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新しい日々 86

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「……何故……かしら?」

「簡単よ。ドレスを作る為に必要な布地の問題ね」

布地の問題?春のドレスの布地の主な産地って……うちと帝国だ!高級布地ってのは軽くて薄い事が絶対条件!それにごく最近お目見えした蜘蛛の糸で出来た布地と天蚕の糸で出来た布地は最高級品と言っても良い布地!製法も他領には流出してない。
王都の店に布地が足りないって事?でも、そんな事……

「王都にだって仕立て屋だって……」

「ええ。でもね、帝国の商隊も来なくなって新しい布地を入手出来ない以上各領地……特に高級布地を生産している領主たる貴族に連絡をするのだけど、我が領地にそのような連絡は一つも入ってないの。遠慮してるのか、支払いの事でお金が捻出出来ないか……確かにうちの高級布地は本当に高価だものね。王都民からの税収が見込めない以上難しいのだと思うわ」

そうか……タダじゃない以上、お金が無いと布地を頼む事も出来ないし……って税収の見込みって!そんなに王都民ヤバいの?

「王都民はかなり減ったらしいから。大変でしょうね」

最悪だ……王都、大変だ……でも、可能な限りうちに来て貰える様にお願いしたし……あー……でも、だから税収も減る訳で。でも手を拱いていたら死んじゃう訳で……あーー!面倒くさい!一々ぃ!

「エリーゼ、顔がおかしくなってるわよ」

「良いです!おかしくても!王家も王都も私が考える事じゃないですから!でも罪無き王都民を掻っ攫ってうちの領民にしたって罪にはならないでしょっ!新しい開拓地で働いて貰うんですから!」

「その通りだ!これからも発展し続ける我が領地には人手が足りぬ!王都民を蔑ろにする以上、我等が引き取って悪い事はあるまい!良く言ったエリーゼ、それでこそ俺の可愛く賢い娘だ!」

お父様……いらん事言わない方が……お母様の目つきがちょっと険しいですよ。

「ハインリッヒ、体力を失ってる状態で無理矢理連れて来ても良くない事は分かってるでしょう。だからこそ王都の邸に来て貰って、体力をつけてからこちらに来て貰うと……そう話したでしょうに」

「う……うむ、そうだったな。必要な物資ももう少し送っておくか?」

「ええ。ポーションやお腹の膨れる物も……」

お父様がもお母様も真剣です。でも、民草の事を考えてくれる領主様はありがたい。心配事が少ないだけで、救われる気がするもの。

「何かホッとしたら眠くなってきちゃった……」

うん。安心すると眠たくなるよね?
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