授かり婚〜スパダリ社長が旦那様になりました！！〜

2週間前……逃走と捕獲

遥翔社長との離婚を決めたわたし、実家には戻らず、福岡に引っ越した。

実家の両親に遥翔さんと離婚の意思を伝えた。
両親も吉川麻美の自伝的小説を読んでいて、わたしの意志を尊重してくれた。

実家にいたら遥翔社長に連れ戻される気がして、遥翔社長から距離的に離れるために福岡に引っ越してた。

ひとまず、産後落ちつくまでは小倉駅の近くのレオパレスを借りる事にした。
お産予約を取るためにタクシーで15分圏内の産婦人科医院に問い合わせをしたら受け入れができないと言われ戸惑う。

少子化の影響でお産を引き受ける産婦人科医院が減っているのは知ってた。

産める病院が見つからなければ、今までお世話になってた産婦人科医院で産むしか無い。

妊婦健診は東京の今までかかってる産院へ通い、2ヶ月ほど福岡で過ごし、36週に入ったら東京に戻る事に決めた。

離婚については弁護士に全てを任せた。離婚さえできればいい。

知っている人が誰もいない地で1人暮らしをする不安。
朝起きて寝るまで、やる事がなく、ひたすらU-NEXTを見てた。

1月半ばで寒い季節なのもあり、3階の1LDKの部屋でのんびり過ごした。

2週間に1回の妊婦健診、オフィスビル近くの産婦人科医院に通ってたから遥翔社長に会いそうで怖かった。

弁護士から遥翔社長が話し合いに応じないと連絡を受けてた。

遥翔社長が吉川麻美と付き合っていたのは2年前の事で、遥翔社長は沈黙を貫いた。
当時付き合っていた2人をよく知るIT企業若手社長やトップYouTuberも、吉川麻美が遥翔社長に一方的に付きまとっていたと口を滑らせてた。

遥翔社長は吉川麻美を愛してなかったけど男女関係があった。
最低男というイメージが持たれた。

7ヶ月検診で2週間ぶりに東京に戻る。
タクシーで産婦人科医院へ行き、院内に入ると少しやつれた遥翔社長がいた。
マタニティママ達がわたしと遥翔さんを見てこそこそ話をしてた。

院内で言い合いをするわけにはいかず、診察は遥翔社長と一緒に受けた。

元々妊娠初期から切迫流産になり安静にするように言われてたわたし。
入院レベルではなかったけど子宮口が柔らかい体質らしく、切迫早産になりかねないから安静にするように言われた。

診察の後、当たり前のように受付で支払いをし、産婦人科医院から出る。

タクシーを止め、1人乗り込み東京駅に向かおうとしたら手を引かれ徒歩5分の所にあるオフィスビルに連れ込まれ、社長室に連れて行かれた。

離婚に納得してない遥翔社長。

社長室で2人きりになり戸惑った。

「俺が過去に最低な事をしていた事は自覚はある。理音に対しても妊娠したら俺から離れなくなると思ってあえて避妊を怠った」

社長室で遥翔社長はわたしの目を見つめながら話す。

そして、わたしに近づいてくるから、わたしは後退りをする。

「多少大げさに書いてるが麻美の自伝的小説は事実だ。俺は理音に出会って、理音にのめり込み、麻美を無残に捨てた。理音が高校を卒業してサイバークリエーティブに入社してから、理音を俺の物にする事しか考えてなかった。だから、俺の補佐として社長室で仕事をさせた」

わたしを壁に追い込み、顎クイをして遥翔社長は言う。

「俺は本気で理音の事を愛してる。手放す気はない。理音、お願いだ。俺の元へ帰ってきてくれ」

哀愁漂う表情で言われ、ドキッとしてしまう。

「……逃す気はない。手錠して、マンションから出れないようにしようか」

真顔で言われ、焦る。今の遥翔社長ならやりかねない。
抵抗しようとしたら両手を掴まれた。

そして荒々しいキスが降ってきて、わたしの口内を彼の舌がうごめいた。

長い時間キスをし、遥翔さんはわたしをタワーマンションに連れて行こうとする。

でも、わたしが「吉川麻美と暮らしていた爪跡があるから嫌だ」というと、「引っ越した」と、オフィスビルから目と鼻の先にある新築タワーマンションの最上階に連れてきた。

何もない部屋。

吉川麻美が買い揃え、触れた物は全て処分されてた。

「理音、愛してる。ここで俺と暮らして欲しい」

遥翔社長に強く抱きしめられ、わたしは応じてしまった。