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拓真と真由子の娘・百合子は田舎の祖父母の家でゆっくりと長く揺れる地震に目が覚めた。

「地震?大きくないけど、長い……やだなぁ……」

のそりとベッドから起きて、カーテンを開けてぶるりと震える体に慌てて勉強机とセットになってる椅子の背もたれからカーディガンを取って羽織る。
机に置いてある小さな目覚まし時計を見て、いつもより少し早い時間に顔を顰める。

「しょうがないなぁ……いつもより早いけど、起きるかぁ。」

起き出してパタパタとスリッパの音を立てて扉一枚で繋がってる母屋へと早足で向かう。古い木造建築はあちこちから隙間風が入ってきて寒いのだ。
母屋の広い居間の掘り炬燵には既に祖父母が揃って入って、テレビを見ていた。

「お早う、お祖父ちゃんお祖母ちゃん。速報出た?」

「お早う、百合ちゃん。まだ出ないのよ。心配ねぇ。」

「お早う、百合子。まだ早いだろう。」

穏やかな祖父母はいつもより早くに起きてきた百合子に気遣わしげに挨拶を返す。三人共、いつもと違う地震に不安が隠せなかった。ずっと朝早くからやってるニュース番組に速報も出て来なかった。

「百合ちゃん、支度しちゃってからいらっしゃい。朝ご飯の用意しておくから、ね。」

祖母の優しい言葉に百合子は頷くと、自分の部屋へと戻る。

「心配だわ……何だか嫌な感じがするの。」

「一緒だ。どうにも胸のあたりがざわついて仕方ない。」

祖父母はテレビ画面を見つめながら言葉を交わす。だが、祖母は朝食の支度へと台所へと向かい。祖父は新聞を取りに寒々しい玄関へと向かう為に立ち上がった。

三人が揃い、居間で朝食(ダイニングは寒すぎて食事を取るには不適切なので温かい居間で食事を取っている)をテレビ画面を眺めながらとっていた。

「大阪……か……大っきいね。お父さんとお母さん、大丈夫だったのかな?」

「神戸は出てないな……おそらく大丈夫だろう。」

「心配するから連絡してくれれば良いのに、拓真は本当呑気なんだから。」

「あいつはそう言う奴だ。後から真由子さんに怒られて電話してくるさ。」

「そうね。真由子さんがいるから安心ね。あら?百合ちゃん、そろそろ時間よ。」

「あ!はぁい!ご馳走様でした!」

バタバタと慌てて中学校へと行くために食器を下げ、居間の片隅に置かれたカバンとバックを持って玄関へと向かう。大きな玄関は自転車を入れてもまだまだ余裕で、玄関の土間に置いた自転車にカバンとバックを括り付けるとガラガラと引き戸の玄関扉を開けて自転車と一緒に出て行く。

「では、行ってきます!」

百合子は元気よく声を出して、祖父母の家から出て学校へと向かった。
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