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特攻
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残りの銀貨三枚を見つめて、これで東の樹族国まで何日持つかビャクヤは計算した。
「食料は最悪、魔法で作り出すとして・・・。持って三日。街に着けば野宿と言うわけにもいかないしッ! それにどのルートを通るかが問題ですなッ! 北はモティ神聖国。一見厳正な国に見えますが、彼らの教義に反するような事をすればッ! いつまでも暗殺者を送り込んでくる恐ろしい国ですし、南のグラス王国を通ろうとすればッ! 阿漕な地走り族がこの少ない路銀を毟り取ろうとするでしょうッ!」
「となると、ポルロンドに分断された東側のリンクス共和国を通るしかないけど」
昨日もほぼ半日ビャクヤと愛し合っていたリンネは、むせ返るようなフェロモンをまき散らして、宿屋の一階の壁に貼ってあった地図を指さした。
「ええ。そうしますかッ! しかしリンクス共和国も災難ですなッ! リボンみたいな形の領土をしているからッ! 真ん中をポルロンドに押さえられて西のリンクス共和国に物資の供給もできないッ!」
「え? 西側は西側で何とかしているんじゃないの?」
「西側は岩山だらけで作物が育ちにくいのですッ! なのでッ! 飢えて苦しむ人だらけなのですッ!」
「酷い! どうしてそんなことを?」
「そりゃあポルロンドを返せ、と殴りこんでくるリンクス共和国の獣人が後を絶たないですからね。報復措置として表向きはそうしているのですッ!」
「表向き・・・?」
「まぁ、これは後の歴史で知るお話ですからこれ以上は・・・」
「そんな話聞かされたら気になるでしょう! じゃあ一つだけ聞かせて。リンクス共和国はどうなるの?」
「仕方ないですねぇ・・・。ちょっとだけですよ? 今より数年後に聖騎士が二人現れて神前審問を発動させ、教皇の悪事を暴いてしまいます。一人は現人神の盾、フラン様。もう一人は・・・。なんという名前だったかッ! 後に聖女になる・・・。えーっと、忘れまんしたッ!」
「珍しいわね、記憶力の良いビャクヤが忘れるなんて。でもリンクスが助かるならそれでいいわ」
「はい。最近記憶がなんだかあやふやなのですッ! 教皇は聖騎士とその仲間が倒したのではなく、ヒジリ様本人だったような・・・」
「大丈夫?」
「んんん、キスをしてくれたら治るかもッ!」
「キスだけでいいの?」
色気ある顔でリンネが見つめてくるので、ビャクヤは危うく飛び掛かりそうになったが、ここは他にも人がいる宿屋の一階。食堂兼酒場兼冒険者ギルド。何とか堪えた。
「ヌハッ! 騙されませんぞ! 我らはこれから出発するのですからッ! チョメチョメする時間なんてありませんぬッ!」
「ウフフ。で、取り敢えずどこを目指すの?」
「リンクス共和国に入って二番目の街、フサフです。かの街へは競歩で向かうので、もうポルロンドを出た方がいいですねッ!」
「そうねって、なんで競歩なのよ!」
ツッコミに「ヌハハ」と笑って応え、ビャクヤはリンネの手をしっかりと握って冒険者ギルドの扉を開いた。
ダイアモンドゴーレムの拳の一撃で、イエローがひしゃげた。それは圧倒的な力で人間に叩き潰された甲虫が如し。
「くそが、何で奴の攻撃を受けようと思ったんだ。うすのろの馬鹿が」
俺は初っ端から死人を出してしまった事に舌打ちをする。
「お前ら! 散開しろ! 絶対にゴーレムの攻撃を受けようとするな! 回避に集中しろ!」
といいつつも、俺はゴーレムの拳を刀で受けて往なしている。
「俺だからできるんだ、真似するなよ? お前らは雑魚なんだからよ」
往なしてから地面に転がり、石ころを拾うとダイアモンドゴーレム目掛けて投げつけて爆発させる。
小さな爆煙が晴れると・・・。残念な事にゴーレムの体に傷は無かった。
「かすり傷すらねぇな。傷をつける事ができるかもしれねぇという考えは甘かったか」
俺の思い付き計画その一が潰えた。爆発で傷がついたところをアダマントのノミで穿つという計画だ。まぁ期待してなかったがよ。
魔法の灯りが部屋中を照らす明るいこの部屋で、ゴーレムはダイアモンドの輝きを放って出鱈目に攻撃を繰り出し始めた。
暴れるゴーレムを見て「わしゃ止まると死ぬんじゃ~!」と勝手にアテレコして、俺に向かう攻撃を全て往なしまくる。
「この野郎、スタミナが無限だから休まずに動き回れるのか。長引けばこっちが不利だな」
俺を目掛けて絶え間なく拳を振り下ろすゴーレムの攻撃を回避しつつ、ひしゃげたイエローの遺体を神速居合斬りで鎧ごと縦に真っ二つにした。そのまま蘇生させても、潰れた鎧が体にめり込んでまた死んでしまうかもしれねぇからな。
「おらおら! こっちだ! ウスノロ!」
ゴーレムを挑発して、虹色の閃光がどうしているかを目の端で探る。
ウッドぺックは姿が見えねぇので隠遁スキルで姿を隠しているのは間違いない。よし。
ドンとブラックはゴーレムの攻撃範囲の外で、蘇生したイエローを安全な場所に引っ張れるような位置で待機している。よし。
アオも姿がみえねぇ。【透明化】で消えているな? よし。計画通り頼むぞ?
モモは・・・。何してんだ、あいつ! イエローの近くでションベン漏らして腰を抜かしてやがる。
「くそったれ! いや、小便垂れか?」
ゴーレムの目がモモに向くと厄介だぞ。死体が増えれば計画の進行が遅くなる。遅くなれば、それだけ俺のスタミナが減り、回避もままならなくなる。
「こっちを向け! 綺麗な石炭野郎!」
もう一度ゴーレムを挑発して、奴の意識を俺に固定させる。
すると丁度いいタイミングでレッドが走ってモモを抱きかかえると、ゴーレムのテリトリーから走り出た。
幾ら生死を共にする仲間同士でも、高いリスクを冒してまで仲間を救う事はまずない。それだけ、パーティってのはドライなのだ。でなければ容易に全滅してしまうからな。
しかし・・・。愛ってのは素晴らしいねぇ。ドン太郎様は見事モモ姫を助けた! クハハ!
「よっしゃ! 憂いが一つ消えた。詠唱は終わりそうか? アオ!」
「はい!」
アオがゴーレムの背後で【透明化】を解除して現れる。
「沈め! 【底なし沼】!」
ヒュー! 時間が掛かったな。
ゴーレムの足元が液状化する。ただしこの土魔法は底なし沼とは名ばかりで、しっかりと底がある。
が、ゴーレムにしては小さい(と言っても三メートルはある)ダイアモンドゴーレムには効果あった。
沼に沈むゴーレムは胸まで沈む。
「クハハ! ゴーレム自身に魔法が効かなくてもよ! お前の周りはそうでもねぇんだわ! 俺の計画大成功!」
魔法の効果が消えて底なし沼は元の床に戻ると、ゴーレムは床に埋まって身動きが取れなくなった。
「まさか、こんなやり方があるなんて・・・。いや、試した人はいると思いますが、キリマルのようにゴーレムの攻撃を長く引き付けられる人はいなかったんじゃないですかね。だから先輩冒険者達も死者を出しながら、苦闘の末にゴーレムの体を僅かに砕くのが、精いっぱいなんだったと思います」
「【底なし沼】の届く範囲は狭いからな。十分に近づかないと沼に落とせねぇ。ビビらずによく頑張ったじゃねぇか。アオ!」
レッドが嬉しそうにアオの肩を叩く後ろで、ブラックはまだゴーレムを警戒している。まぁいつも最悪を想定している奴だからな。だが今回は杞憂に終わるだろうよ。
「ええ、イエローの死に方を見て足がすくみました。でもやらないとキリマルが死ぬと思いましたので」
「ああ、あと少しでスタミナ切れを起こすところだったわ。さて、ウッドペック。ゴーレムの脳天にその鑿を撃ち込んでくれや。レッドはイエローのハンマーでノミの尻を叩け」
「了解!」
いつの間にか復活してまだ意識が戻らないままの、イエローの近くに転がる柄の曲がったグレートハンマーをレッドは持つと、埋まるゴーレムの頭にノミを突き立てるウッドペックのもとへと走り寄った。
「何とか叩けそうだけどよ・・・。凄い力だったんだな。魔法のグレートハンマーがこんなになるなんて」
中ほどから直角に折れたグレートハンマーを器用に持って、レッドはノミ目掛けて小さく振りかぶった。
―――とその時!
「グロロロロ!!」
ダイアモンドゴーレムが床を崩して動き始めた。
ウッドペックとレッドは転げ落ちて背中を強打するも、直ぐに立ち上がってゴーレムから逃げた。ブラックも意識のないイエローを引っ張って、ゴーレムの攻撃範囲の外に逃げていく。
ゴーレムは自分が埋まっていた穴から這い出ると、全身を真っ赤に光らせて地団駄踏んだ。
「いっちょ前に怒ってんのか? ハ! にしても、ついてねぇな! 上手くいくと思ったのによ!」
もう手段はねぇ。破れかぶれだ。
どうせ望みがねぇならと、脇差を左手に持って俺は二刀流で戦う事にした。
「これでなんとかなるとは思えねぇが、最後ぐらい格好つけさせてもらうぜ! 二刀流の元祖宮本武蔵よ! 俺に力をくれ! なんつってな、ヒャッハーー!」
死ぬかもしれねぇのに、俺の背中が嬉しさでゾクゾクしている。強敵を前にすると嬉しくなるのは人修羅の性なのか? そういや以前も、かないっこねぇヒジリの首を刎ねようとしてたな、俺は。
「クハハ! よーし! やってやるぜ! 俺様を舐めるなよ! ダイアモンドゴーレム! いくぜぇ! 神風特攻!」
俺は体中のあらゆる場所に悪意と殺意を籠めて、負と闇のオーラを放ち、自分を鼓舞した。
「食料は最悪、魔法で作り出すとして・・・。持って三日。街に着けば野宿と言うわけにもいかないしッ! それにどのルートを通るかが問題ですなッ! 北はモティ神聖国。一見厳正な国に見えますが、彼らの教義に反するような事をすればッ! いつまでも暗殺者を送り込んでくる恐ろしい国ですし、南のグラス王国を通ろうとすればッ! 阿漕な地走り族がこの少ない路銀を毟り取ろうとするでしょうッ!」
「となると、ポルロンドに分断された東側のリンクス共和国を通るしかないけど」
昨日もほぼ半日ビャクヤと愛し合っていたリンネは、むせ返るようなフェロモンをまき散らして、宿屋の一階の壁に貼ってあった地図を指さした。
「ええ。そうしますかッ! しかしリンクス共和国も災難ですなッ! リボンみたいな形の領土をしているからッ! 真ん中をポルロンドに押さえられて西のリンクス共和国に物資の供給もできないッ!」
「え? 西側は西側で何とかしているんじゃないの?」
「西側は岩山だらけで作物が育ちにくいのですッ! なのでッ! 飢えて苦しむ人だらけなのですッ!」
「酷い! どうしてそんなことを?」
「そりゃあポルロンドを返せ、と殴りこんでくるリンクス共和国の獣人が後を絶たないですからね。報復措置として表向きはそうしているのですッ!」
「表向き・・・?」
「まぁ、これは後の歴史で知るお話ですからこれ以上は・・・」
「そんな話聞かされたら気になるでしょう! じゃあ一つだけ聞かせて。リンクス共和国はどうなるの?」
「仕方ないですねぇ・・・。ちょっとだけですよ? 今より数年後に聖騎士が二人現れて神前審問を発動させ、教皇の悪事を暴いてしまいます。一人は現人神の盾、フラン様。もう一人は・・・。なんという名前だったかッ! 後に聖女になる・・・。えーっと、忘れまんしたッ!」
「珍しいわね、記憶力の良いビャクヤが忘れるなんて。でもリンクスが助かるならそれでいいわ」
「はい。最近記憶がなんだかあやふやなのですッ! 教皇は聖騎士とその仲間が倒したのではなく、ヒジリ様本人だったような・・・」
「大丈夫?」
「んんん、キスをしてくれたら治るかもッ!」
「キスだけでいいの?」
色気ある顔でリンネが見つめてくるので、ビャクヤは危うく飛び掛かりそうになったが、ここは他にも人がいる宿屋の一階。食堂兼酒場兼冒険者ギルド。何とか堪えた。
「ヌハッ! 騙されませんぞ! 我らはこれから出発するのですからッ! チョメチョメする時間なんてありませんぬッ!」
「ウフフ。で、取り敢えずどこを目指すの?」
「リンクス共和国に入って二番目の街、フサフです。かの街へは競歩で向かうので、もうポルロンドを出た方がいいですねッ!」
「そうねって、なんで競歩なのよ!」
ツッコミに「ヌハハ」と笑って応え、ビャクヤはリンネの手をしっかりと握って冒険者ギルドの扉を開いた。
ダイアモンドゴーレムの拳の一撃で、イエローがひしゃげた。それは圧倒的な力で人間に叩き潰された甲虫が如し。
「くそが、何で奴の攻撃を受けようと思ったんだ。うすのろの馬鹿が」
俺は初っ端から死人を出してしまった事に舌打ちをする。
「お前ら! 散開しろ! 絶対にゴーレムの攻撃を受けようとするな! 回避に集中しろ!」
といいつつも、俺はゴーレムの拳を刀で受けて往なしている。
「俺だからできるんだ、真似するなよ? お前らは雑魚なんだからよ」
往なしてから地面に転がり、石ころを拾うとダイアモンドゴーレム目掛けて投げつけて爆発させる。
小さな爆煙が晴れると・・・。残念な事にゴーレムの体に傷は無かった。
「かすり傷すらねぇな。傷をつける事ができるかもしれねぇという考えは甘かったか」
俺の思い付き計画その一が潰えた。爆発で傷がついたところをアダマントのノミで穿つという計画だ。まぁ期待してなかったがよ。
魔法の灯りが部屋中を照らす明るいこの部屋で、ゴーレムはダイアモンドの輝きを放って出鱈目に攻撃を繰り出し始めた。
暴れるゴーレムを見て「わしゃ止まると死ぬんじゃ~!」と勝手にアテレコして、俺に向かう攻撃を全て往なしまくる。
「この野郎、スタミナが無限だから休まずに動き回れるのか。長引けばこっちが不利だな」
俺を目掛けて絶え間なく拳を振り下ろすゴーレムの攻撃を回避しつつ、ひしゃげたイエローの遺体を神速居合斬りで鎧ごと縦に真っ二つにした。そのまま蘇生させても、潰れた鎧が体にめり込んでまた死んでしまうかもしれねぇからな。
「おらおら! こっちだ! ウスノロ!」
ゴーレムを挑発して、虹色の閃光がどうしているかを目の端で探る。
ウッドぺックは姿が見えねぇので隠遁スキルで姿を隠しているのは間違いない。よし。
ドンとブラックはゴーレムの攻撃範囲の外で、蘇生したイエローを安全な場所に引っ張れるような位置で待機している。よし。
アオも姿がみえねぇ。【透明化】で消えているな? よし。計画通り頼むぞ?
モモは・・・。何してんだ、あいつ! イエローの近くでションベン漏らして腰を抜かしてやがる。
「くそったれ! いや、小便垂れか?」
ゴーレムの目がモモに向くと厄介だぞ。死体が増えれば計画の進行が遅くなる。遅くなれば、それだけ俺のスタミナが減り、回避もままならなくなる。
「こっちを向け! 綺麗な石炭野郎!」
もう一度ゴーレムを挑発して、奴の意識を俺に固定させる。
すると丁度いいタイミングでレッドが走ってモモを抱きかかえると、ゴーレムのテリトリーから走り出た。
幾ら生死を共にする仲間同士でも、高いリスクを冒してまで仲間を救う事はまずない。それだけ、パーティってのはドライなのだ。でなければ容易に全滅してしまうからな。
しかし・・・。愛ってのは素晴らしいねぇ。ドン太郎様は見事モモ姫を助けた! クハハ!
「よっしゃ! 憂いが一つ消えた。詠唱は終わりそうか? アオ!」
「はい!」
アオがゴーレムの背後で【透明化】を解除して現れる。
「沈め! 【底なし沼】!」
ヒュー! 時間が掛かったな。
ゴーレムの足元が液状化する。ただしこの土魔法は底なし沼とは名ばかりで、しっかりと底がある。
が、ゴーレムにしては小さい(と言っても三メートルはある)ダイアモンドゴーレムには効果あった。
沼に沈むゴーレムは胸まで沈む。
「クハハ! ゴーレム自身に魔法が効かなくてもよ! お前の周りはそうでもねぇんだわ! 俺の計画大成功!」
魔法の効果が消えて底なし沼は元の床に戻ると、ゴーレムは床に埋まって身動きが取れなくなった。
「まさか、こんなやり方があるなんて・・・。いや、試した人はいると思いますが、キリマルのようにゴーレムの攻撃を長く引き付けられる人はいなかったんじゃないですかね。だから先輩冒険者達も死者を出しながら、苦闘の末にゴーレムの体を僅かに砕くのが、精いっぱいなんだったと思います」
「【底なし沼】の届く範囲は狭いからな。十分に近づかないと沼に落とせねぇ。ビビらずによく頑張ったじゃねぇか。アオ!」
レッドが嬉しそうにアオの肩を叩く後ろで、ブラックはまだゴーレムを警戒している。まぁいつも最悪を想定している奴だからな。だが今回は杞憂に終わるだろうよ。
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いつの間にか復活してまだ意識が戻らないままの、イエローの近くに転がる柄の曲がったグレートハンマーをレッドは持つと、埋まるゴーレムの頭にノミを突き立てるウッドペックのもとへと走り寄った。
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中ほどから直角に折れたグレートハンマーを器用に持って、レッドはノミ目掛けて小さく振りかぶった。
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「グロロロロ!!」
ダイアモンドゴーレムが床を崩して動き始めた。
ウッドペックとレッドは転げ落ちて背中を強打するも、直ぐに立ち上がってゴーレムから逃げた。ブラックも意識のないイエローを引っ張って、ゴーレムの攻撃範囲の外に逃げていく。
ゴーレムは自分が埋まっていた穴から這い出ると、全身を真っ赤に光らせて地団駄踏んだ。
「いっちょ前に怒ってんのか? ハ! にしても、ついてねぇな! 上手くいくと思ったのによ!」
もう手段はねぇ。破れかぶれだ。
どうせ望みがねぇならと、脇差を左手に持って俺は二刀流で戦う事にした。
「これでなんとかなるとは思えねぇが、最後ぐらい格好つけさせてもらうぜ! 二刀流の元祖宮本武蔵よ! 俺に力をくれ! なんつってな、ヒャッハーー!」
死ぬかもしれねぇのに、俺の背中が嬉しさでゾクゾクしている。強敵を前にすると嬉しくなるのは人修羅の性なのか? そういや以前も、かないっこねぇヒジリの首を刎ねようとしてたな、俺は。
「クハハ! よーし! やってやるぜ! 俺様を舐めるなよ! ダイアモンドゴーレム! いくぜぇ! 神風特攻!」
俺は体中のあらゆる場所に悪意と殺意を籠めて、負と闇のオーラを放ち、自分を鼓舞した。
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