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未来の安寧
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こんな訳も分からない奴を守らなければならないのかと思いつつ、トウスは正義を見た後に自慢の怪力で屋上のドアを強引に引き剥がして手に持った。
「即席の盾だ。頑丈そうだし、【弓矢そらし】と合わされば、相当ダメージを防いでくれるだろう」
「いい考えだ、トウス」
すぐ後ろでワンドを構えるサーカがそう言って、雄叫びを上げて前進するトウスの後に続いた。
「一斉照射開始!」
パワードスーツとヘルメットを装着した女指揮官が指示を出すと、トウスに向かって銃弾の雨が飛ぶ。
「【吹雪】!」
幾らか弾丸を受けた鉄の扉の後ろで、サーカの詠唱が完了した。
「今だ! ピーター!」
魔法に抵抗力の無いレプタリアン達は、寒さで動きが鈍くなり凍傷のダメージを受け、その背後からピーターが一人ずつとどめを刺していくのだから、敵は一瞬にして混乱に陥る。
影から現れ、消えるピーターは敵を十人ほど倒しただろうか?
「半数は仲間の背後を警戒しろ!」
指揮官は即座に対抗策を見出し、的確に指示を出す。
「あの指揮官、あっという間に対抗策を打ち出してきやがった! 普通は幾らか戸惑うだろうに。中々の切れ者だ」
トウスが未だ銃弾の雨を鉄扉で防ぎつつ、指揮官の頭の良さを褒めたので、サーカは「ハッ!」と鼻で笑い、獅子人に答える。
「あまり敵を褒めたくはないが、同意だな。恐らく、エリート種だろう。しかも、ヒジリ聖下と似たようなスーツを着ているせいか、魔法の副次効果が弱い」
【吹雪】の場合、副次効果とは冷気による体温の低下だ。
「あいつ以外は雑魚だな。見ろ、指先がかじかんで、引き金すら満足に引けねぇでいる!」
トウスは鉄扉の盾を捨てると、雲を突き抜ける雷光の如く動いて、エリート指揮官に飛びかかった。剣が指揮官の手甲によって弾かれはしたが、獅子人は雄叫びを上げて、連撃を繰り出す。
「雑魚は任せたぞ! サーカ!」
いつから、トウスはサーカのことを騎士様と呼ばなくなっただろうか。一年以上、共に旅をして、育まれた絆が、サーカと呼ぶ事を許したのだ。それだけの仲となったと言える。
「雑魚退治だと? 却下だ」
背後で樹族の騎士のニヤリとする顔を想像して、トウスの背筋が寒くなった。
「あいつ――――!」
トウスが大跳躍で指揮官の前から飛び去ると、即座に極太のビーム魔法が放たれた。ワンドが上手く固定できなかったのか、それとも狙ってやっているのか、ビームはレプタリアン達を薙ぎ払うようにして命中していく。
敵は悲鳴を上げる間もなく、消し炭になり、地面に倒れていくが、装置は無事なままだ。
その中で、装甲をパージして前面の盾にする指揮官は生き残った。
「私はここで死ぬわけにはいかない! この装置さえ守りきれば、仲間を開放してもらえるのだから!」
ビーム魔法を耐えきったとはいえ、相当なダメージを負った指揮官は、気力だけで立っているような状態だった。
「ん? その声、どこかで聞いた事があるな。待て! ピーター!」
トウスは、指揮官の背後に立つピーターのダガーを魔剣で弾いて止める。
「何すんだよ、おっさん!」
「いいから、ダガーをしまえ」
不服そうにダガーを腰の鞘に収めて、ピーターは事の行き先を見定めようと、後ろ手を組んだ。
「あんた、ラケルだろう?」
獅子人の問いかけに、指揮官はビクッとする。
「ど、どうして、その名前を? それは特定の地球人にしか教えていない名前・・・。しかも、その地球人も寿命が尽きて、もうこの世にはいない」
「まぁ、なんだ。俺らはあんたに出会ってんだわ」
「それは嘘ですね。私の知り合いに、魔法の星の住人はいない」
「かぁ~。なんつったらいいんだか。ええっと、この時代は確か・・・。過去なんだったよな? サーカ」
頭を忙しなく掻くトウスに代わって、サーカが前に出てきた。
「そうだ。我々は二千年先の未来にて、貴様と出会っている、ラケル」
ヘルメットを脱いで、カッパ顔を晒すラケルは、訝しむも、話を理解しようと努めた。
「つまり、貴方がたは未来人だと?」
「ああ、未来のお前は、仲間と共に魔法の星のダンジョンに移り住むのだ」
「仲間と?」
「うむ。いずれ、お前たちを魔物の霧が包むだろう。それはこの後すぐか、百年後かは知らないが・・・。とにかく、竜人に虐げられる日々は終わるのだ」
「そんな夢見たいな話が本当に? それに霧とは何の事です?」
「霧は・・・。正直私にもわからん。オビオが言うには、その場から逃げたいと強く願った者の前に現れる、一種の自然発生的な転移空間だそうだ」
「よくわかりませんが、それが事実であれば、どんなに素敵な事でしょうか! それで、私にどうしてほしいのですか?」
「そこの装置の守りを・・・」
とサーカが言いかけたところで、ビルの屋上の端に、ロボットが現れて、その左手からセブンが降り立つ。
「惑わされるな、ラケル。そいつらが魔法の星の住人だということを忘れたか。魔法とかいう不可思議な力で、人の心を覗くなんてのは、簡単な事なのだろう? そこの女」
そこの女、と呼ばれたサーカはムッとしながらも、オビオがいないことを心配する。
「オビオはどうした!?」
「あの小僧か? 今頃、機甲兵の右手で肉塊と化しているだろう。その様を見たいか?」
上から目線でいうセブンの顔を見ながら、サーカは大口を開けて笑ったので、竜人は苛立ちを見せた。
「何がおかしい?」
「ハハハ! お前がオビオの事を何も知らないからだ。その程度で奴が死ぬか。バカが」
「バカはお前だ。よしんば、生きていたとして、機甲兵と対等に渡り合える戦力がどこにある?」
――――ギョォォォ!!
奇妙な鳴き声と同時に、セブンの通信期から機甲兵パイロットの悲鳴が聞こえてきた。
「セブン隊長! あの小僧が!」
鉄の装甲が歪む音が辺りに響き、右腕と頭部を失ったロボットが、フォトンバーニアを噴射して、上空に逃げた。
「なんだ?」
屋上の端を、鋭い爪の巨大な三指が掴んだので、セブンは慌てて、そこから離れる。
次に現れたのは、赤竜の険しい顔だった。
「おい、どっからドラゴンなんか現れたんだ? 星の国にも、魔物の霧が発生するのか?」
ピーターがそう言って、急いで影に隠れる。
――――キィィン!
マイクがハウリングでも起こしたかのような音が、誰しもの頭に響いた。
「オレオレ、俺だよ、ミチ・オビオだよ!」
今にも長い顎を突き出して、噛みついてきそうなドラゴンは、確かに皆の脳内でそう言った。
「オビオ?!」
「そうだ。お前の愛しい人、オビオだ。サーカ」
「バカっ! 今そんな事を言っている場合か。なんでドラゴンになっているのだ?」
「サブAIが余計な事しやがった。俺が気絶している間に、以前に吸収したドラゴンの体内にあったナノマシンを使いやがったんだ」
「元に戻れるのか?」
「多分戻れるだろ。知らんけど。さぁ、力がある内に、通信遮断装置を壊すぞ!」
「ラケル、そいつらを止めろ! パワードスーツを着ているお前ならやれる!」
「でもっ!」
ヒジリと同程度の性能を持つパワードスーツならば、厄介だなとオビオは思う。いっそ、叩き潰そうかと思ったが、その気配を察したサーカが手を降って、オビオを止める。
「その女をよく見ろ! ラケルだ!」
「なんだって?! ・・・本当だ! カッパのラケルさんだ! だったらお願いだ! 頼む! 俺たちの味方をしてくれ!」
「惑わされるな、ラケル!」
セブンとオビオの間で板挟みになるラケルは、頭を抱えて蹲った。
「うううう・・・」
ラケルが悩んでいる間に、機甲兵のビームソードが、ビルにしがみ付くオビオの胴体を貫いた。
「ぎゃあああ!! あち! いてぇ! こんのクソォォォ!!」
赤竜となったオビオの喉が赤々と光り膨らむ。
「落ちろ! カトンボ! あっちいけ!」
炎のブレスが、飛び回るロボットを捕らえた。
「うわぁ! 隊長! 火が! 火がぁぁ!」
ロボットの胴体から、熱で真っ赤になったポッドが射出され、パイロットは火傷を負いつつも、なんとか脱出できた。
その様子をホッとした目で見つめ、ドラゴンのオビオは今一度、ラケルを説得する。
「頼む! ラケルさん! 俺らはあんたと敵対したくないんだ。未来の――――、ダンジョンの森で静かに暮らすラケルさんは、とても幸せそうでしたよ!」
そう言われて、ラケルはハッとしてセブンに顔を向ける。
「隊長・・・。以前に時間は・・・。観測者が物事を観測した時点で、現在が決定し、過去が書き換わると仰っていましたよね?」
「そうだが、それは奴らの言っている事が事実であれば、の話だ。敵を信用するな! あと少しばかり、ここを守りきれば、ワープゲートが開いて味方がやって来る。それまで職務を全うしろ。仲間がどうなってもいいのか!」
「・・・。でしたら! 彼らが未来の観測者だとすれば! 既に私とその仲間の安寧は、確約しているも同然という事ですよね?!」
「何度も言わせるな! それは奴らの話が本当であれば、だ。・・・まさか裏切るのではないだろうな?」
ラケルは腰のレーザー銃を、セブンに向けた。
「貴様ぁ・・・!」
「私は信じます! この方たちの言葉を! さぁ、装置を守るシールドを解除してください!」
「仲間がどうなっても・・・!」
「私の銃は! 貴方のシールドと同じ周波数に合わせてありますよ?」
セブンは観念し、唾を地面に吐くと、胸のバッジにタッチした。すると装置の周りのシールドが消えて無防備になる。
「こんな事をしてただで済むと思うなよ。軍事裁判の後、お前とお前らの仲間は処刑されるからな」
「さぁ、ドラゴンさん! 早く装置を破壊しちゃって下さい!」
ラケルはセブンの脅しを無視して、オビオに叫んだ。
「よっしゃぁぁあ!!」
「即席の盾だ。頑丈そうだし、【弓矢そらし】と合わされば、相当ダメージを防いでくれるだろう」
「いい考えだ、トウス」
すぐ後ろでワンドを構えるサーカがそう言って、雄叫びを上げて前進するトウスの後に続いた。
「一斉照射開始!」
パワードスーツとヘルメットを装着した女指揮官が指示を出すと、トウスに向かって銃弾の雨が飛ぶ。
「【吹雪】!」
幾らか弾丸を受けた鉄の扉の後ろで、サーカの詠唱が完了した。
「今だ! ピーター!」
魔法に抵抗力の無いレプタリアン達は、寒さで動きが鈍くなり凍傷のダメージを受け、その背後からピーターが一人ずつとどめを刺していくのだから、敵は一瞬にして混乱に陥る。
影から現れ、消えるピーターは敵を十人ほど倒しただろうか?
「半数は仲間の背後を警戒しろ!」
指揮官は即座に対抗策を見出し、的確に指示を出す。
「あの指揮官、あっという間に対抗策を打ち出してきやがった! 普通は幾らか戸惑うだろうに。中々の切れ者だ」
トウスが未だ銃弾の雨を鉄扉で防ぎつつ、指揮官の頭の良さを褒めたので、サーカは「ハッ!」と鼻で笑い、獅子人に答える。
「あまり敵を褒めたくはないが、同意だな。恐らく、エリート種だろう。しかも、ヒジリ聖下と似たようなスーツを着ているせいか、魔法の副次効果が弱い」
【吹雪】の場合、副次効果とは冷気による体温の低下だ。
「あいつ以外は雑魚だな。見ろ、指先がかじかんで、引き金すら満足に引けねぇでいる!」
トウスは鉄扉の盾を捨てると、雲を突き抜ける雷光の如く動いて、エリート指揮官に飛びかかった。剣が指揮官の手甲によって弾かれはしたが、獅子人は雄叫びを上げて、連撃を繰り出す。
「雑魚は任せたぞ! サーカ!」
いつから、トウスはサーカのことを騎士様と呼ばなくなっただろうか。一年以上、共に旅をして、育まれた絆が、サーカと呼ぶ事を許したのだ。それだけの仲となったと言える。
「雑魚退治だと? 却下だ」
背後で樹族の騎士のニヤリとする顔を想像して、トウスの背筋が寒くなった。
「あいつ――――!」
トウスが大跳躍で指揮官の前から飛び去ると、即座に極太のビーム魔法が放たれた。ワンドが上手く固定できなかったのか、それとも狙ってやっているのか、ビームはレプタリアン達を薙ぎ払うようにして命中していく。
敵は悲鳴を上げる間もなく、消し炭になり、地面に倒れていくが、装置は無事なままだ。
その中で、装甲をパージして前面の盾にする指揮官は生き残った。
「私はここで死ぬわけにはいかない! この装置さえ守りきれば、仲間を開放してもらえるのだから!」
ビーム魔法を耐えきったとはいえ、相当なダメージを負った指揮官は、気力だけで立っているような状態だった。
「ん? その声、どこかで聞いた事があるな。待て! ピーター!」
トウスは、指揮官の背後に立つピーターのダガーを魔剣で弾いて止める。
「何すんだよ、おっさん!」
「いいから、ダガーをしまえ」
不服そうにダガーを腰の鞘に収めて、ピーターは事の行き先を見定めようと、後ろ手を組んだ。
「あんた、ラケルだろう?」
獅子人の問いかけに、指揮官はビクッとする。
「ど、どうして、その名前を? それは特定の地球人にしか教えていない名前・・・。しかも、その地球人も寿命が尽きて、もうこの世にはいない」
「まぁ、なんだ。俺らはあんたに出会ってんだわ」
「それは嘘ですね。私の知り合いに、魔法の星の住人はいない」
「かぁ~。なんつったらいいんだか。ええっと、この時代は確か・・・。過去なんだったよな? サーカ」
頭を忙しなく掻くトウスに代わって、サーカが前に出てきた。
「そうだ。我々は二千年先の未来にて、貴様と出会っている、ラケル」
ヘルメットを脱いで、カッパ顔を晒すラケルは、訝しむも、話を理解しようと努めた。
「つまり、貴方がたは未来人だと?」
「ああ、未来のお前は、仲間と共に魔法の星のダンジョンに移り住むのだ」
「仲間と?」
「うむ。いずれ、お前たちを魔物の霧が包むだろう。それはこの後すぐか、百年後かは知らないが・・・。とにかく、竜人に虐げられる日々は終わるのだ」
「そんな夢見たいな話が本当に? それに霧とは何の事です?」
「霧は・・・。正直私にもわからん。オビオが言うには、その場から逃げたいと強く願った者の前に現れる、一種の自然発生的な転移空間だそうだ」
「よくわかりませんが、それが事実であれば、どんなに素敵な事でしょうか! それで、私にどうしてほしいのですか?」
「そこの装置の守りを・・・」
とサーカが言いかけたところで、ビルの屋上の端に、ロボットが現れて、その左手からセブンが降り立つ。
「惑わされるな、ラケル。そいつらが魔法の星の住人だということを忘れたか。魔法とかいう不可思議な力で、人の心を覗くなんてのは、簡単な事なのだろう? そこの女」
そこの女、と呼ばれたサーカはムッとしながらも、オビオがいないことを心配する。
「オビオはどうした!?」
「あの小僧か? 今頃、機甲兵の右手で肉塊と化しているだろう。その様を見たいか?」
上から目線でいうセブンの顔を見ながら、サーカは大口を開けて笑ったので、竜人は苛立ちを見せた。
「何がおかしい?」
「ハハハ! お前がオビオの事を何も知らないからだ。その程度で奴が死ぬか。バカが」
「バカはお前だ。よしんば、生きていたとして、機甲兵と対等に渡り合える戦力がどこにある?」
――――ギョォォォ!!
奇妙な鳴き声と同時に、セブンの通信期から機甲兵パイロットの悲鳴が聞こえてきた。
「セブン隊長! あの小僧が!」
鉄の装甲が歪む音が辺りに響き、右腕と頭部を失ったロボットが、フォトンバーニアを噴射して、上空に逃げた。
「なんだ?」
屋上の端を、鋭い爪の巨大な三指が掴んだので、セブンは慌てて、そこから離れる。
次に現れたのは、赤竜の険しい顔だった。
「おい、どっからドラゴンなんか現れたんだ? 星の国にも、魔物の霧が発生するのか?」
ピーターがそう言って、急いで影に隠れる。
――――キィィン!
マイクがハウリングでも起こしたかのような音が、誰しもの頭に響いた。
「オレオレ、俺だよ、ミチ・オビオだよ!」
今にも長い顎を突き出して、噛みついてきそうなドラゴンは、確かに皆の脳内でそう言った。
「オビオ?!」
「そうだ。お前の愛しい人、オビオだ。サーカ」
「バカっ! 今そんな事を言っている場合か。なんでドラゴンになっているのだ?」
「サブAIが余計な事しやがった。俺が気絶している間に、以前に吸収したドラゴンの体内にあったナノマシンを使いやがったんだ」
「元に戻れるのか?」
「多分戻れるだろ。知らんけど。さぁ、力がある内に、通信遮断装置を壊すぞ!」
「ラケル、そいつらを止めろ! パワードスーツを着ているお前ならやれる!」
「でもっ!」
ヒジリと同程度の性能を持つパワードスーツならば、厄介だなとオビオは思う。いっそ、叩き潰そうかと思ったが、その気配を察したサーカが手を降って、オビオを止める。
「その女をよく見ろ! ラケルだ!」
「なんだって?! ・・・本当だ! カッパのラケルさんだ! だったらお願いだ! 頼む! 俺たちの味方をしてくれ!」
「惑わされるな、ラケル!」
セブンとオビオの間で板挟みになるラケルは、頭を抱えて蹲った。
「うううう・・・」
ラケルが悩んでいる間に、機甲兵のビームソードが、ビルにしがみ付くオビオの胴体を貫いた。
「ぎゃあああ!! あち! いてぇ! こんのクソォォォ!!」
赤竜となったオビオの喉が赤々と光り膨らむ。
「落ちろ! カトンボ! あっちいけ!」
炎のブレスが、飛び回るロボットを捕らえた。
「うわぁ! 隊長! 火が! 火がぁぁ!」
ロボットの胴体から、熱で真っ赤になったポッドが射出され、パイロットは火傷を負いつつも、なんとか脱出できた。
その様子をホッとした目で見つめ、ドラゴンのオビオは今一度、ラケルを説得する。
「頼む! ラケルさん! 俺らはあんたと敵対したくないんだ。未来の――――、ダンジョンの森で静かに暮らすラケルさんは、とても幸せそうでしたよ!」
そう言われて、ラケルはハッとしてセブンに顔を向ける。
「隊長・・・。以前に時間は・・・。観測者が物事を観測した時点で、現在が決定し、過去が書き換わると仰っていましたよね?」
「そうだが、それは奴らの言っている事が事実であれば、の話だ。敵を信用するな! あと少しばかり、ここを守りきれば、ワープゲートが開いて味方がやって来る。それまで職務を全うしろ。仲間がどうなってもいいのか!」
「・・・。でしたら! 彼らが未来の観測者だとすれば! 既に私とその仲間の安寧は、確約しているも同然という事ですよね?!」
「何度も言わせるな! それは奴らの話が本当であれば、だ。・・・まさか裏切るのではないだろうな?」
ラケルは腰のレーザー銃を、セブンに向けた。
「貴様ぁ・・・!」
「私は信じます! この方たちの言葉を! さぁ、装置を守るシールドを解除してください!」
「仲間がどうなっても・・・!」
「私の銃は! 貴方のシールドと同じ周波数に合わせてありますよ?」
セブンは観念し、唾を地面に吐くと、胸のバッジにタッチした。すると装置の周りのシールドが消えて無防備になる。
「こんな事をしてただで済むと思うなよ。軍事裁判の後、お前とお前らの仲間は処刑されるからな」
「さぁ、ドラゴンさん! 早く装置を破壊しちゃって下さい!」
ラケルはセブンの脅しを無視して、オビオに叫んだ。
「よっしゃぁぁあ!!」
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