55 / 232
第二章 シンデレラ宮殿編
第五十四話「絶望の連鎖(上)」
しおりを挟む
緊急任務:パンサーと名乗る怪盗を逮捕、シンデレラ宮殿の象徴「スタニッシュリング」を奪還
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ、錦野蒼乃、涼宮凪沙、桐谷正嗣、桐谷優羽汰、桐雨芽依
……失われた右腕の違和感しか感じられない。それ以外の痛覚は全て奪われた。黒いコートの右側が赤く滲む。滲み出た俺の血が足跡を残すかのようにここまで歩いた道を示す。
「あっ……くぅっ……!!」
前に正義との死闘で斬られた時とは違う、無慈悲に奪われたような長く、辛い痛みが俺を襲う。
……あれは一体何だったんだ。まさかサーシェスがここに俺が来ることを予測して攻撃したのか!? ……いや、そもそもあの状態から短時間で復帰出来るとは思えない。
だが、あいつくらいしかあれほどの攻撃が出来るわけがない。仮にこれがパンサーだったら驚きものだ。
どこからか何度も聞き覚えのある高笑いが1階から微かに聞こえてくる。柵に身を乗り出して見てみると、あの竜巻剣を正義達が懸命に抑えているのが見えた。
「お前ら……」
凍てついた床。全てを喰い壊す乖離剣。それを止める仲間達。そして、その剣を操るもう一人のアースラ。
「は……?」
理解が出来ない。さっき俺が出くわしたアースラとは別人なのだろうか。
「どうなって……やがる……!」
しかもアースラは今日俺と遭遇してから一度も『裁き』を唱えていなければ、見も知りもしない大技を放てるし……これこそ本当に『魔女』に相応しいのではと少し考えた。水星の時よりもずっと。
「あれは……おい、黒坊だ!」
「待ってください、大蛇さん……右腕が!!」
俺の姿を見てすぐに3人は俺の元へと駆けつける。1階にはアースラと対峙しているサーシェスとあの不良軍団の姿が見えた。
「あいつら……」
あの不良軍団も……何で……ここに………
――痛みが消えていく。視界も遠くなる。瞼の闇が俺の世界を閉ざす。
「大蛇さん、しっかりしてください!」
あの声は……蒼乃さんか……? エレイナか……? それとも……
「おい、エレイナちゃんいねぇのか! 早く回復しねぇと黒坊が死んじまうぞ!!」
「とは言われましてもいないものはいないです!」
「蒼乃さん、携帯で連絡取れないのですか!?」
「何度もかけてますが反応がありません!」
「くそっ……早くしねぇと!!」
……そういえば、右腕を斬られた瞬間に変な感触がしたんだよな。正義の時とは違って、右半身が斬り落とされたような感触が……
――って、いつの間にか右足の感覚が消えているな。やはりあの竜巻には何か凄まじいものを隠している。かろうじて生きているが、次喰らったら終わりだ。
……まぁ、もう死にそうなのが現状なんだがな。もちろん俺だってこんな所で死にたくない。アカネがくれたチャンスを無駄にしたくない。でもその意志をこの身体が拒む。
「大蛇さん、しっかりしてください! 大蛇さん!!」
死なないで、大蛇さん――
……あぁ、また聞いたことのある声が聞こえる。でも何て言ってるのか……さっぱり分からないな…………
視界は闇に包まれた。肉体から魂が抜ける感じがした。三度目の死を噛みしめる事になるのかと心の中で舌打ちをする。
「あっははは! あははははははは!!!!」
でも、あの魔女の嘲笑う声は鮮明に聞こえてくる――
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ、錦野蒼乃、涼宮凪沙、桐谷正嗣、桐谷優羽汰、桐雨芽依
……失われた右腕の違和感しか感じられない。それ以外の痛覚は全て奪われた。黒いコートの右側が赤く滲む。滲み出た俺の血が足跡を残すかのようにここまで歩いた道を示す。
「あっ……くぅっ……!!」
前に正義との死闘で斬られた時とは違う、無慈悲に奪われたような長く、辛い痛みが俺を襲う。
……あれは一体何だったんだ。まさかサーシェスがここに俺が来ることを予測して攻撃したのか!? ……いや、そもそもあの状態から短時間で復帰出来るとは思えない。
だが、あいつくらいしかあれほどの攻撃が出来るわけがない。仮にこれがパンサーだったら驚きものだ。
どこからか何度も聞き覚えのある高笑いが1階から微かに聞こえてくる。柵に身を乗り出して見てみると、あの竜巻剣を正義達が懸命に抑えているのが見えた。
「お前ら……」
凍てついた床。全てを喰い壊す乖離剣。それを止める仲間達。そして、その剣を操るもう一人のアースラ。
「は……?」
理解が出来ない。さっき俺が出くわしたアースラとは別人なのだろうか。
「どうなって……やがる……!」
しかもアースラは今日俺と遭遇してから一度も『裁き』を唱えていなければ、見も知りもしない大技を放てるし……これこそ本当に『魔女』に相応しいのではと少し考えた。水星の時よりもずっと。
「あれは……おい、黒坊だ!」
「待ってください、大蛇さん……右腕が!!」
俺の姿を見てすぐに3人は俺の元へと駆けつける。1階にはアースラと対峙しているサーシェスとあの不良軍団の姿が見えた。
「あいつら……」
あの不良軍団も……何で……ここに………
――痛みが消えていく。視界も遠くなる。瞼の闇が俺の世界を閉ざす。
「大蛇さん、しっかりしてください!」
あの声は……蒼乃さんか……? エレイナか……? それとも……
「おい、エレイナちゃんいねぇのか! 早く回復しねぇと黒坊が死んじまうぞ!!」
「とは言われましてもいないものはいないです!」
「蒼乃さん、携帯で連絡取れないのですか!?」
「何度もかけてますが反応がありません!」
「くそっ……早くしねぇと!!」
……そういえば、右腕を斬られた瞬間に変な感触がしたんだよな。正義の時とは違って、右半身が斬り落とされたような感触が……
――って、いつの間にか右足の感覚が消えているな。やはりあの竜巻には何か凄まじいものを隠している。かろうじて生きているが、次喰らったら終わりだ。
……まぁ、もう死にそうなのが現状なんだがな。もちろん俺だってこんな所で死にたくない。アカネがくれたチャンスを無駄にしたくない。でもその意志をこの身体が拒む。
「大蛇さん、しっかりしてください! 大蛇さん!!」
死なないで、大蛇さん――
……あぁ、また聞いたことのある声が聞こえる。でも何て言ってるのか……さっぱり分からないな…………
視界は闇に包まれた。肉体から魂が抜ける感じがした。三度目の死を噛みしめる事になるのかと心の中で舌打ちをする。
「あっははは! あははははははは!!!!」
でも、あの魔女の嘲笑う声は鮮明に聞こえてくる――
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
隠しダンジョン巡り 〜神器集めて最強を目指す〜
碧海 輝
ファンタジー
空中に点在する島々で人と魔物が生活している異世界の住人のテオ。
彼は「能無し」と呼ばれていた。
全人口の5%であり、極端に低いステータスの「非戦闘職」。
テオはその一人だった。
しかしそんなテオのスキルが意外な強さを発揮する。
《ダンジョンキー》
テオだけが持つそのスキルの能力は、条件を達成することで、各島でテオだけが入れる隠しダンジョンの鍵を入手できるというもの。
そして、そのダンジョンの最深部には神器と呼ばれる、ステータスを上げる武器が隠されているのだった。
最弱の少年が神器を求めて、各島の隠しダンジョンを巡り、徐々に成長していく物語。
ドリンクバーさえあれば、私たちは無限に語れるのです。
藍沢咲良
恋愛
同じ中学校だった澄麗、英、碧、梨愛はあることがきっかけで再会し、定期的に集まって近況報告をしている。
集まるときには常にドリンクバーがある。飲み物とつまむ物さえあれば、私達は無限に語り合える。
器用に見えて器用じゃない、仕事や恋愛に人付き合いに苦労する私達。
転んでも擦りむいても前を向いて歩けるのは、この時間があるから。
〜main cast〜
・如月 澄麗(Kisaragi Sumire) 表紙右から二番目 age.26
・山吹 英(Yamabuki Hana) 表紙左から二番目 age.26
・葉月 碧(Haduki Midori) 表紙一番右 age.26
・早乙女 梨愛(Saotome Ria) 表紙一番左 age.26
※作中の地名、団体名は架空のものです。
※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載しています。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~
月見酒
ファンタジー
俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。
そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。
しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。
「ここはどこだよ!」
夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。
あげくにステータスを見ると魔力は皆無。
仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。
「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」
それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?
それから五年後。
どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。
魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!
見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる!
「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」
================================
月見酒です。
正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる