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イケメン社長に歩み寄り

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「……やっぱり来たわ。樹を呼ぼうか?」

津田将生が訪ねてきた日から3日後、頼翔くんがきた。
姉が義兄さんにLINEメッセージを送る。
昼下がりの時間に姉の家に訪れた頼翔くんは、少し窶《やつ》れてた。

「須藤頼翔と申します。美玲さんとは真剣に結婚前提でお付き合いさせて頂いてます」

ドアを開けた姉に名刺を渡し丁寧に挨拶をした後、手土産として麻布十番にある大人気の塩大福を渡す。

「美玲、帰ってきてくれ。天沢美音として活動していた時の君に恋し、ずっと忘れる事ができず、君を探して結婚前提で交際を申し込んだ。君のつくりだす曲に俺は支えられ、勇気づけられた。だから、嫌がる君にまたシンガーソングライターとしての活動を強要してしまった。反省してる。もう、強要しない。だから、俺の側に居てくれないか」

そう言うと、頼翔さんが姉の後ろに立ってる私の手を取り引っ張り抱きしめた。

ーー懐かしい彼の匂いと心臓の音に、胸がときめく。

三つボタンのグレーの仕立てのいいスーツを身に纏ってる頼翔さん。
腰を抱くてに力を込められ、下半身が密着する。
下腹部に欲望を滾らせた硬いものを当てられ、その昂った屹立を押し付けられ、私の身体も熱をもち、恥部からとろりと蜜が滴れ落ち下着を濡らす。

「……美玲、須藤頼翔さんの事、好きなの一目瞭然だよ。ちゃんと2人で話し合いなさい」

姉から家を追い出され、大通公園を目指し、札幌市時計台などを観光する。
左手をぎゅっと賑られ、札幌の街並みをひたすら歩いた。

「東京に戻るの。わかった。荷物はまとめて送るわ。須藤さん、美玲の事をお願いします」

天沢美音としてクレスタの仕事を手伝わせない事を条件に、頼翔さんの住むマンションに戻る事を決めた。

『美玲、盗撮動画見た。歌声……よかったよ。普通は一般人があげた投稿であんなに再生回数いかない。見つけたユーザーが何度も再生して聞き、共有で人に伝えたのだろう。引退して5年経つが今だに美玲の歌声に癒しを求めている人がいる。それだけは、わかってくれ』

頼翔さんは私に、天沢美音としての仕事を依頼してくる事はなかった。
だけど、クレスタTVに、天沢美音の新曲と新作ドラマを要望はたくさん寄せられている。

たまにマンションに顔を出す津田将生に脅されるも、無視してた。

****

「美玲、ーーただいま」

疲れきった表情で戻ってきた頼翔さん。
最近、深夜2時過ぎまで仕事をしてる。
金曜日の夜や土曜日に仕事絡みの飲み会や付き合いがあいがあり、1人で夜を明かす事が多いから、帰ってくる日は起きて待ってる。

腰を引き寄せられ、抱き竦められ、顔を上げると唇をら重ねられる。
片方の手で後頭部を押さえられ、もう片方の手は私の腰をぎゅっと抱きしめてる。

「ンンッ……んぅっ」

差し込まれた舌が口腔内を這い回るから苦しい。
息継ぎの間も与えられないほどの激しいキスに、身体が熱をもつ。

「……シャワー浴びてくる。起きていてくれて、ありがとう。」

仕事が多忙な頼翔さんに対して、私は彼の帰りを起きて待ち、キスに応え抱かれる事しかできない。
だけど、時間は夜中の3時で、睡眠時間を確保した方がいいと思い、ベッドの上に抱き合って横たわり、彼の耳元で歌を歌った。

朝も6時に起きて、すぐに出勤するに彼に、私は寝ずに朝食とランチ用にお弁当を作る。
ランチミーティングや接待で食事を終わらす事が多いと聞いたけど、私が作ったお弁当を毎日食べてくれた。

疲れきってキスはしてくれても抱いて貰えない事に寂しく感じるけど、……幸せを噛み締めてた。

「クレスタTV、広告収入だけで運営するのは難しかったんですよ。マニアックな番組の制作、これ以上赤字が続くとクレスタ自体が危なくなる」

久しぶりに夜に抱かれ寝坊してしまい、朝食用のおにぎりは作るもランチ用のお弁当は間に合わず、作り、渋谷にあるオフィスに届けにきた。
頼翔さんが受付嬢に私の事を婚約者だと紹介しているのもあり、素通りで社長室まで向かう。
秘書室も素通りで通り社長室の前に着くと、津田将生が頼翔さんを責めたてるよう大声を挙げていてドキッとする。

「再放送に関しては有料コンテンツにして、番組数も減らした。視聴者から色々要望がくるが黒字が見込める番組だけを制作するよう持っていってる」

「ーー目玉になる番組。美玲さんの説得できましたか?」

「美玲が嫌がる事はさせたくない」

「視聴者は美玲さんの歌と脚本を手がけたドラマを待ってます。ブランクがあるとはいえ、盗撮動画の歌声、素晴らしかったです。交渉して下さいよ!!」

話が終わったようで、社長室のドアが開き、津田将生が出てきたからダッシュで給湯室に身を隠した。
エレベーターに乗ったのを確認してから社長室をノックし、中に入る。
LINEメッセージでお弁当を届けにいく事は伝えてた。

「……美玲、ありがとう」

デスクトップパソコンのモニターをじっと見つめてた頼翔さん。
目の前まできてやっと私に気づいた。
お弁当が入ったランチバックを机の上に置く。

クレスタTVの運営がかなり悪いのは知ってた。
デイトレードをしてるのもあり、経済や企業に関する業績などを常にチェックをしてる。
クレスタに関しても株式は購入しないけど、調べて把握してた。

クレスタTVをノリで立ち上げた事を頼翔さんは後悔してる。
YouTuberの宣伝と活躍する場にもなっていて、廃業できない。
番組制作に関してYouTuber仲間にかなり助けて貰ってる。

「……納期未定でOKしてくれるなら、私、オリジナルドラマの脚本とオープニング曲作るよ。歌うかはわからないけど」

あんなに嫌で拒絶していたのに、自分からやると言ってしまった。

「……恋愛じゃなく、青春や企業物になるけどいい?要素はいれるけど、恋愛だけで話を組み立てるの無理」

「……あぁ、美玲、ありがとう」

イスから立ち上がると私の目の前まできて、ギュッと抱きしめてきた。
顔が近づいてきてキスされそうになり、彼の口にてのひらをあてる。

「……社長室では辞めて。続きは帰ってからね」

なんとか頼翔くんの腕から抜け出し、社長室から出た。

なるべく早く、オリジナルドラマの脚本とオープニング曲を仕上げたい。
家に戻るとノートパソコンを開き、制作に取りかかった。


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