殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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時間差次元断

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 あの、糞猫! いきなり麻痺の閃光をかましてきやがった。

 俺は咄嗟に髭の動きを見て小屋の陰に隠れたが、カナは反応できずに動けなくなった。

 カナは何とか動く目で、小屋の陰から顔を出す俺に視線で助けを求めている。めんどくせぇ。

 インビジブルクーガーの閃光の予備動作は、触手のような髭が上下に激しく動いた後に、先っぽが一瞬チカっと光り、それから本格的な閃光が発生する。

 そしてその光を浴びると麻痺するわけだが、筋肉が弛緩するような麻痺ではなく、石のように硬直するタイプだ。

 だからカナは玄関口で突っ立ったまま動かない。

 俺はインビジブルクーガーの唸り声が遠い事を確認して、小屋の陰から玄関へと近づいた。

「麻痺の閃光は連発できないようだな。こちらを警戒している間に、カナを小屋に・・・」

 しかし敵も甘くはなかった。カナを小屋に入れようとすると、すぐ後ろで唸り声が聞こえてくる。

「まぁそうだろうな。だが、俺も敵に簡単に背中を見せるほど間抜けじゃねぇぞ」

 即死効果のある前足の爪が俺を引き裂こうとしたが、その爪は当たる事がなかった。

「グォォォ」

 突然呻くインビジブルクーガーは傷を負った前足を引っ込めて、距離を取る。まぁ俺が自分の背後に、技を仕込んでいたからな。見事にヒット!

「ヒヒヒ。時間差次元断には驚いただろう?」

 新たに覚えた必殺技は、事前に斬った空間が時間差で裂ける技だ。その避けた空間に入ったものは、どんなに硬かろうが同じように裂けてしまう。

 背後の安全確保の為に使って正解だったわ。

「ある程度任意のタイミングで時間差攻撃をできるとはいえ、やはり難しいな。今回は上手くいったがよ。・・・さーて、次は俺が攻撃する番だぞ」

 敵の回避を計算に入れて、俺は攻撃範囲の広い技を使う。そう、無残一閃だ。広範囲の薙ぎ払い。後方に大きく下がられると意味のない技だが、左右や少し後ろに下がる程度なら十分に届く。

「無残一閃!」

「無残・・・えっ!」

 これは当たると確信して、俺は気分よく必殺技名を言ったので、アマリが驚いて声を詰まらせる。

 小屋の周囲の太い木を薙ぎ倒せるほどに成長した無残一閃の一振りは、間違いなくインビジブルクーガーにも当たっただろう。

「フハハ! わりぃな。アマリ。気分が良くてお前の仕事を奪ってしまったわ」

 だが調子に乗る俺とは対照的に、アマリの声は緊張を孕んでいた。

「キリマル! 気を付けて! 魔物がいない! 攻撃が当たってない!」

「馬鹿言え。余程のカウンターの名手でない限り、俺の攻撃は絶対当たる」

 玄関の前にある小さな階段の下で何かが動いた。

「グルルル!」

 チィ! 当たってないだと? そんなはずはねぇ! だが奴は確かにそこにいる。獣臭い体臭を俺は嗅ぎ取った。

 カナを蹴り飛ばして小屋に入れると外から玄関の扉を閉めて、今まさに噛みつこうとするピューマにカウンターの一振りをお見舞いする。

「ブォォ!」

「手応えあり!」

 何かを斬ったぞ。地面に落ちた透明な何かの形が徐々に浮き出てくる。

「髭だ! 触手髭を斬った!」

 イカの触腕のような髭が、気味悪くのたくっている。

 髭が二本揃ってないと姿を消せないのか、インビジブルクーガーは姿を現した。割と可愛い顔してるじゃねぇか。

「ヘヘヘ。これで麻痺の閃光は・・・」

 甘かった・・・。片方の髭だけでも麻痺の閃光が使えるんだな。

 油断をしていた俺は、モロに閃光を浴びてしまったのだ。

「ぎぎぎ」

 筋肉が強張っていく。と同時に全身を鈍い痛みが走る。軽くこむら返りしたような状態だ。

(くそが・・・。詰んだか?)

 クーガーは上目遣いで俺の様子を窺いながら、玄関前の階段の下をウロウロしている。

(用心深いな)

 獲物が本当に弱っているのかどうか、見極めているんだろうな。奴からしてみればこんな苦戦した獲物はいなかっただろうからよ。

 俺が少しでも動くと、奴は瞬時に少し後ろに下がる。なるほど、攻撃が当たらなかったのは、奴が短距離の瞬間移動ができたからか。

(俺はこんなところで死ぬのか? 過去の世界で死んだらどうなる? そもそも元いた時代で死んだらどうなっていたのだろう?)

 ようやく警戒を解いたのか、奴は階段を上がって唸りながら俺の目の前まで来た。意外とでけぇな。体高は一メートルくらいあるか?

(やるならさっさとやれ、糞が)

 まだまだ成長途中の俺には、このインビジブルクーガーは強敵だったのかもしれねぇ。相手の力を見誤ったのが敗因だ。ふん、やれそうな気がしたんだがよぉ。

 しかしクーガーは一撃必殺の即死攻撃をしてこない。執拗に俺の左右の手を嗅いでいる。

(なんだ?)

 夢中になって俺の左手を匂うクーガー相手に、何が何だかわからねぇって顔をしていると、右手で握っていたアマリが人間化して素早く俺の肩までよじ登ってきた。

「これを飲んで」

 そう言って俺の口にポーションの小瓶を突っ込む。

 口に流し込まれた薬を、なるべく咽ないように喉を大きく開いて飲み込む。顔や喉はあまり麻痺の影響を受けてねぇようだ。

 即効性のある薬なのか、どんどんと体の硬直が緩んでいった。こいつの薬には度々助けられてるな。

「助かったぜ、アマリ」

 アマリに礼を言っていると、匂いを嗅いでいたクーガーが、寝転んでクネクネと背中を地面に擦りつけ始めた。

「どうしたんだ? このピューマは」

「原因は解る。私たちがデザートにサルナシの実を食べたから」

「あの酸っぱい緑の実はサルナシだったのか。道理でインビジブルクーガーが酔っ払ったみたいになったわけだ。サルナシは確かマタタビの仲間だったな」

「こうやって見ると、大きな猫ちゃんみたいで可愛い」

 クーガーはまだクネクネしている。

 さっきまで俺を殺そうとしていたクーガーとは思えねぇな。

「よし、刀に戻れ。アマリ」

「え! 殺しちゃうの?」

「当たり前だろ。ほっといたらこいつは酔いから醒めて俺たちを襲ってくる」

「・・・。わかった」

 ゴスロリ服の端を少しいじいじと弄って、少し不満そうな顔をしたアマリは刀に戻った。

「アニメとかだとよ、森で会った魔物がいきなり懐いてきて仲間になり、マスコットキャラ的なものになったりするがよぉ。現実はそんなに甘くねぇ。俺ぁ、動物はみんな友達だとか言ってる奴をアホだと思ってんだわ。動物にも個性があってな、優しい奴もいりゃあ裏切る奴もいるのよ。こいつがどうだかは知らねぇけどな。というかどうでもいい話をしちまったわ、死ね!」

 俺は猫ちゃんのように可愛らしいインビジブルクーガの首を刎ねて、頭を掴むと森の中へ放り投げた。

 トサッっと地面に落ちると、魔物の頭は俺の爆発の手の能力で弾け飛んだ。

「多分、こうやりゃあ殺せるだろ。斬ってから生き返るまでの間の傷は、生き返っても残るからな」

 五分待ったが、インビジブルクーガーは蘇生しなかった。

「よし」

 腕時計から視線を外してカナを見ると、時間経過で麻痺が治っていた。

「凄い! キリマル! インビジブルクーガーを倒しのカナ!」

「ああ、デザートのサルナシの実のお陰だけどな。あれが無けりゃ死んでたわ。”俺様つえぇ“系の主人公みたいに苦労せずに楽に勝ちてぇぜ、全くよぉ」

「やった! インビジブルクーガーの毛皮は【透明化】の魔法の効果時間を延ばすから高く売れるカナ! 爪は闇魔法の触媒になるから、これまた高く売れるカナ!」

「肉は美味いのか?」

「食べた事ないカナ・・・。でも肉屋に売れば珍味扱いで、買い取ってくれるカナ」

「まぁいいか。分け前は俺が七でお前が三だ」

「そんなにくれるのカナ? 意外とキリマルは優しいカナ!」

 ありゃ? 俺が九くらいでもよかったか。

「はぁ。筋肉が硬直していたせいで体が怠いわ。もうさっさと寝ようぜ」

「私も眠たい」

 アマリが欠伸をした。こいつは夜にしっかりと寝るタイプだからな。エッチするのも朝か寝る前かだ。

「ベッドが一つしかないけどいいカナ? 大きいベッドだから大丈夫だとは思うけど」

「あぁ、構わねぇ。シャワーも浴びれるか?」

「勿論カナ」



 俺は寝る時は裸派なので、風呂から全裸のまま出ると寝室までやってきた。カナがベッドの真ん中に、アマリがその奥で寝ている。どっちも身長が150センチくらいしかねぇから姉妹のようにも見える。

「俺は端っこで寝るのか。朝になったら落っこちて、床とキスをしてそうな予感がするが・・・」

 寝息を立てるカナの横に静かに潜り込んだ。

 俺がシャワーを浴びている間に二人とも体を拭いたのか、体から血の匂いや体臭をあまり感じない。

 寝ている間に床に落ちて顔面を打ちたくないので、カナやアマリの方を向いて寝る事にした。

 カナは寝言で「キリマル強いカナ・・・。それに儲かったカナ・・・」と言って嬉しそうな顔をしていた。

(いや、今回はヤバかったけどよ・・・)



 どれくらい寝ただろうか?

 まだ夜は明けきっていない。何となく俺の前で誰かがゴソゴソと動いている。

 億劫で目を閉じたままだから確認はしてねぇが、恐らくアマリが欲情したのだと思う。寝る前にエッチしなかったからな。

 俺の勃起した疲れマラに、一生懸命尻を押し当てている。ほんとこいつはエロい奴だなぁ。まぁセックス好きだって言ってたしな。

 仕方ねぇな。

 俺は腰を突き出して、入れやすくしてやった。

「あんまり声だすなよ? カナにバレるぞ」

 アマリはビクリと震えて驚いた後、ずぶずぶと俺のイチモツを挿し込んでゆっくりと動き始めた。

 フッフッフ、と喘ぎ声を抑える声がする。

 なんかぎこちねぇな。いつものミミズ千本の名器っぽくねぇし。

 まぁいいか。疲れて俺の感覚も鈍ってんだろ。アマリもさっさとイッて寝ろよ。

 あ、やべぇ。感覚が鈍っている割に今すぐにでも出そうだ。

 俺は眠りに落ちながら、アマリの中にたっぷりと射精した。
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