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バレンタイン大作戦

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スーパーやコンビニに入ると、レジ前にラッピングされたチョコレートがずる。
バレンタインの日が近い事に気づく。

「今年のバレンタイン、どうしようかなぁ……」

チョコレートを渡したい男性はいないけれど、イベント事が大好きな私は、毎年、自分のために洋酒チョコ作ってる。

「せっかくだから、凛花ちゃん誘って一緒に作ろうかな」


凛花ちゃんと翔兄は昔、付き合っていた。
あまりこういう事は聞かない方がいい気がして、深くは聞いてないけど、大学の同じゼミの先輩後輩で、凛花ちゃんは翔兄のシンガーソングライターのPV作成やアプリゲーム開発の手伝いをしていて、常に側にいた女性だったみたい。
“ちゃら”時代な5年間ぐらい、翔兄とはボーカロ仲間としか交流してた。
だから、コラボ企画をしたり、アニメーション動画を私が描いたりした付き合いから、リモートミーティングやリモートレコーディングを良くしてた。

私が高校生になったぐらいの時に、翔兄のマンションに美青年っぽい人が出入りするようになり、翔真から大学のゼミの後輩で手伝って貰ってると聞いてた。

たぶん、凛花ちゃんだったんだと思う。
いつも自宅マンションにいる時は一緒にいたから、恋人だったんだと思う。

凛花ちゃんが翔兄と別れた理由は、まさかのマスコミ発信につ“ちゃら”とのガセ交際記事を信じた事。

“ちゃら”の存在のせいで2人が破局したと知り、申し訳なくていたたまれない。

週末、凛花ちゃんだけでなく、翔兄や相葉社長を読んで、おうち飲み会をするのが恒例になりつつある。
仕事が多忙じゃなかったら、毎週のようにおうち飲み会したい。
アメリカにいた頃は、毎日誰かのおうちでホームパーティーを開いていて、招いたり招かれたりして、楽しい食卓を囲んでた。

「久しぶりに凛花ちゃんだけ呼んで、おうち女子会したい」

バレンタイン前の金曜日の夜。
LIN Aグループテレビ電話をかける。
凛花ちゃんとバレンタインチョコを作りたいから、今週末は翔兄と相葉社長には遠慮して貰った。

バレンタインチョコをきっかけに、凛花ちゃんと翔兄が復縁したらいいなと思い、お節介を焼く事に。
凛花ちゃんに、義理チョコには絶対見えない生チョコタルトを作らせ、翔兄に渡したら、丸く収まるのではと思った。

翔兄は凛花ちゃんの事を今も、昔と同じように深く愛してる。
翔兄なら、離婚で深く傷ついた凛花ちゃんの心の傷を癒し、幸せにしてくれるはず。

生チョコタルト作りに、凛花ちゃん、かなり苦戦していたけど、私が手伝ったら本命チョコの価値が下がるから、見守った。
かなり失敗したけど、アンティークみたいな可愛い生チョコタルトが完成した。

「うん。インスタ映えする出来。翔兄にあげるでしょ?ラッピングしとこっか!!」

ただ、生チョコタルトを作っておやつに食べると思ってた凛花ちゃんは、私が翔兄に渡すために作らせたとは、微塵も思わなかったらしく、挙動不審になる。
そんな凛花ちゃんを無視し、成功さかた20個のうち、見映えがいい12個を選び、箱に詰めラッピングをした。

「なっ、……なんで翔真にあげないといけないの?ぎ、義理チョコ?これ、本命チョコにしか見えないじゃん!!」

「うん。本命チョコ仕様」

凛花ちゃんに、翔兄が凛花ちゃんの事だけを愛してる事をわかって欲しい。

「私、コンパの日の夜の記憶が戻ったんだ。で、あの夜、ホテルの部屋に送り届けてくれた時に翔兄に、抱いてと迫ったんだけど、俺には心に決めた女性がいるって拒絶され、私を放置して、出てった」

恥ずかしいけど、あの夜の事を凛花ちゃんに話す。

「後、温泉旅館に行った時にね、私、眠れなくて露天風呂に入ったの。その時に溺れかけて、翔兄にまた助けられたんだけど、翔兄、私の裸を見ても反応しなかった」

翔兄は、私に欲情しない。
私からの誘惑は効かない。

「私の事が好きじゃないのに、こうやってつるんでるの、凛花ちゃんの事が好きだからなんじゃないかなと思う」

凛花ちゃんは、翔兄が私に気があると誤解しているかもしれなちけど、そんな事ない。

「あっ、私、翔兄の事が好きってわけじゃないから!!生まれ育った環境のせいで捻くれてて、酔っちゃうと、私、男を誘惑する悪い虫が出ちゃうみたいなんだ。だから、最近、お酒を飲む量、セーブしてる。翔兄と相葉社長のどちらか選べと言われたら、翔兄を選ぶけど、私、誰とも結婚をせず、親しい友達と仲良く生きていきたい。今年は頼翔がいるし、男……いらない!!」

凛花ちゃんは、私の話す事を、何も言わずに、だだ、聞いていた。

「頼翔が相葉社長の息子という事実は変えられないから認めるけど、認知させないし、結婚なんて、絶対にしない。このまま、4人でわいわい仲良くしていけたらいいなとは思う」

いつまでも、この関係が続いて欲しいと私は願ってる。

「寝よっか。明日は翔兄と相葉社長をウチに招いてあげる?翔兄にバレンタインデーの日にデートの約束をしなよ!!」

ラッピングしたチョコレートを溶けないよう冷蔵庫に入れ、寝る事にした。

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