167 / 299
巡回する砦の戦士
しおりを挟む
俺は大きな湯船を期待して風呂場に来たが、実際は大きな桶に使用人が沸かしたお湯が入っているだけだった。
「なんだこりゃ・・・。まぁ樹族国でもアルケディアから離れれば離れる程、風呂が原始的になっていたしな」
他の客も同様で、桶のお湯を当然のように使っている。獣人たちは桶にさっさと入ると手で毛を掻くようにして洗いだした。
「まず綺麗なお湯で、頭でも洗ったらどうなんだ。汚ねぇな」
俺がブツクサ言っているとシルビィが風呂場に入って来て、他の客同様湯桶に浸かって、ヘチマで体を擦り始めた。相変わらず良い尻をしているが、恥ずかしそうにしていないのが残念だ。何だったら逆に男らしい。
「頭を先に洗わねぇのか、シルビィ」
「ん? 頭? 水で流せば汚れは取れるだろう」
樹族の髪はその程度で綺麗になるのかねぇ。羨ましいな。俺は持っていたアワダチカズラを叩いて泡を出すと、頭に付けて念入りに洗う。それから粗目の手ぬぐいで体を擦った。
「湯の外で体を洗うとは奇妙な奴だな。湯桶に入って体を擦ればいいのに」
俺に話しかけるのはいいが、視線を上下に動かすのを止めろ。なに人のチンコ見てんだ。見てないつもりなんだろうが、バレバレだぞシルビィ。
「湯桶に浸かって体を擦れば垢が湯に浮くだろ。その汚い湯でまた体を擦る事になるんだぞ。湯桶の外で体を洗えば、最後に綺麗な湯に浸かる事が出来て、綺麗さっぱりとした気分で風呂から上がれるんだ。そのほうが気持ちいいだろ?」
「なるほど。今度私も真似をしてみよう」
「まぁ毛の長い獣人は湯桶に入って体を洗った方が合理的だろうな」
そう適当に納得しつつ、周りの獣人を見ながら体を洗う。長毛種なんかは特に気持ちよさそうにシャボン湯に浸かっている。後で風呂掃除する奴も大変だな。毛があちこちに落ちてるだろうからよ。
「それにしてもキリマルは、風呂でも刀を離さないのだな」
「ああ、こいつは俺から離れないようになっている」
「刀は人の姿になって風呂には入らないのか?」
「今は眠っているからな。時々長く眠る事があるんだわ」
「その刀の由来を聞いていいか?」
「聞いても信じねぇとは思うがな。こいつはサカモト神が作った武器のうちの一つだ。刀を持った時に俺が一番願う事の逆を実現化する。つまり俺は常に人の死を願って刀を振るってんだわ。まぁ武器ってのは人を殺す為の物だから当然なんだが。普通、人を斬る時の感情や思考は、恐れだとか憎しみだとか無心だったりするそうなんだがよ、俺は常に一撃一撃に殺意を籠める。だから人が生き返る。(この過去の世界じゃ)時々生き返らない奴もいるけどよ」
「まさかキリマル自身が自分の情報を教えてくれるとは思わなかったぞ。では蘇生は神が与えたもう能力ではなかったのだな」
「なんだ、サカモト神が残した一振りに驚かねぇのか?」
「もうレバシュの砦での蘇生に驚きすぎてな。今更感がある。なぜ王が君のような混沌と悪を好みそうな人物を寄越したのか、初めは分からなかったがこれで理解できた。王は王子を本気で殺したがっていないのだ。殺したという事実のみを必要としているのではないかな・・・」
「つまり罰したぞという体裁が必要だと? だとしたら王子はその後どうなる?」
「下野させられるか、どこかで隠遁生活を送るか。教会に入れられるかもな」
「どのみち、この件には多かれ少なかれ元老院が関わっていて、どちらに転んでも奴らに都合の良いようになってんだな。王子を斬らねば反逆者を見逃したと難癖をつけ、斬れば最愛の息子を失ったシュラス王の精神的ダメージは大きい。本当に斬るべきは元老院なのになぜそうしない?」
「色々あるのだよ。傀儡王と呼ばれたシュラス国王陛下は、何十年も煮え湯を飲まされながらも、巧みに動いてようやくワンドリッターや元老院の呪縛から逃れたのだ。ゆえにまだまだ力が弱い。今は外様の諸侯を味方にしようと苦心なされておられる」
「おっと! 他の者がいる風呂場でする話ではなかったな。後は部屋でしようぜ。酒でも飲みながら」
俺は急いで体を洗って綺麗なお湯を頭から被る。本当は湯に浸かりたかったんだがな。シルビィとは色々話しておくことがある。正直、現状は味方同士でも情報共有ができていない。いつまで経っても腹の探り合いってのはうっとおしい。
「酒は飲まんと言っただろ」
酒でも、という言葉を皮肉と捉えたシルビィは、風呂場を出ようと歩きだした俺の横に並んで、尻をペチリと叩いてきた。
「羽目を外さん程度に飲めばいいだろうがよ」
そう言って俺もシルビィの尻を叩いた。
「また触れた! 結婚する気もないのに、女の肌に触れるな!」
「お前こそ、俺の肌に触れるな」
結局更衣室まで俺とシルビィは尻の叩き合いをして、どっちがより多く叩いて勝ったかはわからねぇが、お互い尻が真っ赤になっただけだった。
「ヌハッヌハッ! ヌハハハッ! 我こそはッ! 闇の炎より生まれし偉大なる魔法使いッ! その名もッ! ンンンンビャクヤ☆ウィン! 恐れ慄いたならばッ! さっさと逃げるのだなッ!」
「やかましいど、魔人族! 何が闇の炎より出でし、だ! ぶっ殺す!」
オーガの大きな斧が、ビャクヤの頭をかち割ろうとして、振り下ろされた。
「おわぁ!!」
思わずリフレクトマントで防いだが、重い一撃だったので衝撃で伝わってくる。
ビャクヤの頭に浮かんだ二文字。それは―――失敗。
グランデモニウムの街道を警邏しているオーガが、まさか砦の戦士だとは思わなかったのだ。
肉食系男子が多い種族であるオーガの男たちは、リンネを見ると口説き始めたので、ビャクヤはついカッとなって無意識に【吹雪】を発動させてしまった。
魔法を受けて、オーガ達がビャクヤを敵だと認識してしまったのだ。
「吾輩はッ! ウィン家の者ですよ!」
「ふーん、そでで? おでたちはナンベルに臆したりはしないど」
氷魔法の影響を受けて鼻水を垂らすオーガは、手鼻をしてビャクヤを睨んでいる。
その手鼻をするオーガ三人を見てビャクヤは後悔した。
怪しい者ではない事を証明するために名乗った事が逆に挑発するような結果になってしまったのだ。まぁどのみち【吹雪】を発動させて、すぐに虚勢を張ったのが間違いだったのだけれども、と自分にツッコんだ。
(厄介ですねぇ・・・。砦の戦士に遭遇するとはッ! グランデモニウム王国の戦力の要。そして王国最強の傭兵ギルドッ! 彼らがその辺の兵士のように街道を警邏するなんて話は聞いた事がありません。これはやはり混乱するグランデモニウム王国を乗っ取った、現人神ヒジリの指示でしょう。なんという素早い治安対策かッ! 最強の傭兵に街道を守らせるなんてッ! 普通、こんな依頼をすればッ! ギルドの連中は怒りだすでしょうにッ! 砦の戦士を味方にするなんて、あの現人神はッ! どういう交渉をしたのンかッ!)
ビャクヤはチラリとリンネを見た。オーガの敵意は自分にしか向いておらず、リンネは特に何もされていないのでホッと安堵する。
(オーガが単純で良かった。吾輩は吾輩、リンネはリンネと別に考えているのですねッ! しかしッ! 参ったッ! 砦の戦士を三人も相手にどう戦えばいいのかッ!)
ノーマルオーガでありながら、エリートオーガに匹敵する実力を持つ砦の戦士たち。
圧倒的な攻撃力があり、リフレクトマント無しでは自分は即座に死んでいただろうと思うと、ビャクヤは身震いした。
今は三人のオーガが繰り出す重い斧の一撃をリフレクトマントで防ぐのが精いっぱいだ。反撃のチャンスなどない。
「【眠れ】!」
荒ぶるオーガの向こうで、リンネがつまらなさそうな顔をしてオーガ達に単純な魔法をかけた。
「そんな事をしてもヘイトを稼ぐだけですよ、リンネ! 砦の戦士にそんな単純な魔法が・・・。わぉ!」
オーガ達の体の輪郭に沿って、細やかな縦線でも入りそうなぐらい、彼らはストンと膝から崩れて地面に倒れた。
「オーガって睡眠系の魔法に弱いんでしょ?」
「いや、彼らは歴戦の戦士ですからッ! レジスト系マジックアイテムを結構持っていますよ? ほらッ!」
オーガの首や指には魔法抵抗力を上げる装備が付いている。ビャクヤは首飾りを試しに鑑定してみた。
「睡眠魔法抵抗率+30%。中々の装備ですよ、これは」
「でもオーガの元々の抵抗力が低かったら、+30%されても大した事ないんじゃない?」
「いやいや、他の装備との重複もあるでしょうし・・・。あら? 他は強化系のマジックアイテムばかりですね。ヌハッ! いやぁ、今回は運が良かったッ!」
オーガ達の装備を次々と鑑定してから、ビャクヤは額を拭いて立ち上がった。
「ふう、何はともあれ良かったんごッ! では任務続行ッ!」
「でもこのオーガ達はどうするの?」
「こうするのです」
ビャクヤは無限鞄からリンゴのような実を取り出して、砦の戦士の一人の口を開けて汁を注いだ。するとその戦士は見る見る女体化していく。
「わぁ! リンゴでオーガが女の子になっちゃった!」
「にゅふふっ! どうです? ノーム国でこっそり買っておいた性転換の実の力は。これで暫くは、女になったオーガを追い回すことでしょう。その間は報告に行かないでしょうから時間が稼げます。オーガの男子は性欲が強いですからねッ!」
「女体化した人は、元には戻るの?」
「新しい実を齧れば男に戻りますので、もう一個を彼の・・・いや、彼女のポーチに入れておきましょう」
そう言うとビャクヤは女体化したオーガの腰のポーチに、性転換の実を入れておいた。
「さぁ、行きますか。まだ巡回している砦の戦士がいるので、辺境の村から調べるのは無理そうですし、ゴデの街まで一気に飛んで、糞神ヒジリのお膝元で情報収集した方が良いでしょうッ!」
ビャクヤはいつものように変なポーズを決めて「ロケーションヌ、ル、ポ、ムーブ」と噛んでしまい、恥ずかしそうにして転移魔法を発動させた。
「なんだこりゃ・・・。まぁ樹族国でもアルケディアから離れれば離れる程、風呂が原始的になっていたしな」
他の客も同様で、桶のお湯を当然のように使っている。獣人たちは桶にさっさと入ると手で毛を掻くようにして洗いだした。
「まず綺麗なお湯で、頭でも洗ったらどうなんだ。汚ねぇな」
俺がブツクサ言っているとシルビィが風呂場に入って来て、他の客同様湯桶に浸かって、ヘチマで体を擦り始めた。相変わらず良い尻をしているが、恥ずかしそうにしていないのが残念だ。何だったら逆に男らしい。
「頭を先に洗わねぇのか、シルビィ」
「ん? 頭? 水で流せば汚れは取れるだろう」
樹族の髪はその程度で綺麗になるのかねぇ。羨ましいな。俺は持っていたアワダチカズラを叩いて泡を出すと、頭に付けて念入りに洗う。それから粗目の手ぬぐいで体を擦った。
「湯の外で体を洗うとは奇妙な奴だな。湯桶に入って体を擦ればいいのに」
俺に話しかけるのはいいが、視線を上下に動かすのを止めろ。なに人のチンコ見てんだ。見てないつもりなんだろうが、バレバレだぞシルビィ。
「湯桶に浸かって体を擦れば垢が湯に浮くだろ。その汚い湯でまた体を擦る事になるんだぞ。湯桶の外で体を洗えば、最後に綺麗な湯に浸かる事が出来て、綺麗さっぱりとした気分で風呂から上がれるんだ。そのほうが気持ちいいだろ?」
「なるほど。今度私も真似をしてみよう」
「まぁ毛の長い獣人は湯桶に入って体を洗った方が合理的だろうな」
そう適当に納得しつつ、周りの獣人を見ながら体を洗う。長毛種なんかは特に気持ちよさそうにシャボン湯に浸かっている。後で風呂掃除する奴も大変だな。毛があちこちに落ちてるだろうからよ。
「それにしてもキリマルは、風呂でも刀を離さないのだな」
「ああ、こいつは俺から離れないようになっている」
「刀は人の姿になって風呂には入らないのか?」
「今は眠っているからな。時々長く眠る事があるんだわ」
「その刀の由来を聞いていいか?」
「聞いても信じねぇとは思うがな。こいつはサカモト神が作った武器のうちの一つだ。刀を持った時に俺が一番願う事の逆を実現化する。つまり俺は常に人の死を願って刀を振るってんだわ。まぁ武器ってのは人を殺す為の物だから当然なんだが。普通、人を斬る時の感情や思考は、恐れだとか憎しみだとか無心だったりするそうなんだがよ、俺は常に一撃一撃に殺意を籠める。だから人が生き返る。(この過去の世界じゃ)時々生き返らない奴もいるけどよ」
「まさかキリマル自身が自分の情報を教えてくれるとは思わなかったぞ。では蘇生は神が与えたもう能力ではなかったのだな」
「なんだ、サカモト神が残した一振りに驚かねぇのか?」
「もうレバシュの砦での蘇生に驚きすぎてな。今更感がある。なぜ王が君のような混沌と悪を好みそうな人物を寄越したのか、初めは分からなかったがこれで理解できた。王は王子を本気で殺したがっていないのだ。殺したという事実のみを必要としているのではないかな・・・」
「つまり罰したぞという体裁が必要だと? だとしたら王子はその後どうなる?」
「下野させられるか、どこかで隠遁生活を送るか。教会に入れられるかもな」
「どのみち、この件には多かれ少なかれ元老院が関わっていて、どちらに転んでも奴らに都合の良いようになってんだな。王子を斬らねば反逆者を見逃したと難癖をつけ、斬れば最愛の息子を失ったシュラス王の精神的ダメージは大きい。本当に斬るべきは元老院なのになぜそうしない?」
「色々あるのだよ。傀儡王と呼ばれたシュラス国王陛下は、何十年も煮え湯を飲まされながらも、巧みに動いてようやくワンドリッターや元老院の呪縛から逃れたのだ。ゆえにまだまだ力が弱い。今は外様の諸侯を味方にしようと苦心なされておられる」
「おっと! 他の者がいる風呂場でする話ではなかったな。後は部屋でしようぜ。酒でも飲みながら」
俺は急いで体を洗って綺麗なお湯を頭から被る。本当は湯に浸かりたかったんだがな。シルビィとは色々話しておくことがある。正直、現状は味方同士でも情報共有ができていない。いつまで経っても腹の探り合いってのはうっとおしい。
「酒は飲まんと言っただろ」
酒でも、という言葉を皮肉と捉えたシルビィは、風呂場を出ようと歩きだした俺の横に並んで、尻をペチリと叩いてきた。
「羽目を外さん程度に飲めばいいだろうがよ」
そう言って俺もシルビィの尻を叩いた。
「また触れた! 結婚する気もないのに、女の肌に触れるな!」
「お前こそ、俺の肌に触れるな」
結局更衣室まで俺とシルビィは尻の叩き合いをして、どっちがより多く叩いて勝ったかはわからねぇが、お互い尻が真っ赤になっただけだった。
「ヌハッヌハッ! ヌハハハッ! 我こそはッ! 闇の炎より生まれし偉大なる魔法使いッ! その名もッ! ンンンンビャクヤ☆ウィン! 恐れ慄いたならばッ! さっさと逃げるのだなッ!」
「やかましいど、魔人族! 何が闇の炎より出でし、だ! ぶっ殺す!」
オーガの大きな斧が、ビャクヤの頭をかち割ろうとして、振り下ろされた。
「おわぁ!!」
思わずリフレクトマントで防いだが、重い一撃だったので衝撃で伝わってくる。
ビャクヤの頭に浮かんだ二文字。それは―――失敗。
グランデモニウムの街道を警邏しているオーガが、まさか砦の戦士だとは思わなかったのだ。
肉食系男子が多い種族であるオーガの男たちは、リンネを見ると口説き始めたので、ビャクヤはついカッとなって無意識に【吹雪】を発動させてしまった。
魔法を受けて、オーガ達がビャクヤを敵だと認識してしまったのだ。
「吾輩はッ! ウィン家の者ですよ!」
「ふーん、そでで? おでたちはナンベルに臆したりはしないど」
氷魔法の影響を受けて鼻水を垂らすオーガは、手鼻をしてビャクヤを睨んでいる。
その手鼻をするオーガ三人を見てビャクヤは後悔した。
怪しい者ではない事を証明するために名乗った事が逆に挑発するような結果になってしまったのだ。まぁどのみち【吹雪】を発動させて、すぐに虚勢を張ったのが間違いだったのだけれども、と自分にツッコんだ。
(厄介ですねぇ・・・。砦の戦士に遭遇するとはッ! グランデモニウム王国の戦力の要。そして王国最強の傭兵ギルドッ! 彼らがその辺の兵士のように街道を警邏するなんて話は聞いた事がありません。これはやはり混乱するグランデモニウム王国を乗っ取った、現人神ヒジリの指示でしょう。なんという素早い治安対策かッ! 最強の傭兵に街道を守らせるなんてッ! 普通、こんな依頼をすればッ! ギルドの連中は怒りだすでしょうにッ! 砦の戦士を味方にするなんて、あの現人神はッ! どういう交渉をしたのンかッ!)
ビャクヤはチラリとリンネを見た。オーガの敵意は自分にしか向いておらず、リンネは特に何もされていないのでホッと安堵する。
(オーガが単純で良かった。吾輩は吾輩、リンネはリンネと別に考えているのですねッ! しかしッ! 参ったッ! 砦の戦士を三人も相手にどう戦えばいいのかッ!)
ノーマルオーガでありながら、エリートオーガに匹敵する実力を持つ砦の戦士たち。
圧倒的な攻撃力があり、リフレクトマント無しでは自分は即座に死んでいただろうと思うと、ビャクヤは身震いした。
今は三人のオーガが繰り出す重い斧の一撃をリフレクトマントで防ぐのが精いっぱいだ。反撃のチャンスなどない。
「【眠れ】!」
荒ぶるオーガの向こうで、リンネがつまらなさそうな顔をしてオーガ達に単純な魔法をかけた。
「そんな事をしてもヘイトを稼ぐだけですよ、リンネ! 砦の戦士にそんな単純な魔法が・・・。わぉ!」
オーガ達の体の輪郭に沿って、細やかな縦線でも入りそうなぐらい、彼らはストンと膝から崩れて地面に倒れた。
「オーガって睡眠系の魔法に弱いんでしょ?」
「いや、彼らは歴戦の戦士ですからッ! レジスト系マジックアイテムを結構持っていますよ? ほらッ!」
オーガの首や指には魔法抵抗力を上げる装備が付いている。ビャクヤは首飾りを試しに鑑定してみた。
「睡眠魔法抵抗率+30%。中々の装備ですよ、これは」
「でもオーガの元々の抵抗力が低かったら、+30%されても大した事ないんじゃない?」
「いやいや、他の装備との重複もあるでしょうし・・・。あら? 他は強化系のマジックアイテムばかりですね。ヌハッ! いやぁ、今回は運が良かったッ!」
オーガ達の装備を次々と鑑定してから、ビャクヤは額を拭いて立ち上がった。
「ふう、何はともあれ良かったんごッ! では任務続行ッ!」
「でもこのオーガ達はどうするの?」
「こうするのです」
ビャクヤは無限鞄からリンゴのような実を取り出して、砦の戦士の一人の口を開けて汁を注いだ。するとその戦士は見る見る女体化していく。
「わぁ! リンゴでオーガが女の子になっちゃった!」
「にゅふふっ! どうです? ノーム国でこっそり買っておいた性転換の実の力は。これで暫くは、女になったオーガを追い回すことでしょう。その間は報告に行かないでしょうから時間が稼げます。オーガの男子は性欲が強いですからねッ!」
「女体化した人は、元には戻るの?」
「新しい実を齧れば男に戻りますので、もう一個を彼の・・・いや、彼女のポーチに入れておきましょう」
そう言うとビャクヤは女体化したオーガの腰のポーチに、性転換の実を入れておいた。
「さぁ、行きますか。まだ巡回している砦の戦士がいるので、辺境の村から調べるのは無理そうですし、ゴデの街まで一気に飛んで、糞神ヒジリのお膝元で情報収集した方が良いでしょうッ!」
ビャクヤはいつものように変なポーズを決めて「ロケーションヌ、ル、ポ、ムーブ」と噛んでしまい、恥ずかしそうにして転移魔法を発動させた。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
鬼神の刃──かつて世を震撼させた殺人鬼は、スキルが全ての世界で『無能者』へと転生させられるが、前世の記憶を使ってスキル無しで無双する──
ノリオ
ファンタジー
かつて、刀技だけで世界を破滅寸前まで追い込んだ、史上最悪にして最強の殺人鬼がいた。
魔法も特異体質も数多く存在したその世界で、彼は刀1つで数多の強敵たちと渡り合い、何百何千…………何万何十万と屍の山を築いてきた。
その凶悪で残虐な所業は、正に『鬼』。
その超絶で無双の強さは、正に『神』。
だからこそ、後に人々は彼を『鬼神』と呼び、恐怖に支配されながら生きてきた。
しかし、
そんな彼でも、当時の英雄と呼ばれる人間たちに殺され、この世を去ることになる。
………………コレは、そんな男が、前世の記憶を持ったまま、異世界へと転生した物語。
当初は『無能者』として不遇な毎日を送るも、死に間際に前世の記憶を思い出した男が、神と世界に向けて、革命と戦乱を巻き起こす復讐譚────。
いずれ男が『魔王』として魔物たちの王に君臨する────『人類殲滅記』である。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる