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ホッチさん 1
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結局俺は一睡もできないまま、バーでサーカ・カズンの取り調べに付き合わされる羽目になった。
ギム伯爵は意識を取り戻して暫くは、サーカの質問には答えようとはしなかったが、シルビィ・ウォールの名を聞いた途端に肩を落とす。
そして素直にワンドリッター侯爵卿との繋がりや、他の奴隷商人の違法行為を話し始めた。
ギム伯爵も一応あくどい事をしていたのだが、法を逸脱するような事はしていないと主張している。
聞いた限りでは闇側種族の捕獲・奴隷化が主な仕事で、樹族国では闇側種族の国へ侵入しての現地住人の連れ去りは、違法行為にあたらないらしい。
自分より身分の低い下級騎士に必死になって弁明する伯爵を、遠くのテーブルで眺めながら俺は眠たそうなホッチさんに話しかけた。
「初出勤なのに、あまり良い仕事にならなかったですね、ホッチさん」
俺がキープしたワインボトルからワインをグラスに注ぐと、ホッチさんは少し飲んでホワッと息を吐く。
子供がお酒を飲んでいるようで違和感があるが、ホッチさんは21歳だ。既に4歳くらいのチッチがいるのは驚きだが、地走り族は早婚が多く15歳で結婚する事もよくあるらしい。
「いいのよ。最初のお客が、凄く変なお客さんだったらどうしようって、お店に来るまでは緊張してたから。だからオビオが来てくれて嬉しかったわ! そうそう、オビオに貰った飴あるでしょ? あれね、怪我をした夫に食べさせたらびっくりしてたわよ。本物の果物の良い所だけを食べているようだって」
そうでしょうとも。飴一つにだって並々ならぬ情熱を注ぎ、拘って作る職人さんが地球にはいるんだ。美味しくないわけがない。
「それにしてもオビオって不思議なオーガね。マジックアイテムとか、ノームみたいな機械を持ってるし。ネズミを退治した時も、変なアイテム使ってたでしょ? 私ね、オーガってもっと凶暴な人種だと思ってたの。だってオーガって、お腹が空くと凶暴になって人でも食べちゃうでしょ? でもオビオは料理人だから、自分で何でも作って食べちゃうから凶暴にならないし、凶暴になるところが想像できないくらい可愛い顔してるもの」
ここのオーガって腹が減ると凶暴になるのか・・・。地球人に似てるんだろうけど野蛮だなぁ。
「か、可愛い・・・? 俺がですか?」
俺にしてみれば地走り族の方が余程可愛い。ハグしてホッペを吸って、ハプハプしたいぐらいなんですが・・・。
「オーガってもっとゴツゴツした顔だったり体格だったりしてるでしょ? オビオは体の線も細いし、顔も童顔だし、背の高い地走り族みたいよ?」
そりゃ俺の親がそのようにデザインして、こしらえましたからね。こればっかりは自分でどうにもならない。
ホッチさんと話している間も、サーカは伯爵の知り合いであるバーのママから情報を聞き出している。
多分、伯爵の情報の答え合わせ的な事をしているのだろう。早く終わってくれないかな。俺は政治的な関わりは持ちたくないぞ。なんつたって料理人の卵だからな・・・。
「それにしてもこの指輪のせいなのかな・・・。触れた物の情報が頭に浮かぶんですけど・・・」
俺はゴブリンのダガーに貫かれた手の指輪の血を、ハンカチで拭いて磨く。今も触れているテーブルが黒檀とレッドオークで出来ている事が解る。天板が黒檀でそれ以外がレッドオークだ。重たくて丈夫なテーブルだといえる。
「傷は大丈夫なの?」
ホッチさんが俺の大きな手をとって傷をまじまじと見た。
血で汚れているが実はもう既にナノマシンの働きによって、綺麗に回復しているのだ。この星に来てから、体の様々なシステムが不安定だったけど、今は大丈夫に思える。
「あら! もう治ってる! 凄い! オビオったらまるで、トロールみたいね!」
触れているホッチさんの手から情報が流れ込んでくる。
ホッチ。21歳。地走り族の女。スカウト兼レンジャー。実力値2か・・・。能力値は・・・、見ないでいいか。
凄いな・・・、この指輪。何でも解るじゃないか。
目の前に映し出される情報は、高いBPを払って手に入れる地球の科学技術――――、眼球モニターに映し出される情報のようだ。これは本当に魔法か?
「生まれつき、体の治りが早いんですよ。ハハハ・・・」
ホッチさんの驚いて丸くなった目見て答えながら、俺は色々と考察する。情報ってどこまで見れるのだろうか。ホッチさんの子供の名前は?
チッチ
知ってたけども。
目から50センチほど先にあるように見えるモニターに、情報が出た。
お、質問しないと出てこない情報もあるんだな。まぁ当たり前か。全情報をズラズラ出されても困るしな。
それにしても・・・。情報が簡単に手に入るのは強味だぞ。もっと調べられるかな?
ホッチさんが最近チョメチョメしたのは何日前? でぇへへ。シルビィさんとかの影響で、俺もエロくなってきたなぁ。
――――――
流石に出てこないか。
21世紀のラノベで見たスキルの”大賢者“的なのを想像したけど現実は甘くない。
というか、ここがゲーム世界なのか現実世界なのかわからないけど、今のところ7割ぐらいは現実だと思い始めている。
となると・・・。俺はこの星で死んだらどうなるのだろうか・・・。
地球では何度でも再構成蘇生されるので、死ぬ事について心配する必要はなかった。この星では復活できる術はあるにはあるが、その可能性は低く、”永遠“の死が身近なのだ。
夜明けの底冷えと死の恐怖が脊髄を駆け抜けて、俺はブルブルと小さく震えた。
「どうしたの? 急に怖い顔をして黙りこくって・・・」
「その・・・。俺って料理人なのに戦いの最前線に出る事が多いから、死んだらどうなるのかなって・・・」
「当たり前だけど基本的に死んだら終わりよ? 私達みたいな庶民が、蘇りの奇跡を施される事はないからね。それにあの祈りの奇跡だって、死んでからあまりに時間が経つと蘇生できないらしいし。・・・そっか。オビオはオーガだから体力と生命力が高いだろうって事で、最前線に出されるんだ? 可哀想ね・・・」
俺の手に、お餅のようなホッペをスリスリして、ホッチさんは同情してくれている。優しくするのは止めて。俺は惚れやすい性格をしているから。
うっとりとホッチさんを見ていると、彼女は地走り族特有の丸い目で俺を見つめ返してきた。それはラブロマンス的な視線ではなく、何かを思い出したという目だった。
「そういえばあくまで噂だけど、サヴェリフェ子爵様のオーガとイービルアイは、復活の秘術を身に着けているって聞いた事があるわ。それに・・・、なんて名前だったかしら? ジブ・・・。そう! ジブリット侯爵家の者に殺されても、復活したって話があるし」
(ああ、そのジブリット家の者ってエリムス様の事だな。それから大神聖には、静止軌道上に待機している宇宙船カプリコンがバックにいますし。カプリコンは元々救援船だから、蘇生なんてものは宇宙から光をビーっと当てればすぐだ。
地球にいた時に、事前にダウンロードしておいたデータによると、ウメボシはデュプリケーターと旧式の再構成蘇生装置を備えている・・・。羨ましい)
地球人は生まれもって平等だし、誰しもが生きていく上で何の苦労もしない。が、やはり親が最初に設定した能力や、自分の目指す分野の流行り廃れ、運の良さなどで格差は生まれる。
俺は感性特化型という、デザインドの中でも特に不安定な能力を宿して生まれてきた。
俺が目指す料理人の頂点は何も約束はされていない。
料理の味なんてものは人によって感じ方が違うし、ずば抜けた才能と運がなければ世間には認められない。
特にデュプリケーターで何でも作れる地球において、料理人なんてのは扱いが軽い。BPを稼ぐにも、料理系以外のボランティアでは呼ばれもしない。だからポイントも稼ぎにくい。
(大神聖みたいな万能型ってさぁ、器用貧乏って言われているけど、色々と手広く成果を出すからBPも稼ぎやすいんだろうなぁ)
しかも、お付きのアンドロイドであるウメボシがサポートしてくれている・・・。
俺も地球のインフラ整備がないと役に立たないアンドロイドではなく、ウメボシのように自力で、どんな場所でも主を助ける事ができるアンドロイドが欲しい。蘇生装置があれば死ぬ事も怖くないだろう。
取り調べが済んだのか、サーカはギム伯爵に軽く会釈すると、こちらに歩いてきた。
「さぁ、ゴブリンを連れてアルケディア城に向かうぞ。さっさと立て、オビオ」
相変わらずこちらの都合はお構いなしだ。俺はやれやれと言って腰を上げた。
「ホッチさん、近い内に旦那さんのお見舞いに行きますよ。住んでいる村の名前を教えてください」
「まぁ!嬉しい! チッチも喜ぶわ! 私が住んでいる村の名前はニーシ村よ。場所はアルケディアから南に一時間ほど歩いたところにあるから」
(毎日一時間もチッチと歩いてアルケディアまで来ているのか。南にあるのにニーシ村とは覚えにくい・・・)
「じゃホッチさん、俺はこれで。ご馳走様、ママ!」
俺はママに向かって挨拶をすると、ママは体をクネクネさせてから投げキッスをしてきた。
「今度は私自身がご馳走になるわぁ。また来てねぇ!」
それは勘弁して下さい。
「オビオ、ゴブリンはお前が担げ」
まぁゴブリンより少し背が高いだけの樹族が、ゴブリンを担いで歩くのは無理か。
仕方ないがないので、俺は身長150cm程のゴブリンを肩に担いだ。担ぐと、サモロスという名前のこのゴブリンの尻から、湿った匂いが漂って来る。
クセェ。風呂入ってないのかよ。自分のナノマシンを分けてやりたくなる。ナノマシンは体表の老廃物を食べてくれるからな。風呂に入らなくても地球人は臭くならない。それどころか排便も月一でいい。月に一回の理由は、使わないと退化するからだそうな。
「ではさようなら! チッチによろしく! ホッチさん!」
「さよなら! またね!」
手を振る二人の後ろで遠くで、ギム伯爵がやつれた顔で手を振ってくれた。
きっと報告次第ではギム伯爵は王国近衛兵独立部隊か、或は裏側という王政府の裏組織に目をつけられるのだろう。
そして伯爵との関わりを、無かった事にしたいワンドリッター侯爵にも命を狙われる。なんだか可哀想だな・・・。可哀想だが因果は巡るってやつか?
悲しい思いをした奴隷たちの怨念が伯爵に返ってきたのかもしれない。
何とかしてやりたいけど、この世界で大して強くない俺に、何もしてやれる事はない。頑張って生き延びてくれ、ギム伯爵。
ギム伯爵は意識を取り戻して暫くは、サーカの質問には答えようとはしなかったが、シルビィ・ウォールの名を聞いた途端に肩を落とす。
そして素直にワンドリッター侯爵卿との繋がりや、他の奴隷商人の違法行為を話し始めた。
ギム伯爵も一応あくどい事をしていたのだが、法を逸脱するような事はしていないと主張している。
聞いた限りでは闇側種族の捕獲・奴隷化が主な仕事で、樹族国では闇側種族の国へ侵入しての現地住人の連れ去りは、違法行為にあたらないらしい。
自分より身分の低い下級騎士に必死になって弁明する伯爵を、遠くのテーブルで眺めながら俺は眠たそうなホッチさんに話しかけた。
「初出勤なのに、あまり良い仕事にならなかったですね、ホッチさん」
俺がキープしたワインボトルからワインをグラスに注ぐと、ホッチさんは少し飲んでホワッと息を吐く。
子供がお酒を飲んでいるようで違和感があるが、ホッチさんは21歳だ。既に4歳くらいのチッチがいるのは驚きだが、地走り族は早婚が多く15歳で結婚する事もよくあるらしい。
「いいのよ。最初のお客が、凄く変なお客さんだったらどうしようって、お店に来るまでは緊張してたから。だからオビオが来てくれて嬉しかったわ! そうそう、オビオに貰った飴あるでしょ? あれね、怪我をした夫に食べさせたらびっくりしてたわよ。本物の果物の良い所だけを食べているようだって」
そうでしょうとも。飴一つにだって並々ならぬ情熱を注ぎ、拘って作る職人さんが地球にはいるんだ。美味しくないわけがない。
「それにしてもオビオって不思議なオーガね。マジックアイテムとか、ノームみたいな機械を持ってるし。ネズミを退治した時も、変なアイテム使ってたでしょ? 私ね、オーガってもっと凶暴な人種だと思ってたの。だってオーガって、お腹が空くと凶暴になって人でも食べちゃうでしょ? でもオビオは料理人だから、自分で何でも作って食べちゃうから凶暴にならないし、凶暴になるところが想像できないくらい可愛い顔してるもの」
ここのオーガって腹が減ると凶暴になるのか・・・。地球人に似てるんだろうけど野蛮だなぁ。
「か、可愛い・・・? 俺がですか?」
俺にしてみれば地走り族の方が余程可愛い。ハグしてホッペを吸って、ハプハプしたいぐらいなんですが・・・。
「オーガってもっとゴツゴツした顔だったり体格だったりしてるでしょ? オビオは体の線も細いし、顔も童顔だし、背の高い地走り族みたいよ?」
そりゃ俺の親がそのようにデザインして、こしらえましたからね。こればっかりは自分でどうにもならない。
ホッチさんと話している間も、サーカは伯爵の知り合いであるバーのママから情報を聞き出している。
多分、伯爵の情報の答え合わせ的な事をしているのだろう。早く終わってくれないかな。俺は政治的な関わりは持ちたくないぞ。なんつたって料理人の卵だからな・・・。
「それにしてもこの指輪のせいなのかな・・・。触れた物の情報が頭に浮かぶんですけど・・・」
俺はゴブリンのダガーに貫かれた手の指輪の血を、ハンカチで拭いて磨く。今も触れているテーブルが黒檀とレッドオークで出来ている事が解る。天板が黒檀でそれ以外がレッドオークだ。重たくて丈夫なテーブルだといえる。
「傷は大丈夫なの?」
ホッチさんが俺の大きな手をとって傷をまじまじと見た。
血で汚れているが実はもう既にナノマシンの働きによって、綺麗に回復しているのだ。この星に来てから、体の様々なシステムが不安定だったけど、今は大丈夫に思える。
「あら! もう治ってる! 凄い! オビオったらまるで、トロールみたいね!」
触れているホッチさんの手から情報が流れ込んでくる。
ホッチ。21歳。地走り族の女。スカウト兼レンジャー。実力値2か・・・。能力値は・・・、見ないでいいか。
凄いな・・・、この指輪。何でも解るじゃないか。
目の前に映し出される情報は、高いBPを払って手に入れる地球の科学技術――――、眼球モニターに映し出される情報のようだ。これは本当に魔法か?
「生まれつき、体の治りが早いんですよ。ハハハ・・・」
ホッチさんの驚いて丸くなった目見て答えながら、俺は色々と考察する。情報ってどこまで見れるのだろうか。ホッチさんの子供の名前は?
チッチ
知ってたけども。
目から50センチほど先にあるように見えるモニターに、情報が出た。
お、質問しないと出てこない情報もあるんだな。まぁ当たり前か。全情報をズラズラ出されても困るしな。
それにしても・・・。情報が簡単に手に入るのは強味だぞ。もっと調べられるかな?
ホッチさんが最近チョメチョメしたのは何日前? でぇへへ。シルビィさんとかの影響で、俺もエロくなってきたなぁ。
――――――
流石に出てこないか。
21世紀のラノベで見たスキルの”大賢者“的なのを想像したけど現実は甘くない。
というか、ここがゲーム世界なのか現実世界なのかわからないけど、今のところ7割ぐらいは現実だと思い始めている。
となると・・・。俺はこの星で死んだらどうなるのだろうか・・・。
地球では何度でも再構成蘇生されるので、死ぬ事について心配する必要はなかった。この星では復活できる術はあるにはあるが、その可能性は低く、”永遠“の死が身近なのだ。
夜明けの底冷えと死の恐怖が脊髄を駆け抜けて、俺はブルブルと小さく震えた。
「どうしたの? 急に怖い顔をして黙りこくって・・・」
「その・・・。俺って料理人なのに戦いの最前線に出る事が多いから、死んだらどうなるのかなって・・・」
「当たり前だけど基本的に死んだら終わりよ? 私達みたいな庶民が、蘇りの奇跡を施される事はないからね。それにあの祈りの奇跡だって、死んでからあまりに時間が経つと蘇生できないらしいし。・・・そっか。オビオはオーガだから体力と生命力が高いだろうって事で、最前線に出されるんだ? 可哀想ね・・・」
俺の手に、お餅のようなホッペをスリスリして、ホッチさんは同情してくれている。優しくするのは止めて。俺は惚れやすい性格をしているから。
うっとりとホッチさんを見ていると、彼女は地走り族特有の丸い目で俺を見つめ返してきた。それはラブロマンス的な視線ではなく、何かを思い出したという目だった。
「そういえばあくまで噂だけど、サヴェリフェ子爵様のオーガとイービルアイは、復活の秘術を身に着けているって聞いた事があるわ。それに・・・、なんて名前だったかしら? ジブ・・・。そう! ジブリット侯爵家の者に殺されても、復活したって話があるし」
(ああ、そのジブリット家の者ってエリムス様の事だな。それから大神聖には、静止軌道上に待機している宇宙船カプリコンがバックにいますし。カプリコンは元々救援船だから、蘇生なんてものは宇宙から光をビーっと当てればすぐだ。
地球にいた時に、事前にダウンロードしておいたデータによると、ウメボシはデュプリケーターと旧式の再構成蘇生装置を備えている・・・。羨ましい)
地球人は生まれもって平等だし、誰しもが生きていく上で何の苦労もしない。が、やはり親が最初に設定した能力や、自分の目指す分野の流行り廃れ、運の良さなどで格差は生まれる。
俺は感性特化型という、デザインドの中でも特に不安定な能力を宿して生まれてきた。
俺が目指す料理人の頂点は何も約束はされていない。
料理の味なんてものは人によって感じ方が違うし、ずば抜けた才能と運がなければ世間には認められない。
特にデュプリケーターで何でも作れる地球において、料理人なんてのは扱いが軽い。BPを稼ぐにも、料理系以外のボランティアでは呼ばれもしない。だからポイントも稼ぎにくい。
(大神聖みたいな万能型ってさぁ、器用貧乏って言われているけど、色々と手広く成果を出すからBPも稼ぎやすいんだろうなぁ)
しかも、お付きのアンドロイドであるウメボシがサポートしてくれている・・・。
俺も地球のインフラ整備がないと役に立たないアンドロイドではなく、ウメボシのように自力で、どんな場所でも主を助ける事ができるアンドロイドが欲しい。蘇生装置があれば死ぬ事も怖くないだろう。
取り調べが済んだのか、サーカはギム伯爵に軽く会釈すると、こちらに歩いてきた。
「さぁ、ゴブリンを連れてアルケディア城に向かうぞ。さっさと立て、オビオ」
相変わらずこちらの都合はお構いなしだ。俺はやれやれと言って腰を上げた。
「ホッチさん、近い内に旦那さんのお見舞いに行きますよ。住んでいる村の名前を教えてください」
「まぁ!嬉しい! チッチも喜ぶわ! 私が住んでいる村の名前はニーシ村よ。場所はアルケディアから南に一時間ほど歩いたところにあるから」
(毎日一時間もチッチと歩いてアルケディアまで来ているのか。南にあるのにニーシ村とは覚えにくい・・・)
「じゃホッチさん、俺はこれで。ご馳走様、ママ!」
俺はママに向かって挨拶をすると、ママは体をクネクネさせてから投げキッスをしてきた。
「今度は私自身がご馳走になるわぁ。また来てねぇ!」
それは勘弁して下さい。
「オビオ、ゴブリンはお前が担げ」
まぁゴブリンより少し背が高いだけの樹族が、ゴブリンを担いで歩くのは無理か。
仕方ないがないので、俺は身長150cm程のゴブリンを肩に担いだ。担ぐと、サモロスという名前のこのゴブリンの尻から、湿った匂いが漂って来る。
クセェ。風呂入ってないのかよ。自分のナノマシンを分けてやりたくなる。ナノマシンは体表の老廃物を食べてくれるからな。風呂に入らなくても地球人は臭くならない。それどころか排便も月一でいい。月に一回の理由は、使わないと退化するからだそうな。
「ではさようなら! チッチによろしく! ホッチさん!」
「さよなら! またね!」
手を振る二人の後ろで遠くで、ギム伯爵がやつれた顔で手を振ってくれた。
きっと報告次第ではギム伯爵は王国近衛兵独立部隊か、或は裏側という王政府の裏組織に目をつけられるのだろう。
そして伯爵との関わりを、無かった事にしたいワンドリッター侯爵にも命を狙われる。なんだか可哀想だな・・・。可哀想だが因果は巡るってやつか?
悲しい思いをした奴隷たちの怨念が伯爵に返ってきたのかもしれない。
何とかしてやりたいけど、この世界で大して強くない俺に、何もしてやれる事はない。頑張って生き延びてくれ、ギム伯爵。
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