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大晦日 45

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愛する家族が欠ける悲しさや苦しさは前世で嫌と言うほど味わった。
前世の私も今世の私も愛され、大切にされてきた。
寂しい事も厳しい事もあったけど、それでも時間が経ってそれが愛情故の事もあったのだと思い至る事もあった。
前世の……小さい頃、分からなかった優しさも大人になって理解した事の多さ……
前世を思い出してから、その思い出が今世の私に大きな影響を与えていた事が記憶にある。
甘くない現実に転がってる甘い言葉や優しくない甘いだけの態度。
私は前世でも今世でも愛され、決して甘くない優しい家族に育てられている。
お兄様達は優しいだけじゃなくて、甘やかしてくれるけど……いや、お父様もお母様も甘やかしてくれてるけど。
でも甘いだけではない事もあるけど、でも厳しい事も沢山あった。
涙が出そうになってグラスを収納して、キャスバルお兄様にギュッと抱き付き胸に顔を埋める。

「どうした?」

フルフルと小さく首を振って何でも無いアピールをすると、キャスバルお兄様の大きな……貴公子の見た目に反したゴツゴツとした固い皮膚の手が優しく撫でてくれる。
一人っ子だった前世はこんな風に甘える事は出来なかった。
誰かに甘え縋って頼れるって、どれだけ幸せなんだろう?いつだって掛け値無しに愛情を注いでくれるキャスバルお兄様の存在の大きさに涙が溢れてくる。
不意に抱き締め直され、より密着したけど。その温かさと力強さに安心する。

「にゃっ!」

「にゃにゃっ!」

ギュッ!ギュッ!と小さくて温かい体が引っ付いて来た。
タマとトラジだ。
悲しい訳じゃないのに、私が泣いてるのが分かったのかな?

キューン……(ご主人様……)

膝の上にちょっとだけ重みが掛かる。ユキがくっついて、頭を乗っけてきた。
それだけじゃない。
マップに映るマーカーは勢い良く私へと寄ってくる。
お父様の膝の上にいたリコも……

「クッ……」

ん?キャスバルお兄様が何か……

ほんのちょっとだけお兄様の胸から顔をずらして見れば、うちのカワイコちゃん達がグイグイ押してました。
タマとトラジは私に引っ付いてるけど、それ以外はキャスバルお兄様に阻まれてるもんだから……
何だか、おかしくて……面映ゆくてクスリと笑みが溢れる。

「落ち着いたか?」

「ん……」

「なら良い」

ホゥ……と大きく息を吐いて瞼を閉じる。

「キャスバルお兄様、ありがと……」

小さく呟くと優しくゆっくりと撫でられ、その優しさに嬉しくて幸せになる。
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