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地下墓地と賢者の石
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女の子の霊が憑依したサーカは、キラキラした目でご飯の用意をする俺と、俺の手元を見ている。
「おじちゃん、これなに作ってるの?」
おじちゃんって・・・。またかよ。
「俺は17歳だよ。どうも小さい子供は、大きい人を見るとおじちゃんと呼びたくなるようだな。これはお好み焼きっていうんだ。甘くない、具の入っているパンケーキみたいなものさ」
近くで腹を鳴らして俺の料理を見ていたメリィが「ウフフ」と笑った。
「オビオは可愛い顔してるのにぃ、おじちゃんだなんてねぇー」
可愛い顔かなぁ? クール系だと自分では思ってたんだけど・・・。
「ひゃう!」
サーカが急に驚いて尻を押さえる。
「すげー、本当に幽霊が憑依してんだ! お尻を触りまくっても怒らねぇ!」
ピーターが、ここぞとばかりにサーカの尻を揉んでいる。
「お兄ちゃん、この人変だよ! 私のお尻ばかり触ってる!」
かはぁ! 困り顔のロリサーカ可愛い。
「こら! ピーター! 後でサーカに言うからな!」
「へへへ! そん時はそん時でぃ!」
なに腕白小僧みたいな事いってんだよ。死ぬぞ? 確実に。地獄の荒野にピーターという名の赤い花が咲くぞ?
お? ピーターの首にダガーが当てられた。誰だ?
地走り族の小さな影から、ヌーっとナンさんが現れた。
「おやめなさい、ピーターくぅん。その騎士には幼い子供が憑依しているのですから、今は子供なのです。子供を性的な目で見るのはおぢちゃん、感心しませんよぉ。キュッキュ!」
お、孤児院で子供の面倒を見ているナンさんだけはある。子供に対しては優しい。
「そうだぞ、ピーター。そういうのはちゃんとお互いに愛し合って、信頼できる仲になってからするもんだ」
やーい! 優しいトウスさんにまで叱られてやんの!
「ぐっ! や、止めます! 止めますから僕を殺さないでください!」
ピーターお得意の、同情を買うような顔か・・・。
「ああ、そんなに懇願されると小生、逆に貴方を殺したくなりましゅ~、うひひぃぃぃ!」
やっぱナンさん、やべぇ人だ。けど、キリマルと違って自分の殺人衝動を抑制できるみたいだな。ダガーは引っ込めた。
「ひぇ・・・」
ピーターはヘナヘナと座り込む。ちったぁ反省しなさいって。俺だってサーカの、形の良い尻を揉んでみたいんだからな。怖くてできないけど。
「さぁ、そろそろ焼けたかな」
俺は人数分のお好み焼きをホットプレートから皿に移す。
「食べていい?」
あんなに元気がなかった幽霊の女の子は、サーカの姿で無邪気に飛び跳ねている。
「ちょっと待っててな。これだけじゃあんまり美味しくないんだ。ソースを塗ってマヨネーズをかけて、最後に鰹節と青のりをパラパラパラ! 完成! 豚玉お好み焼きだ!」
さっき見た死体の山を忘れてしまう程の美味しそうな匂い。食欲が戻って来た証拠だ。皆は割と死体を見慣れているせいか平気な顔をしてたけど・・・。
「もういい!? もう食べていい?」
「ああ、召し上がれ!」
お箸じゃ、食べにくいだろうからナイフとフォークを渡してある。それを器用に使って少女の霊(サーカ)はお好み焼きを頬張った。
「わぁぁぁ! なにこれ! こんなに美味しいの初めて!」
「うっはー! たまんねぇ! 俺も食うぞ!」
トウスさんは猫舌なので少し冷ましてから食べるつもりだったようだが、堪えきれずに一口食べた。
「あちぃぃ! ほふほふ! 冷たい地下墓地で、温かい食事なんて不思議な感じがするぜ! うめぇ!」
「わぁ~! 美味しぃ! キャベツの甘みと肉の旨味、そしてこの不思議な味のソース! こんなの食べたら修道院の食事に戻れないよぉ」
メリィも気に入ってくれたようだ。ピーターは相変わらずガフガフ黙って食ってる。俺を褒めるのは嫌なんだろうな。
「おやぁ・・・。これは」
ナンさんは一口食べてから、俺をじっと見た。
「な、なに? ナンさん・・・」
「いえね、小生はこれと同じものを、食べた事があるんですよぉ」
「へぇ? どこで?」
「時々孤児院にやって来るウメボシちゃんに食事をご馳走してもらうのですが、彼女もこれと同じ料理を出してましてねぇ。貴方も知っているでしょう? 現人神オーガに仕える使い魔の名前くらい」
「え? ああ・・・。(やべぇ! この人も大神聖の知り合いなのかよ!)」
「じ、実はウメボシちゃんに教えてもらって・・・。(ぐう、また嘘をついてしまった)」
「おやぁ、あなた今、また嘘をついてしまったと後悔しましたねぇ?」
おわぁぁぁ! この人【読心】を使えるんだ! おわた!
「見えますよ、貴方の頭に浮かぶ奇妙な世界が・・・。空を飛ぶ馬車、高い塔が立ち並ぶ街、争う事のない平和な人々」
地球の風景を見られた・・・。お好み焼きでなんとなく地球を思い浮かべてしまったからな。
「はわわわ」
「なに焦ってんだよ、オビオ。お前の頭の中がメルヘンチックなのが、そんなに恥ずかしいのか? それにしてもノームみたいな妄想をするんだな! クキキッ!」
ピーターが、白目で俺を馬鹿にするように笑っている。きめぇ。
「オビオってぇ、中身も可愛いんだね!」
口の周りにソース付けまくってるメリィの方が可愛いけどな。
「現人神様と近しい文化圏から来たのかもな。オビオは記憶喪失だからよ」
トウスさん、フォローありがとうございます。
「ああ、なるほど。貴方は記憶喪失なのでしたか。では記憶が混濁しているのかもしれませんねぇ。時々いるんですよぉ、思考がぐちゃぐちゃの人。ごめんなさいね、勝手に【読心】の魔法を使ってしまって。職業柄どうしても他者を警戒する癖がついてまして。キュッキュ!」
「い、いいんですよ。(上手くは誤魔化せてはいないだろうな。気を使ってくれたんだ、ナンさんは)」
「まだ足りないですねぇ」
ナンさんはいつの間にかお好み焼きを食べ終えて、皿についたソースをペロペロと舐めていた。
「ごめん、もう材料がない・・・。もっと買っておくべきだった。あ! そうだ、パンならあるよ! エンチャントパン!」
今日はもう再生効果のあるパンを使う事はないだろう。すぐに振る舞えるのは、パンとお菓子くらいだ。
「へぇ! エンチャントメントパン! おやぁ、これはオビオ君が全部やったんですか? 貴方付魔師?」
お、手が光っている。ナンさんは俺のパンを鑑定魔法で調べたんだ。流石は暗殺者、どんなものでも毒がないかを確かめるんだな。
「うん、イグナちゃんっていう、闇魔女に教えてもらったんだ!」
イグナと聞いてピーターがビクリとした。
ピーターは過去に彼女のおっぱいを揉みしだいてしまい、後でシスター・マンドルにフルボッコにされたらしい。こいつ一体どんだけ女の子のおっぱいや尻を揉みしだいてんだよ、羨ましい。ゲフンゲフン。
「ああ、道理で! 付魔の簡略の仕方が、小生そっくりだと思いました!」
どういう事だ?
「何を隠そう、イグナちゃんに付魔のやり方を教えたのは小生なのですよ。今は廃業しましたが、昔は付魔師でお飯を食べてましたからね。キュッキュ!」
「じゃあナンさんが師匠みたいなもんか」
「では師匠からアドバイス。付魔をする時はこのアイテムを使った人がどうなって欲しいのかを、具体的に想像しながらやると効果が高くなりますよ」
「それは良い事聞いた! 確かに俺は付魔をする時、魔法の事ばかり考えてる。このパンも、再生の魔法が上手に乗る事を想像してた。料理と一緒なんだな。食べてくれる相手を思いながら作ると美味しくなる。付魔も、相手の傷が癒えていく姿を想像してやってみるよ! ありがとう、師匠」
「やはぁ~、師匠ですか。やっぱり照れくさいですねぇ。キュッキュ!」
クネクネと気持ち悪い動きで照れるナンさんに苦笑いしながら、俺はチョコ菓子も出すと、幽霊の子がすぐに手に取った。
「チョコのお菓子だ!」
「甘くて美味しいよ、どうぞ」
パンを頬張っていたメンバーが、チョコ菓子を見て急いで飲み込んだ。
「また作ってたんだな、それ。美味いんだよなぁ」
トウスさんも三センチの茶色い立方体を摘まむ。
「チョチョチョ・・・、チョコ!」
メリィは初めて食べるのか、誰も横取りなんてしないのに、急いでチョコ菓子を摘まむと口に入れた。
「これが、チョコレート? 外はカリカリで中はふんわりしてる。もぐもぐ」
「いや、クリームを挟んだスポンジをチョコレートコーティングしてるお菓子だ。純粋なチョコレートではないよ」
「おいしいぃ。わたしぃ、オビオのパーティに入って良かったぁ」
メリィは座っている俺の腕に抱き着いてきた。あまり顔を近づけるなよ。お好み焼きソースとチョコが口の周りに付いているからさ。ああ、もう。
俺はウェットティッシュでメリィの顔を拭きながら、修道院での生活が気になった。
「チョコでこんなに喜ぶなんて、修道院ではどんな禁欲生活してんだよ」
「色々と我慢しないとぉ、だめなの」
だから具体的には? メリィは言葉が少ない・・・。
「お兄ちゃん、私もうお腹いっぱい・・・」
サーカに憑依する女の子の霊が泣いていた。実際はサーカが泣いているのだが、重なるようにして女の子も見える。うれし泣きのような、現世にお別れする寂しい涙のような・・・。
俺は胸が切なくなった。
「うん、お腹が減るのは辛いもんな。お腹がいっぱいになって、よかったよ!」
「これでお父さんとお母さんのいるところに行ける・・・。ありがと、お兄ちゃん。これお礼に貰って。お父さんの形見なんだけど、お兄ちゃんに使ってほしい」
いつの間にか俺は右手に指輪を持っていた。それに気が付いた途端、情報が流れ込んでくる。
戦士の指輪。
装着者は、戦士として力を発揮できる。すげぇ。これを俺が付ければ戦士として活躍できるって事だろ?
「いいのか? こんな大事な物。お父さんの形見なんだろ?」
「うん、いいの。あの世には持っていけないし。じゃあ行くね」
俺は女の子をハグして祈った。
「次は幸せな人生を歩めますように」
俺はこの子を幸せにできただろうか? いやできたと自負したい!
「お好み焼き美味しかった!」
「うん」
料理には力がある。お腹いっぱいになると幸せな気持ちになるし、心も温かくなる。俺はこの子の苦しみを救えたはずだ。
やべぇ、何でかわからないけど泣けてきた。本当にこの子の来世を幸せにしてやってくれよ、神様。
サーカの体から蛍のような無数の光が出て、上へと登って消えた。デイジーさんの時もそうなんだけど、幽霊とのお別れは呆気ない。
「おい、誰が抱きしめてもいいと言った?」
サーカが腕の中で顔を真っ赤にして怒っていた。あぁ、感動のお別れが台無しだ。この後きっと、ビリビリがくるんだ。
が、何事もなくサーカは俺の体から離れて、そっぽを向いた。
(良かった・・・。きっと女の子が憑依していた時の記憶があるんだろう。だから情状酌量してくれたと。あ! でもピーターは死刑だな。きっと地下墓地から出た途端、消し炭になってるだろ。仕方ない。その時は再生の魔法をかけてやるか・・・)
「あ、ちょっと待って! あれが出そう。さっき食べたチョコと同じ色の玉が、数珠繋ぎになってたりするアレ。今すぐしないと、漏らしちゃう!」
「いっそウンコって言えよ、ナンさん!」
もう感動の余韻ぶち壊しだな。
「リッチさんの部屋のトイレ借りてきます。皆は先に地上へ向かっててください。魔法の地図は、小生にも効果を発揮していますから大丈夫ですよ」
そっか、ピーターの【魔法の地図】の効果はパーティに常駐しているんだ。ナンさんもその恩恵を受けたというわけだな。
「じゃあゆっくり出口に向かうから、追いついて」
「はい」
そう言ってナンさんはお尻を押さえながら、隠し扉を開けて中へ入っていった。
「じゃあ行くか」
リッチは部屋の奥にある扉を開けて、忙しそうに働くインプたちを見て満足そうに頷いた。
「あいつらが来た時はこの部屋が見つかるのではないかと冷や冷やしたが、間抜けな冒険者どもで助かった。私が賢者の石に、辰砂を混ぜて水増ししている事に気が付けば、奴らはきっと襲い掛かって来ただろうな。あの小僧に本物を渡したのは正解だった。あいつは上位鑑定の指輪を付けていたな。ああいった指輪を持つ者以外は、誰もがこれを賢者の石だと思って買っていく。バカな奴らよ。この世界には【偽りの情報】という魔法がないから、誰もが簡単に騙される! いずれ地上は病で死ぬ者が増えるだろう。そうなれば今度はアンデッドを作り放題だ! ハハハ!」
「にゃるほどねぇ~」
「誰だ!」
「小生だっ!」
リッチの影から出てきた道化師は、その時点で勝負を決める事ができていたが、それをしなかった。代わりに忙しそうにタップを踏んで笑っている。
「キュキュキュ! やはり偽の賢者の石の件は貴方でしたか。貴方に出会った時、小生の【読心】をレジストしたから余計に怪しかったのですよぉ」
「だったらなんだ。不意打ちをした時に、私を倒さなかった間抜けめ。お前の負けだ」
リッチの配下のインプが襲い掛かって来るが、道化師は踊るようにして躱し、すれ違いざまにダガーで羽のある小鬼たちを一撃で殺していく。
「小生はねぇ、命の灯が消えていく様を見るのが好きなんですよぉ。特に悪人が苦しんで死ぬ姿なんて最高ですよ。死の間際まで生に執着して、みっともなく手足をジタバタさせて死ぬ人が多いんです。それがもう滑稽で滑稽で! キュキュキュ! そしてそのうち動きも緩慢になり、やがては止まる。その瞬間が素敵なんです! わかります? あぁ、早く貴方のその姿が見たい!【闇の炎】!」
恍惚の表情を浮かべ、不気味に震える道化師が魔法を放つと、リッチの体を黒い炎が包んでいた。
「なんだ? この魔法は」
「【闇の炎】ですよ? 結構メジャーな闇魔法ですが。さぁ! 踊ってください! その炎は容易に貴方を逝かせてくれませんから。ずっと意識を保ったまま! 自身の体が焼かれる様を見る事になるのですよぉ! キュッキュ!」
「馬鹿め、私に痛覚はないのだぞ・・・」
しかしリッチは、炎が自分の身を焼く痛みに驚いている。
「?! ぐあぁぁ!! 熱い! おかしいぞ! 私は悪魔に体の感覚も売り渡したはずだ。だから苦痛を感じない! しかし・・・。しかし! この炎は熱い! なぜだ!」
「さぁ? そういう魔法ですからとしか言いようがありませんねぇ。苦痛があるのはレジストに失敗した証拠。そして次に、意識を保ったまま灰になるまで燃えるのです。ほら、もっと苦しみに踊ってください。我慢できなくなったら手を上げるのですよ? それから、今も病気に苦しむ人たちに、土下座して御免なさいぐらいは言わないとねぇ? キュキュ!」
リッチは炎の熱に苦しんで蹲る。
「ああ・・・。助けてくれ・・・。もう耐えられない・・・」
「もう土下座ですか? 早漏ですねぇ? キュキュ。それではまた来世で会えたら会いましょう。アディユー!」
道化師が黒い炎に背を向けて指を鳴らすと、リッチは灰となって崩れ落ちた。
「おじちゃん、これなに作ってるの?」
おじちゃんって・・・。またかよ。
「俺は17歳だよ。どうも小さい子供は、大きい人を見るとおじちゃんと呼びたくなるようだな。これはお好み焼きっていうんだ。甘くない、具の入っているパンケーキみたいなものさ」
近くで腹を鳴らして俺の料理を見ていたメリィが「ウフフ」と笑った。
「オビオは可愛い顔してるのにぃ、おじちゃんだなんてねぇー」
可愛い顔かなぁ? クール系だと自分では思ってたんだけど・・・。
「ひゃう!」
サーカが急に驚いて尻を押さえる。
「すげー、本当に幽霊が憑依してんだ! お尻を触りまくっても怒らねぇ!」
ピーターが、ここぞとばかりにサーカの尻を揉んでいる。
「お兄ちゃん、この人変だよ! 私のお尻ばかり触ってる!」
かはぁ! 困り顔のロリサーカ可愛い。
「こら! ピーター! 後でサーカに言うからな!」
「へへへ! そん時はそん時でぃ!」
なに腕白小僧みたいな事いってんだよ。死ぬぞ? 確実に。地獄の荒野にピーターという名の赤い花が咲くぞ?
お? ピーターの首にダガーが当てられた。誰だ?
地走り族の小さな影から、ヌーっとナンさんが現れた。
「おやめなさい、ピーターくぅん。その騎士には幼い子供が憑依しているのですから、今は子供なのです。子供を性的な目で見るのはおぢちゃん、感心しませんよぉ。キュッキュ!」
お、孤児院で子供の面倒を見ているナンさんだけはある。子供に対しては優しい。
「そうだぞ、ピーター。そういうのはちゃんとお互いに愛し合って、信頼できる仲になってからするもんだ」
やーい! 優しいトウスさんにまで叱られてやんの!
「ぐっ! や、止めます! 止めますから僕を殺さないでください!」
ピーターお得意の、同情を買うような顔か・・・。
「ああ、そんなに懇願されると小生、逆に貴方を殺したくなりましゅ~、うひひぃぃぃ!」
やっぱナンさん、やべぇ人だ。けど、キリマルと違って自分の殺人衝動を抑制できるみたいだな。ダガーは引っ込めた。
「ひぇ・・・」
ピーターはヘナヘナと座り込む。ちったぁ反省しなさいって。俺だってサーカの、形の良い尻を揉んでみたいんだからな。怖くてできないけど。
「さぁ、そろそろ焼けたかな」
俺は人数分のお好み焼きをホットプレートから皿に移す。
「食べていい?」
あんなに元気がなかった幽霊の女の子は、サーカの姿で無邪気に飛び跳ねている。
「ちょっと待っててな。これだけじゃあんまり美味しくないんだ。ソースを塗ってマヨネーズをかけて、最後に鰹節と青のりをパラパラパラ! 完成! 豚玉お好み焼きだ!」
さっき見た死体の山を忘れてしまう程の美味しそうな匂い。食欲が戻って来た証拠だ。皆は割と死体を見慣れているせいか平気な顔をしてたけど・・・。
「もういい!? もう食べていい?」
「ああ、召し上がれ!」
お箸じゃ、食べにくいだろうからナイフとフォークを渡してある。それを器用に使って少女の霊(サーカ)はお好み焼きを頬張った。
「わぁぁぁ! なにこれ! こんなに美味しいの初めて!」
「うっはー! たまんねぇ! 俺も食うぞ!」
トウスさんは猫舌なので少し冷ましてから食べるつもりだったようだが、堪えきれずに一口食べた。
「あちぃぃ! ほふほふ! 冷たい地下墓地で、温かい食事なんて不思議な感じがするぜ! うめぇ!」
「わぁ~! 美味しぃ! キャベツの甘みと肉の旨味、そしてこの不思議な味のソース! こんなの食べたら修道院の食事に戻れないよぉ」
メリィも気に入ってくれたようだ。ピーターは相変わらずガフガフ黙って食ってる。俺を褒めるのは嫌なんだろうな。
「おやぁ・・・。これは」
ナンさんは一口食べてから、俺をじっと見た。
「な、なに? ナンさん・・・」
「いえね、小生はこれと同じものを、食べた事があるんですよぉ」
「へぇ? どこで?」
「時々孤児院にやって来るウメボシちゃんに食事をご馳走してもらうのですが、彼女もこれと同じ料理を出してましてねぇ。貴方も知っているでしょう? 現人神オーガに仕える使い魔の名前くらい」
「え? ああ・・・。(やべぇ! この人も大神聖の知り合いなのかよ!)」
「じ、実はウメボシちゃんに教えてもらって・・・。(ぐう、また嘘をついてしまった)」
「おやぁ、あなた今、また嘘をついてしまったと後悔しましたねぇ?」
おわぁぁぁ! この人【読心】を使えるんだ! おわた!
「見えますよ、貴方の頭に浮かぶ奇妙な世界が・・・。空を飛ぶ馬車、高い塔が立ち並ぶ街、争う事のない平和な人々」
地球の風景を見られた・・・。お好み焼きでなんとなく地球を思い浮かべてしまったからな。
「はわわわ」
「なに焦ってんだよ、オビオ。お前の頭の中がメルヘンチックなのが、そんなに恥ずかしいのか? それにしてもノームみたいな妄想をするんだな! クキキッ!」
ピーターが、白目で俺を馬鹿にするように笑っている。きめぇ。
「オビオってぇ、中身も可愛いんだね!」
口の周りにソース付けまくってるメリィの方が可愛いけどな。
「現人神様と近しい文化圏から来たのかもな。オビオは記憶喪失だからよ」
トウスさん、フォローありがとうございます。
「ああ、なるほど。貴方は記憶喪失なのでしたか。では記憶が混濁しているのかもしれませんねぇ。時々いるんですよぉ、思考がぐちゃぐちゃの人。ごめんなさいね、勝手に【読心】の魔法を使ってしまって。職業柄どうしても他者を警戒する癖がついてまして。キュッキュ!」
「い、いいんですよ。(上手くは誤魔化せてはいないだろうな。気を使ってくれたんだ、ナンさんは)」
「まだ足りないですねぇ」
ナンさんはいつの間にかお好み焼きを食べ終えて、皿についたソースをペロペロと舐めていた。
「ごめん、もう材料がない・・・。もっと買っておくべきだった。あ! そうだ、パンならあるよ! エンチャントパン!」
今日はもう再生効果のあるパンを使う事はないだろう。すぐに振る舞えるのは、パンとお菓子くらいだ。
「へぇ! エンチャントメントパン! おやぁ、これはオビオ君が全部やったんですか? 貴方付魔師?」
お、手が光っている。ナンさんは俺のパンを鑑定魔法で調べたんだ。流石は暗殺者、どんなものでも毒がないかを確かめるんだな。
「うん、イグナちゃんっていう、闇魔女に教えてもらったんだ!」
イグナと聞いてピーターがビクリとした。
ピーターは過去に彼女のおっぱいを揉みしだいてしまい、後でシスター・マンドルにフルボッコにされたらしい。こいつ一体どんだけ女の子のおっぱいや尻を揉みしだいてんだよ、羨ましい。ゲフンゲフン。
「ああ、道理で! 付魔の簡略の仕方が、小生そっくりだと思いました!」
どういう事だ?
「何を隠そう、イグナちゃんに付魔のやり方を教えたのは小生なのですよ。今は廃業しましたが、昔は付魔師でお飯を食べてましたからね。キュッキュ!」
「じゃあナンさんが師匠みたいなもんか」
「では師匠からアドバイス。付魔をする時はこのアイテムを使った人がどうなって欲しいのかを、具体的に想像しながらやると効果が高くなりますよ」
「それは良い事聞いた! 確かに俺は付魔をする時、魔法の事ばかり考えてる。このパンも、再生の魔法が上手に乗る事を想像してた。料理と一緒なんだな。食べてくれる相手を思いながら作ると美味しくなる。付魔も、相手の傷が癒えていく姿を想像してやってみるよ! ありがとう、師匠」
「やはぁ~、師匠ですか。やっぱり照れくさいですねぇ。キュッキュ!」
クネクネと気持ち悪い動きで照れるナンさんに苦笑いしながら、俺はチョコ菓子も出すと、幽霊の子がすぐに手に取った。
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「いや、クリームを挟んだスポンジをチョコレートコーティングしてるお菓子だ。純粋なチョコレートではないよ」
「おいしいぃ。わたしぃ、オビオのパーティに入って良かったぁ」
メリィは座っている俺の腕に抱き着いてきた。あまり顔を近づけるなよ。お好み焼きソースとチョコが口の周りに付いているからさ。ああ、もう。
俺はウェットティッシュでメリィの顔を拭きながら、修道院での生活が気になった。
「チョコでこんなに喜ぶなんて、修道院ではどんな禁欲生活してんだよ」
「色々と我慢しないとぉ、だめなの」
だから具体的には? メリィは言葉が少ない・・・。
「お兄ちゃん、私もうお腹いっぱい・・・」
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俺は胸が切なくなった。
「うん、お腹が減るのは辛いもんな。お腹がいっぱいになって、よかったよ!」
「これでお父さんとお母さんのいるところに行ける・・・。ありがと、お兄ちゃん。これお礼に貰って。お父さんの形見なんだけど、お兄ちゃんに使ってほしい」
いつの間にか俺は右手に指輪を持っていた。それに気が付いた途端、情報が流れ込んでくる。
戦士の指輪。
装着者は、戦士として力を発揮できる。すげぇ。これを俺が付ければ戦士として活躍できるって事だろ?
「いいのか? こんな大事な物。お父さんの形見なんだろ?」
「うん、いいの。あの世には持っていけないし。じゃあ行くね」
俺は女の子をハグして祈った。
「次は幸せな人生を歩めますように」
俺はこの子を幸せにできただろうか? いやできたと自負したい!
「お好み焼き美味しかった!」
「うん」
料理には力がある。お腹いっぱいになると幸せな気持ちになるし、心も温かくなる。俺はこの子の苦しみを救えたはずだ。
やべぇ、何でかわからないけど泣けてきた。本当にこの子の来世を幸せにしてやってくれよ、神様。
サーカの体から蛍のような無数の光が出て、上へと登って消えた。デイジーさんの時もそうなんだけど、幽霊とのお別れは呆気ない。
「おい、誰が抱きしめてもいいと言った?」
サーカが腕の中で顔を真っ赤にして怒っていた。あぁ、感動のお別れが台無しだ。この後きっと、ビリビリがくるんだ。
が、何事もなくサーカは俺の体から離れて、そっぽを向いた。
(良かった・・・。きっと女の子が憑依していた時の記憶があるんだろう。だから情状酌量してくれたと。あ! でもピーターは死刑だな。きっと地下墓地から出た途端、消し炭になってるだろ。仕方ない。その時は再生の魔法をかけてやるか・・・)
「あ、ちょっと待って! あれが出そう。さっき食べたチョコと同じ色の玉が、数珠繋ぎになってたりするアレ。今すぐしないと、漏らしちゃう!」
「いっそウンコって言えよ、ナンさん!」
もう感動の余韻ぶち壊しだな。
「リッチさんの部屋のトイレ借りてきます。皆は先に地上へ向かっててください。魔法の地図は、小生にも効果を発揮していますから大丈夫ですよ」
そっか、ピーターの【魔法の地図】の効果はパーティに常駐しているんだ。ナンさんもその恩恵を受けたというわけだな。
「じゃあゆっくり出口に向かうから、追いついて」
「はい」
そう言ってナンさんはお尻を押さえながら、隠し扉を開けて中へ入っていった。
「じゃあ行くか」
リッチは部屋の奥にある扉を開けて、忙しそうに働くインプたちを見て満足そうに頷いた。
「あいつらが来た時はこの部屋が見つかるのではないかと冷や冷やしたが、間抜けな冒険者どもで助かった。私が賢者の石に、辰砂を混ぜて水増ししている事に気が付けば、奴らはきっと襲い掛かって来ただろうな。あの小僧に本物を渡したのは正解だった。あいつは上位鑑定の指輪を付けていたな。ああいった指輪を持つ者以外は、誰もがこれを賢者の石だと思って買っていく。バカな奴らよ。この世界には【偽りの情報】という魔法がないから、誰もが簡単に騙される! いずれ地上は病で死ぬ者が増えるだろう。そうなれば今度はアンデッドを作り放題だ! ハハハ!」
「にゃるほどねぇ~」
「誰だ!」
「小生だっ!」
リッチの影から出てきた道化師は、その時点で勝負を決める事ができていたが、それをしなかった。代わりに忙しそうにタップを踏んで笑っている。
「キュキュキュ! やはり偽の賢者の石の件は貴方でしたか。貴方に出会った時、小生の【読心】をレジストしたから余計に怪しかったのですよぉ」
「だったらなんだ。不意打ちをした時に、私を倒さなかった間抜けめ。お前の負けだ」
リッチの配下のインプが襲い掛かって来るが、道化師は踊るようにして躱し、すれ違いざまにダガーで羽のある小鬼たちを一撃で殺していく。
「小生はねぇ、命の灯が消えていく様を見るのが好きなんですよぉ。特に悪人が苦しんで死ぬ姿なんて最高ですよ。死の間際まで生に執着して、みっともなく手足をジタバタさせて死ぬ人が多いんです。それがもう滑稽で滑稽で! キュキュキュ! そしてそのうち動きも緩慢になり、やがては止まる。その瞬間が素敵なんです! わかります? あぁ、早く貴方のその姿が見たい!【闇の炎】!」
恍惚の表情を浮かべ、不気味に震える道化師が魔法を放つと、リッチの体を黒い炎が包んでいた。
「なんだ? この魔法は」
「【闇の炎】ですよ? 結構メジャーな闇魔法ですが。さぁ! 踊ってください! その炎は容易に貴方を逝かせてくれませんから。ずっと意識を保ったまま! 自身の体が焼かれる様を見る事になるのですよぉ! キュッキュ!」
「馬鹿め、私に痛覚はないのだぞ・・・」
しかしリッチは、炎が自分の身を焼く痛みに驚いている。
「?! ぐあぁぁ!! 熱い! おかしいぞ! 私は悪魔に体の感覚も売り渡したはずだ。だから苦痛を感じない! しかし・・・。しかし! この炎は熱い! なぜだ!」
「さぁ? そういう魔法ですからとしか言いようがありませんねぇ。苦痛があるのはレジストに失敗した証拠。そして次に、意識を保ったまま灰になるまで燃えるのです。ほら、もっと苦しみに踊ってください。我慢できなくなったら手を上げるのですよ? それから、今も病気に苦しむ人たちに、土下座して御免なさいぐらいは言わないとねぇ? キュキュ!」
リッチは炎の熱に苦しんで蹲る。
「ああ・・・。助けてくれ・・・。もう耐えられない・・・」
「もう土下座ですか? 早漏ですねぇ? キュキュ。それではまた来世で会えたら会いましょう。アディユー!」
道化師が黒い炎に背を向けて指を鳴らすと、リッチは灰となって崩れ落ちた。
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◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
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