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至高のレストラン
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適当に入った料理店はまだ昼前ということもあって客はまばらだった。閑散とした店に地走り族と樹族だけがいる。
獣人のトウスさんやオーガである俺が入ってきた事に店員や客たちは驚いているが、近くにサーカやメリィがいるお陰か、すぐに視線をそらして気にしなくなった。
「ラッキー。好きな席に座れるな」
皆で大きなテーブルを囲んだが椅子は基本的に樹族と地走り族サイズの大きさだ。なので一応給仕に訊いてみる。
「大きい椅子ってありますか?」
「オーガ用の椅子はありませんね・・・」
珍しく愛想の悪い地走り族だなぁ・・・。仕方がない。俺は亜空間ポケットから大きな折りたたみ椅子を取り出して座った。
地走り族の給仕は折りたたみ椅子の素材やら便利さに興味を示したが、隣にリュウグらが座っているのを見てノームの作った椅子だと思ったのか、納得して去っていった。
「さーて何を頼もうかな・・・。マスのムニエルに、子羊のステーキ、野草のフリッターもいいな。色々食いたいからさ、皆でシェアして食べようぜ」
俺がそう言うと皆それがいいと頷いたが、サーカだけ露骨に嫌な顔をした。
「そんな食べ方は下品だ」
「まぁまぁ、たまにはいいじゃん」
そうなだめて俺は次々と給仕に注文をしていく。
ある程度料理を作り置きしていたのか、さほど待たずして料理が次々と出てくる。
「おほー! 美味そう! では頂きまーす!」
と言うと、サーカ以外は俺の真似をして食事前の挨拶をするようになった。
「いっただきまーす!」
仲間たちの元気な声で周りの客は何事かとこちらを見るが気にしない。
俺はまずマスのムニエルを一口食べた。
小麦粉の付いた身の表面はサクサクしていて、バターの風味が良い香りだ。塩加減もいい。
・・・が、噛んでいる内に、口いっぱい生臭さが広がっていく。
「おわ・・・。これ、活き〆してないな・・・。下処理も甘い。生臭ぇ」
きっとこの店は、魚料理が苦手なんだ。
次に子羊のステーキを食べる。モグモグ。
―――こ、これは! ゴムだ!
断じて肉ではない。タイヤのゴムだ。
「噛み切れねぇ・・・。子羊って肉が柔らかいはずだろ」
ふと顔を上げると皆も白目で無表情だった。つまり不味いという事か。
「俺たちってさ・・・。よくよく考えたら生まれてこの方、こういう料理を食べて喜んでいたんだよな」
ピーターが口に含んだ肉を吐いて皿の脇に置いた。
「野菜料理はまだ食べられる。私は野菜料理を注文したので問題はない。お前らにはやらんぞ」
いつも皮肉を吐く口が嬉しそうにサラダを頬張っている。
噛み砕いたやつでもいいからくれ、と変態的な考えが俺の頭をよぎった。それほど肉系の料理が不味いのだ。
「サラダかぁ・・・。サラダに関してもオビオの野草サラダの方がマシだぜ。ドレッシングがそもそも違うしな」
トウスさんが肉の付け合わせのサラダを、フォークで突っついて頬杖を突いた。
「先程から聞いていれば無礼な!」
突然厨房の出入り口から声がして、オールバックの樹族がこちらを睨んでいた。
「貴様らのようなトンチキサーカス団のようなパーティに、料理の何がわかる!」
ちっこい海原雄山みたいなのが出てきたぞ・・・。着物の代わりにチュニックを着てるけどさ。
めっちゃ怒ってるなぁ・・・。大昔の―――、通称80年代アニメに出てくる怒ったキャラクターのように、腰あたりで握りこぶしを作っている。そして肩を怒らせてズンズン歩み寄って来る。
なんか滑稽だ・・・。笑わすなよ。俺は笑いを堪えながら偽海原雄○に話しかけた。
「あんたが料理長か? これを食べてみろよ」
俺は硬い子羊の肉の乗った皿を指さした。
偽雄山はテーブルの上にあった新しいナイフとフォークを手に取ると、肉を切って口に含んだ。
「うむ、いつも通りの歯応え」
いやいやいや、歯応えがあったらいかんでしょ。大人の羊肉ならまだしも。
「じゃあ、このマスのムニエルも食べてみてよ」
同じく偽雄山は食べて、素早く飲み込んでしまった。こいつ、あんまり咀嚼して食わないな・・・。
「風味豊かでいつもの物と変わりない。お前たちの粗野な味覚で、私の料理の味など解るものか! 馬鹿者が!」
まぁお前らが下等種と勝手に思っている俺に言うのなら構わないけどよ? 知らねぇぞ?
うちには一応貴族様が二人いるんだからな? サーカとメリィが。
「ほう? この私の味覚を侮辱するのか?」
ほーら、言わんこっちゃない。サーカさんが嬉しそうにしゃしゃり出てきただろ。
獣人のトウスさんやオーガである俺が入ってきた事に店員や客たちは驚いているが、近くにサーカやメリィがいるお陰か、すぐに視線をそらして気にしなくなった。
「ラッキー。好きな席に座れるな」
皆で大きなテーブルを囲んだが椅子は基本的に樹族と地走り族サイズの大きさだ。なので一応給仕に訊いてみる。
「大きい椅子ってありますか?」
「オーガ用の椅子はありませんね・・・」
珍しく愛想の悪い地走り族だなぁ・・・。仕方がない。俺は亜空間ポケットから大きな折りたたみ椅子を取り出して座った。
地走り族の給仕は折りたたみ椅子の素材やら便利さに興味を示したが、隣にリュウグらが座っているのを見てノームの作った椅子だと思ったのか、納得して去っていった。
「さーて何を頼もうかな・・・。マスのムニエルに、子羊のステーキ、野草のフリッターもいいな。色々食いたいからさ、皆でシェアして食べようぜ」
俺がそう言うと皆それがいいと頷いたが、サーカだけ露骨に嫌な顔をした。
「そんな食べ方は下品だ」
「まぁまぁ、たまにはいいじゃん」
そうなだめて俺は次々と給仕に注文をしていく。
ある程度料理を作り置きしていたのか、さほど待たずして料理が次々と出てくる。
「おほー! 美味そう! では頂きまーす!」
と言うと、サーカ以外は俺の真似をして食事前の挨拶をするようになった。
「いっただきまーす!」
仲間たちの元気な声で周りの客は何事かとこちらを見るが気にしない。
俺はまずマスのムニエルを一口食べた。
小麦粉の付いた身の表面はサクサクしていて、バターの風味が良い香りだ。塩加減もいい。
・・・が、噛んでいる内に、口いっぱい生臭さが広がっていく。
「おわ・・・。これ、活き〆してないな・・・。下処理も甘い。生臭ぇ」
きっとこの店は、魚料理が苦手なんだ。
次に子羊のステーキを食べる。モグモグ。
―――こ、これは! ゴムだ!
断じて肉ではない。タイヤのゴムだ。
「噛み切れねぇ・・・。子羊って肉が柔らかいはずだろ」
ふと顔を上げると皆も白目で無表情だった。つまり不味いという事か。
「俺たちってさ・・・。よくよく考えたら生まれてこの方、こういう料理を食べて喜んでいたんだよな」
ピーターが口に含んだ肉を吐いて皿の脇に置いた。
「野菜料理はまだ食べられる。私は野菜料理を注文したので問題はない。お前らにはやらんぞ」
いつも皮肉を吐く口が嬉しそうにサラダを頬張っている。
噛み砕いたやつでもいいからくれ、と変態的な考えが俺の頭をよぎった。それほど肉系の料理が不味いのだ。
「サラダかぁ・・・。サラダに関してもオビオの野草サラダの方がマシだぜ。ドレッシングがそもそも違うしな」
トウスさんが肉の付け合わせのサラダを、フォークで突っついて頬杖を突いた。
「先程から聞いていれば無礼な!」
突然厨房の出入り口から声がして、オールバックの樹族がこちらを睨んでいた。
「貴様らのようなトンチキサーカス団のようなパーティに、料理の何がわかる!」
ちっこい海原雄山みたいなのが出てきたぞ・・・。着物の代わりにチュニックを着てるけどさ。
めっちゃ怒ってるなぁ・・・。大昔の―――、通称80年代アニメに出てくる怒ったキャラクターのように、腰あたりで握りこぶしを作っている。そして肩を怒らせてズンズン歩み寄って来る。
なんか滑稽だ・・・。笑わすなよ。俺は笑いを堪えながら偽海原雄○に話しかけた。
「あんたが料理長か? これを食べてみろよ」
俺は硬い子羊の肉の乗った皿を指さした。
偽雄山はテーブルの上にあった新しいナイフとフォークを手に取ると、肉を切って口に含んだ。
「うむ、いつも通りの歯応え」
いやいやいや、歯応えがあったらいかんでしょ。大人の羊肉ならまだしも。
「じゃあ、このマスのムニエルも食べてみてよ」
同じく偽雄山は食べて、素早く飲み込んでしまった。こいつ、あんまり咀嚼して食わないな・・・。
「風味豊かでいつもの物と変わりない。お前たちの粗野な味覚で、私の料理の味など解るものか! 馬鹿者が!」
まぁお前らが下等種と勝手に思っている俺に言うのなら構わないけどよ? 知らねぇぞ?
うちには一応貴族様が二人いるんだからな? サーカとメリィが。
「ほう? この私の味覚を侮辱するのか?」
ほーら、言わんこっちゃない。サーカさんが嬉しそうにしゃしゃり出てきただろ。
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