見張りしてやるからお前らは奥で寝てこい」

「(やったぁぁぁ!)じゃあ奥で寝るとしようか。あの岩陰なんかどうだ?ネコキャット殿がやられても、我々は直ぐには見つからないぞ、ヤイバ」

「物騒なこと言うんじゃねぇ!」

 ネコキャットが瞳を真ん丸にしてシャーと唸る。

 ヤイバは嫌な予感がしつつも、隊長を信じて岩陰に腰を下ろそうとするが・・・。

「うわっ!ゲジゲジ!よく見るとコウモリの糞が・・・!」

 マーは忘れていた。彼が潔癖症気味なのを。

「お嬢様みたいな事を言うな!野営訓練の時はどうしていたのだ!」

「訓練の時は寝袋に入っていたので耐えることができましたが、いまは直じゃないですか!」

「いいから寝転べ!」

 手四つになってヤイバを地面に寝転がそうとするが、自分より腕力の有るヤイバが力で押されるわけもなく、跳ね返されるかと思ったが何故か愛しの部下は自分を抱きしめてくれた。

「えっ?」

 マーが潤んだ目でヤイバを見上げると、ヤイバは何かの気配を感じたのか険しい顔で入り口を見ていた。

「どうした?」

「【魔法探知】で見える人影があります」

「ネコキャット殿が危ないな・・・。どうする?ヤイバ」

「敵が射程範囲に入ったら魔法で応戦します」

 ネコキャットも気配に気がついたのか髭が敵のいる方を向いている。

 そっと腰のレイピアに手を添えて、敵が動くのを待っていた。

「ヤイバ様」

 影が声を発した瞬間、ネコキャットのレイピアがその影を貫こうとしたがクナイで難なく往なされてしまった。

「裏側ですよ、ネコキャットさん。敵じゃありません」

 ヤイバがネコキャットに教えると、彼はレイピアを鞘に入れて影を凝視した。

 西日が射す地面の人型の影から、紺色の装束を着た男が現れた。

「どうしたんです?」

「王が直ぐに来て欲しいとの事です」

「しかし、今は緑葉に狙われている身。城に行けば迷惑が掛かります」

「ルビー様が王族殺しの容疑者として捕まりました。その捜査をお願いしたいとの事です」

「なんだって!ルビーが?」





「証拠は十分揃っているでは無いですか、陛下」

 黒いローブを着た樹族の男は、顔にかかるソバージュの黒髪を手で静かに払い、どこか悪意を含むような声で報告内容を見て意見を述べた。

「だが、マナの痕跡だけではのう。それにルビーにはアリバイがある」

「以前のように、拷問で真偽を確かめればよろしいでしょう」

「今は亡きヒジリ聖下が拷問禁止を訴えてそれを我らも聞き入れたのだ。出来るわけ無かろう」

「聖下の言葉に法的拘束力は無く、国としては従う義理もありませんが?」

「確か貴様は樹族の神しか信仰しておらんのだったな・・・」

「それは今関係ありません。手っ取り早く拷問で聞き出して白黒つければよろしいかと」

「聖下が決めた事を破るのであれば、神学庁や神聖国の反発で被る不利益をお前が肩代わりしてくれるのなら構わんがのう」

「(ふん、狸め)遠慮しておきますよ。で、もう一人の捜査権限を持つ者はどこですかな?裏側やウォール家が使えない以上、それに相応しい人物は思いつかないのですがね」

「入れ、自由騎士ヤイバ」

 控室からぬぅと現れたヤイバを見て、ソラス・ワンドリッターは驚きを噛み殺す。

 ヤイバの後ろからは少し送れてしずしずと神学庁の司祭たちが入ってきた。神と関わりの深い人物には必ず僧侶が同伴するのだ。

 ソラスは何故この場に聖職者が、と疑問に思ったが相手が神の子ならそれもおかしくないかと納得する。

「はじめまして。宜しくお願いします、ワンドリッター侯爵」

「彼はシルビィ家とは親しいはずですが?陛下」

 ソラスはヤイバの挨拶に応じずシュラスを遠回しに咎めた。

「(宰相が言ったとおりの反応じゃわい)何を言うのか、ソラス。彼はこの国の者ではない。これほど公平な視点の持ち主は他におるまいて」

「しかし、ウォール家と繋がりがある事には変わりありません」

「繋がり、と言えばお前もウォール家とはやり取りがあるじゃろう。ヤイバ、君は年にどれほどウォール家を訪れる?」

「大体、年に四回ほど訪れれば多いほうかと・・・」

「で、ソラスはどうじゃ?毎日王宮でウォール家の人間と会っているだろう?顔を合わす頻度で言えば貴様の方がウォール家に近い人間じゃ」

「屁理屈ですぞ、それは・・・」

「それに!」

 シュラスは強引にソラスを黙らせ自分の意見をねじ込んだ。

「彼は何よりも神の子!嘘偽り無く裁定できるとワシは信じておるんじゃが?のう?ヤイバ」

「神である父に誓って!」

 ヤイバは胸に手を置き、真っ直ぐと前を見つめ、この場にいない父に誓った。

 部屋の隅で立ち会っていた司祭や神官たちが神の子の誠実な誓いに感動して跪いて祈りだした。

「(ちっ!)まぁいいでしょう。我らは騎士ルビーが犯人であるという視点で捜査させてもらいますよ。きっとヤイバ殿はルビーを擁護する捜査をするでしょうから」

「(負け惜しみを)ああ、構わんよ。出来れば両者とも多角的な視点で捜査をして欲しいもんじゃ。何せ犯人は王族殺しという大罪を犯しておるのだから。真実の解明を優先してくれ」

 ヤイバは努めて自信のある顔を装っているが、内心は不安だらけだった。

(暗殺者達を警戒しながらの捜査か・・・。上手くいくだろうか?ネコキャットさんはシルビィさんの部下だから捜査には参加できない。父さんは未だ行方不明。頼れるのはマー隊長だけか・・・)




「すまない・・・ルビー。お前を汚い大人の駆け引きに巻き込んでしまって・・・」

 申し訳なさそうに娘に謝るシルビィの肩に手を置いてシオは励ます。

「父ちゃんはお前の事をこれっぽっちも疑ってないからな。きっとヤイバが無罪を証明してくれるさ」

「おうよ、ルビーちゃんの愛しのヤイバ様が絶対助けてくれるさ」

 聖なる光の杖が珍しく茶化さずに真面目にそう言った。

 父や母、喋る光の杖に玄関先で一時の別れの挨拶を交わすルビーは兄をちらりと見た。

 無口なヌリはただ黙って頷く。

「じゃあ行ってくるね!皆心配しなくてもいいよ!私、修道院ってどんな所か興味あったしさ!」

 ウォール家の長女はカラッとした態度でそう言うと笑顔を見せた。

 元老院の提案でルビーは容疑が晴れるまで、或いは容疑が固まるまで修道院で過ごすこととなった。貴族とは別の規範で動く宗教の世界で彼女は隔離される事となる。

 窓から体を乗り出して手を振る娘に手を振り返すシオとシルビィは目に涙を溜めていた。

「永遠の緑葉め・・・。ルビーは奴らとは関わりがないというのに・・・」

「くそったれ!」

 シルビィもシオも娘を手元に置いておけず、元老院の言いなりになってしまった事を悔やむ。自分たちの貴族としての駆け引きの下手さを呪い、娘を乗せた馬車をいつまでも見送った。




 ヤイバは王に用意された部屋で取り敢えず、報告書に矛盾がないか目を通す。

「被害者の衣類に残ったマナの手形は検視官の【知識の欲】でルビーのものだと断定されています。しかし彼女にはアリバイがあり、王族が死んだ時間には家にいた。魔法に寄る幻を家に置いて犯行を行ったとしても、コウメが見破っているはずだ。父さんが作ったイービルアイには魔法が全く効かないですから」

 協力を申し出たマーは、紅茶を飲みながら黙って聞いている。

「ところで隊長、休みを取れたのですか?」

「ああ、城の召使に伝令を頼んだ。銀貨二枚も取られたがな・・・」

「すみません、僕のために」

「いいさ。私が勝手に手伝っているだけだからな(もっと仲を深めるチャンスだし)」

 コンコンとドアがノックされた。

「ヤイバ様、お風呂の用意が出来ました」

 メイドの風呂を勧める声が聞こえてきて、ヤイバは徐ろに立ち上がった。

「洞窟で凄く汚れたのでお風呂に入ってきます」

「ああ」

 ヤイバは風呂場まで来ると無防備になる事を警戒したが、城の奥まで暗殺者が入ってくるのは不可能だろうと考えた。

 裏側以外でも影となって仕える者はいる。更に何重にも張り巡らせた魔法の罠を抜けるのは至難の業だ。魔法院があった頃は厳重な魔法の警報や罠を掻い潜って侵入した賊がいたらしいがここは王宮だ。魔法院よりも警戒が厳しい。

「旧魔法院を突破した盗賊はいたらしいけど、流石にここまで暗殺者は来ないだろう・・・。でも一応・・・。【粘液の沼】!」

 トリモチのような粘液が風呂場の入り口に広がった。これは術者以外に見えない。狩猟の罠にも応用されるこの魔法の粘液は簡単に【罠解除】で解除できるが、しつこく絡むのでその間に暗殺者を発見できる可能性が高くなる。

「よし、そう言えばマサヨシさんがこれを見てゴキブリホイホイのようだと言っていたな。なんだろう?ゴキブリホイホイって」

 ヤイバは念入りに体を洗って嗚呼と吐息を漏らして湯船に浸かる。

「やっぱりお風呂は気持ちいい。日に二回は入りたいよ。明日から本格的に捜査か・・・。早くルビーを自由にしてあげないと。自由奔放な性格の彼女は他人からの束縛を嫌うからな」

 何となく隊長が風呂に乱入してくる展開も少し考えたが、そういうこともなく風呂を出ると既にマーはソファー上で眠っていた。

 抱きかかえて寝室まで運ぶと自分も用意された寝室に向かい寝床についた。





「兄者」

「どうした弟者」

「あの爆発以降、奴の足取りが掴めないのは何故だ?」

「オーガが下手な隠遁術で身を隠し、追いかけていったせいだ」

「でも、兄者。彼は下手な隠遁術の割に、我らはそのオーガを見失ってしまったではないか」

「お前が追いかける途中で馬車に轢かれそうになった子犬を助けたからだ、弟者」

「ああ、そんな事もあった。よく覚えているな。流石は兄者」

「兄者はなんでも覚えている」

 路地裏で会話をしていたバガー兄弟のもとに何者かが近づいてきた。

「お前らは馬鹿なのか?自分たちが追われる側、狩られる側になると考えたことは無いのかね?」

 樹族の騎士は杖を構えると、狭い通路に【稲妻】を放った。オークの兄弟に繋がるようにして稲妻は走り一瞬にして二人の体を灰にしてしまった。

「クリティカルヒットか。狭い場所でのこの魔法は有効過ぎてつまらんな」

 騎士はフンと吐き捨てるようにそう言うとその場を立ち去っていった。

 狭い路地の上の方から声がする。両脇の壁に手脚を踏ん張って体を支える下着姿のオーク達の姿がそこにあった。

「兄者」

「なんだ、弟者」

「奴は何故死体と周囲を確認してから立ち去らなかった?」

「素人だからだ」

「裏側から盗んだこの空蝉の術は有名ではないのか?なぜ奴は見破れなかった?」

「何故ならば、この術は裏側の術だからだ。知る者は少ない」

「流石は兄者、物知りだ」

「そう。兄者はなんでも知っている」

「では、兄者。暫くあの男を観察するとしようか」

「勿論だ、弟者」

 朝の大通りを褌一枚で歩くオークがいるにも関わらず、誰も彼等に気がついていない。勿論、前を歩く先程の騎士も気がついていない。バガー兄弟の隠遁術はそれ程優れているという事だ。

「我らがわざと見つかるように立っていたとは知らず、間抜けな騎士だな、弟者」

「全くだ。兄者はいつも賢い策を思いつく」

 何も知らない騎士は上機嫌で鼻歌を歌いながらとある貴族の館へと入っていった。
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 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

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"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

エラーから始まる異世界生活

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ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

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