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第79話 人の口に戸は立てられない !
しおりを挟む赤穂浪士たちの事件は秘密裏に処理されたはずだったのだが、人の口に戸は立てられないのは何時の時代も一緒なのか、直ぐに瓦版などで人々の知ることに成った。
筆頭家老 意地川塁衛門に家族を人質にされ脅されたとは云え、天下の逆賊 浅野内匠頭の敵討ちとして吉良上野介を襲おうとした赤穂浪士に批判が集まった。
本当に敵討ちをするなら、本郷寺に居た浅野内匠頭を襲撃した織田信繁にするべき !
なのに、吉良上野介を襲うことにしたのは私兵の少ない吉良上野介の方が組しやすいと判断したからだ !
特に左近と徳松は本来の歴史と違い、駿府の民から慕われていた。
そして、人気に拍車をかけたのが『不忠臣蔵』の芝居が始まったからだった。
今孔明と誤解された左近の人気はうなぎ登り。
また、本来なら切腹どころか斬首されてもおかしくない赤穂浪士たちを許して、北条家が治めていた小田原藩の新しい藩主 織田信繁に預けることに成ったことに、慈悲深い名将軍と称えられることに成った。
もちろん、誤解を解くようなことをしない左近と徳松。
別に自分たちが騙している訳ではないからだ。
周りが勝手に勘違いしているだけで、自分たちは悪くない !
ただ、良いこと尽くめではなかった……
今川義光(徳川家光)をはじめ、松平伊豆守信綱や柳生但馬守宗矩は、二人の危うさを感じて猛勉強をさせていた。
一方の弥太郎こと柳沢吉保も真剣に徳松や左近を支える為に猛勉強をしている。
本来の歴史では、吉良上野介を人身御供にした陰険な老中だった男も、此方の世界では左近に毒され……影響を受けて尊敬の念を持っていた。
そして赤穂藩……浅野大学は責任を取り隠居させられ改易に成り、代わりに北条氏が減封されて新しい藩主に成った。
旧赤穂藩士は北条氏に仕えることに成るが、後に古くから北条氏に仕える上士と浅野氏に仕えていた郷士に別れて反目し合う時代が続くことに成った。
左近も時代の揺り戻しを恐れて真面目に勉強をしているせいか、周りの十兵衛たちもますます誤解が大きく成っていくスパイラルに入っていた。
時々、宗矩たちの目を盗み、駿府の城下町を歩く左近と徳松。
二人が黒猫と白猫を飼っていることで、駿府っ子たちをはじめ 日ノ本中で空前の猫ブームが起こり、猫を飼うことが流行るように。
『不忠臣蔵』とともに『食いしんぼ将軍』がテレビドラマで大人気に成るとは、今の徳松や左近は知ることは無いだろう。
◇◇◇◇◇
【左近side】
あれから数十年後、徳松さんが隠居して好き勝手なことをしているにも関わらず、わたしは大目付 兼 大老の二足のわらじで忙しい思いをしていた。
八代将軍 今川吉宗をサポートしているのだけど、老中の田沼意次と同じく老中の松平定信の仲が悪く苦労している。
性格も政策も正反対の二人は何かにつけて互いを非難していた !
ああ~、もう楽隠居させてよ !
◆◆◆
「と云う夢を見たのよ、徳松さん !
自分だけ、わたしを出し抜いて隠居するのは無しだからね !」
わたしの心の叫びにあきれ果てている徳松さん。
「寝言は寝ている時だけにしてくれ、左近 頼むから !」
素直じゃ無い徳松さんの顔を見ながら、無事に破滅フラグを乗り切ったことを実感していた。
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