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嫁入り支度 92
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思い出して泣きそうな気持ちになって、ここで泣くなんて出来なくて我慢する。
「エリーゼ……」
お母様の声にハッ!とする。私はエリーゼで、私のお母様は目の前にいるお母様で……
「ごめんなさい……お母様。少しだけ思い出してしまって……」
お母様は少しだけ眉根を寄せて、小さく首を振って困ったように微笑んだ。
「良いのよ。でも、外では気をつけなさい」
「はい」
そう……誰の目に映っても私は侯爵令嬢として振る舞わなければならない。それが私の立場であり役目だもの……恥ずかしい真似は出来ない。
こんな時、侍女達は口を挟んだりはしてこない。それが今の私にはありがたい。
「お待たせ致しました!当店自慢のメレンゲのジャム添えです!紅茶は領都一番人気の桃の香りの紅茶です!」
先ほどの彼女が運んで来たメレンゲ菓子は白い普通のメレンゲに黄色い桃のジャムが添えてあって、メレンゲにジャムをつけて食べるようになっている。
紅茶も私が好きで良く飲んでる桃の香りの紅茶で……って領都で一番人気って言ってたわね。
そうか……一番人気なのね。
どちらも桃……黄桃は我が領の特産品でもある。けど、まだ桃の季節ではないし確か王都民が我が領に到着してのは晩秋で……
「あら、とても甘いわ」
お母様の言葉に黄桃ジャムを凝視する。ひょっとしたら干した黄桃を戻してジャムにしたのかも知れない……そう思って白いメレンゲに黄桃ジャムを少し載せて齧る。
桃の香りは薄いけれど、確かに味は桃でやっぱり味は桃の味がするジャムでした。
うん……勿体ないな……
「エリーゼ?」
つい考え込んでしまったわ……
「お母様、どうかなさいましたか?」
「難しい顔をしてたから、どうしたのかと思って」
あちゃあ……しまった。お母様や侍女達いたのに失態したわ。
「いえ、とれたての完熟桃で作ったジャムならもっと美味しかったのだろうに……と思って」
とれたてなら香りも飛んでないだろうし……白桃が出てきたら白桃ジャムも作って貰って食べ比べとかも良いわねぇ……
「うふふ……」
「あら、何か思い付いたの?」
「はい、エリノユで育ててる白桃が実ったら白桃ジャムを作って食べ比べとかしたら楽しいかと思って」
「白桃……?先日食べた白い桃の事かしら……」
ん?白桃のシロップ漬けの事かしら?
「ええ、そうです……「素晴らしいわっ!」……はい……」
お母様にぶった切られました。お母様……目が真剣過ぎて怖いです。
「エリーゼ……」
お母様の声にハッ!とする。私はエリーゼで、私のお母様は目の前にいるお母様で……
「ごめんなさい……お母様。少しだけ思い出してしまって……」
お母様は少しだけ眉根を寄せて、小さく首を振って困ったように微笑んだ。
「良いのよ。でも、外では気をつけなさい」
「はい」
そう……誰の目に映っても私は侯爵令嬢として振る舞わなければならない。それが私の立場であり役目だもの……恥ずかしい真似は出来ない。
こんな時、侍女達は口を挟んだりはしてこない。それが今の私にはありがたい。
「お待たせ致しました!当店自慢のメレンゲのジャム添えです!紅茶は領都一番人気の桃の香りの紅茶です!」
先ほどの彼女が運んで来たメレンゲ菓子は白い普通のメレンゲに黄色い桃のジャムが添えてあって、メレンゲにジャムをつけて食べるようになっている。
紅茶も私が好きで良く飲んでる桃の香りの紅茶で……って領都で一番人気って言ってたわね。
そうか……一番人気なのね。
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「あら、とても甘いわ」
お母様の言葉に黄桃ジャムを凝視する。ひょっとしたら干した黄桃を戻してジャムにしたのかも知れない……そう思って白いメレンゲに黄桃ジャムを少し載せて齧る。
桃の香りは薄いけれど、確かに味は桃でやっぱり味は桃の味がするジャムでした。
うん……勿体ないな……
「エリーゼ?」
つい考え込んでしまったわ……
「お母様、どうかなさいましたか?」
「難しい顔をしてたから、どうしたのかと思って」
あちゃあ……しまった。お母様や侍女達いたのに失態したわ。
「いえ、とれたての完熟桃で作ったジャムならもっと美味しかったのだろうに……と思って」
とれたてなら香りも飛んでないだろうし……白桃が出てきたら白桃ジャムも作って貰って食べ比べとかも良いわねぇ……
「うふふ……」
「あら、何か思い付いたの?」
「はい、エリノユで育ててる白桃が実ったら白桃ジャムを作って食べ比べとかしたら楽しいかと思って」
「白桃……?先日食べた白い桃の事かしら……」
ん?白桃のシロップ漬けの事かしら?
「ええ、そうです……「素晴らしいわっ!」……はい……」
お母様にぶった切られました。お母様……目が真剣過ぎて怖いです。
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