幸せの青い鳥はOn the run

鳴宮鶉子

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囚われた私を助け出して

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「……お願い、媚薬だけは使わないで」

仕事部屋でパソコンのキーボードをカタカタと叩き、与えられたサイト開発の基本設計を組んでたら、ドアが開き、巧が入ってきて、私の腕を掴み、隣の寝室に連れていく。

ゲーム関連事業を縮小させるといってたのに、自社の小説投稿サイトの人気ファンタジー小説をゲームアプリ化させる事にした巧は、アニメーション製作会社に協力の依頼をかけるも断られイライラしてた。

「モバゲーは今はブルーバードエージェントが独占してる。チビモンも猛獣の森も以前はうちが出してたのにブルーバードエージェントに持ってかれた」

そんな事を私に言われても困る。
寝室のベッドに押し倒され臀部に乗られ足で手を固定されてしまったから逃げる事ができない。
巧がスラックスのポケットから媚薬を取り出し、必死に拒絶する。

この薬を飲まされたら、2時間、のたれ苦しむ事になる。

「……お願い。媚薬無しでもするから。だから、許して。それを使われたら2時間以上仕事ができなくなる」

いくつかのサイトをリニューアルさせる事になり、その概要設計・要件定義・基本設計をすべて任され、私はひたすら仕事に打ち込んでた。
無茶振りな納期なのにクオリティーを求められ、できないとは言えないからひたすらパソコンのキーボードを叩いてる。
巧から指示された要求定義を実現するには時間が足りない。

「薬無しで俺に奉仕するか!!なら、口で大きくしろ」

媚薬は投与されずにすんだ。
巧は私を犯そうとしてる癖に、スラックスの股間は平常で、上半身を起こし、馬乗りになってる巧のスラックスのファスナーからふにゃふにゃな男を取り出すと、口に含んでしゃぶって大きくする。

ベビードールを着用してはいても、すぐに雄竿を埋め込めるよう、ショーツは履くことは許されてない。

大きくなった雄を、バックの大勢で全く濡れてない秘園に挿入され、痛みに顔をしかめる。

媚薬で麻痺してたから気づかなかったけれど、かなり小さくて短い。
ものの5分もかからずにフィニッシュし、寝室を出て家からも出て行った。

巧は小さい男だ。
社長の力量がないから経営が傾き、協力会社からも仕事を切られる。

シャワーを浴びて身体を潔めてから仕事部屋に戻り、仕事の続きをする。

リニューアルやリリース時に不具合を出す事は多少は仕方がない事。
その後のアフターフォローが悪いから、ユーザーが逃げる。
開発エンジニアに対しても傲慢な態度をとって頭ごなしに叱るから、熟すだけの仕事になり、やりがいも感じなくなりクオリティーが上がらすわ傑作を生み出す事ができなくなってる。

父が起業し、一代で大企業まで育て上げた会社も、もう終わりな気がした。


こんな生活を永遠と続けないといけない辛さに生きている意味が見出せなくなる。

「奏音、産婦人科医院に行くぞ。着替えろ!!」

連れ戻されてから2ヶ月間生理こなくて検査したら陰性。ストレスで排卵がストップしてしまった。
足枷を外され、久しぶりにワンピースを着て外に出る。
逃げ出さないよう巧に手を繋がれ、黒のクラウンに乗り込むと、世田谷にある宮坂産婦人科医院に連れて行かれた。

「……不妊症はデリケートな事だから、ご主人、少し退出して頂けますか?」

名前を呼ばれて診察室に入ると若い女医さんがいた。
私の追い込まれ精神的にまいってるのを見抜き、巧を診察室から追い出し、私の両手にそっと手を当てて小声で話し出した。

「……可哀想に、DVされてるのね。時々いるのよ。なかなか子供ができないからって奥さんを罵倒し追い込む最低男。男の方が種無しってオチが多いからざまあーなんだけど、そういう男とは離婚して離れた方がいい。診断書書いたげる。後、警察や配偶者暴力相談支援センターに相談とDV証明書の発行だけど、それは病院の方から手続きをするわ。ちょっと身体を診察するわね」

診察台に横になり、全身を隈なく診て貰う。産婦人科だからホルモン値を計測する血液検査と経膣エコーも受けた。

「……排卵は止まってるわね。ストレスによるものだわ。急激に痩せた事によるストップの可能性もある。貧血が酷いから鉄剤の薬とVitamin mineralのサプリメントを2週間分処方するわ。それと、足首のこの傷は……足枷?身体に傷がついてないからこれぐらいだとDVの証拠にはならないわ。小型カメラ盗聴器渡しておくから、ベッドが映る位置にセットして、ご主人の卑劣な行為を録画してきて。この後、ご主人に排卵誘発の治療と称して2週間後に通院するよう上手く誘導するから、その時にDVの証拠として持ってきて」

宮坂愛莉先生はDV被害を受けてる女性を守る活動をされていて、巧から逃げ出すためのサポートをしてくれた。

宮坂先生から排卵誘発治療とタイミング法で不妊治療をすると説明を受けた巧は、まんまと騙され、2週間後に診察の予約を入れた。

DV被害の証拠のためと、宮坂先生からお借りした小型カメラ盗聴器を寝室にセットする。
無理矢理媚薬を飲まされ、媚薬クリームを塗られ、淫乱嬢になってしまう自分を録画し、警察に証拠として提出するのはいやだけど、これで巧と離婚できるならと、証拠動画を撮り溜めた。

2週間後に宮坂先生に小型カメラ盗聴器をお返しした。
小型カメラ盗聴器の中身をみた宮坂先生はすぐに警察に掛け合ってくれて、3日後に私は監禁されてたマンションから救い出された。

警察にどこで生活するかと聞かれ、困る。
シェルターに入居が1番安全だけど、スタテクの社長夫人だからマスコミが嗅ぎ付いてスキャンダルとして報道されてしまう危険性がある。
逆上した巧が何かしてくるかもしれないから1人暮らしは怖い。

離婚裁判で私が不倫をしていたという事になるから不利になるけど、頼翔のマンションに身を寄せる事にした。

警察から頼翔くんに連絡を入れて貰うと、商談中なのにすぐに私を港区警察署に迎えにきてくれた。
私の身元引き受け人として保護役を引き受けてくれた。

弁護士は頼翔くんがもう雇ってくれていて、離婚裁判を起こす準備を進めてくれてた。
女性の弁護士を雇ってくれてたから、DVの証拠としてあの小型カメラ盗聴器の動画を見て貰った。
かなり同情され、結婚に関しても脅されてさせられたから無効だと最初から結婚が無かった事にしようと動いてくれる事になった。

第747条の詐欺又は強迫による婚姻の取消しで訴訟を起こしてくれて、5年前した結婚だけど取り消しにできた。

婚姻の取り消しをした事で巧は社長の椅子から転落し、緊急株式総会が開かれ、スタテンの業績悪化の責任取らせる形で会社からも追い出される事が決まった。

媚薬を使って強姦をしてた事は伏せ、結婚に同意しない私を脅して婚姻届にサインをさせ、長期に渡り監禁していた事を公にした。

巧はスタテンで勤めた間に、違法なほどの報酬を得ていた。
詳細を調べてみると給料の金額が通常の3倍貰ってただけでなく、私の両親が貯めていたお金を使い込んでいたのがわかり、そのお金を取り替えすために弁護団を結成して訴訟準備をしてる。

父から巧は直接システム開発に関しての知識と技術を教えられたからかなり高度な事を成す事ができる。
スタテクをクビになると巧は逃げるように渡米し、そこでゲーム開発アプリ会社を起業した。
その地で根を生やすようで、2度と日本には戻ってこず、起こした会社もすぐに経営破綻して多額の借金を抱えて苦しめばいいのにと頼翔くんがディスってた。

婚姻の取り消しの判決が出てすぐに、私は頼翔くんと籍を入れて夫婦になった。

そして、現在、ブルーバードテクノロジーとスタテクを合併吸収させ、頼翔くんとスタテクの経営の立て直しを行ってる。






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