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嫁入り支度 36

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テーブルの上に残ってるのは全て空瓶。

「やられたな」

「そうね……でも、まだまだあるし……」

ハフ……と息を吐いて天井を見上げる。出し惜しみしてた訳じゃないけど……

「エリーゼ、済まないな。出来れば領地で作られたワインを飲むべきなのだが、どうにも強く美味い酒を一度味わってしまうとな……」

お父様が申し訳なさそうに言ってきて、あら?酔ってないのかしら?って思ったけど顔がほんのり染まってるから酔ってるのは確定ですね。

「いえ。いずれはワインから蒸留酒を造れば良くなる事だとおもいますので」

「そうか」

お父様の目が優しく細められる。

「義父上の気持ちが分かる」

何かしら?

「フェリシアと婚姻する前に一緒に飲んだ時に言われた。娘が輿入れすると言うのはどうにも辛いものだ……娘の幼い時の苦労も笑顔も遠くに行くのだと思うと胸が痛んで仕方ない……あの時は分からなかった。娘が出来るとは思ってなかった。うちは男が殆どだったからな。でも、今なら良く分かるよ……遠くにやる訳じゃないが、どうにもな……」

え……本来なら私、王都で婚姻式行う予定でしたのよ。しかも秋に。

「あー……まあ、前の時はいざとなったらあいつをぶん殴ってでも王宮に行けば良いと思ってたし子供が生まれたら……うん、まぁ……その、だな……」

ぶん殴ってでも面会に来る?お母様ならその気になれば毎日だって会えたんじゃないかと思えるけど……お父様……それに最後の方はゴニョゴニョと言葉になってなかったわよ。

「ハイル。それはもう良いでしょう。今のエリーゼには関係の無い事だわ」

「そうだな」

私が知らなくて良い話しなら無理して聞きません。薮から棒になったら嫌なんで!

「それよりもエリーゼ。これで時間が少しは出来たかしら?」

「えっ?ええ……おそらく……」

んー……新館の殆どの事は済んだと思うし、細かい事は直近で良いと思うのよね。

「じゃあ、今度お母様と一緒にエルフの所に行きましょうね。それに領都にも行きたいわよね」

お母様がウキウキしてます。可愛いです。
お父様もニコニコしてます。

「勿論二人っきりでよ!」

強めに言われました。でも母子でショッピングとかしようってお誘いですよね!

「はい!お母様と二人きりのお出かけ楽しみです」

お出かけで間違ってないわよね?家からのお出かけだもの。
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