上 下
135 / 279

オビオのありがたみ

しおりを挟む
「早く隠し扉を見つけろ。お前が輝ける時間は、今だけだろ」

 ふん。普段は全く活躍しないくせに、得意分野でもグズグズしおって。

「うるさいなぁ。だったら、サーカも手伝えよ。岩の上で大股開きで座ってないでさぁ。俺からはパンツ丸見えだぞ? ウヒヒ。白かぁ。 下着は、髪と同じ色じゃないんだな?」

「貴様ーーッ!」

 ぐきゅう! ピーターめッ! 私がこれ以上魔法を使えないとわかっているから、舐めた態度をとる。

「なぁ」

「なんだ! 獅子人!」

「オビオがここにいないとなると、明日の朝飯は誰が作るんだ?」

「一食ぐらい我慢できんのか? 大食らいの猫め!」

「なぜ食べないという選択肢、一択なんだい?」

「そうだよぉ! プンプン!」

「そこ、ウィングとメリィ。煩い!」

 ふん。オビオが甘やかすから、バカタレ共は、食事こそ人生の楽しみと勘違いするようになったのだ。

「そこまで言うなら、今のうちに食材を集めて準備しておけばいいだろう。さぁ散れ」

「簡単に言うけどね、君ぃ。このしみったれた洞窟で、食材が見つかると思うかい?」

「私に言われてもな? 見つける見つけないは、お前ら次第だろう? 少々他力本願過ぎるのではないか?」

 ウィングが黙った。

 それはそうだろう。私はいつも正論しか言わないからな。ククク。

「わかったよ。取り敢えず適当に見つけてこようか」

 不貞腐れたな? ウィングめ。本当に適当な物を持ってきたら、その時は怒鳴ってやろう。

 皆、渋々だが食材探しに出かけたか。

 私は、岩の上でゆっくりと休ませてもらう。何か文句を言われたら、その辺にある苔でも毟って、これが食材だと良い通せばいい。

「はぁ~」

 まったく、湿気が酷いな。洞窟はこれだから嫌いなのだ。苔の上はフカフカだ。どれ横になろう。

「ん?」

 天井にキノコが生えているぞ。あれは、確か・・・。オビオが料理に使っていたキノコだな。

 キノコ・・・。あれは・・・。何キノコだったかな?

 キノコといえば、オビオのアソコは大きかった・・・。あんなのが入ってきたら、私はどうにかなってしまうだろう。危ないブツを持ちおってからに。

 馬鹿! 何を想像しているのだ、私は!

 ・・・そういえば、一度オビオと繋がりかけたな。熱り立つ奴の股間がもう少しで私の・・・。

 ひっ! 卑猥な! さっきから変なことばかり思い出して! 恥を知れ、私!

「えぇい! 体を動かさんから、愚かな妄想をするのだ。あのキノコを採ることに集中しろ!」

 石でもぶつけよう。

「そらっ!」

 ――――コン!

「生意気だぞ! キノコのくせに、当たらないとは! それ!」

 ――――ドン!

「フハハッ! 卑猥なオビオのキノコめ! 見事、退治してやった!」

 よし、キノコを得た。これは中々どうして、上物のキノコだぞ。

 魔法のトーチで照らして、異常はないかを確認しよう。

 いいぞ。これを焼けば副菜ぐらいにはなるだろう。

 ――――うじうじうじうじうじ!

「ぎゃぁぁぁ!!」

 キノコの傘にある管孔から、蛆虫が大量に頭を出している! こここ、こんなものを! オビオは我らに食わせていたというのか? ぎひぃぃぃ!!

 う、蛆虫ごときで腰が抜けた・・・。

 普段は幼児退行化でもしない限り、何が起きても平気なのに! ふにーーん!

「あれ? どうしたの? サーカ。さっきから一人で悲鳴あげて」

 ピーターは人が弱っている時に、いつも現れるな。

 そうだ。こいつにも、蛆虫うじうじを見せてやろう。

「いや、滑って尻もちをついただけだ。ところで、このキノコを見つけたのだが、どう思う?」

「ウホッ! 凄く・・・。大きいです・・・」

 頬を染めるな、気持ちの悪い!

「もっとよく見てみろ。毒があるかどうか、私だけの判断では難しいのでな」

「わかった」

 ピーターがキノコを手に取り、傘の裏を見た。

 ――――うじうじうじうじうじじい!

「すぎゃあああ!!」

「キャハーー! 愚か者! 蛆虫ごときで腰を抜かすとは、何事か!」

「うるさい! ちょっと驚いただけだよ! そういえば、サーカ。俺も食材を見つけたので、確かめてくれ」

「ふん、いいだろう。キノコ以上の食材でなければ、即捨てるからな」

 ピーターは腰袋から、何かを鷲掴みにして出した。

 ――――ギチギチギチ!

「ギャヒーーー!」

 カマドウマ! 沢山のカマドウマ! あわわわ。気持ち悪い! 腰の曲がり具合と、虎柄模様がキモい!

「てぇぇい!」

 不浄なるピーターの手に天誅!

「あぅ! せっかく集めたのに!」

「誰が食うか! そんなものッ!」

「あのなぁ。お前ら」

 なんだ、トウスめ。偉そうに腕を組みよって。

「俺達はよぉ、冒険者の中でもSランクなんだわ。英雄レベルが、何人も同じパーティにいるのは稀なんだぞ。そんな後人の手本になるべく俺らが、蛆虫やカマドウマにビビってどうすんだ?」

 クッ! こいつは一部始終を見ていたのか。許せん。

 私が反論しようとすると、どこからかズルズルと音がする。

「皆ぁ~、運ぶの手伝って~」

 メリィか。何か大きな獲物を仕留めてきたようだな。

 立ち上がって、メリィを見ると、何か白い物を押している。

「すわっ!!」

 今度はトウスが叫んだ。なんだ?

「わぁぁ! そんなもの直ぐに捨てろ! メリィ!」

 私は両手で追い返すような仕草をした。

「なんでよぉ。焼いたら美味しそうじゃない~」

「寄生虫がウネウネと出ているナメクジなんて! 誰が食べるかッ! 大体、そんなナメクジ、どこにいた!」

「天井に張り付いてたよぉ~?」

 まさか! 天井にびっしり張り付いていたりしないか?

 トーチを手に取り、天井を照らすも、巨大ナメクジはいなかった。

「くそっ! こんな事で、明日の食事がどうなるのか!」

 くぅ。これだけは言いたくはなかったが・・・。思わず口から溢れ出てしまう・・・。

「オビオぉ・・・。早く帰ってきてくれ・・・。こんなグロテスクな食事はしたくない・・・」

 今更ながら、オビオの有り難みがわかったような気がする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

奥様は聖女♡

メカ喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。 ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

【完結】底辺冒険者の相続 〜昔、助けたお爺さんが、実はS級冒険者で、その遺言で七つの伝説級最強アイテムを相続しました〜

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 試験雇用中の冒険者パーティー【ブレイブソード】のリーダーに呼び出されたウィルは、クビを宣言されてしまう。その理由は同じ三ヶ月の試験雇用を受けていたコナーを雇うと決めたからだった。  ウィルは冒険者になって一年と一ヶ月、対してコナーは冒険者になって一ヶ月のド新人である。納得の出来ないウィルはコナーと一対一の決闘を申し込む。  その後、なんやかんやとあって、ウィルはシェフィールドの町を出て、実家の農家を継ぐ為に乗り合い馬車に乗ることになった。道中、魔物と遭遇するも、なんやかんやとあって、無事に生まれ故郷のサークス村に到着した。  無事に到着した村で農家として、再出発しようと考えるウィルの前に、両親は半年前にウィル宛てに届いた一通の手紙を渡してきた。  手紙内容は数年前にウィルが落とし物を探すのを手伝った、お爺さんが亡くなったことを知らせるものだった。そして、そのお爺さんの遺言でウィルに渡したい物があるから屋敷があるアポンタインの町に来て欲しいというものだった。  屋敷に到着したウィルだったが、彼はそこでお爺さんがS級冒険者だったことを知らされる。そんな驚く彼の前に、伝説級最強アイテムが次々と並べられていく。 【聖龍剣・死喰】【邪龍剣・命喰】【無限収納袋】【透明マント】【神速ブーツ】【賢者の壺】【神眼の指輪】  だが、ウィルはもう冒険者を辞めるつもりでいた。そんな彼の前に、お爺さんの孫娘であり、S級冒険者であるアシュリーが現れ、遺産の相続を放棄するように要求してきた。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

処理中です...