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地走り族の好奇心
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オニオンとライオスを見守る軽戦士フリーは、他に悪魔が潜んでいないかを警戒しつつ、二対二の戦いに引き込まれていった。
リズムを刻むかのような小気味の良い攻防に、興奮を覚えるフリーは軽口を叩いた。
「負けてねぇな、うちも。霧の向こう側から来た悪魔にしては、あの二匹はそんなに強くない」
軽戦士の言葉に、スキンヘッドを光らせるパンが「やれやれ」と言って、落ちかけたマイトキャップを頭に乗せて注意する。
「まだ戦いは始まったばかりじゃないですか、フリー。かの悪魔は見たところ、パワーファイター系。魔法を使わないからやれているのですよ」
「それもそうか。前回戦ったグレーターデビルは、狂ったように魔法を連発してきて厄介だったもんな。まぁそのお陰でスタミナ切れを起こして、討伐できたけどよ」
悪魔は無限に魔法を使えるが、魔法を使えばスタミナを消費するので、実質無限ではない。対策としては、魔法無効化率の限界25%まで上げ、魔法防御も最高の鎧でひたすら耐え凌ぐのだ。勿論、魔法防御のスキルなり魔法なりも使用する。
法外な値段の装備を纏う歩く財宝と言ってもよい不動聖山は、幾度となく追剥と化した他パーティに狙われてきた。そういった無法者や悪魔にも負けず、十年も生き延びてきたのだ。これは奇跡に近い。
それに前衛の三人は悪魔専門とはいえ、ただの戦士としても強い。白獅子のトウスと良い勝負をするのではないかと、冒険者ギルドでも言われている。
「中々やるッ!」
オニオンが牛頭の棘金棒を盾で受けて、思わず言葉が漏れた。
「我らなど木っ端の悪魔に過ぎん」
牛頭の悪魔は、【光の剣】を纏うメイスの反撃を金棒で受け止め、答える。
「謙遜するな。名を聞こうか」
「そこまで言うなら種族名を名乗ろう。我はゴズキ。相棒はメズキだ」
一個体としての名を名乗ると、主なしの悪魔は支配されてしまうので、種族名で名乗ったのだ。
「私はオニオンだ。メズキ殿と戦っている戦士はライオス。それにしても良い魔法の武器を持っているな。私の錬度の高い【光の剣】を凌げるとは驚きだ」
練度の高い【光の剣】を普通の武器や盾で受けようとすると、防御を無視してダメージを与える。
しかし、高位の魔法の武器防具ならそれを受け止められる。
「大きな体格差を物ともせず戦う汝らも、良い戦士だ」
樹族で構成される不動聖山は、誰もが身長百六十センチ程度。それに対してゴズキもメズキも二メートルはある。手足も長く、リーチも広い。力も怪力と言ってもいいだろう。
「こんな出会い方をしていなければ、互いに高めあえる存在だったろう。残念に思う」
「同感だ」
「しかし」
ライオスが戦いながらゴズキとオニオンの会話に口をはさんだ。
「君たちは、能力に頼り過ぎのようだ。経験値が圧倒的に足りない。一手一手のパターンが少ない。つまり先が読めるのだ」
そう言って、ライオスはメズキの持つ棘金棒を、光の剣で巻き取るようにして奪ってしまった。
オニオンも同じ動きをして、ゴズキの魔法の棘金棒を引き寄せる。
「―――!!」
武器を奪われたゴズキとメズキは、格闘スタイルに切り替えたが、そこにパンが待ったをかける。
「この勝負あった!」
「我らはまだやれる」
メズキが不満そうな顔をパンに向けた。
「いや、もう勝負はついている。君たちはどのみち、オニオンとライオスの光の剣の前に負ける。そうでもなくとも帰還の祈りの前に抗えまい。そこで、だ。契約をしないか?」
そう言われて悪魔二匹は困惑しつつ顔を見合わせる。
「私は先見の能力者だ。ほんの少し先の未来をいつも見ている。いや可能性を見ていると言ったほうが正しいか」
パンの言葉を鵜呑みに出来ず、悪魔は益々困惑する。
「それをどう証明する? とゴズキは言う」
「それをどう証明する? うぐっ!」
冷や汗を流す牛頭の横で、ゴズキが口を開きかけたので、慌ててパンが次の予言をする。
「何を言うか場の流れを読んで予想しただけだ、とメズキは言う」
「何を言うか場の流れを・・・・。ぐむぅ」
「私の能力を信じてくれたかね?」
能力者はそう多くはない。確率的にはパンが嘘をついている可能性が高い。それでも信じるに足る何かをこの僧侶は持っていた。
「先が読めるなら、もう何も言わなくても分かるだろう」
メズキとゴズキはオニオンとライオスに手を差し出した。武器を返してくれと言っているのだ。
「通してくれるか! そうか! 良かった! 無駄な死人・・・。いや死悪魔が出なくて」
「我らは死ぬことはない。この世界で体の具現化が不安定になれば魔界に帰るだけだ」
オニオンとライオスが悪魔に武器を返すと、二人は門の端に立って真っすぐ前を見た。もう不動聖山はいないも同然のような顔をして押し黙った。
「では通してもらう」
不動聖山のメンバーは誰一人、ゴズキとメズキを疑って警戒したりはしない。悪魔の契約は絶対なのだ。武器を返してもらう代わりに、門を通すという契約に悪魔は従った。
「ケっ!」
不動聖山の影の中で唾を吐く地走り族が、同じく地走り族の少女に怒られる。
「汚いよ、唾なんか吐いて! もう!」
「だってさぁ、あんな綺麗な戦い方ってあるかい? 俺たちなんていつも泥臭い戦いをしてきたってのにさ」
「いいじゃん、別に戦い方なんて。そもそもピーターお兄ちゃんは、敵を殺しすぎなんだよ~」
「俺はアライメントが悪だからな! 邪魔な奴を殺してナ~ンボ」
「最低ー」
ピーターの馬鹿にするような顔を見て、ムクはロングスタッフで突っついたが、ピーターは難なく避けた。
カズン家の執事が、慌てて魔法水晶を持ってきたので、ガノダは軽く頷く。
目の前の水晶に内包するマナを浴びせて、ガノダは真っ先に旧友であり親友でもあるワンドリッター家の異端児に連絡をとった。
水晶に映し出された騎士は黒い鎧を着ているので、ガノダは好都合に思う。
「その姿という事は、アルケディアにいないと見た」
昔よりも更に太った親友を見て、ステコは「はぁ」とため息をついた。
「何用だ。ワンドリッター家にいる時は、あまり連絡をするなと言ってあったはずだが?」
「ばか! それどころじゃないんだよ! 霧の魔物が出たんだ!」
「知った事か!」
連絡を切ろうとするステコをガノダは呼び止める。
「待て! 悪魔の城だ! 城ごと現れたのだぞ! 父上の精鋭騎士が五名殺された。すぐに支援に来てくれ!」
城ごと、と聞いてステコの好奇心がくすぐられる。
「ほう。どこに? ムダンの土地か?」
「ああ、カズン領だ」
「ふむ。あの性悪の女騎士の故郷か」
性悪の騎士とは勿論、サーカ・カズンの事である。冷血冷淡、更に傲慢さで有名で、ワンドリッターの隠し子ではないかと言われているが、ムダン家直系の家臣ジブリット家の落とし子である。
「ああ、丁度帰郷しているが、彼女は悪魔退治には向いていないので話は通していない」
確かに樹族の騎士は悪魔退治に有利というわけではないが、不利でもない。
「話を通せば良かっただろう。バトルコック団には修道騎士がいたはずだ」
「いや、あの修道騎士は抜けた」
「そうか。しかし、私は今すぐには動けんぞ」
「また、どこぞのマダムを抱くのか?」
ガノダのニヤニヤ顔に、図星だったステコは「うぐっ」と言葉を詰まらせる。
ステコは樹族にしては背が高く、涼しい顔の美男だ。ワンドリッター家の政治的な理由で、貴族の奥方の相手をする事がある。
樹族は性に関しては奔放である。こういった事は珍しくないのだ。
「事が終わった後でもいいから来てくれないか? 頼む! ワンドリッター家には対悪魔特化の騎士が数名いただろう? 連れてきてくれ」
ムダンの都合のいい願いに、ステコは「ハッ!」と笑う。
「ワンドリッター家の者が、ムダン家を助ける為に援軍を出すわけないだろう。だが、まぁ仕方がない。用事を済ませたら私が行こう。支援は多いに越したことはないだろう?」
「助かる! 今日ほどワンドリッター領が近くにあって嬉しかったことはない!」
「皮肉だな」
フッと笑うステコを見て、ガノダは通信を切った。
「わぁぁ! あいつら、悪魔の城に行く準備してんじゃないのか?」
地走り族の数名が、遠くに見える禍々しい城を時々見て、荷物のチェックをしている。
「だろうな。それが彼らの習性だ」
サーカの言葉を聞いて、俺はピーターとムクの顔を思い浮かべる。好奇心が旺盛で何にでも首を突っ込む種族。それが地走り族。
「行ったらすぐに殺されるぞ!」
「だったら、あの城以上に興味を引く事をすればいいだろう」
未だ元気のないサーカの提案に、俺は舌を出して斜め上の虚空を見つめ考える。
「そうだ!」
亜空間ポケットをゴソゴソと探って、オンボロな機械を取り出した。
「壊れかけのレディ・・・。いや、壊れかけの玩具デュプリケーター!」
脳内でシパシパシパ! と効果音を付けて、取り出した機械の上部の穴に、ヨモギ餅を入れた。
―――ブボボッ! ブボュ!
奇妙な音を立てて、下部全面に空いた穴から、ヨモギ餅が沢山出てくる。
大きな音を立てる機械に、地走り族が群がってきた。しめしめ。
「おほー!! なに? これは! オビオさん!」
「これは、食べ物のみを複製する、面白機械さ!」
「ノーム国製?」
実際は地球製だが、面倒くさいので頷いて笑う。
「わぁぁ! ノーム国製の装置なんて初めて見たよ! この緑の丸いのは何?」
「ヨモギ餅と言って、なんと! 異世界の食べ物なのでーす!」
これも嘘だが、地走り族の目がキラキラしているので良しとする。
「食べてもいい?」
「どうぞ!」
北斗の〇の雑魚の如く、地走り族達は飛び上がってヨモギ餅を貪り食べ始めた。
いいぞ、これで暫くは時間が稼げるだろう。
リズムを刻むかのような小気味の良い攻防に、興奮を覚えるフリーは軽口を叩いた。
「負けてねぇな、うちも。霧の向こう側から来た悪魔にしては、あの二匹はそんなに強くない」
軽戦士の言葉に、スキンヘッドを光らせるパンが「やれやれ」と言って、落ちかけたマイトキャップを頭に乗せて注意する。
「まだ戦いは始まったばかりじゃないですか、フリー。かの悪魔は見たところ、パワーファイター系。魔法を使わないからやれているのですよ」
「それもそうか。前回戦ったグレーターデビルは、狂ったように魔法を連発してきて厄介だったもんな。まぁそのお陰でスタミナ切れを起こして、討伐できたけどよ」
悪魔は無限に魔法を使えるが、魔法を使えばスタミナを消費するので、実質無限ではない。対策としては、魔法無効化率の限界25%まで上げ、魔法防御も最高の鎧でひたすら耐え凌ぐのだ。勿論、魔法防御のスキルなり魔法なりも使用する。
法外な値段の装備を纏う歩く財宝と言ってもよい不動聖山は、幾度となく追剥と化した他パーティに狙われてきた。そういった無法者や悪魔にも負けず、十年も生き延びてきたのだ。これは奇跡に近い。
それに前衛の三人は悪魔専門とはいえ、ただの戦士としても強い。白獅子のトウスと良い勝負をするのではないかと、冒険者ギルドでも言われている。
「中々やるッ!」
オニオンが牛頭の棘金棒を盾で受けて、思わず言葉が漏れた。
「我らなど木っ端の悪魔に過ぎん」
牛頭の悪魔は、【光の剣】を纏うメイスの反撃を金棒で受け止め、答える。
「謙遜するな。名を聞こうか」
「そこまで言うなら種族名を名乗ろう。我はゴズキ。相棒はメズキだ」
一個体としての名を名乗ると、主なしの悪魔は支配されてしまうので、種族名で名乗ったのだ。
「私はオニオンだ。メズキ殿と戦っている戦士はライオス。それにしても良い魔法の武器を持っているな。私の錬度の高い【光の剣】を凌げるとは驚きだ」
練度の高い【光の剣】を普通の武器や盾で受けようとすると、防御を無視してダメージを与える。
しかし、高位の魔法の武器防具ならそれを受け止められる。
「大きな体格差を物ともせず戦う汝らも、良い戦士だ」
樹族で構成される不動聖山は、誰もが身長百六十センチ程度。それに対してゴズキもメズキも二メートルはある。手足も長く、リーチも広い。力も怪力と言ってもいいだろう。
「こんな出会い方をしていなければ、互いに高めあえる存在だったろう。残念に思う」
「同感だ」
「しかし」
ライオスが戦いながらゴズキとオニオンの会話に口をはさんだ。
「君たちは、能力に頼り過ぎのようだ。経験値が圧倒的に足りない。一手一手のパターンが少ない。つまり先が読めるのだ」
そう言って、ライオスはメズキの持つ棘金棒を、光の剣で巻き取るようにして奪ってしまった。
オニオンも同じ動きをして、ゴズキの魔法の棘金棒を引き寄せる。
「―――!!」
武器を奪われたゴズキとメズキは、格闘スタイルに切り替えたが、そこにパンが待ったをかける。
「この勝負あった!」
「我らはまだやれる」
メズキが不満そうな顔をパンに向けた。
「いや、もう勝負はついている。君たちはどのみち、オニオンとライオスの光の剣の前に負ける。そうでもなくとも帰還の祈りの前に抗えまい。そこで、だ。契約をしないか?」
そう言われて悪魔二匹は困惑しつつ顔を見合わせる。
「私は先見の能力者だ。ほんの少し先の未来をいつも見ている。いや可能性を見ていると言ったほうが正しいか」
パンの言葉を鵜呑みに出来ず、悪魔は益々困惑する。
「それをどう証明する? とゴズキは言う」
「それをどう証明する? うぐっ!」
冷や汗を流す牛頭の横で、ゴズキが口を開きかけたので、慌ててパンが次の予言をする。
「何を言うか場の流れを読んで予想しただけだ、とメズキは言う」
「何を言うか場の流れを・・・・。ぐむぅ」
「私の能力を信じてくれたかね?」
能力者はそう多くはない。確率的にはパンが嘘をついている可能性が高い。それでも信じるに足る何かをこの僧侶は持っていた。
「先が読めるなら、もう何も言わなくても分かるだろう」
メズキとゴズキはオニオンとライオスに手を差し出した。武器を返してくれと言っているのだ。
「通してくれるか! そうか! 良かった! 無駄な死人・・・。いや死悪魔が出なくて」
「我らは死ぬことはない。この世界で体の具現化が不安定になれば魔界に帰るだけだ」
オニオンとライオスが悪魔に武器を返すと、二人は門の端に立って真っすぐ前を見た。もう不動聖山はいないも同然のような顔をして押し黙った。
「では通してもらう」
不動聖山のメンバーは誰一人、ゴズキとメズキを疑って警戒したりはしない。悪魔の契約は絶対なのだ。武器を返してもらう代わりに、門を通すという契約に悪魔は従った。
「ケっ!」
不動聖山の影の中で唾を吐く地走り族が、同じく地走り族の少女に怒られる。
「汚いよ、唾なんか吐いて! もう!」
「だってさぁ、あんな綺麗な戦い方ってあるかい? 俺たちなんていつも泥臭い戦いをしてきたってのにさ」
「いいじゃん、別に戦い方なんて。そもそもピーターお兄ちゃんは、敵を殺しすぎなんだよ~」
「俺はアライメントが悪だからな! 邪魔な奴を殺してナ~ンボ」
「最低ー」
ピーターの馬鹿にするような顔を見て、ムクはロングスタッフで突っついたが、ピーターは難なく避けた。
カズン家の執事が、慌てて魔法水晶を持ってきたので、ガノダは軽く頷く。
目の前の水晶に内包するマナを浴びせて、ガノダは真っ先に旧友であり親友でもあるワンドリッター家の異端児に連絡をとった。
水晶に映し出された騎士は黒い鎧を着ているので、ガノダは好都合に思う。
「その姿という事は、アルケディアにいないと見た」
昔よりも更に太った親友を見て、ステコは「はぁ」とため息をついた。
「何用だ。ワンドリッター家にいる時は、あまり連絡をするなと言ってあったはずだが?」
「ばか! それどころじゃないんだよ! 霧の魔物が出たんだ!」
「知った事か!」
連絡を切ろうとするステコをガノダは呼び止める。
「待て! 悪魔の城だ! 城ごと現れたのだぞ! 父上の精鋭騎士が五名殺された。すぐに支援に来てくれ!」
城ごと、と聞いてステコの好奇心がくすぐられる。
「ほう。どこに? ムダンの土地か?」
「ああ、カズン領だ」
「ふむ。あの性悪の女騎士の故郷か」
性悪の騎士とは勿論、サーカ・カズンの事である。冷血冷淡、更に傲慢さで有名で、ワンドリッターの隠し子ではないかと言われているが、ムダン家直系の家臣ジブリット家の落とし子である。
「ああ、丁度帰郷しているが、彼女は悪魔退治には向いていないので話は通していない」
確かに樹族の騎士は悪魔退治に有利というわけではないが、不利でもない。
「話を通せば良かっただろう。バトルコック団には修道騎士がいたはずだ」
「いや、あの修道騎士は抜けた」
「そうか。しかし、私は今すぐには動けんぞ」
「また、どこぞのマダムを抱くのか?」
ガノダのニヤニヤ顔に、図星だったステコは「うぐっ」と言葉を詰まらせる。
ステコは樹族にしては背が高く、涼しい顔の美男だ。ワンドリッター家の政治的な理由で、貴族の奥方の相手をする事がある。
樹族は性に関しては奔放である。こういった事は珍しくないのだ。
「事が終わった後でもいいから来てくれないか? 頼む! ワンドリッター家には対悪魔特化の騎士が数名いただろう? 連れてきてくれ」
ムダンの都合のいい願いに、ステコは「ハッ!」と笑う。
「ワンドリッター家の者が、ムダン家を助ける為に援軍を出すわけないだろう。だが、まぁ仕方がない。用事を済ませたら私が行こう。支援は多いに越したことはないだろう?」
「助かる! 今日ほどワンドリッター領が近くにあって嬉しかったことはない!」
「皮肉だな」
フッと笑うステコを見て、ガノダは通信を切った。
「わぁぁ! あいつら、悪魔の城に行く準備してんじゃないのか?」
地走り族の数名が、遠くに見える禍々しい城を時々見て、荷物のチェックをしている。
「だろうな。それが彼らの習性だ」
サーカの言葉を聞いて、俺はピーターとムクの顔を思い浮かべる。好奇心が旺盛で何にでも首を突っ込む種族。それが地走り族。
「行ったらすぐに殺されるぞ!」
「だったら、あの城以上に興味を引く事をすればいいだろう」
未だ元気のないサーカの提案に、俺は舌を出して斜め上の虚空を見つめ考える。
「そうだ!」
亜空間ポケットをゴソゴソと探って、オンボロな機械を取り出した。
「壊れかけのレディ・・・。いや、壊れかけの玩具デュプリケーター!」
脳内でシパシパシパ! と効果音を付けて、取り出した機械の上部の穴に、ヨモギ餅を入れた。
―――ブボボッ! ブボュ!
奇妙な音を立てて、下部全面に空いた穴から、ヨモギ餅が沢山出てくる。
大きな音を立てる機械に、地走り族が群がってきた。しめしめ。
「おほー!! なに? これは! オビオさん!」
「これは、食べ物のみを複製する、面白機械さ!」
「ノーム国製?」
実際は地球製だが、面倒くさいので頷いて笑う。
「わぁぁ! ノーム国製の装置なんて初めて見たよ! この緑の丸いのは何?」
「ヨモギ餅と言って、なんと! 異世界の食べ物なのでーす!」
これも嘘だが、地走り族の目がキラキラしているので良しとする。
「食べてもいい?」
「どうぞ!」
北斗の〇の雑魚の如く、地走り族達は飛び上がってヨモギ餅を貪り食べ始めた。
いいぞ、これで暫くは時間が稼げるだろう。
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